- 部活で懸垂をやらされるけれど、バレーに関係があるのか分からない
- 懸垂が1回もできず、どこから始めればいいのか分からない
- 背中を鍛えたいが、器具もないので何をすればいいか迷っている
こんな悩みを解決します。
懸垂は、バレーで不足しやすい「引く力」を育てる自重トレとして効果があります。ただし回数を競うやり方では、その効果はほとんど出ません。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで中学生以上の選手を指導してきましたが、懸垂で伸びる選手とそうでない選手の差は、上がった回数ではありませんでした。
体を振らずに、背中から引き上げられる選手は、空中の姿勢も崩れにくくなります。逆に反動で勢いをつけている選手は、何回上がっても変わりません。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 懸垂がバレーのどんな力につながるのかが分かる
- 1回もできない人が順番に積み上げる5段階と、回数・頻度の目安が分かる
- 肩や腰を痛めないための注意点と、懸垂だけでは足りない部分が分かる
それでは、くわしく見ていきましょう。
結論:懸垂はバレーに足りない「引く力」を育てる

結論からお伝えします。懸垂は、背中側の引く力をまとめて鍛えられる、数少ない自重トレです。
バレーの動きを思い返してみてください。スパイクを打つ、ブロックで手を出す、床を押して起き上がる。ほとんどが押す動作なんですよね。
その一方で、腕を体に引き寄せる動きは練習の中にあまり出てきません。押す側だけが強くなると、肩の前側にばかり負担が集まります。
懸垂は、その足りない引く動きを1種目で補えます。しかも必要なのは鉄棒1本で、重りを足す必要もありません。
体育館が使えない日でも、公園や校庭でできるのはありがたいところでしょう。
サルくん体力テストの種目だと思っていました。



バレーの体づくりでは、引く動きの代表になりますよ。
ただし、注意したいことが1つあります。反動で体を振って上げる形では、背中はほとんど使われません。
回数を競うと、どうしてもこの形になります。目的が変われば、上げ方も変わってきます。
- 体を振らず、背中から引き上げる
- あごが棒を越えるまで上げ、下では肘を伸ばしきる
- 回数を追わず、きれいにできるところで止める
この3つを外さなければ、上がった回数が少なくても問題ありません。逆にここを外すと、腕が疲れるだけで終わってしまいます。
なお、背中全体の鍛え方はこちらの記事にまとめてあります。懸垂はその中の1種目という位置づけです。
懸垂がバレーに効く3つの理由
なぜ懸垂がバレーに向いているのか、理由は3つあります。ここが分かると、上げ方の意識も変わってきます。
理由1:腕を引き戻す力が育つ
1つ目は、腕を引く力です。背中の大きい筋肉(広背筋)は、上げた腕を体に引き寄せるときに働きます。
スパイクは、背骨を軸に体をひねって打つ動作です。振り抜いた腕を体の前へ引き下ろす場面で、この背中の筋肉が使われます。
つまり、打つ力は胸や腕だけで作られているわけではないんです。背中側が弱いと、振り抜いたあとに体が流れてしまいます。
レシーブで低い姿勢を保つときも、背中側は体を支え続けています。使う場面は、打つ瞬間だけではありません。



打ツ力ハ 背中側モ使ッテイル
空中で胸を張って打つ感覚は、こちらの記事でくわしく解説しています。
理由2:肩の前後のバランスが整う
2つ目は、肩まわりです。打つ・押す動作が続くと、胸と肩の前側だけが強く、硬くなっていきます。
前と後ろで差が開くと、肩は前に引っぱられた位置で固定されます。この状態のまま打ち続けると、肩の痛みにつながりやすくなります。
引く種目を入れると、肩の後ろ側と肩甲骨まわりが働きます。前後のバランスを戻す役目、これが懸垂のもう1つの価値です。



腕立てはやっていますが、引く練習はしていませんでした。



押す種目だけが増えていくと、肩は苦しくなりますよ。
理由3:自分の体を支える力がつく
3つ目は、体を支える力です。ぶら下がった体をまっすぐ保つには、お腹と背中の力がいります。
足がぶらぶら揺れる選手は、ここが抜けています。空中で体が流れる選手と、原因は同じところにあるんですよね。
あわせて、棒を握り続けることで握力も育ちます。ボールを扱う指先の力も、バレーでは意外と効いてきます。
懸垂ができるようになる5段階


ここからが実際のやり方です。1回もできない人は、上から順に自分のできる段階まで進めてください。
段階1:10秒ぶら下がる
まずは、ぶら下がるところからです。手は肩幅より少し広く、手の甲が自分に向く握り方で棒をつかみます。
体を揺らさず、10秒。これだけで握力と肩まわりに十分な刺激が入ります。
足が揺れるうちは、まだ上げる段階ではありません。
まっすぐ止まってぶら下がれることが最初の目標です。
段階2:肩を下げる
次に、ぶら下がったまま肩だけを下げます。耳と肩を遠ざけるイメージで、体が数cm上がれば正解です。
肘は伸ばしたままで構いません。ここが動かせないと、引き上げるとき腕だけの力に頼る形になります。



数cmしか動かないのに、意味があるんですか?



背中のスイッチを入れる動きなので、ここが土台になりますよ。
段階3:斜め懸垂
3つ目は、腰の高さくらいの低い鉄棒を使う形です。足を床につけたまま、体を斜めにして胸を棒へ引き寄せます。
足の位置を棒の下に近づけるほど軽く、前に伸ばすほどきつくなります。10回できる角度を探してください。
体は頭からかかとまで一直線に保ちます。腰が落ちると、背中ではなく腕だけの運動に変わってしまうんです。
公園の低い鉄棒がちょうど良い高さになります。体育館なら、丈夫な台に棒を渡す形でも代わりになるでしょう。



足ノ位置デ 重サヲ調節デキル
段階4:下ろす動きだけ
4つ目は、上がるところを台で代わりにして、下りる動きだけを行う形です。台に乗ってあごを棒の上に出し、そこから足を離します。
5秒かけて、ゆっくり下りてください。3回できれば十分な刺激になります。
引き上げる力より、耐えながら下ろす力のほうが先につきます。ここを通ると、1回目が上がる日は近いでしょう。



上がらなくても練習になるんですね。



下ろす動きのほうが、実は強い力を使っていますよ。
段階5:懸垂
最後が懸垂です。あごが棒を越えるまで引き上げ、下では肘をしっかり伸ばしきります。
大事なのは、上げ切ったときに胸を棒へ近づける意識です。あごだけを前に突き出す形では、背中は使えていません。
1回でも構いません。きれいに1回上がるほうが、反動で5回上げるより価値があります。



まずは1回、きれいに上げてみます!



その1回が、背中の使い方を覚えてくれますよ。
懸垂の回数と頻度の目安
段階が決まったら、次は量です。ここを間違えると、肩や肘に疲れだけが残ります。
きれいにできる回数で区切る
まず、1セットの数です。限界まで上げるのではなく、形が崩れる1回手前で止めてください。
3回きれいに上がるなら、3回で1セットです。それを2〜3セット、間に1分ほど休みを入れます。
形が崩れた回数を足しても、背中は育ちません。むしろ反動をつけるくせがついてしまいます。
| 目的 | 種目 | 目安 |
|---|---|---|
| 引く力をつけたい | 懸垂・斜め懸垂 | 3〜8回×2〜3セット |
| まだ1回も上がらない | ぶら下がり・下ろす動き | 10秒×3本・5秒×3回 |
| 肩のバランスを整えたい | 斜め懸垂・チューブ | 10回×2〜3セット |
週2〜3回、練習後か休養日に入れる
次に、頻度です。毎日やる必要はなく、週2〜3回で足ります。筋肉は、休んでいる間に育っていきます。
入れる場所は、練習後の仕上げか、部活が休みの日です。練習前に追い込むと、肝心のスパイクで腕が上がらなくなります。
試合が近い週は、量を半分に落として形だけ確認する日にします。疲れを残したまま試合に入るほうが、損は大きくなります。



毎日やったほうが早く上がると思っていました。



間を空けたほうが、むしろ回数は伸びていきますよ。
成長期は重りを足さない
最後に、負荷です。中学生の年代では、体に重りをつける必要はありません。
器具である程度の重量を扱うのは、高校年代からで十分です。
成長期は自分の体重だけで組み立ててください。
重い器具を早くから使うと、怪我や骨の成長という面で心配が出てきます。自重でできることは、まだたくさん残っています。
懸垂でよくある3つの失敗
うまく背中に効かないときは、たいてい次の3つのどれかです。1つずつ見ていきます。
失敗1:反動で体を振っている
いちばん多いのが、足を振って勢いで上げるパターンです。体力テストの計測では上がった数に入りますが、練習としては別物になります。
反動を使うと、力を出しているのは背中ではなく、振り子の勢いです。しかも腰が反るので、腰を痛める原因にもなります。
足を軽く前で組むと、振りにくくなります。上がる回数は減りますが、そこが今の実力なんですよね。
チームで数を競う場面では、どうしても反動が出ます。自主練のときだけでも、止まった状態から上げてみてください。



反動デ上ゲタ回数ハ 数エナイ
失敗2:あごだけ前に出している
次に多いのが、首の使い方です。あごを棒の上に出そうとして、首だけが前に伸びていく形ですね。
これだと胸は棒から遠いままで、腕の力だけを使っています。目線は正面、胸を棒へ近づける。この順番で覚えてください。



あごを越えればいいと思っていました。



越える場所ではなく、胸が近づいたかで見ましょう。
失敗3:できないまま回数だけ数えている
最後が、段階を飛ばしてしまうパターンです。1回も上がらない状態で懸垂だけをくり返しても、体は変わりません。
その場合は、さきほどの段階1〜4に戻ってください。ぶら下がる・下ろす、この2つだけでも引く力は育っていきます。
鉄棒が近くにない人は、チューブを使って引く動きを再現する方法もあります。ドアや柱に引っかけて、肘を後ろへ引くだけで十分です。
自宅で引く練習をするなら、強さを変えられるチューブが1本あると便利です。
懸垂だけでは足りない部分
ここまで懸垂の良さをお伝えしてきましたが、これ1つで体づくりが完成するわけではありません。
押す種目と組み合わせる
引く種目だけを増やしても、今度は逆側に偏ります。押す・引くの両方をそろえて、はじめて肩まわりは安定します。
腕立て伏せを同じ週の中に入れて、押す日と引く日を分けてください。同じ日にまとめると、後半の種目が雑になりがちです。
全身の組み立て方は、こちらにまとめてあります。
跳ぶ力は下半身で作る
懸垂で背中が強くなっても、それだけで高く跳べるようにはなりません。跳躍の土台は、あくまで下半身と体幹です。
上半身は空中で姿勢を保つ役、下半身は跳ぶ役。役割を分けて考えると、練習の組み方で迷わなくなります。



上半身と下半身、両方いるんですね。



順番に積み上げれば大丈夫ですよ。
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よくある質問
まとめ:回数ではなく、背中が使えたかで見る
懸垂は、上がった回数を競う種目ではありません。体を振らずに引けているか、そこだけを見てください。
振らない。胸を近づける。下で伸ばしきる。
| つまずくところ | 直し方 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 1回も上がらない | ぶら下がり・下ろす動きから始める | 懸垂だけをくり返しても変わらない |
| 体が揺れる | 足を前で組んで止める | 反動で上げた回数は数えない |
| 背中に効かない | 胸を棒へ近づける | あごだけ前に出さない |
| 肩や肘が痛む | 頻度を週2回まで減らす | 痛みが続くなら整形外科へ |
| 鉄棒が使えない | 斜め懸垂やチューブで代用する | 引く動きを抜かさない |
私が指導してきた選手のなかにも、懸垂の上げ方を変えてから空中姿勢が安定した選手はいます。上がる回数はむしろ減っていました。
必要なのは鉄棒1本と、数分の時間だけです。押す練習ばかりになりがちな時期にこそ、差がつく種目になるはずです。
そのうえで、跳ぶ力や体幹づくりも並行して進めてください。あせらず、順番どおりに積み上げていきましょう。



今日から、振らずに1回を目指します!



下で肘を伸ばしきることも忘れないでくださいね。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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