- 体育館で上手な子を見ると、つい自分の子と比べてしまう
- 比べても意味がないと分かっているのに、言葉に出てしまう
- 比べる言葉で子どもの表情が曇るのを見て、あとから落ち込む
こんな悩みを解決します。
先に結論をお伝えすると、比べる気持ちをなくす必要はありません。比べる相手を、他の子から3か月前のわが子に入れ替えるだけで、家の中の会話は変わります。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで中学生以上の選手を指導してきて、保護者の方から「よその子と比べてしまう」という相談を受けた回数は数えきれません。
その相談の多くに共通しているのは、比べること自体ではなく、比べたあとに出る言葉のほうに問題があるという点です。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 親が他の子と比べてしまう仕組みと、その止め方が分かる
- 比べる言葉が子どもの練習にどう影響するかが分かる
- 同じ場面で使える、比べない言い換えの型が手に入る
それでは、くわしく見ていきましょう。
結論:比べるのをやめるのではなく、比べる相手を入れ替える
まず結論からお伝えします。他の子と比べてしまう気持ちは、無理に消さなくて構いません。
人が誰かと比べて自分の位置を測るのは自然なことです。消そうとするほど、比べてしまった自分を責めることになります。
やることは1つだけです。比べる相手を、よその子から3か月前のわが子に入れ替えることです。
同じ「比べる」でも、相手が変わると出てくる言葉がまったく変わります。よその子と比べると「あの子はできているのに」になりますが、3か月前と比べると「前より続くようになった」になります。
うさママ比べちゃいけないと思うほど、気になってしまいます。



比べるのをやめる必要はありませんよ。向ける先を変えるだけです。
指導している選手たちと話していて感じるのは、家で何を言われたかを、選手はかなり細かく覚えているということです。
うまくいかない時期に「◯◯くんはできてるのにね」と言われた記憶は、何か月たっても残っていることがあります。逆に「前より速く動けてる」と言われた話も、同じくらいよく出てきます。



クラベル アイテヲ カエルダケ
つまり、親が意識して変えられるのは気持ちではなく、口から出る比較の相手だということです。
もうひとつお伝えしておきたいのは、比べてしまうこと自体は親の愛情不足でも性格の問題でもないという点です。
体育館という場所は、上手な子ほど目に入りやすい構造になっています。仕組みのほうを知っておけば、必要以上に自分を責めずにすみます。
親が他の子と比べてしまう2つの理由
ここからは、なぜ比べる気持ちが強くなるのかを整理します。理由が分かると、対処する場所も見えてきます。
理由①:体育館では上手な子だけが目に入る
体育館で行われている練習は、全員が同時に動いています。そのなかで視線が止まるのは、ボールが集まる場所と、動きが目立つ選手です。
つまり保護者席から見えているのは、その日いちばん調子のいい数人の姿になりやすいということです。
同じコートで、うまくいかずに立ち止まっている子は視界に入りにくい。
自分の子だけが苦戦しているように見えるのは、この見え方の偏りが理由です。全体を平均して見ているわけではありません。



決まった場面だけ見られてる気がします…。



見ている側は悪気なくそうなるんです。目立つ場面しか残りませんから。
私が保護者の方から相談を受けるときも、比べる対象に挙がるのはたいてい同じ数人です。学年で上位の選手が基準になっているケースがほとんどでした。
本来の比較対象は学年全体のはずですが、目に入った上位の子が基準になってしまうと、どうしても差が大きく感じられます。
理由②:成長を測るものさしが試合の結果しかない
もうひとつは、成長を測る手がかりが少ないことです。
家庭から見えるのは、試合の結果とスタメンかどうかという2つだけになりがちです。この2つは他人との比較でしか決まりません。
結果だけを見ていると、比較以外の測り方が残らない。
たとえばレシーブの落下点に入る速さや、ミスをしたあとの立て直しの早さは、確実に伸びていても数字には出てきません。



何を見れば伸びていると言えるのか、分かっていませんでした。



見る場所を決めておくと、結果に振り回されにくくなりますよ。
選手を見ていて成長を感じるのは、うまくいかなかったあとの数分間です。落ち込んだまま次のボールを見送る子と、すぐに構え直す子では、半年後の伸び方が変わります。
この部分は保護者の方でも観戦中に見つけられます。ものさしが1本増えるだけで、比べる必要のある場面はぐっと減ります。
比べる言葉が子どもに届くと起きる2つの変化
比べる気持ちは自然でも、言葉にして届いてしまうと、練習の中身が変わってしまうことがあります。
変化①:練習の目的が「うまくなる」から「言われない」に変わる
他の子と比べられた選手は、次の練習で失敗を減らしにいきます。
新しいことに挑戦すると、できるまでの間は必ず下手になります。その期間を通れなくなるのが、比較を受けた選手にいちばん多い変化です。



失敗すると、また比べられそうで…。



安全な選択ばかりになると、そこで伸びが止まってしまうんです。
たとえばサーブを強く打つ練習は、最初はミスが増えます。ミスを責められない環境でしか、この練習は続きません。
比較の言葉は、いちばん伸びる時期の挑戦を止めてしまう。
私が指導のなかで気をつけているのも同じ点です。できていないことより、挑戦した回数を先に見るようにしています。
変化②:練習の話を家でしなくなる
もうひとつは、家で部活の話が減ることです。
話せば比べられると分かっている話題は、自然に避けるようになります。避けられた側は「何も話してくれない」と感じますが、選手のほうには理由があります。



最近ほとんど話してくれなくて、心配していました。



話題が選ばれているだけかもしれません。話しやすい入口を1つ残しておきましょう。
反抗期と重なる時期は特に見分けがつきにくくなります。年齢による変化か、比較を避けているのかは、話しかけ方を変えてみると分かります。
年齢による変化のほうが気になる場合は、こちらの記事も参考にしてください。
比較から抜け出す5つの手順
ここからが本題です。気持ちを変えるのではなく、手順として置き換えていきます。
手順①〜②:その場で言わず、家で並べて書き出す
体育館で感じたことは、その場で言わないのが最優先です。
試合や練習の直後は、選手も親も気持ちが動いています。この状態で出た比較の言葉は、内容よりも強さのほうが残ります。
家に帰ってから、3か月前のわが子と今を並べてみてください。書き出す項目は、できるだけ動作にします。
- 落下点に入るまでの速さ
- ミスのあとに構え直すまでの時間
- 自分から声を出した回数
- 練習に行く前の表情
このやり方をしていると、伸びている部分が必ず見つかります。見つからない場合は、比べる期間を6か月に広げてください。
数字にならない項目でも構いません。親が見て「前より速い」と思えたなら、それは伝えられる材料になります。
手順③〜⑤:伝え方を動作にそろえる
伸びた点は、その日のうちに伝えるのが効きます。時間が空くと、どの場面のことか本人に伝わらなくなるためです。
伝えるときは、他の子を一切出さないでください。「◯◯くんより」が入った瞬間、内容ではなく比較のほうが記憶に残ります。
伝えるのは、他の子との差ではなく、本人の動作の変化。
伸ばしてほしい点も同じです。「もっと動けるようになったら、レシーブの1歩目を早くしてみたら」のように、動作だけを言います。
そして週に1回、結果ではなく取り組みを聞く時間を作ります。勝ったか負けたかではなく、何を試したかを聞く時間です。



試したことを聞かれると、話しやすいです!



結果は本人がいちばん分かっています。過程を聞いてあげてください。
声かけの具体的な言い回しは、こちらの記事にまとめています。
同じ場面でこう変える|比べない言い換えの型
言い換えは、その場で考えると難しいものです。よくある場面ごとに型を決めておくと、とっさのときでも出てきます。
| 場面 | 比べてしまう言葉 | 言い換え |
|---|---|---|
| 試合でミスが続いた | 「◯◯ちゃんはミスしてなかったね」 | 「最後まで前に出ていたね」 |
| スタメンに入れなかった | 「あの子は出てるのに」 | 「今日は何を見ていたの?」 |
| 練習を休みたがる | 「みんな行ってるよ」 | 「今日はどこがきつい?」 |
| 記録が伸びない | 「同級生はもう跳べてるよ」 | 「先月より高くなってる」 |
表の右側に共通しているのは、主語が他人ではなく本人になっていることです。
比較の言葉は、主語がよその子から始まります。逆に言えば、主語を本人に戻すだけで、比較の言葉は使えなくなります。



主語だけなら、その場でも気をつけられそうです。



それで十分です。完璧な言い方を覚える必要はありません。
もうひとつ加えるなら、疑問形にしておくと安全です。「どうだった?」と聞く形にすると、比較の材料が入り込む余地がなくなります。
レギュラーから外れた時期の関わり方は、別の記事でくわしく書いています。
それでも比べてしまう日にやること
手順を決めても、比べてしまう日はあります。そこで自分を責めると続かないので、対処のほうを決めておきます。
対処①:口に出す前に一晩おく
比べる気持ちがいちばん強くなるのは、試合の帰り道です。
この時間帯に出た言葉は、翌日に自分でも「言い過ぎた」と感じることが多いものです。移動中は結果の話をしないと決めてしまうと楽になります。



帰りの車で、つい言ってしまうんです。



その時間は音楽でも流しておきましょう。話は翌日で間に合います。
一晩おくと、伝えたい内容が「差」から「動作」に変わっていることがよくあります。時間が言葉を整理してくれる形です。
対処②:自分が比べられている場面を思い出す
もうひとつは、保護者同士の場でも同じことが起きていると知っておくことです。
送迎や当番の場では、他の家庭のやり方が目に入ります。そこで感じる焦りは、子どもが体育館で感じているものとよく似ています。
比べられる側の感覚を思い出すと、言葉が自然に選べる。
保護者同士の距離感で消耗している場合は、そちらを整えるほうが先になることもあります。
そして、比べる言葉が減った家庭の変化として、選手からよく聞くのは「話しやすくなった」というものです。
上達そのものより先に、家での会話量が戻ります。その順番で構いません。
よくある質問
まとめ:比べる相手を変えれば、言葉は自然に変わる
他の子と比べてしまう気持ちは、消そうとしなくて構いません。
その場で言わない→家で3か月前と並べる→伸びた点を当日に伝える→動作だけで伝える→週1回は取り組みを聞く。
この5つの手順を回していると、比較の言葉を使う場面そのものが減っていきます。
| つまずく場面 | 起きること | 先にやること |
|---|---|---|
| 帰りの車で結果を話す | 気持ちの強さだけが残る | 移動中は結果の話をしない |
| 上手な子を基準にする | 差だけが目につく | 3か月前のわが子と並べる |
| 「みんなは」で話す | 比較として受け取られる | 主語を本人に戻す |
私が体育館で選手を見ていて感じるのは、伸びる時期ほど失敗が増えるということです。
その時期に家で比べられないことが、結果として次の伸びを守ります。



まずは帰りの車で言わないところから始めます。



それだけで変わります。伸びた1つを、その日のうちに伝えてあげてください。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
保護者の関わり方については他にも記事を書いています。
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