- 1セット目は高く跳べるのに、試合の後半になると打点が下がってしまう
- 後半にスパイクがネットにかかったり、ブロックで手が出なくなったりする
- 疲れても跳べる体を作るには、何をすればいいのか知りたい
こんな悩みを解決します。
試合の後半にジャンプが落ちる主な原因は「疲労」で、仕組みを知れば試合中とふだんの両方で手が打てます。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
スクールの選手たちには、後半に落ちるのを気合いで止めようとするより、落ちる理由を知って準備しておくほうが確実だと伝えています。
この記事では、海外の研究をもとに、疲れるとジャンプが低くなる仕組みと、選手が自分でできる対策を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
- 疲れるとジャンプが低くなる3つの仕組みが分かる
- 試合中のジャンプの変化について、研究で分かっていることを知れる
- 試合中とふだんの練習でできる対策が分かる
結論:後半のジャンプ低下は疲労が主な原因
結論からお伝えします。試合の後半にジャンプが落ちる主な原因は、筋肉と神経の疲労、そして汗による水分の減少です。
実際に、トップレベルの男子の試合を分析した研究では、セットが進むにつれてスパイクやブロックのジャンプが低くなっていました。
サルくんやっぱり、後半は低くなるのが当たり前なんですか…?
ただし、研究によっては試合の最後まで高さが変わらなかった、という報告もあります。つまり、後半に落ちるかどうかは、選手の体力や準備しだいで変えられる部分があるということです。
- 疲れると、筋肉の力と脳からの指令の両方が落ちる
- 高さは保てても、踏み切りの切り返しが遅くなることがある
- 試合中の工夫と、ふだんの体力づくりの両方で防げる



落ちる理由が分かれば、打つ手も見えてくるよ。
ここからは、仕組み、研究、落ちているサイン、試合中の対策、ふだんの体づくりの順に見ていきます。
疲れるとジャンプが低くなる3つの仕組み
まずは、体の中で何が起きているのかを整理しておきましょう。疲労とひとことで言っても、中身は1つではありません。
スポーツの疲労をまとめた Alba-Jiménez らの報告(2022年・スポーツ科学の専門誌)では、運動による疲労を「出せる最大の力が下がること」と説明しています。
そのうえで、疲労には筋肉の側で起きるものと、脳や神経の側で起きるものがあると整理しています。
筋肉そのものが疲れる
1つ目は、筋肉そのものの疲れです。ジャンプのように強い力を何度も出していると、筋肉の中でエネルギーの補給が追いつかなくなるなどして、1回ごとに出せる力が小さくなっていきます。
先ほどの報告では、こうした筋肉側の疲れは先に起こりやすく、短い時間での力の落ち方に大きく関わる、とまとめられています。



キンニクノ ツカレハ サキニ クル
ラリーが長く続いたあと、次のジャンプが重く感じるのは、この筋肉側の疲れが一時的にたまっているからです。
脳から筋肉への指令が弱くなる
2つ目は、脳から筋肉への指令が弱くなることです。体は、筋肉の疲れが大きくなると、自分を守るために力の出し方をおさえる方向へ働くと考えられています。
報告では、この脳や神経の側の疲れは、筋肉側よりも後から出てきやすいとされています。試合の後半になって「力を入れているつもりなのに跳べない」と感じるのは、このためかもしれません。



頭のほうも疲れているんですね!
さらに報告では、こうした疲労は48時間かそれ以上続くこともあると書かれています。試合の翌日にジャンプが重く感じるのも、不思議なことではないんです。
汗で体の水分が減る
3つ目は、汗による水分の減少です。体育館での試合では、気づかないうちにたくさんの汗をかいています。
アメリカスポーツ医学会の声明(2007年)では、運動中に水分をとる目的を、体重の2%をこえる水分の減少を防ぎ、パフォーマンスの低下を避けることだとしています。
水分の減り方には個人差が大きいため、声明では、運動の前後に体重をはかって、自分がどれくらい汗をかくのかを知る方法も紹介されています。



のどがかわく前に、こまめに飲むのが基本だよ。
試合中のジャンプについて研究でわかっていること
次に、実際の試合でジャンプの高さがどう変わるのかを調べた研究を紹介します。結果は研究によって異なるので、その差も含めて見ていきましょう。
男子トップ選手はセットごとに低くなった
Pawlik と Mroczek の研究(2023年・国際的な科学誌)では、トップレベルの男子39人と、ポーランドのトップリーグの女子24人の試合映像を分析しました。
映像から、サーブ・スパイク・ブロックのジャンプの高さを計算しています。
その結果、3セットで終わった男子の試合では、スパイクのジャンプの平均が1セット目の約73cmから、3セット目には約68cmへと低くなっていました。
ブロックやサーブのジャンプも、3セット目には低くなっています。



スパイクハ 3セットメデ ヤク4cm ヒクク
研究チームは、男子の低下はセットが進むにつれて疲労がたまったためと考えられる、と述べています。
一方で、女子は反対に、1セット目のジャンプがいちばん低く、セットが進むにつれて高くなっていました。研究チームは、試合前の準備が十分でなかった可能性などを理由に挙げています。



1セット目から跳べる準備も大事なんですね。
最後まで高さが変わらなかった研究もある
Hsieh らの研究(2025年・男性の健康を扱う専門誌)では、台湾のトップリーグの男子選手9人に体につける計測器をつけ、20試合のジャンプを記録しました。
その結果、4セットや5セットまでもつれた試合でも、ジャンプの平均の高さは、どのポジションでもセットごとにほとんど変わりませんでした。



後半でも落ちない選手たちもいるんですね!
また、Ruggiero らの研究(2022年・スポーツ生理学の専門誌)では、大学の男子選手12人が2日続けて試合をしたあと、その場で反動をつけて跳ぶジャンプを測りました。
ここでもジャンプの高さはほとんど変わりませんでした。
ところが、しゃがみこんでブレーキをかける時間が長くなるなど、跳び方の中身には疲れの影響が出ていたと報告されています。



高さは同じでも、跳び方がにぶくなっていることがあるんだ。
試合のあとは回復に1〜2日かかることも
試合が終わったあとのジャンプを調べた研究もあります。
アメリカの大学の女子選手7人を対象にした研究(2022年・大学の修士論文)では、大会で6セットを戦ったあと、反動をつけて跳ぶジャンプが試合直後に低くなっていました。
24時間後には一部が戻り、48時間後にはもとの高さまで回復しています。人数が少ない研究ですが、疲労が48時間ほど続くことがあるという報告とも一致しています。
研究によって差があるのは、対象の性別やレベル、測り方がそれぞれちがうためです。
「後半は必ず落ちる」でも「まったく落ちない」でもなく、落ちる選手と落ちない選手がいると考えるのが自然でしょう。
後半にジャンプが落ちているサイン
自分のジャンプが落ちていても、跳んでいる本人は気づきにくいものです。ここでは、試合中に自分で気づけるサインを紹介します。
スパイクがネットにかかりやすくなる
後半になってスパイクがネットにかかることが増えたら、打点が下がっているサインかもしれません。
ネットにかかる原因には、ジャンプが低くなる以外に、ひじが下がって打点が下がる、ジャンプが前に流れる、といったものもあります。疲れてくると、これらが重なって起きやすくなるんですよね。



後半はたしかに、ネットにかけることが多いです…。
踏み切りで沈み込む時間が長くなる
先ほどの研究のように、疲れてくると、しゃがみこんでから跳び上がるまでの切り返しが遅くなることがあります。
自分では「深く沈んで力をためている」つもりでも、実際には切り返しのスピードが落ちて、助走の勢いをうまく上への力に変えられていない状態です。
- スパイクがネットにかかる回数が増えてきた
- 踏み切りで沈み込んでから跳ぶまでが重く感じる
- 着地で片足になったり、着地のあとによろけたりする
- ブロックで手がネットの上に出るのが遅れる
着地がくずれてくる
疲れのサインは、跳び上がるときだけでなく、着地にも出ます。両足でそろって降りられない、ひざがクッションにならずにドスンと降りる、といった変化です。
着地のくずれは、ひざや足首のけがにもつながります。後半ほど、両足で降りてひざを軽く曲げる着地を意識しましょう。



ツカレタトキコソ チャクチヲ テイネイニ
試合中にできる3つの対策
ここからは、選手が試合中に自分でできる対策を紹介します。体力は試合の当日には増やせませんが、使い方は変えられます。
アップで跳びすぎず、1セット目から跳べる準備をする
試合前のアップで、全力のスパイクやジャンプを何十本もくり返すのはおすすめしません。その分だけ、試合の後半に使える脚が減ってしまいます。
一方で、先ほどの研究の女子のように、準備が足りないと1セット目から跳べないこともあります。アップでは体をしっかり温めつつ、全力のジャンプは数本で感覚を確かめる程度にとどめましょう。
タイムアウトとセット間で水分をとる
タイムアウトやセットの間は、作戦を聞くだけでなく、水分をとる時間でもあります。のどがかわいたと感じてから一気に飲むより、少しずつこまめに口に入れるほうが体に入っていきます。
足がつりそうな感覚や、頭が重い感じがあるときは、水分と塩分が足りていないサインかもしれません。がまんせずに、ベンチに伝えることも大切です。



タイムアウトのたびに、少しずつ飲むようにします。
1日に2試合ある日の過ごし方や、足がつったときの対処は、こちらの記事でくわしく解説しています。
疲れたときほど助走のリズムを守る
疲れてくると、高く跳ぼうとして助走を大きくしたり、最初から全力で走り出したりしがちです。ですが、それでは踏み切りでブレーキがかかりやすくなります。
最初の一歩はゆっくり、最後の一歩を速く。このリズムを守り、助走のスピードを殺さずに上への力に変えることを意識してみてください。



疲れたときこそ、いつものリズムに戻すんだ。
後半に落ちない体をふだんから作る
試合中の工夫には限りがあります。後半まで跳び続けるには、ふだんの練習で体の土台を作っておくことが欠かせません。
心拍数が上がった状態で動き続けるランを入れる
心肺の力が足りない選手は、試合の後半にプレーの精度がガクッと落ちやすくなります。息が上がった状態では、ジャンプだけでなく、判断や反応もにぶくなるからです。
このサイトでは、心拍数がおおむね140前後に上がった状態で、一定の時間動き続けるランニングをふだんの練習に入れることをすすめています。
止まって動き直す力を同時に鍛えられるシャトルランや、短い時間で追い込むHIITも、バレーの体力づくりに向いています。
ジャンプの土台になる筋力を上げる
同じ高さを跳ぶにしても、脚の力に余裕があれば、1回のジャンプで使う力の割合は小さくてすみます。その分、疲れにくくなると考えられます。
- 跳ぶトレーニング:週1〜2回・1回ごとに全力で少ない回数
- スクワット:10回前後を2〜3セット・週2〜3回・間に1日休む
- 中学年代は自分の体重で行う種目が中心
疲れた状態で跳ぶトレーニングを続けると、フォームがくずれてけがにつながりやすくなります。後半に強くなるために量を増やすのではなく、全力で跳べる回数を守ることが大切です。
ジャンプの記録で疲れを見える化する
自分の疲れ具合を知る方法として、反動をつけて跳ぶジャンプの記録を定期的にとっておくのもおすすめです。
Claudino らの研究(2017年・スポーツ科学の専門誌)は、多くの研究をまとめて分析しました。
その結果、疲れの変化を見るには、いちばん高い1回より、何回か跳んだ平均のほうが変化をとらえやすいと報告しています。
ふだんの記録が分かっていれば、試合の翌日に跳んでみて、いつもより低ければ「まだ疲れが残っている」と判断できます。



平均で記録をつけてみます!
なお、脚や腰に痛みがあるときは、疲れだと思いこまずに練習を休み、痛みが続く場合は整形外科を受診してください。
よくある質問
まとめ:後半に跳ぶ力は準備で守れる
この記事では、試合の後半にジャンプが落ちる理由と、その対策を解説しました。
後半のジャンプ低下は、筋肉と神経の疲労・水分の減少が主な原因。試合中の使い方とふだんの体づくりで防げる。
| 場面 | やること | 避けたいこと |
|---|---|---|
| アップ | 体を温め全力の跳躍は数本 | 全力で何十本も跳ぶ |
| 試合中 | こまめに水分をとる | のどがかわいてから飲む |
| 後半 | 助走のリズムと着地を守る | 助走を大きくして力む |
| ふだん | 心肺と脚の土台を作る | 跳ぶ量だけを増やす |
私は元日本代表として、後半まで同じ高さで跳び続けられることも、ジャンプ力の大切な一部だと考えています。
まずは次の練習試合で、セットごとに自分の打点やネットにかかった本数を意識して、どこから落ちはじめるのかを確かめてみてください。



最後のセットまで高く跳べる体を作ります!



準備しだいで、後半の高さは変えられるよ。
参考にした研究・資料
- Pawlik D, Mroczek D. Influence of jump height on the game efficiency in elite volleyball players. Scientific Reports, 2023
- Hsieh MH, Chiu CH, Chang CK. Jump performance in Asian male volleyball players: match demands across player positions in Taiwan’s top-tier competition. Journal of Men’s Health, 2025
- Ruggiero L, Pritchard SE, Warmenhoven J, et al. Volleyball competition on consecutive days modifies jump kinetics but not height. International Journal of Sports Physiology and Performance, 2022
- Flora G. Acute Effects of Match play Induced Fatigue on Jump Performance in Collegiate Women’s Volleyball. East Tennessee State University(修士論文), 2022
- Alba-Jiménez C, Moreno-Doutres D, Peña J. Trends Assessing Neuromuscular Fatigue in Team Sports: A Narrative Review. Sports, 2022
- Claudino JG, Cronin J, Mezêncio B, et al. The countermovement jump to monitor neuromuscular status: A meta-analysis. Journal of Science and Medicine in Sport, 2017
- American College of Sports Medicine. Exercise and fluid replacement(position stand). Medicine & Science in Sports & Exercise, 2007
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
パフォーマンスアップについては他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪










