- 片足踏み切りと両足踏み切りで、どっちが高く跳べるのか知りたい
- ブロードは片足なのに、ふつうのスパイクはなぜ両足なのか分からない
- 片足で踏み切ると、膝や足首に負担がかからないか心配
こんな悩みを解決します。
高さを出しやすいのは両足踏み切り、助走のスピードを生かしやすいのは片足踏み切りです。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
バレーでは、ふつうのスパイクやブロックは両足で踏み切り、ブロード攻撃だけは片足で踏み切ります。この使い分けには、きちんとした理由があります。
この記事では、海外の研究をもとに、片足と両足の踏み切りの違いと、バレーでの使い分けを紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
- 片足と両足で、跳べる高さがどれくらい違うのかが分かる
- 片足踏み切りの強みと、気をつけたい点が分かる
- バレーの場面ごとに、どちらで踏み切るかの理由が分かる
結論:高さは両足、速さは片足が得意
結論からお伝えします。真上に高く跳ぶなら両足踏み切り、横や前に走る勢いを生かすなら片足踏み切りが向いています。
両足で踏み切ると、2本の脚で同時に床を押せるので、体を持ち上げる力が大きくなります。片足で踏み切ると、押す脚は1本になりますが、そのぶん速い助走から素早く跳べます。
サルくん片足と両足って、そんなに違いがあるんですか?
- 両足:床を押す力が大きく、真上へ高く跳びやすい
- 片足:速い助走のまま跳べて、踏み切りの時間が短い
- 片足:振り上げた脚の勢いも、体を持ち上げる力になる
ただ、どちらが高く跳べるかは、助走があるかないかで答えが変わってきます。
ここからは、その場で跳んだときの違い、助走をつけたときの違い、片足の強み、バレーでの使い分け、注意点、練習の順に見ていきます。
その場で跳ぶと片足は両足の約6割
まずは、助走をつけずに、その場で跳んだときの違いです。研究では、はっきりした差が出ています。
片足ジャンプは両足ジャンプの58.5%
van Soest らの研究(1985年・アメリカのスポーツ医学の専門誌)では、よく鍛えられた男子バレー選手10人に、その場での片足ジャンプと両足ジャンプをしてもらいました。
その結果、片足で跳んだ高さは、両足で跳んだ高さの58.5%だったと報告されています。
たとえば、両足で50cm跳べる選手なら、片足だと30cmに届かないくらいになる計算です。その場で真上に跳ぶなら、両足のほうが高く跳べるといえます。



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この研究では、片足で跳ぶときのほうが、ふくらはぎの筋肉がより強く働いていたことも分かりました。1本の脚で跳ぶぶん、足首まわりの筋肉にかかる仕事が大きくなるためです。
片足でも半分より高く跳べる理由
ここで気になるのが、「脚が1本なら、高さもちょうど半分になるのでは?」という点ではないでしょうか。実際には、半分より高い約6割まで跳べています。
この理由を調べたのが、Bobbert らの研究(2006年・アメリカの応用生理学の専門誌)です。
8人の片足ジャンプと両足ジャンプを比べたところ、両足で跳ぶとき、1本の脚が生み出すエネルギーは片足のときより2割以上少なかったと報告されています。
両足で跳ぶと、体がすばやく持ち上がるぶん、筋肉も速く縮まなければなりません。筋肉は速く縮むほど大きな力を出しにくい性質があるので、1本あたりのエネルギーが少し落ちてしまうのです。



両足だと、1本ずつの脚は少し手を抜いている状態なんですね!



手を抜くというより、筋肉の性質でそうなるんだ。それでも合計は両足が上だよ。
助走をつけると高さの差は小さくなる
その場で跳ぶと大きな差がありますが、助走をつけると話が変わってきます。研究によって、差の出方にもちがいがあります。
4歩の助走では全体の高さがほぼ同じだった
Vint と Hinrichs の研究(1996年・アメリカのバイオメカニクスの専門誌)では、14人に4歩の助走から、片足と両足の両方で跳んでもらいました。
その結果、手を伸ばして届いた高さは、片足と両足でほぼ同じだったと報告されています。
ただ、高さの出し方はちがっていました。両足のほうが空中に浮いている高さは大きかったものの、その差は約9cmだけ。片足では、振り上げた脚のおかげで、踏み切る瞬間の体の位置がもともと高くなっていたためです。



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バレー選手の研究では両足のほうが高かった
一方で、バレー選手を対象にした研究では、両足のほうが高く跳べたという結果も出ています。
Tai らの研究(2018年・ポーランドの運動学の専門誌)では、大学の男子バレー選手10人が、助走をつけた片足ジャンプと両足ジャンプを行いました。
その結果、跳んだ高さは両足のほうがはっきり高かったと報告されています。
同じ研究チームが、止めたボールを打つスパイクで比べた研究(2021年・応用科学の専門誌)でも、両足のほうが高く跳べていました。



研究によって、ほぼ同じだったり両足が高かったりするんですね…。
助走の長さや跳び方、選手の慣れ方によって、結果が変わると考えられます。「助走をつけると差は小さくなるが、高さだけなら両足が有利なことが多い」と覚えておくとよいでしょう。
片足踏み切りが持つ3つの強み
高さでは両足が有利なことが多い一方で、片足にしかない強みもあります。ここでは3つ紹介します。
①速い助走のまま跳べる
1つ目は、速い助走のスピードを生かしたまま跳べることです。先ほどの Tai らの研究でも、片足のほうが助走のスピードは速くなっていました。
Huang らの研究(1999年・バイオメカニクスの国際学会)では、Saunders の研究(1980年)が紹介されています。
それによると、両足で跳ぶときは全力疾走の50〜60%、片足で跳ぶときは60〜70%の助走スピードで、上向きの速さがいちばん大きくなったそうです。
つまり、片足のほうが、より速い助走に向いているということ。助走のスピードを高さに変えやすいのが、片足踏み切りの強みです。
②振り上げた脚が体を持ち上げる
2つ目は、踏み切らないほうの脚を振り上げる動きが、体を持ち上げる力になることです。
Vint と Hinrichs の研究でも、片足で跳ぶときは、振り上げた脚のおかげで踏み切る瞬間の体の位置が高くなっていました。両足では使えない、片足だけの武器といえます。



振り上げる膝の高さが、そのまま跳ぶ高さにつながるんだ。
③踏み切りの時間が短い
3つ目は、床に足がついてから跳ぶまでの時間が短いことです。
Tai らの2021年の研究では、片足のスパイクのほうが、最後の1歩が短く、床を押している時間も短かったと報告されています。
Huang らの研究でも、片足で踏み切るバックアタックのほうが、打つまでにかかる時間が短くなっていました。



カタアシハ ハヤク トベル



時間が短いと、相手のブロックが追いつきにくくなりそうです!
バレーでの片足と両足の使い分け
ここまでの研究をふまえて、バレーの場面ごとに、どちらで踏み切るのかを見ていきます。
ふつうのスパイクとブロックは両足で踏み切る
ふつうのスパイクでは、右利きなら右足→左足の順に、ほぼ同時に両足で踏み切るのが基本です。ブロックも、その場や数歩の移動から両足で跳びます。
どちらも、ネットの近くでできるだけ高い位置にボールをとらえたい場面です。真上に高く跳ぶことが目的なので、高さを出しやすい両足踏み切りが向いています。
両足で踏み切るときは、助走の勢いを止めずに、真上への勢いに変えることがポイントです。くわしいやり方は、こちらの記事で解説しています。
ブロード攻撃は片足で踏み切る
ブロード攻撃は、ネットと平行に長い距離を走ってから打つ攻撃です。横に走るスピードを止めずに跳ぶ必要があるため、片足で踏み切ります。
右利きなら、最後の1歩を左足で踏み切り、右膝を高く引き上げます。片足の強みである「速い助走」と「振り上げた脚の力」を、そのまま使う形です。
Tai らの研究チームも、片足のジャンプは速い攻撃に、両足のジャンプはブロックやスパイクに向いていると述べています。



ブロードは、片足の強みをそのまま使う攻撃なんですね。



どっちが正しいかではなく、場面で使い分けるんだ。
片足踏み切りで気をつけたいこと
片足踏み切りは強みがある一方で、体への負担にも気をつけたい跳び方です。
脚1本にかかる負担が大きい
Tai らの2021年の研究では、片足のスパイクのほうが、床から受ける上向きの力が大きく、足首・膝・股関節にかかる負担も大きくなっていました。
同じ研究チームの2013年の発表では、片足のジャンプは脚がかたく使われていて、けがの危険が高まるおそれがあるとして、両足で跳ぶことを勧めています。
一方、2018年の論文では、片足のジャンプはばねのような脚の使い方をきたえるのに役立つとして、練習に取り入れることを勧めています。



カタアシハ アシ1ポンニ フタンガ アツマル
このように、研究者の見方も分かれています。片足踏み切りを練習するときは、いきなり回数を増やさず、少しずつ慣らしていきましょう。
膝や足首に痛みがあるときは、片足のジャンプをやめて、整形外科で診てもらってください。
着地は両足でやわらかく降りる
片足で踏み切ると、着地まで片足になりがちです。ですが、踏み切りが片足でも、着地は両足で同時に降りるのが基本です。
片足で降りると、その1本の脚に体重と衝撃が集中してしまいます。膝を軽く曲げて、両足でやわらかく受け止めましょう。
片足と両足の跳ぶ力を伸ばす練習
片足と両足では、跳ぶときの脚の使い方がちがいます。両方の力を伸ばしておくと、どんな場面でも跳びやすくなります。
両足の力はスクワットとプライオメトリクスで伸ばす
両足で跳ぶ力は、スクワットで脚の力をつけ、プライオメトリクスで素早く跳ぶ力をきたえるのが基本です。
- スクワット:10回前後×2〜3セット・週2〜3回(間に1日休む)
- プライオメトリクス:週1〜2回・1回ごとに全力で少ない回数
片足の力はブルガリアンスクワットとケンケンで伸ばす
片足で跳ぶ力は、片脚ずつ鍛える種目で伸ばしていきます。ブルガリアンスクワットで片脚の力をつけ、ケンケンで片足でもぶれない足首を作りましょう。



左右どちらの脚も、同じくらい跳べるようにしたいです!
左右の脚で力の差が大きいときも、片脚ずつの種目が役立ちます。どちらか一方だけでなく、両方の脚を同じ回数ずつ行うのがコツです。
よくある質問
まとめ:高さは両足・速さは片足で使い分ける
この記事では、片足踏み切りと両足踏み切りの違いを、研究をもとに解説しました。
真上に高く跳ぶなら両足、速い助走を生かすなら片足で踏み切る。
| 踏み切り | 得意なこと | バレーの場面 |
|---|---|---|
| 両足 | 真上へ高く跳ぶ | スパイク・ブロック |
| 片足 | 速い助走のまま跳ぶ | ブロード攻撃 |
私は元日本代表として、踏み切りの形は「どっちが正しいか」ではなく、「その場面で何をしたいか」で選ぶものだと考えています。
まずは次の練習で、その場の両足ジャンプと片足ジャンプを跳び比べて、自分の高さのちがいを確かめてみてください。



まずは両足の踏み切りを固めて、それから片足にも挑戦してみます!



両方の跳び方を知っておけば、攻撃の幅がぐっと広がるよ。
参考にした研究・資料
- van Soest AJ, Roebroeck ME, Bobbert MF, Huijing PA, van Ingen Schenau GJ. A comparison of one-legged and two-legged countermovement jumps. Medicine and Science in Sports and Exercise, 1985
- Bobbert MF, de Graaf WW, Jonk JN, Casius LJ. Explanation of the bilateral deficit in human vertical squat jumping. Journal of Applied Physiology, 2006
- Vint PF, Hinrichs RN. Differences between one-foot and two-foot vertical jump performances. Journal of Applied Biomechanics, 1996
- Tai WH, Wang LI, Peng HT. Biomechanical Comparisons of One-Legged and Two-Legged Running Vertical Jumps. Journal of Human Kinetics, 2018
- Tai WH, et al. Dynamic Characteristics of Approach Spike Jump Tasks in Male Volleyball Players. Applied Sciences, 2021
- Tai WH, Wang LI, Peng HT. A Comparison of Single- and Double-Leg Running Vertical Jumps in Volleyball. ISBS Conference Proceedings, 2013
- Huang C, Liu GC, Sheu TY. Kinematic Analysis of the Volleyball Back Row Jump Spike. ISBS Conference Proceedings, 1999
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
パフォーマンスアップについては他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪










