- セッターに必要な筋肉がどこなのか、よく分からない
- トスが飛ばない・突き指しやすいのは筋力のせいだと思っている
- 中学生のうちから重い筋トレをさせていいのか不安
こんな悩みを解決します。
セッターに必要な筋肉は、指・背筋・脚力・体幹の4つにしぼられます。どれもムキムキに鍛える力ではなく、正しい動きを支えるための土台です。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで指導してきましたが、セッターの不調は筋力そのものより、体の使い方とその土台づくりでつまずいていることがほとんどです。
なぜその4つの力が必要なのかが分かると、自分に足りない部分が見えて、練習の方向性が定まります。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- セッターに必要な4つの力が、それぞれ何のためなのかが分かる
- 中学年代でも安全にできる、土台づくりのメニューが分かる
- 重い器具に頼らず体を鍛える、正しい順番が分かる
トスの基本フォーム全体を先に知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
それでは、まず結論から見ていきましょう。
結論:セッターに必要な筋肉は4つにしぼられる

先に結論からお伝えします。セッターに必要な力は、たくさんあるようでいて、役割で整理すると4つです。
- 指の力:ボールに負けず、突き指せずに正確に押し出すため
- 背筋:空中で姿勢を保ち、ボールを飛ばすバネを生むため
- 脚力:コートを走り回るスタミナと、落下点へ素早く入る瞬発力のため
- 体幹:崩れた体勢からでも、ぶれずに正確なトスを上げるため
この4つに共通しているのは、どれも強い力を出すためではなく、正しい動きを支えるための土台だということです。
あげば大きな筋肉でボールを飛ばすのではなく、体の連動を支えるために鍛える。ここがセッターのフィジカルの考え方なんです。
セッターのトスは、腕の力でボールを飛ばしているわけではありません。
足から生まれた力を、背中・体幹・腕・指へと順番に伝えていく動きです。だから、その通り道のどこか1か所が弱いと、せっかくの力が途中で逃げてしまいます。



じゃあ、腕だけ鍛えても意味ないってこと…?



そうなんです。腕だけ太くしても、土台の脚や体幹がぐらつくと力は伝わりません。4つをバランスよく整えるのが大切なんですよ。
このあと、4つの力がそれぞれ何のために必要なのかを、1つずつ見ていきます。そして最後に、中学年代でも安全にできる鍛え方をまとめます。
指の力|ボールに負けず、突き指しない強さ
まず1つ目は、指の力です。セッターの指は、トスのいちばん最後にボールへ力を伝える出口になります。
ここが弱いと、勢いのあるボールに指が負けて、突き指やコントロールミスにつながります。



指の力って、そんなに大事なの!?
ボールを迎えにいったとき、速い球ほど指には大きな力がかかります。指がその力に耐えられないと、第一関節がふいに反ってしまい、突き指の原因になるんですね。
逆に、指がしっかりボールを受け止められると、力に押し負けずに正確な方向へ押し出せます。



指の力は、強いボールを跳ね返すためというより、押し負けずに自分の形を保つためのものなんです。
指の力は「弾く感覚」で養う
セッターの指の力は、太い筋肉をつける力とは少し違います。指や手首の腱(けん)を使った、しなやかに弾き出す感覚的な力です。
だから、重い物を握って鍛えるよりも、ボールを使って弾く練習を繰り返すほうが効果的です。
壁パスを強く速く返す練習が、指で弾く力をいちばん自然に鍛えてくれます。
おでこの上方で三角形を作り、ふんわりではなく強く速く壁へ返す。これを繰り返すうちに、指で弾く感覚が体に染み込んでいきます。



ボールを思いっきり真上に高く上げ続けるのも、指の弾きを鍛える良い練習ですよ。
突き指を防ぐ手の形
指の力と合わせて大切なのが、手の形です。力だけ強くても、形が崩れていると突き指は防げません。
トスの手は、両手の親指と人差し指で、おでこの上方に三角形の窓を作るイメージで構えます。ボールを包み込むように迎えると、力が1点に集中しにくくなります。



テノカタチ=サンカクケイ / ボールハ=ツツミコム
指先だけで突くように触るのではなく、親指・人差し指・中指の付け根まで使って受け止める。こうすると、ボールの力が手のひら全体に分散して、指1本にかかる負担が小さくなります。
手の形をもっと詳しく知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
背筋|空中で姿勢を保ち、ボールを飛ばすバネ
2つ目は、背筋です。背筋には、セッターにとって大きく2つの役割があります。
- 空中で姿勢を保つ:ジャンプトスでぶれずに上半身を支える
- 力を上へ伝える:下半身の力を背中で受け、上半身へ橋渡しする



背中って、姿勢を支えるだけじゃなくて、力を運ぶ役割もあるんだ!
空中で姿勢が崩れない土台になる
ジャンプトスでは、空中で体を支えてくれる地面がありません。だからこそ、背中の筋肉で上半身をまっすぐ保つことが大切になります。
背筋が弱いと、空中で上体が反ったり丸まったりして、トスの高さや方向が安定しません。
背中で姿勢を保てると、空中でも下半身で作った力をまっすぐ上へ伝えられます。



空中で目線がぶれないことが、安定したトスの第一歩なんです。
ボールを飛ばすバネにつながる
背筋は、トスを飛ばす力の通り道としても働きます。
セッターのトスは、足首・膝・股関節で生んだ力を、体幹を通して上半身へ運びます。その下半身と上半身をつなぐのが、背中まわりの筋肉です。
背中がしっかりしていると、下半身の力をロスなく上へ運べて、ボールがよく飛びます。
逆に背中がぐらつくと、せっかく足で生んだ力が途中で逃げてしまいます。



飛ばす力の源は下半身ですが、それを上へ運ぶ背中が弱いと力が逃げます。背筋は「力の運び役」でもあるんですよ。
ただし、背筋を鍛えるときに腰を強く反らせる動きを繰り返すのは、成長期の腰に負担がかかることがあります。次の章で、安全な鍛え方を具体的にお話しします。
脚力|走り回るスタミナと、落下点へ入る瞬発力
3つ目は、脚力です。セッターはコートの中をいちばん動くポジションと言ってもいいくらい、走り回ります。



たしかにセッターって、ずっと動いてるイメージ!
レシーブがどこへ返っても、セッターはそのボールの落下点へ走って入らなければなりません。その動きを支えるのが脚力です。そして脚力に必要なのは、性質の違う2つの力。
- スタミナ:試合の最後まで動き続ける、心肺機能と筋持久力
- 瞬発力:落下点へ素早く入る、一歩目のダッシュ力
スタミナが切れると後半のトスが乱れる
セッターはラリーのたびに落下点へ走るため、試合の後半になると疲れがたまります。
心肺機能が低いと、後半にプレーの精度がガクッと落ちてしまいます。
トスが乱れる原因が、技術ではなく単純なスタミナ切れということも少なくありません。



後半にトスが乱れる選手は、フォームより先に体力を疑ってみるといいですよ。
スタミナを支えるのが、心肺機能と筋持久力です。これらは、心拍数が上がった状態で動き続ける練習で養えます。
瞬発力で落下点へ素早く入る
もう1つが、瞬発力です。レシーブが乱れたとき、セッターは一歩目を素早く出して落下点へ入る必要があります。
落下点に早く入れれば、それだけ体勢を整える余裕が生まれ、安定したトスにつながります。



ハヤク=オチテンヘ / ヨユウガ=トスヲ アンテイサセル
このとき、手をおでこの上に上げたまま走るのは誤りです。腕をしっかり振って走ったほうが速いので、まずは急いで落下点へ向かうことを最優先します。手をセットするのは、落下点で止まったタイミングで大丈夫。
腕を振って全力で落下点へ走り、止まった瞬間に手をセットする。これが正しい順番です。



速く入るほどトスは安定します。瞬発力は、良いトスを上げるための準備の力なんですよ。
セッターの動き出しや構えをもっと知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
体幹|崩れた体勢から正確に上げるバランス
4つ目は、体幹です。体幹は、4つの力の中でも特に縁の下の力持ちです。
試合では、いつもきれいな体勢でトスを上げられるとは限りません。レシーブが乱れて、走りながら、崩れた体勢から上げる場面もたくさんあります。



きれいな体勢で上げられないときって、どうすればいいの…?
そんなときに体を支えてくれるのが体幹です。
体幹がしっかりしていると、崩れた体勢からでもぶれずに、狙った方向へトスを上げられます。
体幹は「力の中継地点」になる
体幹には、もう1つ大事な役割があります。下半身で生んだ力を、上半身へ受け渡す中継地点になることです。
足首・膝・股関節で生まれた力は、体幹を通って肩・腕・指へと伝わります。このとき体幹がぐらつくと、力が途中で逃げてしまいます。



お腹と背中で体の中心を締めておくと、下半身の力がロスなく指先まで届きます。体幹は力の通り道なんです。
つまり体幹は、姿勢を保つだけでなく、トスを飛ばす力をしっかり伝えるためにも欠かせません。
体幹はバランスを保つために使う
体幹を鍛えると聞くと、お腹をムキムキにするイメージを持つかもしれません。でもセッターに必要なのは、見た目の筋肉ではなく、体の中心を安定させるバランスの力です。



タイカン=ミタメジャナイ / チュウシンヲ=アンテイサセル チカラ
この力は、片足立ちでバランスを取る練習や、体を支えたまま静かに保つ練習で養えます。重い器具を使わなくても、自分の体重を使った運動で十分に鍛えられます。



自分の体重を支える運動でいいんです。難しい器具はいりませんよ。
崩れたボールの処理など、難しい体勢からのトスをもっと知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
中学年代でも安全にできる、土台づくりの順番


ここまでの4つの力を、どう鍛えればいいのか。ここでいちばん大切な考え方をお伝えします。
中学年代では、重いダンベルやバーベルは必要ありません。



え、重い筋トレはしなくていいの!?
はい。私がスクールで中学生を指導するときも、器具で重い負荷を扱うメニューは入れていません。
なぜ中学生に重い筋トレを勧めないのか
体がまだ成長している中学年代では、重い負荷を扱うことが体に思わぬ負担をかけることがあります。
- 怪我のリスク:フォームが崩れたまま重い負荷を扱うと、関節や腰を痛めやすい
- 骨の成長への配慮:成長期の骨に強い負荷をかけ続けるのは避けたい
器具である程度の重さを扱うのは、怪我の予防と骨の成長への配慮から、高校年代からで十分です。



あせって重い負荷をかけるより、今は自分の体重を上手に使うほうが、長い目で見て体は伸びていきますよ。
中学年代では、自分の体重・ゴムチューブ・走る練習を使った土台づくりが中心になります。これだけでも、4つの力はしっかり養えます。
4つの力を安全に鍛えるメニュー
それでは、4つの力を安全に鍛えるメニューを順番にまとめます。重い器具は使わず、どれも体育館や家の周りでできるものです。
ラントレーニングは、心拍数がおおむね140前後に上がった状態で、一定時間動き続けるのがねらいです。心肺機能が高まると、試合の後半までトスの精度を保ちやすくなります。



シンパクスウ=140マエ / イッテイジカン=ウゴキツヅケル
瞬発力や筋持久力には、ダッシュやインターバルトレーニングが有効です。短い全力ダッシュと軽い動きを交互にくり返すような練習も、無理なく取り入れられます。



重い器具がなくても、走る練習や自分の体重でちゃんと鍛えられるんだね!
ただし、走り込みのしすぎには気をつけてください。練習がきつすぎてバレーボールが嫌いになってしまうのが、いちばんもったいないことです。



体づくりは、無理なく続けることがいちばん大事。楽しみながら、少しずつ積み上げていきましょう。
順番は「正しいフォーム→土台づくり」
最後に、鍛える順番のお話です。フィジカルを鍛える前に、まず正しいフォームを身につけることを優先してください。
正しいフォームからはミスが起きにくく、努力の方向性も間違えにくくなります。
フォームが崩れたまま体だけ鍛えても、間違った動きが強くなるだけです。先に正しい動きを覚えて、それを支える土台として4つの力を育てていく。この順番が、遠回りのようでいちばんの近道です。
よくある質問(FAQ)
まとめ
セッターに必要な筋肉は、指・背筋・脚力・体幹の4つにしぼられます。
どれも強い力を出すためではなく、トスの正しい動きを支える土台として鍛えるのが基本です。
そして中学年代では、重い器具は使いません。自分の体重・ゴムチューブ・走る練習で、安全に土台を作っていきましょう。何より、正しいフォームを先に身につけることが、いちばんの近道です。



4つの力は、ムキムキじゃなくて土台なんだね! まずは壁パスと走る練習からやってみる!



その意気です。あせらず土台を積み上げていけば、トスはだんだん安定していきますよ。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
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