- 「お尻を使って跳べ」と言われるけれど、どういうことか分からない
- ジャンプのあと、膝の前ばかりが疲れたり痛くなったりする
- 膝で跳ぶのとお尻で跳ぶのは、何がちがうのか知りたい
こんな悩みを解決します。
お尻で跳ぶとは、膝だけでなく股関節(脚のつけ根)も大きく曲げ伸ばしして、お尻と裏ももの力をジャンプに使うことです。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
研究では、高く跳ぼうとするほど股関節の仕事が増えることや、膝ばかりで受け止める着地が膝の負担と関係しそうなことが報告されています。
この記事では、そうした研究をもとに、お尻で跳ぶ・膝で跳ぶのちがいと、股関節を使う跳び方のポイントを紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
- お尻で跳ぶ・膝で跳ぶのちがいが分かる
- 高く跳ぶときに股関節が大きな役割を持つ理由が分かる
- 膝に負担を集めず、股関節を使って跳ぶポイントが分かる
結論:高く跳ぶほどお尻(股関節)の出番が増える
結論からお伝えします。ジャンプは足首・膝・股関節の3つで跳ぶもので、高く跳ぼうとするほど股関節の仕事が大きくなることが分かっています。
膝だけを曲げ伸ばしして跳ぶと、体でいちばん大きな筋肉であるお尻の力を使いきれません。しかも、膝の前に負担が集まりやすくなります。
サルくん膝で跳ぶのとお尻で跳ぶの、何がちがうんですか?
膝で跳ぶ=太ももの前だけに頼る跳び方
膝で跳ぶ形は、上半身がほぼまっすぐ立ったまま、膝だけを前に出してしゃがみ、そこから膝を伸ばして跳ぶ跳び方です。
この形では、膝を伸ばす太ももの前の筋肉(大腿四頭筋)が主役になります。お尻はあまり使われません。
お尻で跳ぶ=股関節も曲げ伸ばしする跳び方
お尻で跳ぶ形は、しゃがむときにお尻を少し後ろへ引き、上半身を少し前に傾けて、股関節も曲げる跳び方です。
そこから股関節を伸ばす力で、お尻(大殿筋)と裏もも(ハムストリングス)がジャンプに加わります。膝を伸ばす力と股関節を伸ばす力の両方で、体を持ち上げられるわけです。
- ジャンプは足首・膝・股関節の3つの関節で跳ぶ
- 高く跳ぶほど、股関節を伸ばすお尻の仕事が増える
- 膝だけで跳ぶと、膝の前に負担が集まりやすい



膝を捨てるんじゃなくて、膝とお尻の両方で跳ぶのが正解だよ。
研究でわかった股関節の役割
まずは、ジャンプのときに股関節がどれくらい働いているのかを、研究から見ていきます。
高く跳ぶほど股関節の仕事が増えた
Lees らの研究(2004年・トレーニング科学の専門誌)では、大人の男性20人に、腕振りありで「低め」「高め」「全力」の3段階のジャンプをしてもらいました。
そして、足首・膝・股関節のそれぞれが、どれくらい仕事をしたかを計算しています。
その結果、足首と膝の仕事は高さを上げてもあまり変わらなかったのに、股関節の仕事は「低め」から「全力」で約3倍に増えていたと報告されています。
研究チームは、高く跳べるかどうかの差は、股関節を伸ばす筋肉がどれだけがんばるかで生まれると結論づけています。



ゼンリョクデ トブト コカンセツノ シゴトハ ヤク3バイ
軽く跳ぶときは足首と膝が中心
一方で、Vanrenterghem らの研究(2004年・人の動きの専門誌)では、10人に最大の25%・50%・75%・100%の高さをねらって跳んでもらいました。
その結果、高く跳ぶほど股関節を曲げる角度は大きくなったが、足首と膝の曲げる角度は変わらなかったと報告されています。
軽く跳ぶときは、足首や膝で効率よく跳び、高く跳ぶ必要があるときに股関節を大きく使う、という使い分けをしていたわけです。
反動ジャンプの高さの差も股関節から
さらにさかのぼると、Fukashiro と Komi の研究(1987年・スポーツ医学の国際誌)があります。
反動をつけて跳ぶジャンプと、しゃがんだ姿勢から反動なしで跳ぶジャンプをくらべたところ、膝と足首の仕事はほぼ同じで、股関節を伸ばす筋肉の仕事が大きくちがっていました。
研究チームは、反動をつけたほうが高く跳べる理由の一つは、股関節の仕事のちがいかもしれないと考えています。
ただし、この研究の参加者は1人だけなので、ひとつのヒントとして受け取ってください。



反動をつけてしゃがむときも、お尻を使えているかが大事なんだ。



高く跳ぶほど、お尻ががんばっていたんですね!
反動の深さとジャンプの高さの関係は、こちらの記事でくわしく紹介しています。
膝だけで跳ぶと膝に負担が集まる
お尻を使えていないと、高さだけでなく膝の負担にも影響します。ここでは、着地を調べた研究を紹介します。
上半身が立ったままだと太ももの前ががんばりすぎる
Blackburn と Padua の研究(2009年・アスレティックトレーナーの専門誌)では、40人の大人が60cmの台から飛び降りて着地しました。
いつもどおりの着地と、上半身を前に傾けた着地をくらべると、上半身を傾けたときは股関節と膝がより深く曲がっていました。
そして、上半身を前に傾けた着地のほうが、床から受ける力と、太ももの前の筋肉の働きが小さかったと報告されています。
研究チームは、上半身を傾けて股関節も使う着地は、膝の前十字靱帯にかかる力を減らせる可能性があると考えています。



ジョウタイガ タッタママ=ヒザノ マエニ フタン
硬い着地とジャンパー膝の関係
バレー選手を調べた研究もあります。
Bisseling らの研究(2007年・2008年・スポーツ医学の国際誌)では、膝のお皿の下が痛くなる「ジャンパー膝」になったことがある選手と、なったことがない選手をくらべました。
その結果、ジャンパー膝になったことがある選手は、着地のときに関節があまり曲がらない「硬い着地」をしている傾向があったと報告されています。
研究チームは、硬い着地がジャンパー膝につながる危険の一つかもしれないと考えています。
ただし、どちらの研究も参加者は1つのグループが10人に満たない小さな研究で、ある時点の様子をくらべたものです。「硬い着地をすると必ずジャンパー膝になる」とまでは言えない点は覚えておきましょう。



膝ばかりで受け止めていたかもしれません…。
着地の形については、こちらの記事でくわしく紹介しています。
お尻で跳ぶ形を作る3つのポイント
では、どうすればお尻を使って跳べるのでしょうか。意識したいポイントは次の3つです。
- しゃがむときにお尻を少し後ろへ引く
- 上半身を少し前に傾けて、腕振りと合わせる
- 膝とつま先を同じ向きにそろえる
①しゃがむときにお尻を少し後ろへ引く
いちばん大事なのは、しゃがむ動きの始め方です。膝から先に曲げるのではなく、脚のつけ根から折りたたむように、お尻を少し後ろへ引きながらしゃがみます。
椅子に浅く腰かけるときの動きに近いイメージです。こうすると膝だけが前に出ていかず、お尻と裏ももが伸ばされて、跳ぶ準備ができます。



椅子に座るみたいに、お尻から下がればいいんですね!
②上半身を少し前に傾けて腕振りと合わせる
お尻を後ろへ引くと、バランスをとるために上半身は自然と少し前に傾きます。このとき、腕は後ろに引いておきます。
そこから、股関節を伸ばして上半身を起こす動きと、腕を振り上げる動きを同時に行うと、体全体の力が上向きにそろいます。
ただし、上半身を倒しすぎたり、背中が丸まったりするのはNGです。背中はまっすぐのまま、股関節から傾けるのがポイントです。



腕振りと、お尻を伸ばすのを同時にやるんですね。
③膝とつま先を同じ向きにそろえる
お尻を使えていないと、しゃがんだときや着地のときに、膝が内側に入りやすくなります。正面から見て、膝とつま先が同じ方向を向いているかを確かめましょう。
スパイクの踏み切りでも、太ももの外側とお尻の筋肉を使って、助走の勢いを上向きに変えます。膝が内に入ると、この力がうまく使えず、体が前に流れる原因にもなります。



お尻から下がって、お尻で押し上げる。これが基本の形だよ。
股関節から曲げる動きそのものの練習は、こちらの記事で紹介しています。
お尻で跳ぶ力をきたえる考え方
形が分かったら、次はお尻の力そのものをきたえる方法です。ただし、お尻だけをきたえればよいわけではありません。
お尻だけでなく膝の力も必要
Contreras らの研究(2017年・トレーニング科学の専門誌)では、10代の男子選手を2つのグループに分け、6週間トレーニングをしてもらいました。
一方はお尻を中心に使うヒップスラスト、もう一方は膝と股関節の両方を使うフロントスクワットです。どちらもバーベルを使う種目です。
その結果、垂直跳びの伸びは、フロントスクワットのほうが良い可能性があると報告されています。一方で、短い距離のダッシュはヒップスラストのほうが良い可能性があったそうです。
つまり、真上に跳ぶ力を伸ばしたいなら、お尻だけでなく、膝と股関節の両方を使う種目も欠かせないということです。



オシリダケ ヨリ ヒザト コカンセツノ リョウホウ
このサイトでは、ジャンプ力を上げる土台として、スクワットを10回前後×2〜3セット、週2〜3回、間に1日休みを目安にしています。
中学生は自分の体重を使うトレーニングを中心にして、重い器具は高校からにしましょう。
お尻と裏ももをきたえる種目を足す
スクワットに加えて、お尻と裏ももを直接きたえる種目を組み合わせると、股関節を伸ばす力が育ちます。
あお向けでお尻を持ち上げるヒップリフトは、器具を使わずにできて、お尻の使い方を覚えるのにも向いています。裏ももは、ジャンプだけでなく走る動きや肉離れの予防にも関わります。



スクワットに1種目足すだけでも、お尻の使い方が変わってくるよ。
スマホで自分の跳び方を確かめる
自分がお尻で跳べているかは、横からスマホで撮ってもらうと確かめやすくなります。次の3つを見てみましょう。
- しゃがんだとき、上半身が少し前に傾いている
- 膝だけが大きく前に出ず、お尻が少し後ろに引けている
- 着地で「ドスン」と大きな音がせず、股関節と膝がやわらかく曲がっている
上半身がまっすぐ立ったまま膝だけが前に出ていたら、膝で跳んでいるサインです。まずはその場のジャンプで、お尻から下がる形を練習してみてください。
なお、ジャンプのあとに膝のお皿の下や前が痛む場合は、無理に続けないでください。痛みが続くときは練習を休んで、整形外科で診てもらいましょう。



次の練習で、横から撮ってもらって確かめてみます!
よくある質問
まとめ:膝とお尻の両方で跳ぶ
この記事では、お尻で跳ぶ・膝で跳ぶのちがいと、股関節を使うジャンプの仕組みを、研究をもとに解説しました。
高く跳ぶほど股関節の仕事が増える。お尻から下がり、膝とお尻の両方で跳ぶ。
| テーマ | 研究で分かっていること |
|---|---|
| 跳ぶ高さ | 全力で跳ぶと股関節の仕事が約3倍に増えた |
| 着地 | 上半身を傾けると太ももの前の働きが減った |
| ジャンパー膝 | 関節があまり曲がらない硬い着地と関係しそう |
| きたえ方 | 垂直跳びには膝と股関節の両方を使う種目が良さそう |
私は元日本代表として、ジャンプの高さは脚の力だけでなく、その力を体のどこで生み出すかという「使い方」でも変わると考えています。
まずは次の練習で、その場のジャンプを横から撮ってもらい、お尻から下がれているかを確かめてみてください。



お尻から下がる形、今日から意識してみます!



お尻が使えるようになると、膝もラクになって高さも出てくるよ。
参考にした研究・資料
- Lees A, Vanrenterghem J, De Clercq D. The maximal and submaximal vertical jump: implications for strength and conditioning. Journal of Strength and Conditioning Research, 2004
- Vanrenterghem J, Lees A, Lenoir M, Aerts P, De Clercq D. Performing the vertical jump: movement adaptations for submaximal jumping. Human Movement Science, 2004
- Fukashiro S, Komi PV. Joint moment and mechanical power flow of the lower limb during vertical jump. International Journal of Sports Medicine, 1987
- Blackburn JT, Padua DA. Sagittal-plane trunk position, landing forces, and quadriceps electromyographic activity. Journal of Athletic Training, 2009
- Bisseling RW, et al. Relationship between landing strategy and patellar tendinopathy in volleyball. British Journal of Sports Medicine, 2007
- Bisseling RW, et al. Are the take-off and landing phase dynamics of the volleyball spike jump related to patellar tendinopathy? British Journal of Sports Medicine, 2008
- Contreras B, et al. Effects of a six-week hip thrust vs. front squat resistance training program on performance in adolescent males: a randomized controlled trial. Journal of Strength and Conditioning Research, 2017
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
パフォーマンスアップについては他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪










