- 筋トレをしているのに、ジャンプの高さがあまり変わらない
- 筋力とバネ、どちらを鍛えればいいのか分からない
- そもそも、なぜ高く跳べる人と跳べない人がいるのか知りたい
こんな悩みを解決します。
ジャンプの高さは、体が床を離れる瞬間のスピードで決まり、そのスピードは「力の大きさ」と「力を出す速さ」の両方で生まれます。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで指導してきましたが、跳ぶ仕組みを知ってから練習すると、同じメニューでも1回ごとの意識が変わります。仕組みが分かれば、自分に足りないものも見えてきます。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- ジャンプの高さが何で決まるのか、物理の仕組みが分かる
- 筋力と速さの両方が必要な理由が、研究とあわせて分かる
- 自分は力と速さのどちらが足りないか、見分ける目安が分かる
結論:ジャンプの高さは床を離れる瞬間の速さで決まる
結論からお伝えします。ジャンプの高さは、足が床を離れる瞬間に、体がどれだけ速く上へ向かっているかでほぼ決まります。
床を離れたあとは、空中でいくらもがいても体は上に加速しません。つまり高さの勝負は、足が床についている短い間にすべて終わっているんです。
その短い間に大きなスピードを作るには、次の2つが必要になります。
- 力の大きさ:床を強く押せる筋力
- 力を出す速さ:短い時間で一気に力を出せる速さ
この2つをかけ合わせたものが、トレーニングの世界でいうパワーです。筋トレだけ、ジャンプ練習だけでは伸びが止まりやすいのは、どちらか一方しか鍛えていないことが多いからです。
ここから先は、この仕組みを1つずつ見ていきます。
ジャンプの高さを決める「離地速度」とは
足が床を離れる瞬間の、体が上に向かうスピードを離地速度といいます。ジャンプの高さを考えるときの出発点になる言葉です。
速さが少し上がるだけで高さは大きく変わる
垂直跳びの仕組みを床反力計(床を押す力を測る機械)で分析した研究があります。
Linthorne の研究(2001年・American Journal of Physics)では、跳び上がる高さは「離地速度の2乗÷(2×重力の強さ)」で計算できると説明されています。
その例では、離地速度が秒速約2.7mのときに、床を離れてから約37.5cm上がっていました。
ここで大事なのは2乗というところです。この式で計算すると、離地速度が1割上がるだけで、跳び上がる高さは約2割も上がります。
サルくんスピードが少し上がるだけで、そんなに高くなるの!?



だから床を離れる瞬間の速さを上げる練習が大事なんだ。
逆にいえば、踏み切りで少しでも力がもれると、高さは思った以上に下がります。腕振りのタイミングがずれる、踏み切りで体が前に流れるといった小さなずれが、数cmの差になって表れるのはこのためです。
スピードを生むのは「床を押した力×押した時間」
では、離地速度はどうやって生まれるのでしょうか。答えは、床を押した力と、押していた時間のかけ算です。
同じ研究では、床を押した力のうち体重を支える分を引いた残りが、体を上へ加速させる分になると説明されています。
体重を支えるだけの力では、体はまったく上がりません。
体重より大きな力を、床を押している間にどれだけ積み上げられるかがポイントです。押す力が大きいほど、そして同じ時間なら力が早く立ち上がるほど、離地速度は大きくなります。
ただし、押す時間を長くすればいいわけではありません。深くしゃがみすぎると押す時間は長くなりますが、そのぶん切りかえが遅くなり、試合のスピードにも合わなくなります。



チカラ カケル ジカン デ スピード ガ キマル
力と速さはどちらかを上げると片方が下がる
筋肉には、大きな力を出すほど速く縮めず、速く縮むほど大きな力は出せないという性質があります。これを力-速度関係と呼びます。
重いものはゆっくり、軽いものは速く動かせる
重い荷物は持ち上げられても、すばやくは動かせません。反対に、軽いボールは速く投げられますが、そのとき筋肉が出している力は大きくありません。
ジャンプで動かすのは自分の体重です。



ジャンプ ハ 自分ノ 体重ヲ 速ク 押シ上ゲル 動キ
そのため、ジャンプには「重さに負けない力」と「その重さを速く動かす速さ」の両方が求められます。どちらか一方だけが強くても、自分の体重を速く押し上げることはできないんです。
人によって足りないのは力か速さかが違う
この力と速さのバランスを、研究では力-速度プロフィールと呼びます。
Samozino らの研究(2012年・Medicine & Science in Sports & Exercise)は、脚で押し出す動きを数式と実験で調べたものです。
その結果、同じパワーをもっていても、力と速さのバランスが悪いと、押し出す動きの成績に最大で30%ほどの差が出ると報告されました。
人それぞれに、いちばん高く跳べる力と速さのバランスがあると考えられています。



同じパワーなのに、そんなに差が出るんですか?



力が余っている人と、速さが余っている人がいるんだよ。
この考え方をトレーニングに生かした研究もあります。
Jiménez-Reyes らの研究(2017年・Frontiers in Physiology)では、サッカーとラグビーの選手84人を、足りない方を補うグループと、そうでないグループに分けました。
トレーニングの期間は9週間です。
- 力が足りない人が力を補った場合:約14%
- 速さが足りない人が速さを補った場合:約13%
- バランスのよい人がバランスよく鍛えた場合:約7%
- 足りない方を考えずに鍛えた場合:約2%
対象は大人の選手で、測定には専用の器具を使っています。それでも、自分に足りない方を補うと伸びやすいということは、中学生・高校生にとっても練習を考えるヒントになります。
踏み切りは短い時間で力を出す勝負
力の大きさと同じくらい大切なのが、力の立ち上がりです。短い時間で、どれだけ早く大きな力に達するかを表します。
最大の力を出しきる前に足が床を離れる
踏み切りで足が床についている時間は、ほんの一瞬です。
筋肉が最大の力を出すには時間がかかるため、ジャンプでは最大の力を出しきる前に床を離れることになります。
Maffiuletti らの研究(2016年・European Journal of Applied Physiology)は、力の立ち上がりについての研究をまとめたものです。
その中で、力を出し始めてからの最初の約50〜75ミリ秒(0.05〜0.075秒)の立ち上がりは、筋肉にどれだけ素早く強い指令を送れるかに大きく左右されると説明されています。



サイショ ノ 一瞬 ガ ショウブ
つまり、力の立ち上がりは筋肉の太さだけでなく、脳と神経から筋肉への指令の速さにも関係しているということです。「ためてから一気に」ではなく、「一瞬で一気に」力を出せる体を作ることが目標になります。



筋肉だけじゃなくて、神経も鍛えるってことですね!



その通り。だから毎回全力で跳ぶことが大事なんだよ。
立ち上がりを速くする2つの練習
同じ研究では、力の立ち上がりは、素早く力を出す練習と、重い負荷を使う筋力トレーニングの、どちらでも伸びると報告されています。
- 素早く出す練習:プライオメトリクスなど、1回ずつ全力で跳ぶ練習
- 筋力の練習:スクワットなどで、床を強く押せる脚を作る練習
プライオメトリクスは、週1〜2回、1回ごとに全力で、少ない回数にしぼるのが基本です。疲れて動きが遅くなったまま跳び続けると、遅い動きを体が覚えてしまいます。
重い負荷を使う練習は高校年代からにしてください。中学年代は、自分の体重を使うトレーニングで十分です。
筋力と速さの両方を鍛える理由
ここまでの仕組みをまとめると、ジャンプ力を上げるには、筋力と速さの両方を鍛えることが必要になります。それぞれの役割を、研究とあわせて整理しておきましょう。
筋力はパワーの天井を上げる土台
Cormie らの研究(2011年・Sports Medicine)は、パワーを伸ばすためのトレーニングをまとめたものです。
その中で、ある程度の筋力がなければ高いパワーはもてないため、筋力を高めて保つことが長い目で見たパワー向上に欠かせない、と説明されています。
筋力とジャンプの関係を調べた研究もあります。
Wisløff らの研究(2004年・British Journal of Sports Medicine)は、サッカーのトップ選手を調べたものです。
その結果、ハーフスクワットの最大筋力が強い選手ほど垂直跳びが高いという強い関係が報告されました。
筋力は、出せるパワーの天井を上げる役割をもっています。天井が低いままでは、どれだけ速く動いても高さには限りがあります。



筋トレは、ジャンプのための準備みたいなものなんですね。



そう。土台が大きいほど、上に積めるものも増えるんだ。
スクワットの目安は、10回前後×2〜3セットを週2〜3回、間に1日休みを入れることです。
速さは筋力をジャンプに変える仕上げ
一方で、筋力があるだけでは、それを一瞬で出せるとは限りません。重いものをゆっくり持ち上げる練習ばかりだと、速く力を出す練習が足りなくなります。
Markovic の研究(2007年・British Journal of Sports Medicine)は、プライオメトリクスの効果を調べた研究をまとめて分析したものです。
反動をつけた垂直跳びでは、平均で約8.7%の向上が見られました。
筋力という土台の上に、速く力を出す練習を重ねることで、はじめて筋力がジャンプの高さに変わります。
このサイトでジャンプ力の3本柱を「プライオメトリクス・スクワット・体幹」としているのも、この考え方からです。
体幹は、脚で生んだ力を上半身までもらさず伝える役割をもちます。どれだけ大きな力を出しても、途中でもれてしまえば離地速度は上がりません。
自分に足りないのは力か速さかを見分ける
研究では、重さを変えて何回も跳ぶ専用の測定で力と速さのバランスを調べます。部活ではそこまでできないので、ふだんの練習から見える目安で考えてみましょう。
力が足りない人に多いサイン
力が足りない人は、深くしゃがんだ姿勢から跳び上がるのが苦手なことが多いです。しゃがんだところから、体を押し上げきれずに高さが出ません。
- 深くしゃがんだ姿勢からだと、高く跳べない
- スクワットで、ゆっくり立ち上がるのもきつい
- 何回か跳ぶと、すぐに高さが落ちてくる
こうしたサインが多い人は、スクワットなどで床を押す力の土台をしっかり作ることを優先してみてください。
速さが足りない人に多いサイン
速さが足りない人は、筋トレの重さは伸びているのに、跳ぶ高さがあまり変わらないことがあります。力はあっても、一瞬で出しきれていない状態です。
- 筋トレの記録は伸びているのに、ジャンプは変わらない
- しゃがんでから跳ぶまでの切りかえが遅い
- 連続ジャンプで、床についている時間が長い
反動を使ったジャンプと、しゃがんで止まってから跳ぶジャンプの差も参考になります。先ほどの Linthorne の研究の例では、反動を使った方が約4.5cm高く跳べていました。
反動の有無で差がほとんどない人は、沈み込みから跳び上がりへの切りかえを速くする練習に伸びしろがあるかもしれません。
サインはあくまで目安なので、1つの結果だけで決めつけず、記録をつけながら様子を見てください。



僕は筋トレの記録だけ伸びてるから、速さが足りないのかも!



気づけたら伸びしろだね。1回ずつ全力で跳ぶ練習を足そう!
仕組みを知ったうえで気をつけたいこと
仕組みが分かると、早く結果を出したくなります。ただ、力も速さも、ケガをせずに続けてこそ伸びるものです。
疲れた状態で跳び続けない
力の立ち上がりを伸ばすには、毎回全力で速く跳ぶことが大切です。疲れて動きが遅くなったまま回数をこなすと、速く力を出す練習にはならず、着地も崩れやすくなります。
高さや着地が乱れてきたら、その日は終わりと決めておきましょう。部活でスパイクやブロックを多く跳んだ日は、ジャンプのトレーニングを入れない日にするのも1つの方法です。
痛みがあるときは無理をしない
ジャンプは、上がるときより降りるときに体への負担が大きくなります。ひざのお皿の下やかかとに痛みがあるときは、無理に跳ばずに休んでください。
痛みが続くときは、整形外科を受診しましょう。特に成長期は、骨の端にある成長する部分がまだ弱く、痛みが出やすい時期です。



少し痛くても、練習を休むのはこわいです…



休むのも練習のうちだよ。早めに休むほうが早く戻れるね。
よくある質問
まとめ:ジャンプ力は力と速さのかけ算で上がる
この記事では、ジャンプの高さが決まる仕組みと、力と速さの関係を解説しました。
高さは離地速度で決まり、離地速度は力の大きさと力を出す速さのかけ算で生まれる。だからこそ、筋力と速さの両方を鍛えることが大切です。
| 仕組み | 大事なポイント | 主な練習 |
|---|---|---|
| 離地速度 | 床を離れる瞬間の速さで高さが決まる | 腕振り・踏み切りを整える |
| 力の大きさ | 出せるパワーの天井を上げる | スクワットなどの筋トレ |
| 力を出す速さ | 筋力を一瞬で出しきる | プライオメトリクス |
私は元日本代表として、ジャンプ力は才能や身長だけで決まるものではないと考えています。仕組みを知って、自分に足りない方を補っていけば、高さは少しずつ伸ばしていけます。



自分は力と速さのどっちが足りないか、まず確かめてみます!



記録をつけながら、足りない方を補っていこうね。
参考にした研究・資料
- Linthorne NP. Analysis of standing vertical jumps using a force platform. American Journal of Physics, 2001
- Samozino P, et al. Optimal force-velocity profile in ballistic movements: altius: citius or fortius? Medicine & Science in Sports & Exercise, 2012
- Jiménez-Reyes P, et al. Effectiveness of an Individualized Training Based on Force-Velocity Profiling during Jumping. Frontiers in Physiology, 2017
- Maffiuletti NA, et al. Rate of force development: physiological and methodological considerations. European Journal of Applied Physiology, 2016
- Cormie P, McGuigan MR, Newton RU. Developing maximal neuromuscular power: Part 2. Sports Medicine, 2011
- Wisløff U, et al. Strong correlation of maximal squat strength with sprint performance and vertical jump height in elite soccer players. British Journal of Sports Medicine, 2004
- Markovic G. Does plyometric training improve vertical jump height? A meta-analytical review. British Journal of Sports Medicine, 2007
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
パフォーマンスアップについては他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪










