- 反発のいいシューズに替えれば、もっと高く跳べるのか知りたい
- 裸足のほうが跳べると聞いて、本当なのか気になっている
- クッションの強い靴と薄い靴、どちらがジャンプに向いているのか迷う
こんな悩みを解決します。
シューズを替えただけで、ジャンプの高さが大きく変わることは少ないと研究で分かっています。シューズの役割は、高さを足すことよりも、持っている力を出し切らせて、着地から体を守ることにあります。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
新しいシューズを履くと、体が軽くなったように感じて「これで跳べる」と思う選手は多いものです。
ただ、その感覚と実際の高さは、いつも一致するとはかぎりません。
この記事では、靴とジャンプの高さを比べた研究をもとに、シューズで変わること・変わらないことを整理します。ぜひ参考にしてみてください。
- シューズでジャンプの高さがどれくらい変わるかがわかる
- クッションや反発がジャンプと着地に何をしているかがわかる
- ジャンプのために、シューズで本当に気をつけるべき点がわかる
結論:靴で高さはほとんど変わらないが、出し切る土台になる
結論からお伝えします。シューズを替えても、ジャンプの高さはほとんど変わらないというのが、研究から見えてくる答えです。
裸足・薄い靴・ふつうの運動靴で跳び比べた研究では、高さの差がなかったり、あっても1cm前後だったりしました。
一方で、シューズには「床で滑らずに踏み切れる」「着地の衝撃をやわらげる」という大切な役割があります。
高く跳ぶための道具というより、持っている力をきちんと出し切るための土台と考えるのがよいでしょう。
サルくんえっ、高いシューズにしても跳べるようにならないんですか…?



靴が高さを足してくれるわけじゃないんだ。でも、合わない靴だと力を出し切れなくなるんだよ。
- 靴の種類による高さの差は、研究では小さい
- 「跳べそう」という感覚と、実際の高さは一致しないことがある
- クッションは、着地の衝撃をやわらげる場面で役に立つ
- 大事なのは、滑らない底と足に合うサイズ
研究で分かったシューズとジャンプの高さの関係
まずは、靴を替えるとジャンプの高さがどう変わるのか、研究で分かっていることを見ていきましょう。
裸足・薄い靴・運動靴で高さに差はなかった
アメリカの Harry らの研究(2015年・筋力トレーニングの専門誌)では、男性15人に3つの条件で跳んでもらいました。裸足、底の薄い靴、ふつうのトレーニング用の靴の3つです。
その結果、垂直跳びの高さも、立ち幅跳びの距離も、3つの条件で差は見られなかったと報告されています。
ちがいが出たのは、ふくらはぎなど一部の筋肉の働き方でした。靴によって、体の使い方が少し変わっていたということです。



裸足でも靴でも、高さは同じなんですね!



タカサ ノ サ ハ ミラレズ
80人の研究でも差は約0.6cmだった
もう少し人数の多い研究もあります。Hébert-Losier らの研究(2023年・スポーツ理学療法の専門誌)では、健康な80人に、運動靴と裸足で両足ジャンプをしてもらいました。
その結果、運動靴のほうが裸足より、ジャンプの高さが約0.6cm低かったと報告されています。
ただし、研究者自身が「差はごくわずかで、実際には意味のある差ではない」とまとめています。



0.6cmだと、ほとんど同じですね。
0.6cmは、その日の調子や跳び方のちょっとしたちがいでも変わる大きさです。
このように、靴の条件を変えても、高さの差は「ない」か「ごく小さい」というのが、今のところ多くの研究に共通した結果です。
「跳べそう」という感覚と実際の高さはちがう
Harry らの研究には、もう1つ面白い結果があります。参加者は、裸足や薄い靴よりも、ふつうの運動靴のほうが「はき心地がいい」と答えていました。
さらに、垂直跳びでは、運動靴のほうが「よく跳べた」と感じていたんです。でも実際の高さには、差がありませんでした。
研究者は、はき心地がよくなることと、記録がよくなることは別だと述べています。
新しいシューズで「軽く跳べる気がする」のは、気分としては大切です。ただ、それで高さが伸びたと決めつけず、測って確かめるのがおすすめです。



跳べた気がするだけ、ってこともあるんですね!
クッションと反発は何をしているのか
では、シューズのクッションや反発は、ジャンプのときに何をしているのでしょうか。ここでは、着地と踏み切りに分けて見ていきます。
クッションが効くのは「予想していない着地」
クッションの大切な役割は、着地の衝撃をやわらげることです。ただ、研究を見ると、その効き方には条件があるようです。
中国の Fu らの研究(2017年・スポーツ科学と医学の専門誌)では、大学のバスケットボール選手12人に、60cmの高さから着地してもらいました。
クッションの強い靴と、クッションの少ない靴で比べています。
自分のタイミングで下りたときは、衝撃の大きさに靴による差はありませんでした。
一方で、いつ落ちるか分からない状態で下りたときは、クッションの強い靴のほうが衝撃が小さかったと報告されています。



自分で下りるときは、クッションの差が出ないんですか?



着地を予想できるときは、体が先に準備して衝撃を吸収してくれるんだ。
研究者は、着地に備えて筋肉がきちんと働いていれば、クッションの役割は大きくないと考えています。反対に、準備が間に合わないときこそ、クッションが助けになるということです。
試合の着地は予想どおりにいかない
バレーボールの試合では、きれいに予想どおり着地できる場面ばかりではありません。
ブロックで相手のスパイクに当てられて体が流れたり、トスが乱れて空中で体勢を変えたりすることがあります。こうした着地は、準備が遅れがちです。



ブロックで体が流れたときの着地ですね!
だからこそ、クッションは高く跳ぶためではなく、崩れた着地から足を守るためにあると考えるとよいでしょう。
ただし、クッションがあれば着地の形が悪くてもいい、ということではありません。着地のやり方そのものを身につけることが先です。
反発や硬いソールで高さが変わるかは研究で分かれる
靴の「反発」や底の硬さが、ジャンプの高さに関わるかどうかを調べた研究もあります。
カナダの Stefanyshyn と Nigg の研究(2000年・アメリカのスポーツ医学の専門誌)では、靴の底に曲がりにくい板を入れると、垂直跳びが平均で約1.7cm高くなったと報告されています。
足の指の付け根で失われる力が、少なくなったためと考えられています。
一方で、中国の Zhu らの研究(2020年・応用科学の専門誌)では、30人にバスケットボールのレイアップのように片足で跳んでもらいました。
その結果、底を硬くしても高さは変わらなかったと報告されています。
足首の力の出し方は変わっても、高さには表れなかったのです。



ケッカ ハ ケンキュウ ニ ヨッテ チガウ
研究によって結果が分かれていて、変わるとしても数cm以内の小さな差です。反発の強さは、はいたときの感触や好みで選ぶくらいに考えておくのがよいでしょう。
ジャンプのためにシューズで気をつけたい3つのこと
靴で高さが大きく変わらないとしても、靴がどうでもいいわけではありません。合わない靴は、持っている力を出し切る邪魔になります。ジャンプのために気をつけたいのは、次の3つです。
- 底が減って滑っていないか
- サイズが合っていて、中で足が動かないか
- バレー用の靴をはいているか
底が減ると踏み切りで力が逃げる
1つ目は、靴の底です。ジャンプの踏み切りでは、床を強く押します。そのとき靴が滑ると、押した力の一部が逃げてしまいます。
底の溝が減って滑りやすくなると、選手は無意識に強く踏み込むのをためらうようになります。滑らない底は、全力で踏み切るための条件なんです。
キュッと止まれなくなった、踏み込みで足が流れる、と感じたら、底の減りを確かめてください。買い替えの目安は、別の記事でくわしく紹介しています。
サイズが合わないと着地が不安定になる
2つ目は、サイズです。大きすぎる靴をはくと、踏み切りや着地のたびに、靴の中で足がずれます。
足がずれると、着地で足首がぐらつきやすくなります。成長期だからと大きめの靴を選ぶ気持ちも分かりますが、大きすぎるのは避けましょう。
ひもをしっかり結ぶことも大切です。かかとが靴の中で浮かないように、毎回結び直してから練習に入ってください。



いつもひもをゆるめたまま、さっと履いていました…。



ひもを結ぶだけで、足と靴が一体になるよ。今日から変えてみよう。
普通のスニーカーでジャンプ練習をしない
3つ目は、靴の種類です。研究で裸足と運動靴に高さの差が小さかったからといって、裸足や普通のスニーカーでジャンプ練習をしてよいわけではありません。
研究は、決められた回数をていねいに跳ぶ条件で行われたものです。実際の練習では、何十回も跳び、横に動き、急に止まります。
普通のスニーカーやランニング用の靴は、こうした横の動きや体育館の床で止まる動きを考えて作られていません。ジャンプ練習は、バレー用のシューズで行うようにしましょう。
高さを伸ばすのはシューズより体と跳び方
シューズで変わる高さが小さいなら、ジャンプ力を伸ばす中心は、やはり自分の体と跳び方です。
研究で変わったのは、靴を替えても数cm以内でした。それに対して、跳ぶトレーニングを続けたり、腕振りや助走を見直したりすることで、高さは大きく変わる可能性があります。
- 地面を押す筋力(スクワットなど)
- 力をすばやく出す速さ(跳ぶトレーニング)
- 助走・踏み切り・腕振りの跳び方
- 着地を安定させる体幹と足首
跳ぶトレーニングは、週1〜2回・1回ごとに全力・少ない回数が基本です。中学生のうちは自分の体重を使う種目を中心にし、重い器具を使うトレーニングは高校生になってから少しずつ始めてください。



クツ ヨリ カラダ ヲ キタエル
膝やかかと、足の裏に痛みがあるときは、靴を替えて様子を見るよりも、まず練習を休みましょう。痛みが続くときは、早めに医師に相談してください。
よくある質問
まとめ:シューズは高さを足す道具ではなく、出し切る土台
この記事では、シューズとジャンプの高さの関係について、研究をもとに解説しました。
シューズで高さはほとんど変わらない。滑らない底・合うサイズで、持っている力を出し切ろう。
| 分かっていること | 考え方 |
|---|---|
| 靴の種類で高さの差は小さい | 高さは体と跳び方で伸ばす |
| 跳べた感覚と高さは別 | 測って確かめる |
| クッションは崩れた着地で効く | 着地の形も身につける |
| 硬いソールの効果は研究で分かれる | 感触や好みで選んでよい |
私は元日本代表として、シューズは選手にとって大切な道具だと考えています。ただし、それは高さを足してくれるからではなく、全力で踏み切って、安心して着地するためです。
まずは今はいているシューズの底とサイズを確かめて、ひもをしっかり結んでから練習に入ってみてください。



底の減りを確かめて、今日からひもをしっかり結びます!



靴を整えたら、あとは自分の体を鍛えていこう。
参考にした研究・資料
- Harry JR, Paquette MR, Caia J, Townsend RJ, Weiss LW, Schilling BK. Effects of Footwear Condition on Maximal Jumping Performance. Journal of Strength and Conditioning Research, 2015
- Hébert-Losier K, Boswell-Smith C, Hanzlíková I. Effect of Footwear Versus Barefoot on Double-Leg Jump-Landing and Jump Height Measures: A Randomized Cross-Over Study. International Journal of Sports Physical Therapy, 2023
- Fu W, Fang Y, Gu Y, Huang L, Li L, Liu Y. Shoe cushioning reduces impact and muscle activation during landings from unexpected, but not self-initiated, drops. Journal of Science and Medicine in Sport, 2017
- Zhu Z, Fu W, Shao E, Li L, Song L, Wang W, Liu Y. Acute Effects of Midsole Bending Stiffness on Lower Extremity Biomechanics during Layup Jumps. Applied Sciences, 2020
- Stefanyshyn DJ, Nigg BM. Influence of midsole bending stiffness on joint energy and jump height performance. Medicine & Science in Sports & Exercise, 2000
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
パフォーマンスアップについては他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪










