- 50m走のタイムが、毎年ほとんど縮まらない
- 全力で走っているのに、後半に抜かれてしまう
- 足の速さが、バレーのどこに関係するのか分からない
こんな悩みを解決します。
50m走のタイムは、足の速さだけでなく、スタートの出方と腕の振り方で大きく変わります。同じ脚力でも、走り方を理解している選手ほど記録が縮みます。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
バレーのコートは9m四方なので、50mをまっすぐ走る場面はありません。それでも、ボールに向かって一気に動き出す一歩目の速さには、スタートの力がそのまま効いてきます。
記録の縮め方と、走る力がバレーにどうつながるのかをセットでお伝えします。ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 50m走がバレーのどの場面につながるのかが分かる
- タイムを縮める5つのコツと、毎日できる練習が分かる
- 点数の目安と、50m走だけでは分からない部分が分かる
それでは、くわしく見ていきましょう。
結論:50m走は「出だしの10m」と「腕振り」で決まる

結論からお伝えします。50m走は、スタートから低い姿勢のまま加速し、腕を前後に大きく振り続けられたかでタイムが決まります。
まずルールを確認しておきましょう。
走るのは、曲がり角や折り返しのない、まっすぐなセパレートの走路です。スタートはクラウチングスタートの要領で行い、「位置について」「用意」の合図のあと、音や声と同時に旗が振り上げられたら走り出します。
サルくん立ったままスタートするものだと思っていました。



手を地面について、低い姿勢から出るのが正式なやり方なんですよ。
タイムは、スタートの合図から、胴体がゴールラインに届くまでを測ります。頭や手、足が先に届いても、胴体が届いた時点の記録になります。
記録は0.1秒単位で、0.1秒未満は切り上げです。たとえば7.52秒なら7.6秒になります。実施は1回だけなので、やり直しのきかない一発勝負です。
スパイクやスターティングブロックは使いません。ふだんの運動靴で走ります。
- スタートから10mは、体を起こさずに低く加速する
- 肘を曲げて、腕を前後に大きく振る
- クラウチングスタートの要領・合図は旗と音
- 0.1秒未満は切り上げ・実施は1回だけ
この4つを押さえれば、タイムが縮む土台ができます。他の項目とあわせて測ると、自分の弱いところも見えてきます。
50m走がバレーにつながる3つの理由
コートの中で長い距離を走らないバレーで、なぜ50m走の力が役に立つのでしょうか。理由は3つあります。
理由1:ボールへの一歩目が速くなる
1つ目は、動き出しの速さです。50m走のスタートは、止まった状態から一気に体を前へ運ぶ動きです。
バレーでも、つながらなかったボールを追いかけるとき、セッターが落下点へ入るとき、止まった構えから素早く動き出します。
止まった状態から加速する力は、コートの中の一歩目にそのまま生きます。
落下点へ急ぐときは、手を上げたまま走るより、腕をしっかり振って走ったほうが速く着きます。50m走で身につける腕振りは、ここでも役に立ちます。
理由2:最後まで走り切る脚が育つ
2つ目は、脚の強さです。速く走るには、地面を後ろへ強く押す力が必要です。この力は、ふくらはぎ・もも・お尻の筋肉が一緒に働いて生まれます。
スパイクの踏み切りも、下半身で床を押した力から始まります。走る練習で地面を押す感覚を覚えると、跳ぶ動きの土台にもなります。



地面ヲ 押ス力ハ 跳ブ力ノ 土台
もちろん、足が速ければ高く跳べる、というわけではありません。それでも、下半身で床を押す練習として、走ることは役立ちます。
理由3:体の成長を数字で追える
3つ目は、変化の見える化です。50m走は毎年同じ条件で測るので、前の年の自分と比べやすい種目です。
中学生から高校生にかけては、体が大きくなるにつれてタイムも縮みやすい時期です。成長期は1年ごとの変化も大きいので、体づくりの手ごたえを確かめられます。
一方で、疲れがたまっている日や、脚に痛みがある日はタイムが落ちます。数字が悪かったときは、責めるより体調のサインとして受け止めてください。
50m走のタイムを縮める5つのコツ


ここからが本題です。順番に意味があるので、上から1つずつ直してください。
コツ1:「用意」で体重を前の足と手にのせる
まずは、スタートの構えです。ここで体重が後ろに残っていると、走り出すまでに時間がかかります。
クラウチングスタートでは、「位置について」で両手と片ひざを地面につき、「用意」で腰を持ち上げます。このとき、体重を前の足と両手にのせて、すぐに前へ倒れ込める姿勢を作ってください。



「用意」のとき、なんとなく腰を上げているだけでした…。



前に倒れそうなくらい体重を前にのせておくと、合図で一気に出られますよ。
合図を待つあいだに体重を前へ移しておくと、一歩目が速くなります。ただし、合図より先に動き出すのはやめましょう。
コツ2:出だしの10mは、体を低く保つ
次に、走り出しの姿勢です。スタートした直後に体をすぐ起こしてしまうと、前へ進む力が上へ逃げてしまいます。
走り出してから10mほどは、体を前に傾けたまま、少しずつ起き上がっていきましょう。一歩ずつ歩幅が広がり、自然に体が起きてくるのが理想の流れです。
スタートの瞬間に上へジャンプするような出方も、よくある失敗です。前へ低く飛び出すつもりで、最初の数歩は小さく速く足を回してください。
コツ3:足の真下で、地面を後ろへ押す
3つ目は、足の着き方です。遠くへ足を伸ばしてかかとから着くと、そのたびにブレーキがかかります。
足の裏の前側で、体の真下あたりに着地し、地面を後ろへ押し返しましょう。押した力で体が前へ進む感覚をつかむと、少ない力でもスピードが出ます。



カカトデ ブレーキ カケナイ
バレーの構えで、母指球(足の親指の付け根)に体重をのせるのと同じ考え方です。前側で地面をとらえると、すぐに次の一歩が出せます。
コツ4:肘を曲げて、腕を前後に大きく振る
4つ目は、腕の振り方です。脚だけで走ろうとすると、上半身が左右にぶれてスピードが落ちます。
肘をだいたい直角に曲げて、前後にまっすぐ大きく振ってください。後ろへ引くときに肘が伸びないようにし、肘で後ろへパンチするつもりで振ると、脚も前へ出やすくなります。
腕を速く振るほど、脚も速く回ります。体の前で腕を横に振ると、力が左右に逃げてしまうので気をつけましょう。



腕を振るだけで、脚まで速くなるんですね。



そうです。肩の力は抜いて、腕を後ろへしっかり引きましょう。
コツ5:ゴールの5m先まで走り抜ける
最後は、ゴールの走り方です。ゴールラインを目標にすると、手前で無意識に力を抜いてしまいます。
正式な測り方でも、ゴールラインの5m先まで走るように決められています。目標はゴールの先に置き、胴体がラインを越えるまで腕を振り続けてください。
ゴールで体を前へ投げ出すと、転んでケガをするもとになります。最後まで同じフォームで走り抜けることを優先しましょう。
50m走の練習メニュー(1日10分)
タイムを縮めるには、測る日だけ頑張っても間に合いません。走る力は、毎日の少しの積み重ねで変わっていきます。
もも上げは、腕振りとセットで行うのがポイントです。腕を後ろに引くタイミングで反対のももが上がると、走るリズムが整います。
スキップは、地面を押して体を持ち上げる練習です。高く弾むほど、足の裏の前側で地面をとらえる感覚がつかめます。
10mダッシュは、仲間に手をたたいてもらったり、声で合図を出してもらったりして、合図に反応して出る練習にしましょう。スタートの構えは毎回同じ形にしてください。



毎日50mを何本も走らないと、速くならないと思っていました。



短いダッシュを、しっかり休みながら全力で走るほうが効果的ですよ。
ダッシュは1本ごとに歩いて戻り、息が整ってから次を走ります。疲れた状態で本数だけ増やしても、フォームがくずれて速くはなりません。
走り込みのしすぎで、バレーが嫌いになってしまっては意味がありません。短い時間で集中して終えることを大切にしてください。
点数の目安と、学校での測り方
コツが分かったら、自分の位置を確かめましょう。新体力テストの得点表は12〜19歳で共通なので、中学生も高校生も同じ基準で採点されます。
正式な方法と得点表はスポーツ庁の新体力テスト実施要項で公開されています。
| 10段階の得点(抜粋) | 男子 | 女子 |
|---|---|---|
| 10(満点) | 6.6秒以下 | 7.7秒以下 |
| 8 | 6.9〜7.0秒 | 8.1〜8.3秒 |
| 5(まん中) | 7.6〜7.9秒 | 9.0〜9.3秒 |
| 3 | 8.5〜9.0秒 | 9.9〜10.3秒 |
表は代表的な点数だけを抜き出したものです。正確な採点は、学校で使う得点表か実施要項で確かめてください。
まずは、まん中の得点5より速く走ることを目標にしましょう。0.1秒の差で点数が変わることもある種目です。



満点の6.6秒は、とても届く気がしません…。



まずはまん中を超えて、そこから0.1秒ずつ縮めていきましょう。
測定の前日と当日にやること
前日は、ダッシュを何本もくり返すような練習は控えましょう。脚に疲れが残ると、当日のタイムが落ちてしまいます。
当日は、軽いジョギングで体を温めてから、もも上げやスキップで脚を動かしておきます。いきなり全力で走ると、ももの裏やふくらはぎを痛めることがあります。
靴はひもを結び直してから走る
ふだんの運動靴で走るので、靴の状態がそのままタイムに出ます。かかとを踏んだままの靴や、ひもがゆるい靴では、地面を押した力が逃げてしまいます。
走る前にひもを結び直し、足と靴がずれないようにしておきましょう。サイズが合っていない靴は、転ぶ原因にもなります。
50m走でやりがちな3つの失敗
タイムが止まっている選手には、共通するくせがあります。次の3つに心当たりがないか確かめてください。
失敗1:スタート直後に体が起き上がる
いちばん損をしているのが、この形です。合図と同時に体を起こしてしまうと、最初の数歩で進む距離が短くなります。
50mのうち、出だしの加速で差がつく部分は大きいです。まずは10mダッシュで、低く出る形を体に覚えさせましょう。



スタートしてすぐ、上を向いて走っていたかもしれません…。



出だしで目線を少し下げるだけでも、体は起きにくくなりますよ。
失敗2:力みすぎて、肩や顔に力が入る
次に多いのが、全身に力を入れすぎる形です。肩がすくみ、歯を食いしばって走ると、腕の振りが小さくなってしまいます。
速く走るほど、力を抜くところが大切になります。肩と手の力を抜き、腕を後ろへ引くことだけに集中してください。
失敗3:ゴールの手前でスピードを落とす
3つ目は、ゴールの形です。ゴールラインが見えた瞬間に、ほっとして力を抜いてしまう選手は少なくありません。
最後の数mで失う時間は、そのまま記録に出ます。ゴールの先の目標まで、腕を振り続けることを習慣にしてください。
50m走だけでは分からない部分
ここまで良さをお伝えしてきましたが、50m走のタイムだけで、バレーに必要な速さがすべて分かるわけではありません。見落としやすい部分を2つ挙げておきます。
横・後ろへの動きと、方向転換は別
1つ目は、動く向きです。50m走で測るのは、前へまっすぐ走る速さです。
一方でバレーでは、横へのステップや、後ろへ下がる動き、止まってから逆へ切り返す動きが中心です。まっすぐ走るのが速くても、方向を変える足の使い方が身についていなければ、コートの中では生きません。
ボールを見て動く「反応」は測れない
2つ目は、判断の速さです。50m走は、決まった合図に合わせて走り出す種目です。
バレーでは、相手の打つコースやボールの軌道を見て、どちらへ動くかを判断してから走り出します。足が速くても、動き出しが遅れれば間に合いません。
横への素早さは、反復横跳びの記録で確かめられます。まっすぐの速さと横の速さを、両方そろえていきましょう。



まっすぐ走る練習と、横に動く練習を両方やってみます!



一歩目の速さと方向転換がそろうと、拾えるボールが増えますよ。
よくある質問
まとめ:脚力より先に、出だしと腕振りを整える
50m走は、脚の力だけの勝負ではありません。ルールどおりのスタートから、どれだけ低く加速し、最後まで同じフォームで走り切れるかを測っています。
体重を前へ。出だしは低く。腕は前後に大きく。
| つまずくところ | 直し方 | 気をつけること |
|---|---|---|
| 出だしが遅い | 「用意」で体重を前の足と手にのせる | 合図より先に動かない |
| すぐ体が起きる | 10mほどは前に傾けたまま加速する | 上へジャンプして出ない |
| 伸びがない | 足の真下で地面を後ろへ押す | かかとから着いてブレーキをかけない |
| 上半身がぶれる | 肘を曲げて前後に大きく振る | 腕を横に振らない |
| 最後に失速する | ゴールの5m先を目標にする | 体を投げ出して転ばない |
必要なのは、平らな場所と毎日の10分だけです。50m走は点数のためだけでなく、ボールへの一歩目を速くする目安にもなります。
そのうえで、横や後ろへの動きや、ボールを見て動き出す練習も並行して進めてください。



今日の練習前に、10mダッシュから始めてみます!



スタートの形をそろえて、少しずつ縮めていきましょう。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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