- 「練習後30分以内がゴールデンタイム」と聞くけど、本当なのか気になる
- 練習が終わってから家に着くまで時間がかかり、夕ごはんがおそくなる
- 練習のあとは疲れていて、すぐには食べる気になれない
こんな悩みを解決します。
練習後は、できるだけ早めに「炭水化物+たんぱく質」をとるのが基本です。ただし、研究を見ると「30分をすぎたら意味がない」というほどきびしいものではありません。
大事なのは、早さよりも「1日の中で必要な量を食べきること」です。早さが特に大事になるのは、次の練習までの時間が短い日です。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
この記事では、アメリカスポーツ医学会(ACSM)などの共同声明や、練習後の食べるタイミングを調べた研究をもとに、「ゴールデンタイム」の本当のところと、部活の毎日でできる食べ方を紹介します。
読み終わるころには、自分の帰る時間に合わせて、練習後に何をいつ食べるかを決められるようになるはずです。
- 練習後の「ゴールデンタイム」について、研究で分かっていることがわかる
- 練習後に食べたい中身と、量の目安がわかる
- 帰る時間や夕ごはんの時間に合わせた、現実的な食べ方がわかる
結論:早めが有利。でも「30分で手おくれ」ではない
結論からお伝えします。練習後は、できるだけ早めにおにぎりなどの炭水化物と、牛乳などのたんぱく質をとるのがおすすめです。
ただし、研究を見ると「何分以内に食べないと効果がない」というはっきりした線はありません。
1日の量がしっかり足りていれば、少しおくれても大きな差は出にくいことも分かっています。
サルくん30分をすぎたら、もう意味がないと思ってました!



あせらなくて大丈夫。ただ、早めにとれるなら、とっておくほうが有利だよ。
- 練習後に早く炭水化物をとると、エネルギーの回復が早く始まる
- たんぱく質は、タイミングより1日の合計の量のほうが大切
- 早さが特に大事なのは、次の練習まで8時間ない日
- 夕ごはんがおそい日は、練習直後と帰宅後の2回に分けて食べる
- 何分以内かより、食べ忘れない仕組みをつくることが大事



ハヤメ ガ ユウリ ゼッタイ デハナイ
「ゴールデンタイム」とは?研究で分かっていること
練習後のゴールデンタイムとは、「運動のあとしばらくは、栄養をとったときの体の回復の反応が高い」という考え方です。
日本では「練習後30分以内」と言われることが多いですね。
ここでは、炭水化物とたんぱく質に分けて、研究で分かっていることを見ていきます。
炭水化物:すぐとると、回復のスピードが上がる
練習で使ったエネルギーは、主に筋肉にためてある「グリコーゲン」という炭水化物です。練習後は、これを食事でためなおす必要があります。
アメリカの研究(Ivyら、1988年)では、自転車の選手12人が運動したあと、炭水化物の飲み物を「運動直後」に飲んだ日と「2時間後」に飲んだ日で比べました。
その結果、最初の2時間で筋肉にたまったグリコーゲンの速さは、直後に飲んだ日のほうがはっきり速かったと報告されています。
2時間後に飲んだ日は、そのあと速さが上がっても、直後に飲んだ日の最初の2時間より45%おそいままでした。



すぐ食べると、エネルギーのため直しが早く始まるんですね!
ACSMなどの共同声明(2016年)でも、グリコーゲンが戻る速さは1時間に約5%とゆっくりなので、練習後の早い時間から炭水化物をとることが、回復の時間を有効に使うのに役立つとされています。
ただし、1日の量が足りていれば差は小さい
一方で、オーストラリアの研究(Parkinら、1997年)では、運動後の食事を「すぐ」始めた日と「2時間おくらせた」日で比べています。
この研究では、24時間のあいだに炭水化物の多い食事を5回とりました。すると、8時間後と24時間後の筋肉のグリコーゲンには、差が見られなかったのです。



ニジカン オクレテモ サ ナシ
研究者は、「回復の時間の中で十分な炭水化物をとれていれば」という条件つきで、2時間のおくれは影響しなかったとまとめています。



早いほうがいい研究と、関係ない研究があるんですか?



そう。次の練習まで時間があるなら、1日の合計の量がより大事になるんだ。
たんぱく質:タイミングより1日の合計
筋肉づくりに使われるたんぱく質についても、タイミングが調べられています。
ACSMなどの声明では、練習後の早い時間(0〜2時間)に、体重1kgあたり0.25〜0.3gのたんぱく質をとると、筋肉をつくる反応が高まりやすいとされています。



体重50kgなら、15gくらいですね!
その一方で、筋トレとたんぱく質のタイミングを調べた研究をまとめた分析(Schoenfeldら、2013年)では、20以上の研究を比べました。
1日にとったたんぱく質の合計の量をそろえて比べると、練習の前後にとるかどうかで、筋肉や筋力の伸びに差は見られなかったと報告されています。
つまり、たんぱく質は「練習後すぐ」にこだわるより、毎日の3食と補食で必要な量をとることのほうが大事というわけです。
1日にとりたいたんぱく質の量は、こちらの記事でくわしく紹介しています。
紹介した研究は、どれも大人を対象にしたもので、バレーボールの練習そのものを調べたものではありません。10代の選手にそのまま数字を当てはめず、考え方の参考にしてください。



タイミング ヨリ イチニチ ノ ゴウケイ
早く食べることが特に大事になる日
では、どんな日に「練習後すぐ」を意識すればいいのでしょうか。
ACSMなどの声明では、すばやいエネルギーの回復が必要な場面として、次のハードな練習や試合までの時間が8時間ない場合があげられています。
部活でいうと、次のような日です。
- 午前と午後の2部練習がある日
- 1日に2試合以上ある大会や練習試合
- 夜の練習のあと、次の日の朝練がある日
このような日は、次の練習までにエネルギーを戻しきるため、練習が終わったらなるべく早く、炭水化物を中心に食べておきましょう。
1日に2試合ある日の過ごし方は、こちらの記事でまとめています。
反対に、放課後に練習して次の練習が翌日の夕方、という日は、少しおくれても夕ごはんをしっかり食べれば大丈夫。あせって無理に食べる必要はありません。



2部練の日は、すぐに食べるようにします!
練習後に何をどれだけ食べるか
タイミングと同じくらい大切なのが、中身です。練習後は「炭水化物+たんぱく質」の組み合わせを基本にしましょう。
基本は「主食+たんぱく質」
秋田県スポーツ科学センターの資料では、練習前や練習中は主食や果物を中心にとることがすすめられています。
そのうえで、練習後は回復のために、主食や果物に加えて主菜(たんぱく質)もとることがすすめられています。
文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)」の値をもとにすると、練習後にとりやすい食べ物の栄養は次のとおりです。
| 食べ物(量) | 炭水化物 | たんぱく質 |
|---|---|---|
| おにぎり1個(ご飯100g) | 約37g | 約2.5g |
| バナナ1本(食べる部分100g) | 約23g | 約1g |
| 牛乳コップ1杯(200g) | 約10g | 約7g |
| 卵1個(中身50g) | ほぼなし | 約6g |
| ヨーグルト(無糖)100g | 約5g | 約4g |
たとえば「おにぎり1個+牛乳コップ1杯」なら、炭水化物は約47g、たんぱく質は約9.5gです。



おにぎりと牛乳だけでも、けっこうとれるんですね!
量の目安は「体重×0.3g」のたんぱく質から
ACSMなどの声明では、練習後のたんぱく質は体重1kgあたり0.25〜0.3gが目安とされています。体重50kgなら約13〜15g、60kgなら約15〜18gです。
炭水化物は、次の練習までの時間が短いときに「体重1kgあたり1時間に1.0〜1.2gを、はじめの4時間」という目安もあります。
ただし、これは大人のアスリート向けの数字で、ふだんの部活の日に毎回計算する必要はありません。
まずは「おにぎり1〜2個+牛乳やヨーグルト」くらいを練習後の基本にして、2部練の日は量を少し増やす、と考えるとシンプルです。
| 体重 | たんぱく質の目安(×0.25〜0.3g) | 食べ物の例 |
|---|---|---|
| 50kg | 約13〜15g | おにぎり1個+牛乳+卵1個 |
| 60kg | 約15〜18g | おにぎり2個+牛乳+ヨーグルト |
練習後の補食で選びやすい食べ物は、こちらの記事でも紹介しています。
帰る時間に合わせた現実的な食べ方
「練習後すぐに食事」といっても、部活のあとは片付けや移動があり、すぐにごはんを食べられる人は多くありませんよね。ここでは、帰る時間別に考えてみます。
帰ってすぐ夕ごはんが食べられる日
練習が終わってから30分〜1時間くらいで家に着き、すぐに夕ごはんが食べられるなら、特別な補食はなくてもかまいません。
そのかわり、夕ごはんでは主食・主菜・副菜をそろえて、ご飯をしっかり食べることを意識しましょう。
帰ったら先にお風呂に入る人も、食事の時間が大きくおくれないようにするのがコツです。
お風呂の入り方は、こちらの記事を参考にしてください。
夕ごはんがおそくなる日は「2回に分ける」
帰るのに時間がかかる、練習のあとに塾がある、という日は、夕ごはんが夜おそくなりがちです。
秋田県スポーツ科学センターの資料では、このような場合に、夕食1食分を練習直後と帰宅後の2回に分けて食べる「分食(ぶんしょく)」がすすめられています。
練習直後に補食をとり、残りを夕食でとるという考え方です。
- 練習直後:おにぎり1個+牛乳(またはヨーグルト)
- 帰宅後:おかず中心の夕ごはん+ご飯は少なめに調整
- ポイント:2回合わせて、ふつうの夕ごはん1食分になるようにする
夜おそくにたくさん食べると、睡眠や次の日の朝ごはんにひびくこともあります。
分けて食べれば、練習直後の回復と、夜の食べすぎ防止の両方に役立ちます。



「補食を足す」より「夕ごはんを分ける」と考えると、食べすぎにならないよ。
学校で練習後に食べられないとき
学校のきまりで、練習後に補食が食べられないこともあるでしょう。
その場合は、帰り道や家に着いてすぐ食べられるものを用意しておくのが現実的です。
家で用意してもらっている人は、「練習のある日は帰ってすぐおにぎりを1個食べたい」と、自分から家族に伝えてみましょう。
自分で用意できるなら、朝のうちにおにぎりを作っておくのも1つの方法です。



帰ってすぐ食べられるように、用意しておけばいいんですね!
練習後の食事でよくある失敗
最後に、練習後の食事でありがちな失敗と、その対策をまとめておきます。
疲れて食べられない
ハードな練習のあとは、食欲がわかないこともありますよね。そんなときは、無理に固形物を食べようとしなくても大丈夫です。
牛乳やヨーグルトドリンク、果汁100%ジュースなど、飲めるものから少しずつとってみましょう。
少し時間がたって食欲が戻ってきたら、おにぎりなどを足していきます。



タベラレナイ トキ ハ ノメルモノ カラ
お菓子やジュースだけですませる
練習後にお腹がすいて、スナック菓子や甘いジュースだけですませてしまう人もいるでしょう。
秋田県スポーツ科学センターの資料でも、スポーツ選手にとっての間食は、お菓子のような好きなものではなく、3食で足りないエネルギーや栄養をおぎなう「補食」だとされています。
お菓子だけでは、たんぱく質がほとんどとれません。



練習のあと、ついポテトチップスを買っちゃいます…。



おにぎりと牛乳にかえるだけで、回復の材料がそろうよ。
水分補給を忘れる
練習後は食べ物だけでなく、汗で失った水分もとり戻す必要があります。
ACSMなどの声明でも、練習後のリカバリーには、水分・電解質・エネルギー・炭水化物をとることが大切だとされています。
牛乳やスポーツドリンクなら、水分と栄養を一緒にとることもできます。
のどがかわいていなくても、練習後はまず1杯飲むことを習慣にしましょう。
練習後の食事についてよくある質問
プロテインを使うかどうか迷っている人は、こちらの記事を参考にしてください。
まとめ:早めに、でも1日の量を食べきる
この記事では、練習後の「ゴールデンタイム」について、研究で分かっていることと、部活の毎日でできる食べ方を紹介しました。
練習後はできるだけ早めに「炭水化物+たんぱく質」。ただし、いちばん大切なのは1日の合計の量を食べきること。
| 場面 | 練習後の食べ方 |
|---|---|
| 2部練・1日2試合 | 終わったらすぐ、おにぎりなどの炭水化物 |
| すぐ夕ごはん | 主食・主菜・副菜のそろった夕ごはん |
| 夕ごはんがおそい | 練習直後と帰宅後の2回に分ける |
まずは次の練習の日に、「練習が終わってから、最初に食べるまで何時間あいているか」を確かめてみてください。
2時間以上あいているなら、おにぎりと牛乳を1つずつ用意するところから始めましょう。
練習前の食べ方とセットで考えると、1日の流れがつくりやすくなります。



練習が終わったら、おにぎりと牛乳から始めてみます!



食べ忘れない仕組みができれば、次の日も元気に動けるよ。
参考にした資料
- Thomas DT, Erdman KA, Burke LM. Nutrition and Athletic Performance (Position of the Academy of Nutrition and Dietetics, Dietitians of Canada, and the American College of Sports Medicine), 2016
- Ivy JL, et al. Muscle glycogen synthesis after exercise: effect of time of carbohydrate ingestion. Journal of Applied Physiology, 1988
- Parkin JA, et al. Muscle glycogen storage following prolonged exercise: effect of timing of ingestion of high glycemic index food. Medicine & Science in Sports & Exercise, 1997
- Schoenfeld BJ, Aragon AA, Krieger JW. The effect of protein timing on muscle strength and hypertrophy: a meta-analysis. Journal of the International Society of Sports Nutrition, 2013
- Aragon AA, Schoenfeld BJ. Nutrient timing revisited: is there a post-exercise anabolic window? Journal of the International Society of Sports Nutrition, 2013
- 秋田県スポーツ科学センター スポーツコラム 2024年度第2号「スポーツ選手の補食」
- 文部科学省「食品成分データベース」(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
食事・栄養については他にも記事を書いています。
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