- 試合の1本目のスパイクで、いつもより跳べていない気がする
- 「試合前に全力で何回か跳んでおくといい」と聞いたけれど本当か知りたい
- PAP(活動後増強)という言葉を聞いたが、どう使えばいいか分からない
こんな悩みを解決します。
試合前のアップの最後に全力のジャンプを数回入れて、少し休んでから本番に入ると、一時的に跳びやすくなる可能性があります。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
研究では、強い運動をしたあと数分たつと、ジャンプの高さが少し上がる現象が報告されています。ただし、やり方やタイミングを間違えると、疲れが勝って逆に跳べなくなることもあります。
この記事では、こうした研究をもとに、試合前のアップでジャンプを上げる仕組みと、中高生でも安全にできる使い方を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
- PAP(活動後増強)がどんな現象なのか分かる
- 効果が出やすい条件と、逆効果になる条件が分かる
- 試合前のアップで全力ジャンプを入れる場所が分かる
結論:全力で数回跳んで、少し休んでから本番に入る
結論からお伝えします。アップの最後に全力のジャンプを数回入れ、数分休んでから試合に入るのが、中高生でも取り入れやすい形です。
強い運動のあと、しばらくして体が「跳べる状態」に近づく現象は、PAP(活動後増強)と呼ばれてきました。ただ、効果は小さく、だれにでも同じように出るわけではありません。
サルくん試合前に全力で跳ぶと、本当に高く跳べるようになるんですか?
強い刺激のあと一時的に跳べる現象
PAPは、筋肉に強い力を出させたあと、その筋肉が一時的に力を出しやすくなる現象です。
Blazevich と Babault のまとめ(2019年・生理学の専門誌)によると、もともとのPAPは、電気で筋肉を刺激する実験で見つかった現象でした。
この効果は30秒ほどで半分に減るほど短いものです。
一方で、自分の意思で跳ぶ・走るといった動きが、数分たってから良くなる現象も多く報告されています。こちらは区別して「PAPE(活動後パフォーマンス増強)」と呼ぶことが増えてきました。
効果は数分後に出て、長くは続かない
PAPEには、筋肉の温度が上がることや、筋肉に力を入れる指令が出やすくなることなど、いくつかの理由が関わっていると考えられています。
ポイントは、強い運動の直後ではなく、少し休んだあとに効果が出やすいこと。そして、時間がたつと元に戻ることです。
- 強い運動のあと、一時的に跳びやすくなる現象
- 直後ではなく、数分休んだあとに出やすい
- 効果は小さく、時間がたつと元に戻る



全力で跳んですぐ本番ではなく、少し休むのがコツだよ。
研究でわかったアップの効果
では、アップに強い運動を足すと、実際にどれくらいジャンプが変わるのでしょうか。研究を見ていきます。
アップに足すと約2.4cm高くなった
Zheng らのまとめ(2026年・スポーツ医学の専門誌)は、トレーニングを積んだ選手を対象にした研究を集めて分析しています。
ふつうのアップだけの場合と、そこに強い運動を足した場合をくらべました。その結果、反動をつけた垂直跳びが平均で約2.4cm高くなったと報告されています。
一方で、ダッシュのタイムには、はっきりした差は見られませんでした。ジャンプの種類や動きによって効き方がちがう可能性がある、ということです。



アップニ タスト ヤク2.4cm タカクナッタ
バレー選手でも効果の報告がある
バレー選手を調べた研究もあります。Villalon-Gasch らの研究(2022年・公衆衛生の国際誌)では、スペインのリーグでプレーする女子選手11人を調べました。
アップのあとにバーベルのスクワットを行った選手は、試合前のジャンプが高くなりました。そして、その差は2セット目まで続いていたと報告されています。
また、Karaduman らの研究(2026年・運動とスポーツの研究誌)では、思春期のまっただ中の年代を含む女子バレー選手17人が、ジャンプ中心のアップとふつうのアップの両方を試しました。
その結果、どちらのアップでもジャンプの高さと反応の速さが良くなっていました。ジャンプ中心のアップの効き方は、体の成長の段階によってちがう可能性も示されています。
効果が出ない人もいる
ただし、どの研究でも全員が同じように跳べるようになったわけではありません。
Wilson らのまとめ(2013年・トレーニング科学の専門誌)では、トレーニングをしていない人では効果が小さく、競技選手では大きかったと報告されています。
研究の多くは、筋トレの経験がある大人の選手を対象にしたものです。中高生にそのまま当てはまるとは限らない点は覚えておきましょう。



2.4cmも変わることがあるんですね!



平均の話だから、自分にどう効くかは試してみないと分からないよ。
効果を左右する3つの条件
研究をくらべると、効果が出るかどうかは主に3つの条件で変わることが分かってきました。
- 強い運動の種類と強さ
- 本番までに休む時間
- その人の筋力とトレーニング経験
①強い運動の種類と強さ
Seitz と Haff のまとめ(2016年・スポーツ医学の国際誌)では、47の研究を集めて分析しています。
その結果、ジャンプ系の運動は、重いバーベルの運動と同じくらいかやや大きな効果があり、しかも早く効果が出やすいと報告されています。
一方で、力を入れて止まったままの運動では、効果はほとんど見られませんでした。
中高生にとってうれしいのは、器具を使わない全力ジャンプでも効果が期待できる点です。



道具がなくても、ジャンプだけでいいんですね!
②本番までに休む時間
強い運動のあとは、体が「跳べる状態」になると同時に、疲れも残ります。だから、少し休んで疲れが抜けたタイミングで本番に入ることが大切です。
Ah Sue らの研究(2016年・スポーツ科学の専門誌)では、大学の女子バレー選手9人が、重いスクワットのあとに立ち幅跳びを行いました。
その結果、2分後・6分後・10分後はふつうのアップより遠くへ跳べたが、14分後と18分後には差がなくなっていたそうです。
Wilson らのまとめでも、休む時間が10分を超えると効果はほとんど見られませんでした。研究によって差はありますが、数分から10分ほどが目安と考えてよいでしょう。



スウフン カラ 10プン ホドガ メヤス
③その人の筋力とトレーニング経験
Seitz と Haff のまとめでは、筋力が強い人や筋トレの経験が長い人ほど、効果が大きく出やすいことも分かっています。
さらに、筋力がまだ弱い人は、休む時間を長めにとったほうが効果が出やすい傾向がありました。強い運動の疲れが抜けるまでに、時間がかかるためと考えられます。
つまり、筋力の土台ができていないうちは、PAPの効果を大きく期待しすぎないことも大切です。



筋力がない人は、あまり効かないんですか…。



だからこそ、ふだんのトレーニングで土台を作るのが先なんだ。
中高生が安全にできる形
研究には重いバーベルを使ったものも多いですが、中高生がまねする必要はありません。ここでは、器具を使わずにできる形を紹介します。
重いバーベルではなく自重の全力ジャンプ
このサイトでは、中学生は自分の体重を使うトレーニングを中心にして、重い器具は高校からをおすすめしています。
試合前に入れるのは、その場での全力の垂直跳びを3〜5回ほどで十分です。1回ずつ着地をしっかり止めて、毎回全力で跳びましょう。
台から飛び降りて跳ね返るデプスジャンプは、負担が大きい種目です。ボックスジャンプの着地が安定していない人は、試合前に入れないでください。
試合前の流れのどこに入れるか
全力ジャンプは、体がしっかり温まってから入れるものです。いきなり全力で跳ぶと、けがの原因になります。
試合では、ネットを使った公式練習でスパイクを打ちます。アップ場所で全力ジャンプを入れておけば、公式練習のスパイクで体がすぐに動きやすくなります。
公式練習が終わってから試合開始までは、4分ほどしかありません。この時間に体を冷やさないよう、上着を羽織るなどして準備しておきましょう。
待ち時間が長いときは数回だけ跳び直す
研究では、10分を超えると効果が消えやすいことが分かっています。前の試合が長引いて待ち時間が延びたときは、試合前にもう一度体を温めて、全力ジャンプを数回入れ直すとよいでしょう。
控えの選手も同じです。出番がいつ来てもいいように、体を冷やさず、指示があったときにすぐ跳べる準備をしておきましょう。



アップの最後に全力で跳んで、少し休めばいいんですね!
やりすぎると逆効果になる理由
全力ジャンプは、たくさんやればよいわけではありません。ここでは、逆効果になるパターンを紹介します。
疲れが勝つとジャンプは下がる
Heynen らの研究(2024年・スポーツ科学の専門誌)では、トップレベルの女子バレー選手が、重いスクワット3回×3セットを行いました。
その結果、2分後のジャンプの力は、運動前よりむしろ下がっていたと報告されています。強い運動の疲れが、まだ抜けていなかったと考えられます。
回数を増やしすぎたり、休む時間が短すぎたりすると、跳べる状態になる前に疲れが勝ってしまいます。だからこそ、全力ジャンプは少ない回数にとどめることが大切です。



ヤリスギ ト スグノ ホンバン ハ ギャクコウカ
新しいやり方は試合の日に試さない
効果の出方には個人差があります。ある人には合っても、別の人には合わないこともあるでしょう。
だから、全力ジャンプの回数や休む時間は、ふだんの練習で何度か試してから試合に使うようにしてください。いきなり大事な試合で試すと、かえって調子をくずすことがあります。
ジャンプの高さを記録しておくと、自分に合うやり方を見つけやすくなります。



記録を見くらべると、自分に合う休み方が見えてくるよ。
痛みがあるときは全力で跳ばない
膝やかかと、腰などに痛みがあるときは、全力ジャンプを入れないでください。とくに成長期の選手は、膝やかかとに痛みが出やすい時期です。
痛みが続くときは練習を休んで、整形外科で診てもらいましょう。



痛みをがまんして跳ぶのは、いちばん避けてほしいことだよ。
よくある質問
まとめ:全力ジャンプは少なく、休んでから本番へ
この記事では、試合前のアップでジャンプを上げるPAP(活動後増強)の仕組みと使い方を、研究をもとに解説しました。
全力ジャンプを3〜5回、数分休んでから本番。効果は小さく一時的なので、土台作りが先。
| テーマ | 研究で分かっていること |
|---|---|
| 効果の大きさ | アップに足すと垂直跳びが平均約2.4cm上がった |
| 運動の種類 | ジャンプ系は効果が早く出やすい |
| 休む時間 | 数分〜10分ほどで効果、14分後には差がなかった |
| 逆効果 | 重い運動の2分後はむしろ下がった |
私は元日本代表として、試合の1本目から全力を出せるかどうかは、アップの最後をどう締めるかで変わると考えています。
まずは次の練習で、アップの最後に全力ジャンプを入れ、休む時間を変えながら跳びやすさを比べてみてください。



次の練習で、休む時間を変えて試してみます!



自分に合う形が見つかれば、1本目から思いきり跳べるよ。
参考にした研究・資料
- Blazevich AJ, Babault N. Post-activation Potentiation Versus Post-activation Performance Enhancement in Humans: Historical Perspective, Underlying Mechanisms, and Current Issues. Frontiers in Physiology, 2019
- Zheng Z, Gao X, Song Z. Effects of post-activation performance enhancement added to general warm-up on jump, sprint, and change-of-direction performance in competitive athletes: a systematic review and meta-analysis. BMC Sports Science, Medicine and Rehabilitation, 2026
- Villalon-Gasch L, et al. Postactivation Performance Enhancement (PAPE) Increases Vertical Jump in Elite Female Volleyball Players. International Journal of Environmental Research and Public Health, 2022
- Karaduman E, et al. The Effect of Plyometric-Based PAPE Warm-Up Vs. Traditional Warm-Up on Vertical Jump, Reaction Time, Change of Direction, Cognitive Skills, and Serve Speed Performance in Mid- and Post-Pubertal Athletes. Research Quarterly for Exercise and Sport, 2026
- Wilson JM, et al. Meta-analysis of postactivation potentiation and power: effects of conditioning activity, volume, gender, rest periods, and training status. Journal of Strength and Conditioning Research, 2013
- Seitz LB, Haff GG. Factors Modulating Post-Activation Potentiation of Jump, Sprint, Throw, and Upper-Body Ballistic Performances: A Systematic Review with Meta-Analysis. Sports Medicine, 2016
- Ah Sue R, Adams KJ, DeBeliso M. Optimal Timing for Post-Activation Potentiation in Women Collegiate Volleyball Players. Sports, 2016
- Heynen R, et al. Post-Activation Performance Enhancement (PAPE) Increases Jumping Power in Elite Female Volleyball Athletes. Sports, 2024
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
パフォーマンスアップについては他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪










