- セッターになったけれど、トスを上げること以外に何をすればいいかわからない
- 司令塔と言われても、試合中に何を考えればいいのか思いつかない
- ミスが自分のせいに見えて、セッターをやるのがつらくなってきた
こんな悩みを解決します。
セッターの役割は、アタッカーが決めやすい状況を作ることの1点に集まります。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで指導してきて、伸びるセッターには共通点がありました。上げたトスの高さよりも、打つ人の表情を先に見ている選手です。
トスは目的ではなく道具にすぎません。だからこそ、仕事の中身を分けて理解しておくと、コートでやることが一気にはっきりします。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- セッターがコートでやっている仕事を、5つに分けて理解できる
- 司令塔と呼ばれる理由と、試合中に何を見ればいいかがわかる
- セッターがつまずきやすい場面と、その直し方がわかる
それでは、くわしく見ていきましょう。
結論:セッターの役割はアタッカーを助けること
セッターは点を取るポジションではありません。点を取ってもらうポジションです。
この順番を間違えると、きれいなトスを上げることが目的になってしまいます。上げた本人が満足しても、打った人が決められなければ意味がありません。
- ボールの落下点へ、誰よりも速く入る
- 打つ人が力を出しやすいトスを上げる
- 相手ブロックを見て、上げる先を選ぶ
- サインと声で、攻撃のタイミングを合わせる
- 崩れたボールを、攻撃できる形に戻す
5つとも、共通しているのは自分のためのプレーがひとつもないことです。セッターの上達は、味方の得点として返ってきます。
サルくん全部、誰かのための仕事なんだね。



そうなんだ。だからセッターが伸びると、チーム全体の点数が動くよ。



セッター=決メサセル役
セッターが司令塔と呼ばれる2つの理由
セッターは司令塔とよく言われます。この言葉が指しているのは、声を張ることでも、指示を出すことでもありません。
打つ人を選べる唯一のポジションだから
1本のラリーの中で、誰が打つかを決められるのはセッターだけです。レシーブが返ってきた瞬間、次に何が起きるかはセッターの手の中にあります。
調子のいい選手に多く回すこともできますし、疲れている選手を休ませることもできます。この選択が積み重なった結果が、最後のスコアになります。
打つ人を選ぶという行為は、そのまま試合の流れを選ぶ行為でもあります。だから司令塔と呼ばれます。



選ぶって、そんなに大きいことなんだ…
相手ブロックを動かせるから
もうひとつの理由は、相手のブロックが自分を見ているからです。相手のブロッカーは、セッターの体の向きや手の形を見て跳ぶ場所を決めています。
つまりセッターは、ボールを上げる前から相手を動かせます。まっすぐ立って上げるだけで、相手は最後まで的を絞れません。
守る側からすると、上げる先が読めないセッターほど厄介な存在はありません。相手を迷わせている時間が、そのままアタッカーの余裕になります。
私の指導現場でも、まず体の向きを変えないことから教えています。
ブロックの読み方については、こちらの記事で整理しています。



相手のブロッカーは、ボールよりもセッターを見ているんですよ。
セッターの5つの仕事|コートでやっていること
ここからが本題です。5つの仕事を順番に見ていきます。
仕事1:落下点へ誰よりも速く入る
トスの精度は、上げる技術よりも入る速さで決まります。落下点にきちんと入れていれば、あとは同じ形で上げるだけだからです。
走るときに気をつけたいのは、手の位置です。手をおでこの上にセットしたまま走る選手がいますが、これは遠回りになります。
腕をしっかり振って走った方が速いので、まずは急いで落下点へ向かうことを優先します。手をセットするのは、落下点で止まったタイミングで構いません。
ボールに触る前にセットが終わっていれば、それで間に合っています。走っている間の形にこだわる必要はありません。
構え自体も、特別なものを作らなくて大丈夫です。いつものパワーポジションのまま待てば、次の動きにつながります。



ずっと手を上げたまま走ってた!



それだと足が遅くなるよ。走る時は腕を振って、止まってから手を作ろう。
仕事2:打つ人が力を出しやすいトスを上げる
上げるトスは、きれいさよりも打ちやすさで選びます。同じ高さでも、選手によって打ちやすい位置は少しずつちがうからです。
背が高い選手はやや高め、助走が速い選手はやや前など、合わせる先は打つ人の側にあります。自分の理想の高さに打つ人を合わせるのではありません。
合わせ方の手順は、こちらにまとめています。
トスそのものの形を固めたい場合は、基本の記事から確認してみてください。
仕事3:相手ブロックを見て上げる先を選ぶ
配球で一番大事にしたいのは、アタッカーの調子を落とさないことです。決まらない選手に回し続けると、その選手も、チーム全体も沈んでいきます。
そのために、誰が何本打って何本決めているかを、大まかに頭に入れておきます。細かい計算はいりません。
よく決まっている、あまり決まっていない、この程度の把握で十分です。
序盤・中盤・終盤で展開を描き、25点を取り切るまでの道筋を作るのがセッターの仕事になります。目の前の1本だけを見ていると、終盤で打つ人がいなくなります。
なお右方向へ上げるトスは、体の後ろへ送るバックトスになります。セッターはレフト側を向いて上げるので、右は必ず背中側だからです。



数字ハ大マカニ把握スル
仕事4:サインと声で攻撃を合わせる
どんなにいいトスでも、打つ人が知らなければ攻撃になりません。だからサーブが打たれる前に、誰がどこへ入るかを共有しておきます。
手の合図で伝えるのが基本ですが、伝わっているかどうかの確認まで含めて仕事です。うなずいたかどうかを見てから、次の準備に入ります。
サインの出し方は、こちらの記事で解説しています。
ラリー中は声が中心になります。指示というより、味方が動きやすくなる情報を先に渡すイメージで構いません。
仕事5:崩れたボールを攻撃の形に戻す
試合で上がってくるボールは、きれいなものばかりではありません。むしろ乱れた球をどう処理するかで、セッターの価値が決まります。
ネットから離れた球や低い球は、無理にジャンプせず高く上げ直します。時間を作れば、味方は助走をやり直せます。
崩れた球の上げ方は、別の記事で手順を整理しています。
自分が1本目を触ってしまった時は、上げる人を声で決めます。誰かが入ってくれる前提で待っていると、そこでラリーが終わります。



自分が拾っちゃった時が一番あわてる…



触った瞬間に、次は誰、と声を出しておくと味方が動けるよ。
セッターに必要な3つの力
必要な力と聞くと身長や才能を思い浮かべがちですが、そこではありません。どれも練習で積み上げられるものです。
力1:同じ形で上げられるオーバーハンドパス
一番の土台は、毎回同じ形で上げられることです。上げるたびに手の形が変わると、打つ人はタイミングを合わせられません。
理想の1本を上げる練習より、同じ1本を続ける練習の方が試合で効きます。狙う場所を決めて、そこへ何本続けられるかを数えてみてください。
力2:落下点まで走り切る足
2つ目は足です。オーバーハンドの技術が同じでも、入るのが遅ければトスは乱れます。
セッターは1試合で誰よりも走るポジションです。走る力そのものを鍛えることも、トスの安定に直結します。
体づくりの内容は、こちらにまとめてあります。
力3:ボールと相手を同時に見る目
3つ目は目の使い方です。ボールだけを見ていると配球が選べず、相手だけを見ているとトスが乱れます。
落下点に入るまではボールを見て、入り終わってから相手コートへ視線を送ります。この切り替えができると、上げながら選べるようになります。



3ツトモ練習デ伸ビル
性格や向き不向きが気になる人は、こちらの記事も参考になります。
セッターがつまずく3つの失敗と直し方
セッターの悩みは、才能ではなく順番のズレから起きていることがほとんどです。よくある3つを挙げます。
失敗1:同じ人にしか上げられなくなる
競った場面で、決めてくれる選手にばかり上げてしまう形です。気持ちはわかりますが、相手のブロックはすぐに気づきます。
直し方は、練習のうちから全員に回す回数を決めておくことです。試合で急に配れる人はいません。
スクールの選手たちには、練習で一度も上げていない相手には試合でも上げられない、と伝えています。
苦しい場面でも上げ先が2つ以上あると、相手は最後まで跳ぶ場所を決められません。
失敗2:トスが打つ人の体から離れる
打点の外へ流れてしまい、アタッカーが体を伸ばして打つ形です。原因はトスではなく、落下点への入り方にあることが多くあります。
体が流れたまま上げれば、ボールも同じ方向へ流れます。まず止まる、それから上げる、この順番を守るだけで変わります。
止まれない時は、走り出しが遅れています。ボールの軌道が見えた瞬間に1歩目を出せているか確認してみてください。
失敗3:ミスを全部自分のせいにする
セッターは最後に触る回数が多いので、責任を1人で背負いがちです。ですが、決まらなかった原因はトスだけとは限りません。
レシーブが返っていない、助走が間に合っていない、相手のブロックが良かった。原因はいくつも重なります。
抱え込まず、次の1本で何を変えるかだけを考えれば十分です。落ち込む時間より、切り替える速さの方がチームを助けます。



決まらないと、全部自分のせいに思えてくる…



決まらなかった理由は、いつも複数あるよ。ひとりで背負わなくて大丈夫。
セッターの役割を身につける練習の順番
いきなり配球から始めても身につきません。私は次の順番で土台から積み上げてもらっています。
最初の2つは1人でも進められます。壁に向かって上げる、自分で高く上げてから走って入る、この2つで形と足が同時に鍛えられます。
3つ目からは相手が必要になります。打つ人に、どこが打ちやすかったかを毎回聞いてください。答えが返ってくるほど、合わせる精度は上がります。
4つ目まで来たら、練習でも相手ブロックを立たせます。跳ばなくても構いません。
人が立っているだけで、見るという習慣がつきます。
順番を飛ばすと、配球を考えながらトスが乱れる状態になります。土台ができてから上に積む、この形を守ってみてください。



上手いセッターほど、1つ目の練習を今でも続けているよ。
よくある質問
まとめ:セッターの役割は決めさせること
セッターの役割は、アタッカーが決めやすい状況を作ることに尽きます。トスの美しさではなく、味方が打ち切れたかどうかが評価の基準です。
速く入る。打ちやすく上げる。相手を見て選ぶ。合図で合わせる。崩れた球を戻す。
| 仕事 | 見るもの | うまくいっているサイン |
|---|---|---|
| 落下点へ入る | ボールの軌道 | 止まってから上げられている |
| 打ちやすく上げる | 打つ人の助走 | 同じ形で何本も打てている |
| 上げる先を選ぶ | 相手ブロック | 決まる人が2人以上いる |
| 合図で合わせる | 味方の返事 | サインの見落としがない |
| 崩れた球を戻す | ネットとの距離 | 高く上げ直せている |
私は元日本代表として、そして指導者として、伸びるセッターほど自分のトスの話をしないと感じています。話題がいつも味方のことなんですよね。



まずは、走ってから上げるをやってみる!



それが全部の土台だよ。そこが変わると、配球まで見えてくる。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
バレーボールのポジションについては他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪
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