- 反動をつけると高く跳べるけれど、なぜなのか分からない
- 「伸張反射」や「SSC」という言葉を聞いたけれど、意味がよく分からない
- 反動を上手に使えているのか、自分では判断できない
こんな悩みを解決します。
反動を使うと高く跳べるのは、しゃがみこむ短い間に、筋肉が力を出す準備を終えてから押し上げに入れるからです。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで指導してきましたが、反動の仕組みを知ると、沈み込みの深さや切りかえの速さを自分で考えられるようになります。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 反動を使うと高く跳べる理由が、研究とあわせて分かる
- 伸張反射やSSCという言葉の意味と、その役割の大きさが分かる
- 反動の効果を消してしまうくせと、反動を生かす練習の考え方が分かる
結論:反動は力を出す準備の時間を作ってくれる
結論からお伝えします。反動を使うと高く跳べるいちばんの理由は、押し上げに入る前に、筋肉がすでに大きな力を出している状態を作れることです。
止まった姿勢から跳ぶと、筋肉は力を出し始めるところから押し上げを始めます。反動を使えば、沈み込んでいる間に力の準備が終わっているので、押し上げの最初から強く床を押せるんです。
よく「バネのように跳ね返る」と説明されますが、研究を見ると、バネの働きはあっても主役ではないと考えられています。
- 押し上げの前に、筋肉が大きな力を出している状態になれる
- 腱がのびて縮む、バネのような働きが少し加わる
- 伸張反射(のばされた筋肉が縮もうとする反応)の役割は小さいと考えられている
この記事では、この3つを順番に見ていきます。
反動を使った跳び方「SSC」とは
反動を使ったジャンプでは、筋肉が一度のばされてから、すぐに縮んで力を出します。この「のびてから縮む」流れを、伸張-短縮サイクル(SSC)と呼びます。
しゃがんでからすぐ跳ぶのがSSC
垂直跳びでいうと、立った姿勢からすばやくしゃがみ、止まらずに跳び上がる動きがSSCです。研究ではこれをカウンタームーブメントジャンプと呼びます。
反対に、しゃがんだ姿勢で一度止まり、そこから跳び上がるのがスクワットジャンプです。こちらは反動を使いません。
Komi の研究(2000年・Journal of Biomechanics)では、SSCの動きは、縮むだけの動きにくらべて、同じ速さでもより大きな力が出せると説明されています。
サルくんスパイクの踏み切りも、しゃがんですぐ跳んでますね。



そう。バレーのジャンプは、ほとんどがSSCなんだ。
反動ありとなしで高さは数cm変わる
反動があるとどれくらい高く跳べるのかを調べた研究があります。
Bobbert らの研究(1996年・Medicine & Science in Sports & Exercise)は、男子のバレーボール選手6人を対象にしたものです。
その結果、しゃがんだ姿勢が同じでも、反動を使ったジャンプの方が平均で約3.4cm高く跳べていました。



ハンドウ アリ デ 平均 3.4cm タカイ
数cmと聞くと小さく感じるかもしれません。ただ、ブロックの上から打てるか、指先で触れるかの差は、このくらいの高さで決まることもあります。
反動で高く跳べる3つの理由
では、なぜ反動を使うと高く跳べるのでしょうか。研究で考えられている理由を、影響の大きい順に見ていきます。
理由1:押し上げの前に大きな力を出せる
1つ目は、押し上げに入る前に、筋肉が大きな力を出している状態になれることです。
先ほどの Bobbert らの研究では、反動を使うと、縮み始める前に筋肉が高い活動の状態と大きな力を作れていたと報告されています。
そのため、押し上げの最初の部分から大きな力が出せて、全体として多くの仕事ができていました。
Van Hooren と Zolotarjova のまとめ(2017年・Journal of Strength and Conditioning Research)は、反動ありとなしの差について、これまでの研究を整理したものです。
このまとめでは、反動ありとなしの差は、主に2つのことで説明できると結論づけられています。
- 筋肉や腱の「たるみ」が取れて、ピンと張った状態になる
- 脳から筋肉への指令が、押し上げの前に十分に高まる
反動は、筋肉を「いつでも全力で押せる状態」にしてから押し上げに入るための時間だと考えると分かりやすいです。



走り出す前に、エンジンをかけておくみたいなものですね!



いいたとえだね。かけておくから一気に押せるんだよ。
理由2:腱がバネのように働く
2つ目は、腱がのびて、そのあと縮むときにバネのような働きをすることです。
Kurokawa らの研究(2003年・Journal of Applied Physiology)は、反動を使ったジャンプ中のふくらはぎの筋肉と腱の動きを、超音波で調べたものです。
その結果、筋肉の線維が縮むことで腱がのばされ、エネルギーがたくわえられていました。たくわえられたエネルギーは、床を離れる直前の約0.1秒の間に、すばやく放出されていたと報告されています。
腱のバネが一瞬で力を返すことが、床を離れる直前に足首まわりで大きなパワーを出す助けになっていると考えられています。
ただし、反動を使った大きな垂直跳びでは、このバネの働きが高さの差に与える影響は小さいと、先ほどのまとめでは考えられています。



ケン ノ バネ ハ ワキヤク
一方で、腱のやわらかさと反動の効果に関係があるという研究もあります。
Kubo らの研究(1999年・Journal of Applied Physiology)では、腱が硬い人ほど、反動ありとなしの高さの差が小さいという関係が見られました。
腱のバネの働きには、個人差があるといえそうです。
理由3:伸張反射の役割は小さいと考えられている
3つ目は、伸張反射です。筋肉が急にのばされると、反射的に縮もうとする働きのことをいいます。
反動で高く跳べる理由として、よく伸張反射があげられます。ところが先ほどのまとめでは、反動を使った垂直跳びで伸張反射が高さに与える影響は、ないか小さいと考えられています。
また Kurokawa らの研究でも、反動の間にふくらはぎの筋肉の線維はのばされていなかったため、伸張反射がこの筋肉の働きを高めていたとは考えにくいと報告されています。



伸張反射がメインだと思ってました!



有名な説明だけど、研究を見るとそうとは言い切れないんだ。
伸張反射がまったく関係ないということではありません。
Komi の研究では、その場で跳びはねる動きや走る動きのように地面についている時間が短い動きで、伸張反射が力を大きく高めていると報告されています。



ケンキュウ ニヨッテ 考エ方 ニ 差 ガ アル
研究によって考え方に差がある部分なので、反動の効果は「伸張反射だけ」で説明できるものではないと覚えておけば十分です。
反動の効果を消してしまう3つのくせ
仕組みが分かると、反動の効果を消してしまうくせも見えてきます。どれも、反動で作った準備をむだにしてしまう動きです。
沈み込んだところで止まってしまう
1つ目は、しゃがんだところで一度止まってしまうくせです。
しゃがんで止まれば、それは反動を使わないスクワットジャンプと同じになります。せっかく作った力の準備が、止まっている間にゆるんでしまうんです。
沈み込みから跳び上がりへは、止まらずに切りかえることを意識しましょう。
深くしゃがみすぎてしまう
2つ目は、深くしゃがみすぎることです。
深くしゃがむほど押す時間は長くなりますが、切りかえに時間がかかり、試合のスピードにも合わなくなります。スパイクやブロックでは、そこまで深くしゃがむ時間がないことも多いです。
どのくらいの深さがいちばん跳べるかは人によって違うので、いろいろな深さで跳んで、自分に合う深さを探してみてください。
腕振りと沈み込みのタイミングがずれる
3つ目は、腕振りと沈み込みのタイミングがずれることです。
腕を後ろに引くのと、脚の沈み込みは同じタイミングで行います。腕だけ先に振り上げてしまうと、腕の勢いが脚の押し上げに乗りません。



ぼく、しゃがんでから一瞬止まってたかも…



動画を撮って確かめてみよう。気づけば直せるよ。
反動に頼りすぎないことも大切
反動は高く跳ぶための強い味方です。ただし、試合のすべての場面で、大きな反動を使えるとは限りません。
試合では反動をとる時間がないこともある
先ほどのまとめでは、スポーツの多くの場面では、大きな反動をとる時間がないことが多いと指摘されています。その例として、バレーボールのブロックジャンプもあげられていました。
相手の速い攻撃に合わせるブロックでは、深くしゃがむ時間はありません。小さな反動で、すばやく力を出せることが大切になります。
反動ありとなしの差が大きいほど良いとは限らない
反動ありとなしの高さの差は、反動をどれだけ使えているかの目安として使われることがあります。
ただ、先ほどのまとめでは、差が大きいことが、必ずしも良いことだとは限らないと指摘されています。
差が大きいのは、反動を上手に使えているからとは限らず、止まった姿勢からすばやく力を出すのが苦手だから、という場合もあるからです。



差が大きいと、反動が上手なんだと思ってました。



両方の高さを、どっちも伸ばしていくのが大事なんだ。
反動を生かす練習の考え方
ここまでをふまえると、練習では「反動を使って跳ぶ練習」と「止まった姿勢からすばやく跳ぶ練習」の両方が役に立ちます。
着地からすぐ跳ぶ練習で切りかえを速くする
着地からすぐに跳び上がる練習は、プライオメトリクスと呼ばれます。沈み込みから跳び上がりへの切りかえを、速くする練習です。
プライオメトリクスは週1〜2回、1回ごとに全力で、少ない回数にしぼるのが基本です。台から降りてすぐ跳ぶデプスジャンプは、ボックスジャンプの着地が安定してから取り入れてください。
止まった姿勢から跳ぶ練習で力の出し始めを速くする
しゃがんだ姿勢で2〜3秒止まってから跳ぶ練習もおすすめです。反動にたよれないので、止まった姿勢から一気に力を出す力をきたえられます。
先ほどのまとめでも、反動をとる時間がない場面のために、すばやく力を高める力をきたえることが大切だと述べられています。
- しゃがんだ姿勢で2〜3秒止まり、反動をつけずに一気に跳ぶ
- 1回ずつ全力で行い、高さが落ちてきたら終わりにする
- 着地はひざを軽く曲げて、両足でやわらかく降りる
どちらの練習でも、ジャンプは上がるときより降りるときの方が体への負担が大きくなります。ひざやかかとに痛みがあるときは無理に跳ばず、痛みが続くときは整形外科を受診してください。
よくある質問
まとめ:反動は「準備の時間」として使う
この記事では、反動を使うと高く跳べる理由と、その仕組みを解説しました。
反動で高く跳べるいちばんの理由は、押し上げの前に筋肉が大きな力を出している状態を作れること。腱のバネの働きはそれを助ける脇役で、伸張反射の役割は小さいと考えられています。
| 理由 | 研究での考え方 | 練習で意識すること |
|---|---|---|
| 力の準備ができる | いちばん大きな理由 | 止まらずに切りかえる |
| 腱のバネ | 影響は小さいが個人差あり | 着地からすぐ跳ぶ練習 |
| 伸張反射 | 役割は小さいとされる | 反射だけに頼らない |
私は元日本代表として、反動は「勢い」ではなく「準備」だと考えています。仕組みを知ったうえで、反動を使う跳び方と、反動にたよらない跳び方の両方をきたえていきましょう。



止まらずに切りかえる練習から、やってみます!



止まって跳ぶ練習も合わせてやると、もっと伸びるよ。
参考にした研究・資料
- Bobbert MF, et al. Why is countermovement jump height greater than squat jump height? Medicine & Science in Sports & Exercise, 1996
- Van Hooren B, Zolotarjova J. The Difference Between Countermovement and Squat Jump Performances: A Review of Underlying Mechanisms With Practical Applications. Journal of Strength and Conditioning Research, 2017
- Kurokawa S, et al. Interaction between fascicles and tendinous structures during counter movement jumping investigated in vivo. Journal of Applied Physiology, 2003
- Kubo K, Kawakami Y, Fukunaga T. Influence of elastic properties of tendon structures on jump performance in humans. Journal of Applied Physiology, 1999
- Komi PV. Stretch-shortening cycle: a powerful model to study normal and fatigued muscle. Journal of Biomechanics, 2000
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
パフォーマンスアップについては他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪










