- 練習の最初のほうは体が重く、低い姿勢で足が出ない
- 前屈をすると裏ももが張って、床に手が届かない
- インチワームを見よう見まねでやっているけれど、どこに効いているのか分からない
こんな悩みを解決します。
インチワームは、立った姿勢から手で床を歩いて前へ進み、腕立ての姿勢を作ってから足で手に近づいていく動きで、裏もも(ハムストリングス)を伸ばしながら体幹と肩を同時に目覚めさせられるため、バレーの練習前のアップとして効果があります。
ただし、ただ手と足を行き来させるだけでは効果は半分です。腰が落ちたまま進んだり、膝を無理に伸ばして反動で前屈したりすると、腰や裏ももを痛める原因になります。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで中学生以上の選手を指導してきました。体づくりで大切にしているのは、たくさんの種目をこなすことではなく、1つひとつの動きを正しい形で行うことです。
インチワームは道具がいらず、体育館の端から端までのスペースがあればすぐにできます。この記事では、膝を曲げてもよい軽い形から始める進め方を紹介します。
- インチワームがバレーのどんな動きの準備になるのかが分かる
- 腰を落とさない正しいやり方と、体の硬さに合わせた段階の進め方が分かる
- 練習前のアップでの回数の目安と、よくある失敗の直し方が分かる
それでは、くわしく見ていきましょう。
結論:インチワームは「裏もも・体幹・肩」を一度に準備するアップ種目

結論からお伝えします。インチワームは、立った姿勢から手で歩いて腕立ての姿勢になり、そこから足で手に近づいて立ち上がる、全身を順番に動かすアップ種目です。
名前は、体を縮めたり伸ばしたりして進む「尺取り虫」から来ています。前屈で裏ももを伸ばし、腕立ての姿勢でお腹と肩を固め、足を手に寄せるところでまた裏ももを伸ばす、という流れになっています。
1回の動きの中で、伸ばす動きと支える動きが交互に入るのが特徴です。止まったまま伸ばすストレッチとも、じっと耐えるプランクとも違い、体を大きく動かしながら全身を温められます。
バレーは、低い姿勢から一気に動き出したり、床に手をつきながら飛び込んだりと、全身を大きく使う競技です。練習の最初にこうした動きを入れておくと、そのあとの動き出しが軽くなります。
サルくん手で歩くだけなのに、そんなにいろいろな場所を使うんですか?



伸ばす、支える、また伸ばす。その順番で体中が起きてくるんですよ。
- 手で歩いている間、腰を落とさずお腹に力を入れておく
- 腕立ての姿勢では、頭からかかとまでを一直線にする
- 裏ももが硬いうちは、膝を曲げてもよいので反動をつけない
この3つを守れば、5回ほどでも裏ももが伸び、お腹と肩が温まってくるのを感じられます。反対に、急いで回数だけをこなすと、ただ手と足を行き来しているだけになってしまいます。
インチワームがバレーに効く3つの理由
なぜバレーの選手にインチワームが向いているのか、理由は3つあります。何のためにやっているのかが分かると、同じ1回でも意識する場所が変わってきます。
理由1:低い構えに必要な裏ももが伸びる
1つ目は、裏ももです。レシーブの構えでは、股関節を曲げて上体を前に倒し、低い姿勢を保ちます。このとき、裏ももが硬いと骨盤が後ろに倒れ、背中が丸まった高い構えになりがちです。
インチワームでは、手を床につくところと、足を手に近づけるところで、裏ももがぐっと伸ばされます。練習前に裏ももがほぐれていると、股関節から体を折りたたむ低い構えが取りやすくなります。
裏ももがゆるむと、股関節から低く構えやすくなります。
理由2:床に手をつく動きの準備になる
2つ目は、上半身です。バレーでは、レシーブで床に倒れ込んだり、フライングで手をついたりと、床を手で支える場面がよくあります。
インチワームで手で歩き、腕立ての姿勢で体を支えると、肩まわりと手首に体重がかかる準備ができます。冷えたままいきなり床に手をつくより、体を支える感覚を先に思い出しておくほうが安心です。



手デ 支エル 準備
理由3:お腹を固めたまま動く練習になる
3つ目は、体幹です。手で前へ歩いていく間は、腰が床の方へ落ちないように、お腹にずっと力を入れておく必要があります。
スパイクやブロックで空中にいるときも、レシーブで一歩踏み出すときも、お腹が抜けると体がぶれてしまいます。
止まったまま耐えるプランクとは違い、動きながらお腹を固める感覚を覚えられるのが、インチワームの良いところです。



構え、飛び込み、空中の姿勢まで、全部つながっているんですね!



どれも「体を大きく動かしても形が崩れないか」がカギになっていますね。
インチワームの正しいやり方


ここからが実際のやり方です。場所は体育館の端から端まで、または家なら体を伸ばせるくらいのスペースがあれば十分です。床がかたい場所では、手のひらが痛くならないようにマットを敷いてください。
前屈は股関節から倒す
まずは最初の前屈です。背中を丸めて手を床に近づけるのではなく、お尻を少し後ろへ引きながら、股関節から上体を倒していきます。
手が床に届かない場合は、膝を曲げて構いません。膝を伸ばしたまま、反動をつけて無理に手を床に届かせようとすると、裏ももや腰を痛めやすくなります。
手は小さく、交互に出す
次に手の歩き方です。一度に大きく手を前へ出すと、腰が急に落ちて、お腹の力が抜けてしまいます。
手は1歩ずつ小さく、左右交互に出していきましょう。腰の高さがなるべく変わらないように、お腹に力を入れたまま進むのがポイントです。



手を前に出していくと、途中で腰がストンと落ちちゃいます…



手の歩幅が大きすぎるのかもしれませんね。もっと小さく、ゆっくり進んでみましょう。
足は膝を伸ばしぎみで近づける
最後に足の動かし方です。腕立ての姿勢から足を手に近づけるとき、膝をできるだけ伸ばしぎみにすると、裏ももがよく伸びます。
ただし、ここでも無理は禁物です。裏ももが突っ張って痛いところまで来たら、そこで止めて立ち上がってください。回数を重ねるうちに、足が手に近づける距離は少しずつ伸びていきます。
インチワームの回数と段階別の進め方
形が分かったら、次は量と段階です。インチワームはアップとして使う種目なので、たくさん回数をこなして疲れきる必要はありません。
練習前のアップなら5回×1〜2セット
練習前のアップに入れるなら、5回を1〜2セットが目安です。体育館の片側の端から、コートの半分くらいまで進むイメージで行うとちょうどよい量になります。
1回ずつ、腕立ての姿勢で1〜2秒止まって形を確かめましょう。速く進むことより、1回ごとに体がまっすぐになっているかを大切にしてください。
| 段階 | やり方 | 回数の目安 |
|---|---|---|
| 1:膝曲げ | 膝を曲げて手を床につき、手で歩く | 5回×1セット |
| 2:基本 | 膝を伸ばしぎみにし、腕立ての姿勢で1〜2秒止まる | 5回×2セット |
| 3:手を遠くへ | 腕立ての姿勢から、手を肩より少し前まで歩かせる | 5回×2セット |
| 4:腕立てを足す | 腕立ての姿勢で、腕立て伏せを1回入れる | 5回×2セット |
回数は目安です。腰が落ちてきた、手首が痛いというときは、その時点で終わりにしてください。
体が硬い人は膝曲げから始める
裏ももが硬くて床に手が届かない人は、段階1の膝曲げから始めましょう。膝を曲げれば手は床に届くので、手で歩く動きと、腕立ての姿勢を作る動きはしっかり練習できます。
裏ももは、毎回の練習前にくり返し伸ばしていくことで、少しずつゆるんでいきます。膝を伸ばせるかどうかより、正しい順番で動けているかを先に身につけてください。



膝を伸ばしたままやろうとして、手が床に届かなかったんです…



最初は膝を曲げて大丈夫ですよ。動きの順番を覚えることが先です。
慣れたら手を遠くへ、腕立てを足す
基本の形が楽にできるようになったら、段階3・4へ進みます。手を肩より少し前まで歩かせると、腕立ての姿勢を保つお腹の負荷が上がります。
さらに腕立て伏せを1回入れると、肩と胸まで一緒に温まります。ただし、アップで疲れすぎては本末転倒です。そのあとの練習に力を残せる量にとどめましょう。
インチワームでよくある3つの失敗
効いている感じがしない、腰や手首が痛くなるというときは、たいてい次の3つのどれかです。1つずつ見ていきましょう。
失敗1:腕立ての姿勢で腰が落ちている
いちばん多いのが、手を前へ歩かせたときに腰が床の方へ落ち、体が反ってしまうパターンです。この形では、お腹ではなく腰で体を支えることになります。
手を歩かせる距離を短くして、頭からかかとまでを一直線に保てるところで止まりましょう。スマホで横から撮ると、腰が落ちていないかがすぐに確かめられます。
失敗2:反動をつけて前屈している
次に多いのが、最初の前屈で勢いをつけ、はずみで手を床に届かせようとするパターンです。冷えた裏ももを反動で引き伸ばすと、筋肉を痛めるきっかけになりかねません。
前屈は、股関節からゆっくり倒していくのが基本です。手が届かないときは、膝を曲げて届く位置から始めてください。



撮ってみたら、勢いで前屈して背中が丸まっていました…



急ぐと出やすい形ですね。お尻を後ろに引きながら、ゆっくり倒していきましょう。
失敗3:速さを競ってしまう
最後は、スピードを上げすぎるパターンです。チームで一斉に行うと、つい競争のようになり、1回ごとの形が崩れてしまいます。
インチワームは、速く進むほど効く種目ではありません。1回ずつ腕立ての姿勢でしっかり止まり、体がまっすぐになっているかを確かめながら進んでください。



速サヨリ 形
インチワームだけでは足りない部分
ここまでインチワームの良さをお伝えしてきましたが、これ1つでアップや体づくりがすべて済むわけではありません。
股関節や横の動きのアップも組み合わせる
まず、アップ全体の組み立てです。インチワームは体を前後に大きく動かす種目なので、股関節を回す動きや、横に動く動きは入っていません。
インチワームは、アップの一部として組み合わせて使う種目です。
股関節を大きく回す動きや、サイドステップのように横へ動く動きも一緒に入れて、全身をまんべんなく温めてください。そのあとでボールを使った練習に入ると、体がスムーズに動き出します。



股関節を回す動きも、アップに足してみます!



前後と横、両方そろえると、体が一気に温まりますよ。
筋力をつけるなら別の種目で
次に、筋力です。インチワームは体を温めて動きを準備するための種目なので、これだけで裏ももやお腹の筋力が大きくつくわけではありません。
裏ももを強くしたいならハムストリングスの筋トレ、体幹を強くしたいならプランクやバードドッグのように、目的に合わせた種目を別に行いましょう。アップと筋トレは、役割を分けて考えるのがおすすめです。
痛みがあるときは無理をしない
最後に、痛みについてです。すでに腰や裏もも、手首に痛みがある、前屈すると痛むといった場合は、インチワームで治そうとしないでください。
押すと強く痛む場所がある、痛みが何日も続くといったときは、整形外科で診てもらいましょう。成長期は特に、痛みをがまんして練習を続けないことが大切です。
1か月ほど練習前に続けたら、最初の前屈で手がどこまで届くかを比べてみましょう。膝を伸ばしぎみでも床に手がつくようになっていれば、裏ももがゆるんできた証拠です。
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よくある質問
まとめ:速く進むより、まっすぐ支える
インチワームは、速さや回数を競う種目ではありません。腰が落ちていないか、反動で前屈していないか、腕立ての姿勢で一直線になっているか、ここを見てください。
股関節から倒す。手は小さく歩かせる。腕立ての姿勢で一直線。
| つまずくところ | 直し方 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 手が床に届かない | 膝を曲げて始める | 反動をつけない |
| 腰が落ちる | 手の歩幅を小さくする | お腹に力を入れる |
| 体が反る | 手を歩かせる距離を短くする | 頭からかかとまで一直線 |
| 速さを競ってしまう | 1回ごとに1〜2秒止まる | 形を確かめる |
| 腰や手首が痛む | 種目を中止する | 整形外科で診てもらう |
練習の最初に体が重い悩みも、前屈で裏ももが張る悩みも、練習前に全身を順番に目覚めさせることで変えていけます。
インチワームでアップの土台を作り、股関節や横の動きのアップと組み合わせていきましょう。
必要なのは、体を伸ばせるスペースだけ。まずは膝を曲げた形で5回、腕立ての姿勢で体をまっすぐ保ったまま、ぜひ次の練習から始めてみてください。



まずは膝を曲げて5回、まっすぐを意識してやってみます!



急がなくていいので、1回ずつていねいにいきましょうね。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
パフォーマンスアップについては他にも記事を書いています。
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