- 30秒で全力を出しているのに、上体起こしの回数が増えない
- 後半になるとお腹が動かなくなり、起き上がれなくなる
- 数えてもらったはずの回数が、なぜか記録より少なかった
こんな悩みを解決します。
上体起こしの回数は、お腹の力の強さより、起きて戻る動きのむだの少なさで決まります。同じ筋力でも、動きの通り道が短い選手ほど30秒で多く数えられます。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
バレーでは、下半身で生んだ力を上半身へ運ぶときに、お腹と背中の強さが欠かせません。上体起こしは、その一部を数字で確かめられる種目です。
回数の伸ばし方と、バレーにどうつながるのかをセットでお伝えします。ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 上体起こしがバレーのどの動きにつながるのかが分かる
- 30秒の回数を伸ばす5つのコツと、ペースの配り方が分かる
- 点数の目安と、この種目だけでは足りない部分が分かる
それでは、くわしく見ていきましょう。
結論:上体起こしは「戻る速さ」で回数が決まる種目

結論からお伝えします。上体起こしは、起き上がる力と同じくらい、すばやく戻って次へつなぐ動きで回数が変わる種目です。
まずルールを確認しておきましょう。
マットの上に仰向けになり、両手を軽く握って胸の前で腕を組みます。膝の角度は90度に保ち、補助者に両膝を押さえてもらいます。
「始め」の合図で、両肘が両太ももにつくまで上体を起こし、すばやく元の仰向けに戻ります。これを30秒間、できるだけ多く繰り返します。
サルくん起き上がった回数を数えるだけじゃないんですか?



戻ったときに背中がマットにつかないと、1回に数えてもらえないんですよ。
ここが見落とされやすいところです。記録は両肘と両太ももがついた回数ですが、仰向けに戻したときに背中がつかない場合は回数に入りません。
つまり、起きる動きだけ速くしても意味がないということです。戻りを浅くして稼いだ回数は、正式には消えてしまいます。
- おへそをのぞき込み、背中を丸めながら起きる
- 戻りは力を抜き、肩甲骨がついたらすぐ次へ
- 腕は胸の前で組んだまま、両脇をしめておく
- 記録は30秒の1回だけ・背中がつかない回はノーカウント
この4つを押さえれば、記録が伸びる土台ができます。他の項目とあわせて測ると、自分の弱いところも見えてきます。
上体起こしがバレーにつながる3つの理由
寝ころんでお腹を動かす種目が、なぜバレーの力になるのでしょうか。理由は3つあります。
理由1:下半身の力を上半身へ運ぶ中継地点になる
1つ目は、力の通り道です。バレーの動きは、足で床を押した力を、体幹を通して腕や指先まで運んでいきます。
このとき、お腹と背中がゆるんでいると、下半身で作った力が途中で逃げてしまいます。
トスが飛ばない、スパイクが重くならない選手は、体幹で力が抜けていることがあります。
お腹と背中で体幹を締められると、足で生んだ力がロスなく腕まで届きます。上体起こしで鍛えるお腹の前側は、その片側を担当する部分です。
理由2:空中で体がぶれにくくなる
2つ目は、空中での安定です。スパイクやジャンプサーブでは、跳んでいる間に目線がずれないことがとても大切になります。
目線がずれない選手は、空中で体幹がまっすぐ保たれています。お腹の力が弱いと、腕を振った反動で上半身が振られ、打点やコースが安定しません。



空中デ ブレナイ 体ハ オ腹カラ
もちろん、上体起こしの回数が増えれば空中で安定する、というほど単純ではありません。それでも、体幹を支える力の土台がどれくらいあるかの目安にはなります。
理由3:動き続けても崩れない粘りが分かる
3つ目は、粘りです。上体起こしは1回の強さではなく、30秒間くり返せるかを見ています。
スパイカーなら空中で振り切る姿勢、セッターならボールの下で止まる姿勢、レシーバーなら低く構え続ける姿勢を、どれもお腹が下から支えています。



どのポジションでも、お腹が土台なんですね。
試合の後半になると、構えが高くなったり、スパイクの振りが小さくなったりする選手がいます。疲れてくると、まず体幹から支える力が落ちていきます。
後半の20秒で回数ががくっと落ちるなら、お腹の粘りが足りていないサインです。バレーでも、同じところで崩れやすいと考えておきましょう。
上体起こしの回数を伸ばす5つのコツ


ここからが本題です。順番に意味があるので、上から1つずつ直してください。
コツ1:補助者に膝をしっかり固定してもらう
まずは準備です。補助者は、両腕で両膝をしっかり押さえて、足が動かないように固定します。
足が浮くと、起き上がる力が足先へ逃げてしまいます。実施要項でも、補助者は測る人より体格の大きい人が望ましいとされています。



押さえる人が小さいと、足がぐらぐらします…。



押さえる役を選べるなら、体の大きい人にお願いしましょう。
補助者と測る人の頭がぶつからないよう、お互いの位置にも気をつけてください。メガネははずしておきます。
コツ2:おへそをのぞき込み、背中を丸めて起きる
次に、起き方です。背中をまっすぐにしたまま、板のように起き上がろうとすると、重くて時間がかかります。
あごを軽く引き、おへそをのぞき込むようにして、背中を上から丸めていってください。頭、肩、背中の順にマットから離れていく形です。
背中を丸めて起きると、同じ力でも起き上がるまでの距離が短くなります。1回あたりの時間が縮めば、30秒で数えられる回数がそのまま増えていきます。
起き上がる後半では、お腹の前側の腹直筋に加えて、股関節を曲げる太ももの付け根の筋肉も働きます。



起キル後半ハ 太モモノ付ケ根モ 使ウ
膝をしっかり固定してもらうと、この後半の力が使いやすくなります。
コツ3:両脇をしめ、肘を太ももへ最短で運ぶ
3つ目は、腕です。腕は胸の前で組んだまま、両脇をしめておきます。
脇が開くと、肘から太ももまでの距離が遠くなります。肘を太ももにつけにいくつもりで、体の前に集めておきましょう。



肘ト 太モモ ノ 距離ヲ 縮メル
組んだ腕がほどけたり、手で首を引っぱったりするのはやめてください。首を引く形は、首を痛める原因にもなります。
コツ4:戻りは力を抜き、肩甲骨がついたらすぐ次へ
4つ目は、戻り方です。ここで回数の差がいちばん大きく開きます。
起き上がったあと、ゆっくり下ろす必要はありません。お腹の力をふっと抜き、背中を丸めたまま転がるように戻ってください。
肩甲骨がマットについた瞬間に、次の起き上がりを始めます。戻った勢いをそのまま使えるので、止まってから起きるより楽に上がれます。
ただし、背中がつく前に起き始めると回数に入りません。戻りは速く、でも最後までしっかり、が基本です。



起きるより、戻るほうを速くすればいいんですね。



そうです。戻りが速い選手ほど、後半も数が落ちにくいですよ。
コツ5:前半で飛ばしすぎず、30秒を同じリズムで
最後は、ペース配分です。最初の10秒で全力を出すと、残りの20秒でお腹が動かなくなります。
目安は、前半を「少し余裕がある」くらいの速さで入ることです。そのまま同じリズムを保ち、最後の5秒だけ上げていきましょう。
呼吸は止めないでください。起き上がるときに息を吐き、戻るときに吸うと、リズムが一定になりやすくなります。
上体起こしの練習メニュー(1日5分)
コツを覚えても、毎日30秒の本番を何度もくり返す必要はありません。お腹の練習は、形がくずれない範囲で続けるほうが伸びます。
クランチは、仰向けで膝を立て、肩甲骨が浮くところまで背中を丸めて起きる動きです。本番より小さな動きで、お腹を丸める感覚をつかめます。
かかとタッチは、上体を少し浮かせたまま、左右のかかとへ交互に手を伸ばします。レッグレイズは、仰向けのまま脚を上げ下げして、お腹の下側を使う練習です。



毎日30秒を何回もやったほうが、伸びると思っていました。



疲れて形がくずれたまま回数を重ねると、そのくせを体が覚えますよ。
週に2〜3回、練習の終わりに入れる形で十分です。お腹は回復が早い部分ですが、腰に張りがある日は休んでください。
点数の目安と、正しい測り方
コツが分かったら、自分の位置を確かめましょう。新体力テストの得点表は12〜19歳で共通なので、中学生も高校生も同じ基準で採点されます。
正式な方法と得点表はスポーツ庁の新体力テスト実施要項で公開されています。
| 10段階の得点(抜粋) | 男子 | 女子 |
|---|---|---|
| 10(満点) | 35回以上 | 29回以上 |
| 8 | 30〜32回 | 23〜25回 |
| 5(まん中) | 22〜24回 | 15〜17回 |
| 3 | 16〜18回 | 11〜12回 |
表は代表的な点数だけを抜き出したものです。正確な採点は、学校で使う得点表か実施要項で確かめてください。
まずは、まん中の得点5を超えることを目標にしましょう。30秒の種目なので、ノーカウントになる回を減らすだけでも、記録上の回数が増える可能性があります。



満点の35回は、ずいぶん遠く感じます…。



まずはまん中を超えて、そこから1回ずつ積み上げましょう。
2人1組で測る手順
測るときは、測る人と補助者の2人1組になります。数える役を補助者とは別に置けると、数え間違いも減るでしょう。
実施は1回だけです。やり直しがきかないので、本番の前に数回だけ動きを確かめておくと落ち着いて入れます。
数えてもらえない動きを覚えておく
回数に入らない動きも、知っておきましょう。いちばん多いのは、戻ったときに背中がマットにつかない形です。
肘が太ももまで届いていない場合も、1回にはなりません。速さを上げたときほど、どちらかが浅くなりやすいので気をつけてください。
上体起こしでやりがちな3つの失敗
回数が止まっている選手には、共通するくせがあります。次の3つに心当たりがないか確かめてください。
失敗1:戻りが浅く、背中がマットにつかない
いちばん損をしているのが、この形です。本人は30回起きたつもりでも、背中がつかない回は数えてもらえません。
速さを意識するほど、戻りは浅くなりがちです。練習のときから、肩甲骨がマットにつく感覚を毎回確かめておきましょう。



記録が少なかったのは、これだったのかも…。



戻りを深くしただけで、数えてもらえる回数は増えますよ。
失敗2:勢いをつけて、首や腕で起き上がる
次に多いのが、腕を振ったり首を前に振ったりして起き上がる形です。組んでいた腕がほどけると、正しい姿勢ではなくなります。
首で起きるくせがあると、お腹よりも首に負担がかかります。首が疲れて痛くなる選手は、あごを引いておへそを見る形に戻してください。
失敗3:腰が痛いまま回数を重ねる
3つ目は、やりすぎです。背中を丸めて起き上がる動きは、くり返すほど腰にも負担がかかります。
成長期の中学生は、腰の骨がまだ育ちきっていません。回数を増やすことより、痛みの出ない範囲で続けることを優先してください。
上体起こしをしたあとに腰が痛む日が続くなら、この種目はいったん止めましょう。痛みが引かないときは、整形外科で診てもらってください。
上体起こしだけでは足りない部分
ここまで良さをお伝えしてきましたが、この種目だけでバレーに必要な体幹ができるわけではありません。足りない部分を2つ挙げておきます。
動きを止めて支える体幹は別に作る
1つ目は、支える力です。上体起こしは背骨を丸めて動かす種目ですが、バレーの体幹は、動かさずに固めて支える場面が多くあります。
着地の瞬間やブロックで押されたときに、姿勢をくずさず耐えるのがこの力です。プランクのように、姿勢を保ったまま手足を動かす練習で別に鍛えましょう。
ひねる力と背中側の力も必要
2つ目は、ひねりと背中です。スパイクやサーブは、背骨を軸に体をひねる力で腕を振っています。
上体起こしは前へ丸める動きなので、ひねる力はほとんど使いません。お腹の前側ばかり鍛えると、背中側とのバランスもくずれます。



お腹だけじゃなくて、ひねりも背中もやってみます!



前・横・後ろをそろえると、体幹がぶれにくくなりますよ。
よくある質問
まとめ:速く起きるより、速く正しく戻る
上体起こしは、お腹の力比べだけの種目ではありません。起きて戻る動きを、どれだけむだなくくり返せるかを測っています。
おへそを見て丸めて起きる。力を抜いて戻る。背中がついたらすぐ次へ。
| つまずくところ | 直し方 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 回数が伸びない | 背中を丸めて起きる | 板のように起き上がらない |
| 数えてもらえない | 肩甲骨がつくまで戻る | 戻りを浅くして稼がない |
| 後半に失速する | 前半は少し余裕のある速さで入る | 最初の10秒で飛ばさない |
| 首が痛くなる | あごを引いておへそを見る | 腕をほどいて首を引かない |
| 腰が痛む | 痛みの出ない範囲に回数を絞る | 痛みが続けば整形外科へ |
必要なのはマット1枚と、押さえてくれる仲間だけです。お腹の強さは、トスやスパイクで力を運ぶ土台にもなります。
そのうえで、支える体幹やひねる力の練習も並行して進めてください。前と横と後ろがそろったとき、バレーの動きが安定してきます。



今日から、戻り方を意識してやってみます!



背中がちゃんとついているか、数えながら見てあげますね。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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