- 左利きは有利と言われるのに、自分は思ったほど決まらない
- ライトに回されたものの、どう打てばいいのか教わったことがない
- 教本も動画も右利き向けで、左右を置きかえるうちに分からなくなる
こんな悩みを解決します。
左利きスパイカーで大事なのは、特別な打ち方を覚えることではなく、強みが出る場所に立つことです。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
そして私自身も左利きです。現役時代からずっと、右利き向けに書かれた説明を頭の中で左右ひっくり返しながらやってきました。
10年以上スクールで指導してきて、左利きの選手が伸び悩む理由はだいたい同じでした。フォームではなく、立つ場所とトスの合わせ方でつまずいているんですよね。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 左利きがライトで強くなる理由が、体の向きで理解できる
- 右利きの説明を左右入れかえる時の、迷わない置きかえ方が分かる
- ライトのトス(バックトス)に合わせるコツと練習法が分かる
それでは、くわしく見ていきましょう。
結論:左利きの強みは打ち方ではなく打つ場所に出る

左利きスパイカーの考え方は、次の3つに集約されます。ここが決まれば、打ち方そのものは右利きの選手とまったく同じ手順で身につきます。
- フォームは右利きの説明の左右を入れかえるだけでよい
- 主戦場は前衛ライト(コートの右前)。ここで強みが最大になる
- ライトへのトスはバックトスで上がってくると知っておく
左利きは有利、という言葉はよく聞きます。ところが何がどう有利なのかを説明されないまま、なんとなくライトに置かれている選手がとても多いんですよね。
有利さの正体はシンプルです。ライトに立つと、上がってきたボールが自分の利き手側、つまり体の正面から少し左に来るからです。
体の正面で捉えられれば、腕を体の前に持ってくる必要がありません。力が逃げず、コースも選び放題になります。
反対に、右利きの選手が同じライトに立つと、ボールは利き手と反対側に来ます。体を開いて腕を伸ばす形になり、打てるコースが減ってしまうわけです。
左利きの武器は、腕力でも身長でもなく「立つ場所」で生まれる。
だからこの記事では、フォームの話よりも先に、場所とトスの話をしていきます。
サルくん左利きだから打ち方が違うと思ってた…



打ち方は同じだよ。強みが出る場所が違うだけなんだ。



ウチ方ヨリ立ツ場所
左利きがライトで強くなる3つの理由


なぜライトなのかを、3つに分けて説明します。理由が分かると、練習で何を伸ばせばいいのかもはっきりしてきます。
理由1:体を開かずに正面で打てる
いちばん大きいのがこれです。ライトのトスは、コートの右側、アンテナに向かって上がってきます。
左利きの選手から見ると、そのボールは打つ手と同じ側にあります。だから体を正面に向けたまま、頭の上でボールを捉えられるわけです。
体が開くとは、胸がネットに対して真正面を向いてしまう状態のことです。
この形になると下半身の力が腕まで伝わらず、ボールが軽くなります。
ライトに立った左利きは、そもそも体を開く必要がありません。打点を落とさずに、ひねりの力をそのままボールへ渡せるのが最初の利点です。
理由2:クロスの角度を広く使える
2つ目が、打てるコースの広さです。ライトから見て対角線にあたるクロスは、コートをいちばん長く使える方向になります。
左利きがライトから打つと、この長い対角線が体の正面に開けます。腕を無理に体の前へ回さなくても、そのまま振り抜けば深いクロスへ飛んでいく形です。
角度がつけられると、相手のブロックの脇を通す幅も広がります。ブロックを抜くというより、ブロックの外側にコートが余っている状態を作れるわけですね。
もちろんストレート(ライン際)も打てます。こちらは体の向きを少し変えて、胸をライン方向へ送り出すと収まりやすくなります。
コースの打ち分けそのものは右利きと考え方が同じなので、こちらも合わせて確認してみてください。
理由3:相手ブロッカーが見慣れていない
3つ目は相手の側の事情です。バレーはレフトから打つ場面が最も多く、ブロッカーは右利きのスイングを見て育ちます。
そこへ左利きが出てくると、腕が出てくる側もコースの想定も逆になります。跳ぶタイミングは合っていても、手の出し方が半歩ぶん遅れることがあるんですよね。
ただし、この利点は試合が進むと薄れていきます。何本も見れば相手も慣れるからです。
だからこそ、慣れられる前のセット序盤に、いろいろなコースを試しておくのが左利きの上手な戦い方になります。
私が現役の時も、序盤にわざと何本かコースを見せておいて、勝負どころで逆を突く形をよく使っていました。相手のブロッカーが何を苦手にしているかは、打ってみないと分からないからです。
| 立つ場所 | 利き手とボールの位置関係 | 打ちやすさ |
|---|---|---|
| 左利き × ライト | ボールが利き手側に来る | 体を開かず正面で打てる |
| 左利き × レフト | ボールが体の外側に来る | ストレートは打ちやすいがクロスが窮屈 |
| 右利き × ライト | ボールが体の外側に来る | 体を開きやすくコースが減る |



左利きってだけで、相手が困ることもあるんだ!



ただし慣れられるからね。序盤に見せて、あとで裏をかくのがコツだよ。
左利きスパイカーの打ち方|右利きの説明を置きかえる4つの場面
打ち方そのものは、右利きの選手とまったく同じです。助走から着地までの5段階を、左右だけ入れかえて覚えてください。
迷いやすいのは次の4つの場面だけです。ここさえ整理しておけば、どの教本を読んでも自分に置きかえられます。
助走と踏み切りは左足→右足の順になる
助走は3歩から始めます。最初の1歩をゆっくり、最後の1歩を速くするリズムは、利き手に関係なく共通です。
右利きの説明では「右足→左足で踏み切る」と書かれています。左利きはこれが逆になり、左足で踏み込んでから右足を出し、ほぼ同時に両足で跳ぶ形です。
最後の右足は、寄せるだけの足ではありません。前へ進む力を上へ変えるための、いちばん大事な踏切足になります。
このとき右足のつま先を、やや左方向へ向けておきます。つま先の向きが体をひねる軸になり、空中で回るきっかけを作ってくれます。
つま先が正面を向いたままだと、体をひねれずに前へ流れます。前に流れる感覚がある選手は、まずここを見直してみてください。
空中姿勢とスイングは左手を耳の後ろへ
跳んだあとは、背骨を軸にして体を水平方向にひねります。腰を反らせるのではなく、ひねる。ここも左右が逆になるだけで考え方は同じです。
打つ左手は、肘を高く上げて手のひらを左耳の後ろまで引きます。
右手は前に伸ばして、ボールとの距離を測りながらバランスを取る役割です。
腕は伸ばしたまま振らず、肘を一度たたんでから当たる直前に伸ばします。ムチのようにしならせると、腕の速さがそのままボールに乗ります。
ミートは手のひらの真ん中で包み込み、手の甲が飛ばしたい方向を向くまで振り抜いてください。
包み込んで押し出す。最後は手の甲が打球方向へ。
なお、立ったままフォームを固める練習では右足を前に出します。この形でひねりとスイングだけを何度も反復すると、跳んだ時にも同じ形が出るようになります。



右足を前……つい左足を出しちゃう。



最初は鏡を見ながらで大丈夫ですよ。右利きの子と向かい合って、鏡写しでやってみるのもいい方法です。
ライトで打つコツ|バックトスに合わせる
ライトに立つと決まったら、次はトスの合わせ方です。ここが左利きスパイカーの本当の勝負どころになります。
ライトへのトスはバックトスで上がってくる
まず知っておきたいのが、トスの上がり方です。セッターはふだんレフトを向いて構えるので、右にいる自分へは振り向かず後ろへ上げてきます。
つまり、ライトへのトスは基本的にバックトスです。前トスと比べると、セッターにとって距離感がつかみにくい上げ方になります。
だから、少し長い球や短い球が来ることを前提に構えておいてください。トスが多少ずれても打ち切れる選手が、ライトでは信頼されます。
長いトスはアンテナの外へ逃げていくので、体をアンテナ側へ運びながら追いかけます。短いトスは自分が待ってから、最後の1歩を詰めて合わせます。
打つ前にブロックとレシーバーのどちらと勝負するか決める
ライトは、相手のブロックが少ない場面が生まれやすい場所でもあります。だからこそ、打つ前に「誰と勝負するか」を決めておくと決定率が変わります。
ブロックが1枚しか来ていないなら、その脇を通すのがいちばん確実です。
2枚そろっているなら、無理に抜かず手に当ててコート外へ出す選び方もあります。
私は2009年の東アジア競技大会で、自分をマークするブロッカーがストレートを締めるのが上手くないと感じ、そのコースを増やして得点につなげました。相手一人ひとりの特徴を見て決める、という考え方です。
セット序盤に何本か試して、後半に向けて決定率を上げていく。この順番が、スパイカーとしてとても大事になります。



トスがずれるのは、セッターのせいじゃないんだね。



バックトスは難しいからね。打ち切ってあげると、セッターも思い切って上げられるようになるよ。
左利きがつまずきやすい2つの場面と直し方
強みがはっきりしているぶん、逆に苦しくなる場面もあります。よくある2つを、直し方とセットで整理しました。
レフトに回された時にクロスが窮屈になる
チーム事情でレフトに入ることもあります。この時、ボールは自分の体の外側、左のアンテナ側に来ます。
すると腕を体の前に回して打つ形になり、クロスの角度がつけにくくなります。無理に角度をつけようとして体が開き、ボールが浮いてしまう選手が多いんですよね。
対処は2つあります。1つ目は、得意なストレート方向を主軸にすることです。
体の外にあるボールをそのまま前へ運べるので、こちらは右利きより打ちやすい形になります。
2つ目が、ブロックの内側を鋭角に抜くインナーを覚えることです。角度の広いクロスが使えないぶん、内側を狙う技術が武器になります。
二段トスが上がった時に合わせられない
もう1つが、レシーブが崩れた場面です。ライトへの二段トスは高くて長い球になりやすく、タイミングが取りづらくなります。
ここで多いのが、早く跳びすぎて力が抜けた状態で当ててしまう形です。高い球ほど、待ってから助走を始める勇気がいります。
目安は、ボールが上がりきって落ち始めるのを見てから1歩目を出すことです。落ちてくる速さに合わせて、最後の1歩で距離を詰めます。
ネットから遠い位置に上がった時は、無理に強く打たず、相手コートの奥へ深く運ぶ選択も持っておいてください。



高いトス、いつも早く跳んじゃう…



待つのが怖いだけだよ。落ち始めを見てから、で間に合うからね。
左利きの強みを伸ばす練習
最後に、左利きの選手に取り組んでほしい練習を2つ紹介します。どちらもチーム練習のなかに入れられる形にしました。
右足を前にした立位フォームをくり返す
跳ばずにできる練習です。右足を前に出して立ち、体のひねりと腕の振り、ミートまでを一続きで反復します。
跳びながら腕も直そうとすると、どちらも中途半端になります。動かない状態でフォームを固めてから、下半身を足していくのがいちばん近道です。
慣れてきたら2歩助走を足して、踏み切りまでつなげます。
この時も、最後は左足→右足の順であることを毎回声に出して確認してください。
自分のフォームをスマホで撮って、理想とする選手の動きと見比べる方法も有効です。左利きの選手の映像を探しておくと、左右を置きかえずに比べられます。
セッターとバックトスの距離を合わせる
もう1つが、セッターとの2人練習です。ライトのトスはバックトスなので、距離感を合わせる時間がどうしても必要になります。
長さを3種類決めて、順番に上げてもらうのがおすすめです。アンテナいっぱいの長い球、真ん中あたり、少し短い球の3つで十分でしょう。
打つ側は、それぞれで助走を始めるタイミングを変えます。長い球は早めに走り出し、短い球は待ってから詰める、という具合です。
同じ助走でどれも打とうとすると、いつまでも合いません。
数をこなすと、セッターの手を離れた瞬間に長さが分かるようになります。ここまで来れば、ライトはチームでいちばん計算できる攻撃になります。



セッターと2人で残ってやってみる!



いいね。左利きは合わせた時間がそのまま武器になるからね。
よくある質問
まとめ:左利きは立つ場所とトスで武器になる
左利きスパイカーの打ち方は、右利きの左右を入れかえるだけで足ります。特別なフォームを探すより、強みが出る場所に立つほうがずっと早く伸びます。
ライトに立ち、バックトスに合わせる。この2つで左利きは武器になる。
| 場面 | 左利きが意識すること |
|---|---|
| 立つ場所 | 前衛ライト。ボールが利き手側に来る |
| 踏み切り | 左足→右足で、ほぼ同時に両足で跳ぶ |
| 空中姿勢 | 左肘を高く上げ、手のひらを耳の後ろへ |
| トス | バックトスで来る前提。長短3種類で合わせる |
| コース | 序盤に見せて、勝負どころで逆を突く |
私は元日本代表として、そして同じ左利きの選手として、置きかえに悩む時間はもったいないと感じています。
左右を入れかえるルールを一度決めてしまえば、あとは右利きの選手と同じだけ練習できるからです。



まずはライトで、バックトスを打ち込んでみる。



それでいいよ。合わせた本数だけ、確実に決まるようになるからね。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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