- 痛みは引いたのに、どこから練習を戻せばいいのか分からない
- 早く戻りたい気持ちと、またやりそうな不安のあいだで決めきれない
- 復帰した直後に、同じ場所をまた痛めたことがある
こんな悩みを解決します。
ケガからの復帰で大事なのは、痛みが消えた日ではなく、同じ動きができた日を復帰の合図にすることです。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで中学生以上の選手を指導してきましたが、同じ場所を何度も痛める選手には共通点があります。痛みが消えた日に、いきなり全体練習へ戻っていることです。
段階を1つずつ確かめながら戻した選手のほうが、結果として早くコートに立てています。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 練習に戻す5段階と、それぞれの段階で何をするのかが分かる
- 次の段階へ進んでいいかを自分で確かめる目安が分かる
- 同じ場所をくり返し痛めないために、戻る前に整えることが分かる
それでは、くわしく見ていきましょう。
結論:復帰の合図は「痛みが消えた日」ではなく「同じ動きができた日」

結論からお伝えします。練習へ戻る順番は、① 痛みなく日常の動きができる。
② 走る・跳ぶ・打つを1段階ずつ確かめる。この2つの流れで進めてください。
痛みは、ケガが治った合図ではありません。安静にしていれば痛みは早く引きますが、傷んだ組織が元の強さを取り戻すまでには、そこからさらに時間がかかります。
つまり痛みが消えた時点は、スタート地点に立っただけの状態です。ここで全体練習に飛び込むと、いちばん再発しやすいタイミングと重なってしまいます。
サルくん痛くないなら、もう治ったんじゃないんですか?



痛みが消えるのと、力が戻るのは別の話なんです。
判断の軸にしてほしいのが、ケガをする前と同じ動きが、同じ速さでできるかどうか。片足で跳べるか、全力で切り返せるか、着地で体がぶれないか。ここが復帰の合図になります。
- 歩く・階段の上り下り・しゃがむ動きで痛みが出ないか
- 痛めた側と反対側で、動きに差が残っていないか
- 医師や治療者から、運動の許可が出ているか
3つ目はとくに大切です。骨や靭帯のケガは、外から見えない部分の回復具合で復帰時期が変わります。診断を受けているなら、その指示を何より優先してください。
この記事で紹介する段階は、あくまで許可が出たあとに、自分で確かめながら進めるための道すじです。
ケガから戻るときに再発が多い理由
なぜ、復帰直後に同じ場所をやってしまうのでしょうか。理由は大きく2つあります。
痛みが消えても、組織は元の強さに戻っていない
痛みは、体を守るための警報のようなものです。傷んだ部分を動かさないように、痛みという形で知らせてくれています。
ただし警報が止まるのは、回復が完全に終わったときではありません。炎症が落ち着いた段階で、痛みだけが先に消えていきます。



イタミハ カイフクノ ゴールデハナイ
痛みが引いてからも、傷んだ組織は元の強さに戻る途中です。この時期に全力の動きを入れると、まだ弱い部分に一気に力がかかります。
とくに足首の捻挫は、痛みが早く引くぶん戻るのも早くなりがちです。捻挫のあとの経過はバレーで足首を捻挫したら|対処の順番と復帰までの目安にまとめました。
休んだぶん、体の他の部分も落ちている
もう1つ見落とされやすいのが、休んでいるあいだの体の変化です。痛めた場所だけでなく、全身の力と感覚が下がっています。
数週間動かないだけでも、筋肉は細くなり、バランスをとる感覚もにぶります。心肺機能も落ちるので、同じ練習量でも体が早く疲れます。
疲れた体は、着地や切り返しで姿勢が崩れやすくなります。つまり再発のきっかけは、痛めた場所そのものではなく、落ちた体力と崩れた姿勢から始まることが多いんです。



痛めた場所以外も戻さないとダメなのか…。



だから段階を分けて戻していきます。
肉離れのように筋肉そのものを痛めた場合は、この落ち込みがさらに大きくなります。太ももやふくらはぎの経過はバレーの肉離れ|太もも・ふくらはぎの対処と復帰の目安を参考にしてください。
練習に戻す5段階|1段階ずつ確かめて進める


復帰を5つの段階に分け、1つずつ確かめながら上げていきます。
大事なのは順番です。走れないうちに跳ばない、跳べないうちに打たない。この順番を守るだけで、再発はかなり減らせます。



段階を飛ばしたくなるのは、だいたい試合前ですね…。



そこで飛ばすと、試合そのものに出られなくなります。
段階1〜3:日常の動きから走るまで
最初の段階でやることは、特別なトレーニングではありません。歩く・しゃがむ・階段を上り下りする、この3つを痛みなくこなせるかの確認です。
ここで痛みが出るなら、まだ練習の話をする時期ではありません。日常の動きで痛むうちは、コートに立っても動きをかばうだけになります。
次は、痛めた側に体重を乗せる練習です。
両足で立つ、片足で立つ、片足で30秒バランスをとる。この順番なら、負担を少しずつ増やせます。
- 片足で30秒、ふらつかずに立てるか
- しゃがんで立ち上がる動きで痛みが出ないか
- 痛めた側と反対側で、動かせる範囲が同じか
3つとも問題なければ、走る段階です。ただし、いきなりダッシュはしません。まっすぐのジョギングを短い距離から始めてください。
まっすぐ走れるようになったら、次は方向を変える動きです。バレーで痛めやすいのは、まっすぐ走っているときではなく、止まる瞬間と切り返す瞬間だからです。



マガル トマルガ イチバン アブナイ
段階4〜5:跳ぶ・打つを戻す
走る動きが問題なくできたら、跳ぶ段階へ進みます。まずはその場での小さなジャンプから始め、着地の衝撃に体を慣らしていきます。
順番としては、その場ジャンプ、ブロックジャンプ、助走をつけたジャンプ。この3つを別々の日に分けて確かめると、どこで痛みが出るかが分かりやすくなります。
跳ぶ段階でとくに見てほしいのが着地です。着地の姿勢が崩れたまま本数を増やすと、膝や足首に負担が集まります。
着地の基本はスパイクの着地の基本|膝の怪我を防ぐ両足着地で確認できます。
最後が、打つ段階と実戦です。助走からのスパイクは本数を半分に抑え、いきなり全力では打ちません。
全体練習へ戻るのは、跳ぶ・打つを痛みなくこなせた翌日に、痛みが戻っていないと確認できてからです。



半分の本数なら、今日からできそうです。



その半分を、痛みなく2回できたら次へ進めますよ。
次の段階へ進むかを決める3つの目安
段階を上げるかどうかは、気持ちではなく体の反応で決めます。判断がぶれないよう、目安を3つに絞りました。
目安①:翌朝に痛みが戻っていない
いちばん分かりやすいのが翌朝の状態です。練習した日の夜は平気でも、翌朝に痛みや腫れが出るなら、その日の量は多すぎたことになります。
翌朝に何も出なければ、その段階はクリアです。逆に痛みが戻ったら、1つ前の段階へ下げて、もう一度そこからやり直してください。
目安②:痛めた側と反対側で、同じ動きができる
次に見るのが左右差です。片足でのジャンプ、片足での着地、片足立ちの安定感。これらを左右で比べると、残っている差がはっきり出ます。
痛めた側だけ着地でぐらつくなら、まだ支える力が戻っていません。この状態で全体練習へ入ると、無意識にかばう動きが出て、別の場所を痛める原因になります。



見た目には分からないですね。



だから左右を比べるんです。感覚だけだと気づけません。
目安③:動きに迷いがなく、全力で踏み込める
最後は気持ちの面です。ケガをした場面が頭に残っていると、その動きだけ無意識にブレーキがかかります。
踏み込む瞬間にためらいが出るなら、まだ体か気持ちのどちらかが戻りきっていない証拠です。
迷いながら動くほうが、思い切って動くよりもケガをしやすくなります。
不安が抜けないまま日にちだけが過ぎるときは、段階を1つ下げて成功体験を積み直すほうが早く戻れます。



マヨイナガラノ ジャンプ ハ アブナイ
復帰でありがちな3つの失敗
指導の現場でよく見かける失敗を3つ挙げます。どれも、本人には悪気がないものばかりです。
失敗①:痛みが消えた日に全体練習へ戻る
いちばん多いのがこれです。痛みが消えた翌日に、以前と同じメニューへそのまま合流してしまいます。
全体練習は、量も強度も自分では調整できません。レシーブの本数もジャンプの回数も、まわりに合わせて増えていきます。
戻る日は、まず自分で量を決められる練習から始めてください。全体練習は、その次の段階です。
失敗②:試合の日程から段階を逆算する
2つ目は、大会までの日数から逆算して段階を飛ばすパターンです。気持ちは痛いほど分かりますが、体の回復は日程に合わせてくれません。
飛ばした段階は、あとから必ず穴になります。試合に間に合っても、その試合の途中で悪化すれば、そこから先の期間をまるごと失うことになるんです。



間に合わせたい気持ちが強くて…。



間に合わせて悪化するほうが、失う時間は長くなりますよ。
失敗③:痛む場所をかばって別の場所を痛める
3つ目は、かばう動きが原因で起きる連鎖です。右足首をかばって左足の着地が増え、今度は左膝が痛くなる。こうした流れは珍しくありません。
かばう動きが出るのは、まだ段階が早い合図です。フォームを直す前に、痛めた側で支えられる状態に戻すのが先になります。
- 着地の音が、片方だけ大きくなっている
- 走り出しで、いつも同じ足から出るようになった
- 練習後に、痛めた場所ではない部分が張っている
まわりから見てもらうと分かりやすいので、チームメイトに着地を見てもらうのもおすすめです。
再発させないために、戻る前に整える3つ
同じ場所をくり返さないために、復帰の前後で整えておきたいことが3つあります。
動かせる範囲を元に戻す
まず取り組みたいのが、動かせる範囲です。ケガのあとは、痛みをかばうあいだに関節が動きにくくなっています。
足首が硬いままだと、着地の衝撃を膝や股関節へ逃がせません。チェックのしかたはバレーの足首ストレッチ|硬さのチェックと広げる5つの方法にまとめました。
落ちた筋力を戻す
次が筋力です。休んでいた期間が長いほど、支える力は落ちています。
大事なのは、跳ぶ前に支える力を戻すこと。ゆっくりした動作のスクワットやカーフレイズから始め、体重を支えられる状態を作ってから跳ぶ練習へ進みます。



跳べるようになってから鍛えるのかと思っていました。



順番が逆です。支えられる体を先に作ります。
痛めた原因そのものを見直す
3つ目が原因の見直しです。ここを飛ばすと、同じ動き・同じ環境でまた同じ場所を痛めます。
シューズのすり減り、着地のクセ、練習量が急に増えた時期。原因はたいてい、この3つのどれかに残っています。
- シューズの底が片減りしていないか、クッションが落ちていないか
- 着地や切り返しで、膝が内側に入っていないか
- 休む直前の2週間で、練習量が急に増えていなかったか



ゲンイン ヲ ノコスト マタ オナジ バショ
痛めた場所を守る道具も、戻ってすぐの時期には助けになります。足首まわりの装具はバレーボール足首サポーターの選び方|捻挫予防と再発防止が参考になります。
ただし、サポーターは痛みを消す道具ではありません。つけているから大丈夫と考えて量を戻すと、かえって悪化することがあります。
よくある質問
まとめ:段階を1つずつ確かめるほうが、結果として早く戻れる
ケガからの復帰は、痛みが消えた日ではなく、同じ動きができた日を合図にします。日常の動き、支える力、走る、跳ぶ、打つ。この順番を1つずつ確かめながら上げていくのが、いちばん確実な戻し方です。
判断の軸は翌朝の痛み。戻ったら1つ前の段階へ下げる。
| 段階 | やること | 進んでいい目安 |
|---|---|---|
| 日常の動き | 歩く・しゃがむ・階段 | 痛みなくこなせる |
| 支える力 | 体重を乗せる・片足立ち | 片足で30秒ふらつかない |
| 走る | ジョギング→切り返し | 翌朝に痛みが戻らない |
| 跳ぶ | その場→ブロック→助走 | 着地で姿勢が崩れない |
| 打つ・実戦 | 半分の本数から | 左右で同じ動きができる |
私が見てきたなかでも、段階を飛ばさずに戻した選手のほうが、結局は早くコートへ帰ってきています。急いだ選手ほど、戻ってはまた休むをくり返していました。
焦る気持ちが出たときは、失うのが数日なのか、シーズン全部なのかを思い出してください。



まず今日、片足で30秒立ってみます。



そこが最初の段階ですよ。順番に進めていきましょう。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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