- 同じ練習をしているのに、チームメイトのほうが高く跳べる
- ジャンプ力は生まれつきだから、努力してもムダなのではと思っている
- 自分はどこまで伸びるのか、目安を知りたい
こんな悩みを解決します。
ジャンプ力には生まれつきの影響があることが、研究で分かっています。ただし、それは「伸びない」という意味ではありません。練習で伸ばせる部分は、しっかり残っています。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
ジャンプ力の差を見て「あの人は才能があるから」と、あきらめてしまう選手は少なくありません。
でも、生まれつきの影響があることと、自分が伸びないことは、まったく別の話なんです。
この記事では、双子の研究や筋肉の研究をもとに、遺伝がジャンプ力にどれくらい関わっているのか、そして練習でどこまで伸ばせるのかを紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
- ジャンプ力に遺伝がどれくらい関わっているかがわかる
- 遺伝の影響があっても、練習で伸ばせる理由がわかる
- 人と比べず、自分の伸びを確かめる方法がわかる
結論:生まれつきの影響はあるが、伸ばせる部分も大きい
結論からお伝えします。ジャンプ力には生まれつきの影響がありますが、練習で伸ばせる部分も大きく残っています。
双子を調べた研究では、ジャンプ力の個人差の半分前後が、遺伝で説明できるという結果が出ています。
一方で、跳ぶトレーニングを続けると、ジャンプ力は平均して高くなることも、多くの研究で確かめられているんです。
サルくん半分が遺伝なら、もう決まっているってことですか…?



そうじゃないんだ。「半分が決まっている」という意味ではないんだよ。
- ジャンプ力の個人差には、遺伝が関わっている
- 遺伝の数字は「集団の差」の話で、一人ひとりの上限ではない
- 跳ぶトレーニングで、ジャンプ力は平均して高くなる
- 伸び方には個人差があるので、比べる相手は過去の自分
研究で分かったジャンプ力と遺伝の関係
まずは、ジャンプ力と遺伝の関係について、研究で分かっていることを見ていきましょう。
双子の研究では個人差の約半分が遺伝
遺伝の影響を調べるときによく使われるのが、双子の研究です。遺伝子がほぼ同じ一卵性の双子と、そうでない二卵性の双子を比べることで、遺伝の影響を見積もります。
オランダの Schutte らの研究(2015年・行動遺伝学の専門誌)では、平均17歳の双子227組とそのきょうだいの体力を測りました。
その結果、垂直跳びの個人差のうち、約49%が遺伝で説明できると報告されています。
同じ論文では、これまでの双子の研究をまとめた分析も行われていて、垂直跳びでは約62%という数字が出ていました。



イデン ノ エイキョウ ハ ヤク 5〜6ワリ
ただし、研究によって数字にはかなり幅があり、調べた人数も多くはありません。「だいたい半分前後」くらいに受け止めておくのがよいでしょう。
速く縮む筋肉の割合も関わっている
遺伝がジャンプ力に関わる理由の1つが、筋肉の性質です。筋肉には、すばやく大きな力を出すのが得意な「速筋」と、長く動き続けるのが得意な「遅筋」があります。
ジャンプのように一瞬で力を出しきる動きでは、速筋の働きが大きくなります。
Bosco と Komi の研究(1979年・ヨーロッパの応用生理学の専門誌)では、体育を学ぶ学生34人の太ももの筋肉を調べました。
その結果、速筋の割合が多い人ほど、垂直跳びで高く跳ぶ傾向があったと報告されています。
この速筋と遅筋の割合には、生まれつきの影響があると考えられています。高く跳べる人が「バネがある」と言われるのは、こうした体の性質の差も関係しているんです。



筋肉の種類まで生まれつきちがうんですね!
身長や手足の長さも生まれつきの差
バレーボールで大切な最高到達点には、ジャンプの高さに加えて、身長や腕の長さも関わってきます。
身長や手足の長さは、自分の努力では変えにくい部分です。最高到達点の差が、すべてジャンプ力の差というわけではないことも、覚えておきましょう。
反対に言えば、身長が同じくらいの選手どうしでも、ジャンプ力と跳び方しだいで最高到達点は変わります。身長が低めの選手ほど、ジャンプ力を伸ばす意味は大きいんです。



身長が低くても、跳べればもっと高く届くんですね!
遺伝の数字を正しく読む3つのポイント
「半分が遺伝」と聞くと、伸びる量も半分しかないように感じるかもしれません。でも、遺伝の数字はそういう意味ではありません。ここでは、正しく読むための3つのポイントを紹介します。
「集団の差」の話で、一人の上限ではない
1つ目は、遺伝の数字は「たくさんの人の差」を説明するもので、一人ひとりの上限を決めるものではない、ということです。
約49%という数字は、「あなたのジャンプ力の49%が生まれつきで決まっている」という意味ではありません。
調べた集団の中で、跳べる人と跳べない人の差がどこから来ているのかを、全体として見積もったものなんです。



自分の限界が決まっているわけじゃないんですね!
研究に参加した人の多くは特別な練習をしていない
2つ目は、研究の条件です。双子の研究に参加した人の多くは、ジャンプのための特別なトレーニングをしていたわけではありません。
練習の内容がばらばらな集団と、同じ目的でしっかり練習した集団とでは、結果が変わってくることも考えられます。



練習していない人どうしの差、ということですね。
研究の数字は、「何もしなかったときの差」に近いものとして受け止めるのがよいでしょう。
環境の影響も残っている
3つ目は、遺伝で説明できない残りの部分です。Schutte らの研究でも、垂直跳びの個人差のうち、遺伝で説明できなかった部分が残っていました。
この残りには、それぞれの生活や練習のちがいなど、遺伝以外のものが含まれます。つまり、ジャンプ力は生まれつきだけで決まるものではないということなんです。



ノコリ ハ カンキョウ ト ドリョク



変えられない部分より、変えられる部分を見ていこう。
練習でジャンプ力はどこまで伸びるのか
では、練習でジャンプ力はどれくらい伸ばせるのでしょうか。ここでは、トレーニングの効果と、伸び方の個人差について見ていきます。
跳ぶトレーニングで平均約8.7%高くなった
Markovic の研究(2007年・イギリスのスポーツ医学の専門誌)は、跳ぶトレーニング(プライオメトリクス)の効果を調べた研究をまとめたものです。
その結果、反動をつけた垂直跳びは、トレーニングによって平均で約8.7%高くなっていたと報告されています。
垂直跳びが50cmの選手なら、約4cmにあたる数字です。数週間で大きく変わるものではありませんが、続けた分だけ積み重なっていきます。
サイトでは、跳ぶトレーニング・スクワット・体幹の3本柱で、中高の3年間に10〜15cmほど伸ばすことを目安にしています。
同じ練習でも伸び方には大きな個人差がある
もう1つ知っておきたいのが、同じ練習をしても、伸び方は人によって大きくちがうということです。
Hubal らの研究(2005年・アメリカのスポーツ医学の専門誌)では、585人に12週間、同じ方法で腕の筋トレをしてもらいました。
その結果、持ち上げられる重さが、ほとんど変わらない人から、2倍以上になった人までいたと報告されています。
これはジャンプではなく腕の筋力の研究ですが、同じ練習でも伸び方には大きな差が出る、ということがよく分かります。



だから、同じ練習をしても友だちのほうが伸びることがあるんですね…。



伸びるのが早い人も、ゆっくりな人もいる。それだけのことなんだ。
伸びが遅くても、伸びていないとはかぎらない
伸び方に差があるということは、今は伸びが遅くても、続ければ伸びる可能性があるということでもあります。
また、身長が大きく伸びる時期は、体の変化に動きの感覚が追いつかず、一時的にジャンプ力が伸びにくくなることもあります。
周りより伸びが遅いからといって、すぐに「才能がない」と決めつけないでください。
生まれつきの差があっても伸ばすための考え方
最後に、生まれつきの差があることを知ったうえで、どう練習に向き合えばいいのかを紹介します。
比べる相手は「過去の自分」にする
いちばん大切なのは、比べる相手を、チームメイトではなく過去の自分にすることです。
生まれつきの差がある以上、人と比べると、どうしても勝てない相手が出てきます。でも、1か月前・3か月前の自分となら、正しく比べることができるんです。
同じ条件で、定期的にジャンプ力を測って記録しておきましょう。数字が少しでも伸びていれば、それは練習の成果です。
測るのは、1か月に1回くらいで十分です。毎日測ると、その日の疲れや調子で数字が上下して、かえって伸びが見えにくくなります。



キロク ハ ウソ ヲ ツカナイ
自分で変えられる部分に集中する
身長や筋肉の性質は変えにくくても、自分で変えられる部分はたくさんあります。
- 地面を押す筋力(スクワットなど)
- 力をすばやく出す速さ(跳ぶトレーニング)
- 助走・踏み切り・腕振りの跳び方
- 睡眠や休み方などの回復
特に、助走や腕振りといった跳び方は、筋力が変わらなくても高さに影響します。跳び方の工夫は、生まれつきの差を少しでも埋めるための大きな武器になるでしょう。
回数より、正しい内容を続ける
差を早く埋めたくて、跳ぶ回数を一気に増やすのはおすすめしません。跳ぶトレーニングは、週1〜2回・1回ごとに全力・少ない回数が基本です。
中学生のうちは自分の体重を使った種目を中心にし、重い器具を使うトレーニングは高校生になってから少しずつ始めてください。
膝やかかとなどに痛みがあるときは、無理に続けず休みましょう。痛みが続くときは、早めに医師に相談してください。



ムリ ハ キンモツ



毎週少しずつ続けることが、いちばんの近道だよ。
よくある質問
まとめ:生まれつきの差より、自分の伸びを見よう
この記事では、ジャンプ力と遺伝の関係と、練習で伸ばせる幅について解説しました。
ジャンプ力には生まれつきの影響があるが、練習で伸ばせる部分も大きい。比べる相手は過去の自分。
| 分かっていること | 考え方 |
|---|---|
| 個人差の半分前後は遺伝 | 集団の話で、自分の上限ではない |
| 速筋が多いと高く跳びやすい | 跳び方や筋力でも高さは変わる |
| 練習で平均約8.7%高くなる | 続けた分だけ積み重なる |
| 伸び方には個人差がある | 人ではなく過去の自分と比べる |
私は元日本代表として、ジャンプ力は才能だけで決まるものではなく、続けた選手が伸びていくものだと考えています。
まずは今のジャンプ力を同じ条件で測って、1か月後の自分と比べてみてください。



まずは今の記録を測って、1か月後の自分と比べてみます!



昨日の自分より1cm高く。その積み重ねが大事だよ。
参考にした研究・資料
- Schutte NM, Nederend I, Hudziak JJ, de Geus EJC, Bartels M. Differences in Adolescent Physical Fitness: A Multivariate Approach and Meta-analysis. Behavior Genetics, 2016(2015年オンライン公開)
- Bosco C, Komi PV. Mechanical characteristics and fiber composition of human leg extensor muscles. European Journal of Applied Physiology, 1979
- Markovic G. Does plyometric training improve vertical jump height? A meta-analytical review. British Journal of Sports Medicine, 2007
- Hubal MJ, et al. Variability in muscle size and strength gain after unilateral resistance training. Medicine & Science in Sports & Exercise, 2005
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
パフォーマンスアップについては他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪










