- 腕を振るとどれくらい高く跳べるのか知りたい
- なぜ腕を振ると高く跳べるのか、仕組みがよく分からない
- 自分の腕振りが、ジャンプに生かせているのか自信がない
こんな悩みを解決します。
腕振りを使うと、使わないときより数cmから十数cm高く跳べることが、いくつもの研究で確かめられています。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで指導してきましたが、腕振りは筋力を増やさなくても見直せる、いちばん身近なポイントです。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 腕振りでジャンプが何cm変わるのかが、研究の数字で分かる
- 腕を振ると高く跳べる理由が分かる
- 高く跳べる腕振りのタイミングと、場面ごとの使い方が分かる
結論:腕振りは数cmから十数cmの高さを生む
結論からお伝えします。腕振りは、脚の力を変えなくてもジャンプの高さを上乗せできる、とても効率のよい動きです。
研究によって差はありますが、腕を振らないジャンプとくらべて、数cmから十数cm高く跳べたという報告がそろっています。
ただし、どんな振り方でも高くなるわけではありません。脚の動きとタイミングが合っていないと、腕振りの効果はほとんど出ないこともあるんです。
- 腕振りありとなしでは、研究によって数cmから十数cmの差がある
- 腕は体を上へ引っ張り、床を押す力を後半まで続けてくれる
- 沈み込みと同時に後ろへ引き、踏み切りに合わせて振り上げる
この記事では、研究の数字、高く跳べる理由、振り方のコツの順に見ていきます。
腕振りでジャンプは何cm変わるのか
まずは、腕振りでどれくらい高さが変わるのかを、研究の数字で確かめてみましょう。
バレー選手の研究では約14cm高くなった
Vaverka らの研究(2016年・Journal of Human Kinetics)は、チェコのトップリーグで優勝したチームの男子バレーボール選手18人を調べたものです。
その場で反動をつけて跳ぶ垂直跳びを、腕振りありとなしで比べました。
その結果、腕振りありの方が平均で約14.3cm、割合にすると約38%高く跳べていました。
サルくん腕だけで、そんなに変わるんですか!?



腕振りに慣れた選手ほど、差は大きく出やすいんだ。
バレーボール選手は、ふだんから腕を大きく振って跳ぶことに慣れています。そのため、腕を使えないジャンプとの差が大きく出たと考えられます。
研究によって差は数cmから十数cm
ほかの研究でも、腕振りで高さが上がることは確かめられています。
Lees らの研究(2004年・Journal of Biomechanics)では、成人男性20人が腕振りありとなしで跳び、腕振りありの方が約8.6cm高く跳べていました。
また、国立スポーツ科学センター(JISS)の測定マニュアルでは、腕振りありの垂直跳びと、腰に手を当てて跳ぶジャンプの記録が、それぞれ多くの選手で集計されています。
平均値を比べると、男女とも腕振りありの方が約5cm高くなっていました。



ウデフリ アリ デ 数cm カラ 十数cm タカイ
差の大きさに幅があるのは、調べた選手の競技や、腕振りへの慣れ方がちがうためと考えられます。どの研究でも、腕を振った方が高く跳べるという点は共通しています。
腕を振ると高く跳べる3つの理由
では、なぜ腕を振ると高く跳べるのでしょうか。
Lees らの研究では、腕振りの効果は1つの理由だけでは説明できず、いくつかの仕組みが一緒に働いていると結論づけられています。
ここでは、研究で考えられている3つの理由を見ていきます。
理由1:床を離れる瞬間の体の位置が高くなる
1つ目は、床を離れる瞬間に、体の重心(体全体の重さの中心)が高い位置にあることです。
腕を頭の上まで振り上げた状態で床を離れると、腕の重さの分だけ、体全体の重心が上にもち上がります。同じ速さで跳び出しても、スタートの位置が高い分だけ高く届くわけです。



腕の重さも、高さに入っているんですね!
Cheng らのコンピューターを使った研究(2008年・Journal of Biomechanics)があります。
この研究では、腕振りで増えた高さのうち、約3分の1がこの「スタート位置の高さ」によるものと計算されています。
理由2:床を強く押せる時間が長くなる
2つ目は、床を強く押せる時間が長くなることです。先ほどの Cheng らの研究では、残りの約3分の2は、床を離れるときの上向きの速さが上がったことによるものでした。



タカサ ノ 3ブンノ2 ハ トビダス ハヤサ
Vaverka らの研究では、腕振りがあると、沈み込みでブレーキをかける時間が短くなり、そのあと上へ加速していく時間が長くなっていました。
加速していく間に床を押す平均の力も、大きくなっていたと報告されています。



押す時間が長いと、速く跳び出せるんですね。



そう。長く強く押せるほど、跳び出す速さが上がるんだよ。
さらに Feltner らの研究(1999年・Journal of Sports Sciences)では、バレーボール選手25人を調べています。
腕を振り上げると上体が起き上がるのがゆっくりになり、その分お尻の筋肉が押し上げの後半まで大きな力を出せていたそうです。
理由3:振り上げた腕が体を上へ引っ張る
3つ目は、勢いよく振り上げた腕が、肩を通して体を上へ引っ張ることです。
Lees らの研究では、肩やひじで生まれた力が腕にためられ、ジャンプの後半に体の残りの部分へ受けわたされていたと報告されています。
Cheng らの研究でも、腕振りで増えたエネルギーのおよそ半分は、肩の動きから生まれていました。
腕振りは、脚の仕事に上半身の仕事を足してくれる動きだと考えると分かりやすいです。



ウデ ガ カラダ ヲ ウエ ヘ ヒッパル
なお、反動(しゃがみこみ)と腕振りは、それぞれ別に高さを上乗せしています。
Hara らの研究(2008年・Human Movement Science)では、反動の効果は押し上げの最初に、腕振りの効果はそのあとに出ていて、2つの効果は足し算になると報告されていました。
反動の仕組みは、こちらの記事でくわしく解説しています。
高く跳べる腕振りの3つのポイント
仕組みが分かったところで、高く跳べる腕振りのポイントを見ていきます。どれも、腕と脚のタイミングを合わせるためのものです。
後ろに引くのは沈み込みと同時
1つ目は、腕を後ろに引く動きと、脚の沈み込みを同時に行うことです。
腕を引くのが早すぎたり遅すぎたりすると、腕と脚がばらばらに動いてしまいます。
JISSの測定マニュアルでも、腕の振り込みのタイミングが合っていなければ、期待される効果は得られないと書かれています。
腕を後ろへ引きながらしゃがみ、しゃがみきったところで腕も後ろまで引けている、この形を目指しましょう。



腕と脚は、いつも同じタイミングで動かそう。
振り上げは跳びたい方向へ
2つ目は、腕を跳びたい方向へ振り上げることです。
Hara らの別の研究(2008年・Journal of Biomechanics)では、前や後ろへ跳ぶジャンプで、腕を振る方向を変えて比べています。
その結果、跳ぶ方向と同じ方向へ腕を振ったときが、いちばん遠くまで跳べていました。
高く跳びたいなら、腕は前ではなく真上へ振り上げます。腕を前へ大きく振り出してしまうと、体も前へ流れやすくなるので気をつけましょう。



ぼく、腕を前に振っていたかもしれません…



真上に振るだけで、跳ぶ向きが変わってくるよ。
振り上げた腕は頭の上まで
3つ目は、腕を途中で止めず、頭の上の高い位置まで振り上げることです。
理由1で見たように、腕が高い位置にあるほど、床を離れる瞬間の重心も高くなります。振り上げが胸の前で止まってしまうと、腕の重さを高さに生かせません。
Vaverka らの研究では、腕振りが高さを生み始めたのは、跳ぶ動作全体の時間のうち76%が過ぎたあたりからでした。
腕振りの効果は、踏み切りの直前から床を離れるまでの短い時間に集まっているといえます。
最後まで勢いよく振り上げきることを意識してみてください。
場面ごとの腕の使い方
バレーボールでは、スパイクとブロックで腕振りの形が少しちがいます。それぞれの使い方を確認しておきましょう。
スパイクは助走の最後に引いて振り上げる
スパイクでは、腕を後ろに引いてから振り上げる大きな腕振りで、ジャンプの勢いを作ります。
- 助走の最後の1歩の前、右足がつくころに両腕を後ろへ引く
- 踏み切りと同時に、両腕を勢いよく振り上げる
- 振り上げる高さは耳の横か、それより高いところまで
腕を後ろに引かずに前から振り上げると、勢いが足りないうえに、体が前へ突っこむ原因になります。左利きの人は左右を逆にして考えてください。
ブロックは脇を締めてコンパクトに振る
ブロックでは、腕を大きく後ろへ回す時間がないことが多いです。そのため、脇を締めてコンパクトに、勢いよく腕を振り上げます。
ひじが体の前を通るようにして、最短の道のりで手をネットの上に出すのがポイントです。ネットに近づきすぎると、ひじが体の前を通れずに横へ逃げてしまい、腕振りの力が高さに伝わりません。
相手の二段トスなど時間に余裕がある場面では、移動しながら腕を大きく振り上げて跳ぶスイングブロックという方法もあります。
自分の腕振りが効いているか確かめる方法
最後に、自分の腕振りがジャンプに生かせているかを確かめる方法を紹介します。
腕振りありとなしで高さを比べる
いちばん分かりやすいのは、腕振りありとなしで、その場の垂直跳びの高さを比べる方法です。
- 腰に手を当てたまま、反動をつけて全力で2回跳ぶ
- 次に、腕を自由に振って全力で2回跳ぶ
- それぞれのいちばん高い記録を比べる
JISSの測定マニュアルでは、腕振りありの記録が腕振りなしと同じくらいか低いときは、腕振りがうまく使えていない可能性があると説明されています。



差が小さかったら、腕振りを見直せばいいんですね!



そう。伸びしろがどこにあるかが分かるんだ。
高さは、壁に手でタッチして測ってもかまいません。毎回同じ方法で測れば、自分の中での比べっこには十分使えます。
動画で腕と脚のタイミングを見る
もう1つは、スマホで自分のジャンプを横から撮る方法です。
チェックしたいのは、しゃがみこむときに腕も後ろへ引けているか、床を離れる瞬間に腕が頭の上まで上がっているかの2点です。
理想とする選手のジャンプと見比べると、ちがいが見つけやすくなります。
どちらの方法でも、ジャンプは上がるときより降りるときの方がひざへの負担が大きくなります。着地はひざを軽く曲げて両足でやわらかく降りましょう。
ひざやかかとに痛みがあるときは無理に跳ばないでください。痛みが続くときは整形外科を受診しましょう。
よくある質問
まとめ:腕振りは脚と同じタイミングで使う
この記事では、腕振りでジャンプが何cm変わるのかと、その理由や振り方のコツを解説しました。
腕振りは、沈み込みと同時に後ろへ引き、踏み切りに合わせて真上へ振り上げることで、数cmから十数cmの高さを生み出します。
私は元日本代表として、ジャンプ力は脚の力だけでなく、全身を合わせて使う技術でも伸ばせると考えています。まずは腕振りありとなしの高さを比べて、自分の伸びしろを確かめてみてください。



今日の練習で、腕振りありとなしを比べてみます!



差が分かれば、次にやることもはっきりするよ。
参考にした研究・資料
- Vaverka F, et al. Effect of an Arm Swing on Countermovement Vertical Jump Performance in Elite Volleyball Players. Journal of Human Kinetics, 2016
- Lees A, Vanrenterghem J, De Clercq D. Understanding how an arm swing enhances performance in the vertical jump. Journal of Biomechanics, 2004
- Cheng KB, et al. The mechanisms that enable arm motion to enhance vertical jump performance-a simulation study. Journal of Biomechanics, 2008
- Feltner ME, Fraschetti DJ, Crisp RJ. Upper extremity augmentation of lower extremity kinetics during countermovement vertical jumps. Journal of Sports Sciences, 1999
- Hara M, et al. A comparison of the mechanical effect of arm swing and countermovement on the lower extremities in vertical jumping. Human Movement Science, 2008
- Hara M, et al. Effect of arm swing direction on forward and backward jump performance. Journal of Biomechanics, 2008
- 国立スポーツ科学センター(JISS) フィットネスチェック測定マニュアル「垂直跳、CMJ、SJ」
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
パフォーマンスアップについては他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪










