- スパイクを打つと肩がズキッとするが、打てるので練習は続けている
- ぶつけたわけでもないのに痛みが引かず、休むべきか判断できない
- 病院に行くほどなのか、使いすぎで済む話なのかが分からない
こんな悩みを解決します。
肩の痛みで大事なのは、打つ量を先に減らすことと、痛みの名前を自分で決めないことの2つです。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで選手を見てきましたが、肩の痛みは捻挫や突き指と違って「痛めた瞬間」がありません。だから気づいたときには長引いている、というケースがほとんどでした。
なお、腕が上がらない・夜も痛む・肩が抜けるような感じがあるときは、この記事の内容よりも受診を優先してください。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 肩の痛みがバレーのどの動きから来ているのかが分かる
- 練習を休む目安と、病院に相談したほうがよいサインが分かる
- 痛みが引いたあとの戻し方と、くり返さない備えが分かる
それでは、くわしく見ていきましょう。
結論:肩の痛みは「打つ量」と「振り方」を同時に見直す
先に結論をお伝えします。押さえるのは次の3つだけです。
- 痛みが軽いうちに、スパイクとサーブを打つ本数を減らす
- 押して痛い・翌日も痛いなら、自己判断せず整形外科に相談する
- 戻るときは本数ではなく、下半身と体幹を使った振り方から作り直す
バレーの肩の痛みは、ほとんどが打つ動作の積み重ねで起きています。1本ずつは問題のない動きでも、同じ方向の負担が何百本と重なれば話は変わります。
サルくん打ち始めは痛いけど、温まると打てちゃうんだよね…。



それがいちばん見逃されるパターンなんだ。軽くなるのは治ったからじゃないよ。
打ち始めに痛くて、温まると軽くなり、練習の終わりや翌朝にまた痛む。この経過をたどることが多いので、痛みが消えた瞬間だけを見て「もう大丈夫」と判断しないでください。
そして本数だけを減らしても、振り方が肩に頼ったままなら同じことがくり返されます。だから量と振り方はセットで見直します。
痛みが軽いうちに手を打つほど、コートに戻るのは早くなります。
ここからは、仕組み・痛くなる打ち方・その日の手当て・休む目安・戻る順番の順に見ていきます。
バレーで肩が痛くなる仕組み|使いすぎと動きの偏り
まず、体の中で何が起きているのかを整理します。仕組みが分かると、受診したときに自分の状態を説明しやすくなります。
肩は大きく動くぶん、まわりの筋肉で支えている関節
肩は体の中でいちばん大きく動く関節です。腕をどの方向にも回せるようにできているぶん、骨のはまり方は浅く、まわりの腱や筋肉で支えられています。
その支える役割を担っているのが、肩甲骨と腕の骨をつないでいる深い層の筋肉です。日本整形外科学会の腱板断裂のページでも、この部分の構造が解説されています。



肩って、思ってたより繊細なんだ。



大きく動く関節ほど、支える力が必要なんだよ。
バレーは腕を最大限に振り上げて打つ動作が競技の中心です。しかも同じ側の腕だけをくり返し使います。左右で使う量が大きく偏る競技だという前提を知っておいてください。
痛む場所とタイミングを覚えておく
痛む場所は選手によって違います。肩の前側、外側、肩甲骨のあたりと、訴える場所はさまざまです。
だからこそ、指で押していちばん響く場所と、どの動きで痛むかを自分で覚えておくことが役に立ちます。
腕を上げるときなのか、振り下ろすときなのか、後ろに引くときなのか。動きが違えば、医師に伝わる情報も変わります。
痛む場所と痛む動きは、受診の前にメモしておきましょう。
医師に伝えられる材料が多いほど、診察はスムーズに進みます。「なんとなく肩が痛い」だけでは、原因にたどり着くまでに時間がかかってしまいます。
中学生・高校生は成長期の事情が重なる
成長期は骨が伸びる速さに、筋肉や腱の柔らかさが追いつかないことがあります。同じ練習量でも、体の中で起きていることが大人とは違います。
さらに、この時期は身長が伸びて打点が変わり、フォームが崩れやすいタイミングでもあります。体が変わっている最中に負担が増える、という重なり方をしやすいのです。



背が伸びた選手ほど、打ち方が一時的に崩れますね。



そこで本数を増やすと、肩に来やすいんだ。
中学生・高校生の肩の痛みは、自分でもまわりでも診断名を決めないこと。
原因が違えば、休む長さも戻し方も変わります。痛みが続くなら整形外科で診てもらうのが、遠回りに見えていちばん近道になります。
肩に負担が集中する3つの打ち方
次に、フォームの話をします。私が現場で見てきた肩の痛みは、次の3つのどれかと重なっていることがほとんどでした。
打ち方1:腰を反ってテイクバックしている
いちばん多いのがこれです。背中を大きく反らせて弓なりになり、その反動で打つ形です。
私は選手に、初心者のうちは腰の反りを使わず、背骨を軸にした水平方向のひねりだけでテイクバックするよう伝えています。反りすぎは腰や肩を痛める原因になり、成長期はとくに注意が必要だからです。
- 腰と肩に負担が集中する
- 目線が上下に動いてミートが安定しない
- 打点が下がって、結果的にもっと力む
反って打つほうが強く打てている感覚になるのが、この打ち方の厄介なところです。感覚と負担が一致しません。



反ったほうが飛ぶ気がしてた…。



飛んでいるのは反りの力じゃなくて、ひねり戻しの力だよ。
慣れてきたら反りを少しずつ加えていく段階もありますが、順番が逆になると肩から先に悲鳴が上がります。
打ち方2:腕を伸ばしたまま振っている
スイングは、肘を一度たたんでから、当たる直前で伸ばすのが基本です。ムチがしなるように、力が先端へ向かって伝わっていきます。
腕を伸ばしたまま大きく振り回すと、この「しなり」が使えません。肩の関節そのもので振ることになり、負担が一点に集まります。



肘をたたんでから伸ばす、だね。



その順番だけで、肩の負担はずいぶん変わりますよ。
打つ瞬間まで力み続けているのも同じことです。踏み込みで力を入れ、空中では力を抜き、ヒットの瞬間にもう一度力を入れる。この力の3段階が使えると、肩は驚くほど楽になります。
打ち方3:下半身を使わず腕だけで打っている
強く打つ力の源は腕ではありません。床を蹴る力から始まり、膝、股関節、体幹、肩甲骨、肩、腕、手首、指へと順番に伝わっていきます。
この流れのどこかが抜けると、足りない力を腕で補うことになります。腕で補うということは、肩に全部の仕事を押しつけるのと同じです。



打った日にいつも肩だけ疲れてる…。



それは腕だけで打っているサインだよ。
とくに体幹が不安定だと、下半身で生んだ力が上半身に届く前にロスします。腹と背中で体を締めて安定させることが、そのまま肩を守ることにつながります。
肩が痛みはじめたときにやること|4つの手順
痛みに気づいた日にやることは決まっています。順番に進めてください。
とくに大事なのは4番目です。翌朝に残っているかどうかが、その日の量が体に見合っていたかの答え合わせになります。



本数を数えるのは今日からできそう。



数字で残ると、指導者も練習メニューを調整しやすくなりますよ。
打たないメニューでも、練習に参加してできることはたくさんあります。レシーブやフットワーク、声を出して味方を動かす役割は、肩を休めながら続けられます。
痛みや腫れが強いとき、腕が上がらないときは、手順を待たずにその日のうちに医療機関へ相談してください。
肩の痛みでやってはいけない3つのこと
やらないほうがよいことを知っておくと、悪化を防げます。ここは特に注意してください。
痛み止めでごまかして打ち続ける
痛みは体が出しているブレーキです。感じにくくした状態で打てば、負担はそのまま積み重なります。
大会が近い時期ほどやってしまいがちですが、痛みを抑えて打つ判断は、必ず医師に相談してからにしてください。
強く揉む・痛むまで伸ばす
痛むところを強く押したり、痛みが出るまで腕を引っぱったりするのは避けてください。炎症が起きている場所への刺激は、状態を長引かせることがあります。



硬いから伸ばせばいいと思ってた。



痛みが出るところまで伸ばすのは逆効果だよ。痛くない範囲だけにしよう。
肩まわりのケアは必要ですが、それは痛みが落ち着いてからの話です。順番を守ってください。
サポーターやテーピングを着けたから大丈夫だと考える
サポーターやテーピングは負担を減らす助けにはなりますが、着ければ原因が消えるわけではありません。着けたうえで打つ量と振り方を見直すことが前提です。
練習を休む目安と、病院に相談したほうがよいサイン
いちばん迷うのがここだと思います。判断の材料を整理しておきます。
打つ練習を休む目安
次のどれかに当てはまったら、その日は打つ練習を外してください。パスやレシーブなど、肩に負担が少ない練習は続けられることが多いです。
- 練習前から痛みがあり、打っても軽くならない
- 打った翌朝も同じ場所が痛む
- 痛みをかばって、フォームが普段と変わってきている
かばった動きで打ち続けると、肘や手首、腰など別の場所を痛めることがあります。実際、肩をかばった結果として手首を痛める選手を何人も見てきました。
整形外科に相談したほうがよいサイン
次のサインが出ているときは、練習の調整だけで様子を見ないでください。
- 腕が上がらない、上げる途中で力が抜ける。
- 夜、寝ているときにも痛む。
- 肩が抜けるような感覚やしびれがある。
- 2週間以上、同じ場所の痛みが続いている。



何科に行けばいいか迷ったら、整形外科でいいよ。



迷ったら行く、で覚えておく!
私は元日本代表として、また指導者として、選手が病院に行くことを「弱さ」だと感じてしまう空気こそ変えたいと思っています。早く診てもらった選手ほど、結果的に早くコートへ戻っています。
打てる肩に戻るまでの3段階
痛みが落ち着いてきたら、いきなり元の本数に戻さず段階を踏みます。ここを飛ばすと再発しやすくなります。
段階を進める判断は「翌日の痛み」で
各段階は、その日の練習後と翌朝に痛みが戻らないことを確認してから次へ進みます。少しでも戻ったら1つ前の段階に下げてください。
日数で区切らないのが大切です。同じ2週間でも、体の反応は選手によってまったく違います。



早く打ちたいけど、翌日の痛みで決めるんだね。



そう。体が出す答えのほうが、カレンダーより正確だよ。
休んでいる間にできることを決めておく
打てない期間は、下半身や体幹、判断力を伸ばすチャンスでもあります。何もしない時間にしないほうが、気持ちも切り替えやすくなります。
肩の痛みをくり返さないための備え
戻ったあとに同じことをくり返さないための備えを3つに絞りました。
支える筋肉を育てておく
肩を支える深い層の筋肉は、打つ練習だけでは育ちにくい部分です。チューブなどを使い、軽い負荷で回数を重ねるのが基本になります。
肩は打って鍛えるのではなく、支えて守る。
地味な内容ですが、ここを続けている選手ほど長くコートに立っています。私自身、現役時代に一番時間をかけたのもこの部分でした。
練習量を急に増やさない
打つ本数は、週単位で少しずつ増やします。大会前や新チームの立ち上がり、ポジションが変わった直後は特に増えやすいので、意識して確かめてください。
日本スポーツ協会も発育期のスポーツ活動ガイドで、成長期の休養と量の管理を重視しています。



「今週は先週の何本増えたか」を数える習慣が効きますね。
練習の前後で肩まわりを整える
練習前は動かしながら温め、練習後は使った部分をゆるめて終わる。この形を毎回そろえておくと、疲れが翌日に持ち越されにくくなります。
肩だけでなく、股関節や背中の動きも一緒に確かめてください。上半身が硬いまま腕だけを振ると、また肩に負担が戻ってきます。



打ち方とケアから作り直す!



それが正解。肩を守る振り方は、そのまま強く打てる振り方でもあるよ。
よくある質問
まとめ:肩の痛みは、軽いうちに本数と振り方を決め直す
肩の痛みは、痛めた瞬間がないぶん見逃されやすいけがです。痛みが軽い段階で打つ量を調整できるかどうかで、その後の道のりが変わります。
早く止める。自己判断しない。振り方から戻す。
| 場面 | やること | やらないこと |
|---|---|---|
| 痛みに気づいた日 | 打つ練習を止めて冷やす・本数を記録 | 痛み止めでごまかして打ち続ける |
| 翌日以降 | 翌朝の痛みで判断・続くなら受診 | 強く揉む・痛むまで伸ばす |
| 復帰 | 打たない練習から3段階で戻す | 日数だけを見て一気に戻す |
| 予防 | 支える筋肉・量の管理・前後のケア | サポーター任せにする |
私は元日本代表として、そして指導者として、肩は「強く打つための場所」ではなく「長く打ち続けるための場所」だと選手に伝えています。
腕の力で勝負している間は、いつか肩が先に音を上げます。下半身と体幹で打てるようになった選手は、痛みとも上手に付き合えるようになります。
今日の1本をがまんするより、来年も打てる肩を選んでください。



今日は打つ練習を外して、振り方を見てもらう。



いい判断だね。それが来年の自分を助けるよ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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