- 身長がぐんと伸びている時期に、ジャンプのトレーニングを続けていいのか不安
- トレーニングしているのに、最近ジャンプ力が伸びていない気がする
- ひざの下やかかとが、ときどき痛くなる
こんな悩みを解決します。
身長が急に伸びている時期のジャンプ力トレーニングは、量を減らして着地とフォームの質を保つのが基本です。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
スクールの選手たちには、背が伸びている時期ほど「たくさん跳ぶ」より「正しく跳ぶ」ことを優先するよう伝えています。
研究を見ても、この時期は体のつくりが大きく変わるため、トレーニングの効果の出方や、けがのしやすさが変わることが分かってきました。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 身長が急に伸びる時期に、体の中で何が起きているかが分かる
- 成長期にジャンプ力が伸びにくくなる理由を、研究をもとに知れる
- 成長期にやること・避けることと、痛みが出たときの判断が分かる
結論:身長が伸びる時期は量を減らして質を保つ
結論からお伝えします。身長が急に伸びている時期は、跳ぶトレーニングをやめる必要はありませんが、量を減らして、着地とフォームの質を保つことを優先しましょう。
この時期は、骨の伸びに筋肉や動きの感覚が追いつかず、ジャンプ力が一時的に伸びにくくなることがあります。けがもしやすくなる時期です。
焦って量を増やすより、今の力を保ちながら土台を固めておくほうが、成長が落ち着いたあとに伸びやすくなります。
- 身長を定期的に測って、急に伸びている時期に気づく
- 跳ぶ量は、部活の練習のジャンプもふくめて少なめにする
- ひざの下やかかとが痛むときは、がまんせずに休む
ここからは、成長期の体で起きていること、研究でわかっていること、やること・避けること、痛みが出たときの判断の順に見ていきます。
身長が急に伸びる時期に体で起きていること
まずは、成長期の体の変化を整理しておきます。ここが分かると、トレーニングを調整する理由が見えてきます。
伸びるピークの時期は人によって大きくちがう
1年間で身長がいちばん大きく伸びる時期を、「身長が伸びるピーク(PHV)」と呼びます。
サルくんピークって、何歳ごろに来るんですか?
Tsutsui らの研究(2022年・子どもの健康と発育の国際誌)によると、
このピークは男子はおおむね13〜15歳ごろ、女子は11〜12歳ごろに来ることが多いと紹介されています。
ただし同じ論文の中で、同じ年齢でも成長のタイミングは人によって大きくちがう、とも書かれています。
つまり、同じ学年でも「もうピークを過ぎた選手」と「これからピークが来る選手」がまざっているということ。年齢や学年だけで、トレーニングの量を決めないことが大切です。



同じ学年でも、体の時期はバラバラなんですね!



学年ではなく、自分の体の変化を見て決めよう。
骨の伸びに筋肉と動きの感覚が追いつかない
身長が伸びるとき、先に伸びるのは骨です。筋肉や腱はあとから追いつくため、そのあいだは引っぱられて硬くなりやすくなります。
さらに、脚が急に長くなると、自分の体の動かし方の感覚もずれやすくなります。
先ほどの Tsutsui らの論文でも、ピークに近い時期には、手足が急に伸びたことで動きのまとまりが落ち、プレーの質が一時的に下がることがあると紹介されています。
この時期の動きの変化は研究によって結果に差があり、全員に起きるわけではありません。
それでも、「最近ジャンプの感覚がしっくりこない」と感じたら、体が大きく変わっているサインかもしれません。



最近、着地がふらつくのはそのせいかもしれません…。
研究でわかった成長期とジャンプ力の関係
次に、成長期の跳ぶトレーニングについて、研究でわかっていることを紹介します。
ピークの時期は、トレーニングの効果が出にくい
Moran らの研究(2017年・アメリカの筋力トレーニング専門誌)は、10〜18歳の男子選手を対象にした21の研究をまとめて分析しています。
選手を、身長が伸びるピークの前・ピークの最中・ピークのあとの3つに分け、跳ぶトレーニングで反動をつけたジャンプがどれだけ伸びたかを比べました。
効果の大きさを表す数値は、次のとおりです。
| 時期(平均年齢) | 効果の大きさ |
|---|---|
| ピークの前(10〜12歳台) | 0.91 |
| ピークの最中(13〜15歳台) | 0.47 |
| ピークのあと(16〜18歳) | 1.02 |
ピークの最中のグループは、ほかの2つより効果が小さく出ていました。しかも、このグループはトレーニングの量がいちばん多かったにもかかわらず、です。
研究チームは、ジャンプの伸び方には体の成熟が関わっている可能性があり、反応が落ちる時期にはトレーニングの量や種類を調整するとよい、とまとめています。



ピークノ サイチュウハ ノビガ ニブイ
ピークの前後は、けがが増えやすい
van der Sluis らの研究(2015年・スポーツ医学の国際誌)では、平均11.9歳のサッカー選手26人を、身長が伸びるピークをはさんで3年間追いかけました。
その結果、成長がおそい選手ほど、ピークの前の年とピークの年に、使いすぎによるけががはっきり多くなっていました。
研究チームは、13.5〜14.5歳ごろが特にけがをしやすい時期だったとし、練習や試合の負担は体の成熟度に合わせて組み立てるべきだとまとめています。
この研究は人数が少なく、サッカー選手が対象です。それでも、跳ぶ・走るがくり返されるバレーでも、成長期の負担には気をつけたいところです。



伸びにくいうえに、けがもしやすいんですか…。
効果がゼロになるわけではない
ここで勘違いしたくないのは、ピークの最中でもトレーニングの効果はちゃんと出ている、という点です。
Moran らの分析でも、ピークの最中のグループは効果が小さかったものの、ジャンプの高さは伸びていました。
この時期は「伸ばす時期」というより、今の力を保ちながら、正しい動きと着地を身につける時期と考えるとよいでしょう。



ここで土台を作った選手が、あとで伸びるんだ。
成長期のジャンプ力トレでやること4つ
ここからが、この記事でいちばん大切なところです。身長が伸びている時期に取り組みたいことを4つ紹介します。
やること1:身長を月1回測って記録する
まずは、自分が今どの時期にいるのかを知ることから始めます。
月に1回、同じ時間帯に身長を測り、スマホのメモなどに記録しておきましょう。数か月分たまると、「最近、伸び方が急に大きくなった」という変化に気づけます。
伸び方が大きい時期に入ったら、跳ぶ量を少し減らす合図にします。ジャンプの記録もいっしょにつけておくと、体の変化と動きの変化を比べられます。



記録があれば、調整のタイミングを逃さないよ。
やること2:跳ぶより先に着地を練習する
ジャンプは、跳び上がるときより下りて着地するときのほうが、ひざに大きな負担がかかります。
成長期は動きの感覚がずれやすいので、着地の形をくり返し確かめておくことが大切です。
- ひざとつま先が同じ方向を向いている
- ひざが内側に入っていない
- 音を立てずに、やわらかく止まれている
着地が安定しないうちは、高く跳ぶ種目より、その場で軽く跳んで止まる練習を優先しましょう。
やること3:跳ぶ量は練習のジャンプもふくめて考える
バレーの練習では、スパイクやブロックで、すでにたくさん跳んでいます。
成長期も、跳ぶトレーニングは週1〜2回・1回ごとに全力で少ない回数という基本を守り、練習で跳ぶ量が多い週は、トレーニングのほうを減らしましょう。
伸び方が大きい時期は、回数やセット数をいつもより少なめにして、1本ずつフォームを確かめながら跳ぶのがおすすめです。
頻度の目安は、こちらの記事でくわしく解説しています。
やること4:太ももとふくらはぎをゆるめる
骨が伸びて筋肉が引っぱられる時期は、太ももの前やふくらはぎが硬くなりやすくなります。
太ももの前が硬いとひざの下に、ふくらはぎが硬いとかかとに、負担がかかりやすくなるといわれています。
練習のあとや、お風呂上がりの体が温まっているときに、反動をつけずにゆっくり伸ばしましょう。



跳ぶ練習だけじゃなく、ゆるめるのも大事なんですね!
成長期のジャンプ力トレで避けること3つ
次は、身長が伸びている時期に避けたいことです。知らずにやってしまいやすいものばかりなので、確認しておきましょう。
避けること1:中学生のうちに重い器具で脚を鍛える
中学年代のトレーニングは、自分の体重で行う種目と、走るトレーニングで十分です。
重いバーベルやダンベルで脚を鍛えるのは、高校年代からで間に合います。骨が伸びている時期に重さを足すより、自分の体を思いどおりに動かせるようになるほうが先です。



重いほうが早く強くなると思っていました!
中学生がやっていい筋トレの線引きは、こちらの記事でまとめています。
避けること2:衝撃の大きい種目を急いで始める
台から跳び降りてすぐ跳ぶデプスジャンプは、ジャンプのトレーニングの中でも衝撃が大きい種目です。
このサイトでは、ボックスジャンプの着地が安定してから、30cmほどの低い台で始めることをすすめています。
成長期にジャンプ力が伸び悩むと、強い種目に手を出したくなるかもしれません。それでも、着地が安定していないうちに始めるのは避けましょう。
避けること3:伸び悩みを理由に量を増やす
先ほどの研究のとおり、身長が伸びるピークの最中は、トレーニングの効果が出にくい時期です。
ここで「伸びないから、もっと跳ばなきゃ」と量を増やすと、効果は増えないまま、ひざやかかとへの負担だけが積み重なってしまいます。



伸びないと、つい回数を増やしたくなります…。



その焦りが、いちばんけがにつながりやすいんだ。
伸びが止まったように感じても、それは体が成長しているあいだの一時的なものかもしれません。記録は数か月単位で見るようにしましょう。
痛みが出たときの判断
最後に、成長期に出やすい痛みと、そのときの判断を整理します。
ひざの下やかかとの痛みは成長期に多い
ひざのお皿の下が痛むオスグッド病は、スポーツをよく行う10〜15歳の子どもに多いとされています(MSDマニュアル家庭版)。
脚の使いすぎで、すねの骨の上の部分に炎症が起こるものです。
かかとの後ろが痛むシーバー病も、成長期に跳ぶ量が多い選手に見られます。どちらも、成長が落ち着くと痛みがおさまっていくことが多いといわれています。
- ひざのお皿の下や、かかとを押すと痛い
- 跳んだ次の日の朝まで、痛みが残っている
- 練習中に痛みが出て、いつもどおりに跳べない
- 歩くだけで痛い、腫れている



イタミ ガ アルトキハ トバナイ
痛みが続くときは整形外科で相談する
痛みがあるのに跳び続けると、休む期間がかえって長くなりかねません。痛みが続くときや、腫れがあるときは、自分で判断せずに整形外科を受診してください。
どれくらい休むか、どの練習なら続けられるかは、医師と相談しながら決めるのが安心です。
痛む場所ごとの練習量の決め方は、こちらの記事でくわしく解説しています。
よくある質問
まとめ:成長期は量より質で土台を固めよう
この記事では、身長が急に伸びる時期のジャンプ力トレーニングで、やること・避けることを解説しました。
身長が急に伸びている時期は、跳ぶ量を減らし、着地とフォームの質を保つ。伸び悩んでも焦って量を増やさない。
| 項目 | やること | 避けること |
|---|---|---|
| 時期の見きわめ | 身長を月1回測る | 学年だけで判断する |
| 跳ぶ量 | 練習もふくめて少なめに | 伸び悩みで量を増やす |
| 種目 | 着地の練習を先に | 重い器具や強い衝撃の種目を急ぐ |
| 痛み | 休んで整形外科で相談 | がまんして跳び続ける |
私は元日本代表として、成長期をけがなく乗りこえて正しい動きを身につけた選手ほど、体が落ち着いたあとに大きく伸びていけると考えています。
まずは今日、自分の身長を測って記録するところから始めてみてください。



今日から身長とジャンプの記録をつけます!



体の変化を知ることも、大事なトレーニングだよ。
参考にした研究・資料
- Tsutsui T, Iizuka S, Sakamaki W, Maemichi T, Torii S. Growth until Peak Height Velocity Occurs Rapidly in Early Maturing Adolescent Boys. Children (Basel), 2022
- Moran J, Sandercock G, Ramírez-Campillo R, Meylan C, Collison J, Parry DA. Age-related variation in male youth athletes’ countermovement jump after plyometric training: a meta-analysis of controlled trials. Journal of Strength and Conditioning Research, 2017
- van der Sluis A, Elferink-Gemser MT, Brink MS, Visscher C. Importance of peak height velocity timing in terms of injuries in talented soccer players. International Journal of Sports Medicine, 2015
- MSDマニュアル家庭版「オスグッド・シュラッター病」
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
パフォーマンスアップについては他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪










