- 試合前にじっくり伸ばすと、ジャンプが落ちると聞いて不安になった
- 静的ストレッチは、試合前にやめたほうがいいのか知りたい
- 体が硬いので、アップの前に少しは伸ばしておきたい
こんな悩みを解決します。
試合前の静的ストレッチは、長く伸ばすほどジャンプが落ちやすいという研究があります。
ただし、短い時間で、そのあとに動きのあるアップを入れれば、影響はほとんど気にしなくてよいことも分かってきました。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで指導してきましたが、「静的ストレッチは全部ダメ」と思いこんで、硬いところをほぐさないまま跳んでいる選手も少なくありません。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 静的ストレッチでジャンプがどれくらい落ちるのかが、研究の数字で分かる
- 落ちやすい伸ばし方と、気にしなくてよい伸ばし方の違いが分かる
- 試合前のアップで、静的ストレッチをどこに入れればいいかが分かる
結論:長く伸ばすと落ちる、短く伸ばして動けば大丈夫
結論からお伝えします。1か所を60秒以上じっと伸ばすと、直後のジャンプなどの力は落ちやすくなります。一方で、30秒ほどまでなら影響は小さいという結果が多く出ています。
さらに、伸ばしたあとにジョグや動的ストレッチ、軽いジャンプなどを入れた研究では、はっきりした低下は見られていません。
つまり問題は「静的ストレッチをやること」ではなく、長く伸ばして、そのまま跳ぶことなんです。
- 1か所60秒以上の静的ストレッチは、直後の力が落ちやすい
- 30秒ほどまでの短い静的ストレッチなら、影響は小さい
- 静的ストレッチのあとに動きのあるアップを入れれば、ほとんど気にしなくてよい
この記事では、研究の数字、落ちる理由、伸ばし方による違い、試合前のアップの組み立て方の順に見ていきます。
静的ストレッチでジャンプはどれくらい落ちる?研究の数字
まずは、静的ストレッチのあとに、ジャンプなどの力がどれくらい変わるのかを見てみましょう。
多くの研究をまとめると「数%」の低下
Behm らのまとめの研究(2016年・応用生理学の専門誌)は、ストレッチの直後に力がどう変わるかを調べた、たくさんの研究を集めて整理したものです。
その結果、ストレッチの直後の変化は次のとおりでした。
| ストレッチの種類 | 直後の力の変化(平均) |
|---|---|
| 静的ストレッチ(止めて伸ばす) | 約3.7%の低下 |
| 動的ストレッチ(動きながら伸ばす) | 約1.3%の向上 |
Simic らのまとめの研究(2013年・スカンジナビアのスポーツ医学誌)でも、ジャンプのような瞬発的な動きは、静的ストレッチのあとに平均で約2%低くなっていました。
サルくんやっぱり、ちょっとは落ちるんですね!



うん。でも、その「ちょっと」は伸ばし方しだいで変わるんだ。
伸ばす時間が長いほど落ちやすい
注目したいのは、伸ばす時間によって低下の大きさが違うことです。
Behm らのまとめでは、1つの筋肉を伸ばした時間が60秒未満なら低下は約1.1%、60秒以上だと約4.6%でした。
Kay と Blazevich のまとめの研究(2012年・アメリカスポーツ医学会の学術誌)では、106本の研究を整理しています。
30秒未満なら低下は約1.1%、30〜45秒でも約1.9%で、はっきりした悪影響はないという結果でした。
そのうえで、はっきり落ちやすくなるのは、1か所を60秒以上伸ばしたときだとまとめています。



60ビョウ イジョウ デ オチヤスイ



30秒くらいなら、そこまで気にしなくていいんですね。
バレー選手で差が出なかった研究もある
Dalrymple らの研究(2010年・アメリカの筋力トレーニング専門誌)は、大学の女子バレーボール選手12人を調べたものです。
5分の軽いジョグのあと、静的ストレッチ、動的ストレッチ、ストレッチなしの3つを試してから、反動をつけたジャンプを跳び比べました。
その結果、3つの条件の間で、ジャンプの高さにはっきりした差は出ていません。
ただし研究チームは、人によって反応がちがったことも報告しています。同じアップでも、跳びやすくなる人と、そうでない人がいるということです。



人によって合う・合わないがあるんですね。



だから、自分の体で跳び比べて確かめるのがいちばんだよ。
静的ストレッチでジャンプが落ちる理由
では、なぜ長く伸ばすと力が落ちるのでしょうか。仕組みを知ると、どう伸ばせばいいかが見えてきます。
理由1:筋肉と腱がゆるみ、反動が使いにくくなる
ジャンプは、沈み込みで筋肉と腱を引きのばし、その反動を使って跳び上がる動きです。
Behm らのまとめでは、ストレッチのあとに、筋肉や腱のかたさ(バネのような張り)が一時的に下がることが原因の1つとして挙げられています。
バネがゆるむと、沈み込みでためた力を素早く返しにくくなります。その結果、跳び上がる勢いが少し落ちてしまうわけです。
反動を使う仕組みは、こちらの記事でくわしく解説しています。
理由2:筋肉に力を入れる指令が弱まる
もう1つの理由は、脳や神経から筋肉への指令です。
Behm らのまとめでは、静的ストレッチのあとに筋肉の働きが下がることも、低下の理由として考えられています。
Stevanovic らの研究(2019年・スポーツ科学の国際誌)では、18歳前後のバスケットボール選手12人を調べました。
静的ストレッチのあと、筋肉に指令を伝える神経の働きを示す値が下がり、ジャンプの高さも約2.6%低くなっています。



ノバシスギ ハ チカラ ノ スイッチ ガ ニブル



だから、伸ばしたあとに「動いてスイッチを入れ直す」ことが大切なんだ。
伸ばし方で変わる:落ちる伸ばし方と気にしなくていい伸ばし方
ここまでの研究から、気をつけたい伸ばし方と、気にしなくてよい伸ばし方が見えてきます。
落ちやすいのは「長く・最後に・それだけ」
ジャンプが落ちやすいのは、次のような伸ばし方です。
- 1か所を60秒以上、じっくり伸ばし続ける
- アップの最後に静的ストレッチをして、そのままコートに入る
- アップが静的ストレッチだけで、体を動かす準備がない
Simic らのまとめの研究でも、静的ストレッチだけでアップを終えるのは避けたほうがよいと結論づけています。



試合前に長座でじっくり伸ばしてから入ってました…。



伸ばすこと自体は悪くないよ。順番と長さを変えればいいんだ。
短く伸ばして、そのあと動けば大丈夫
一方で、次のような伸ばし方なら、ジャンプへの影響はほとんど気にしなくてよいと考えられます。
- 1か所30秒ほどまでの短い時間で伸ばす
- 伸ばしたあとに、動的ストレッチや軽いジャンプを入れる
- 硬さが気になる場所だけにしぼって伸ばす
先ほどの Stevanovic らの研究では、静的ストレッチで下がったジャンプの高さが、そのあと8分間のバスケットボールの練習形式のアップをすると、もとの高さまで戻っていました。
Behm らのまとめでも、ストレッチのあとに動きのある運動を入れた研究では、はっきりした影響は見られていません。



伸ばしたあとに動けば、取り戻せるんですね!
動的ストレッチは跳ぶ準備に向いている
動きながら関節を大きく動かす動的ストレッチは、ジャンプの前の準備に向いています。
Perrier らの研究(2011年・アメリカの筋力トレーニング専門誌)では、運動習慣のある男性21人を調べました。
5分のジョグのあと、動的ストレッチをしたときの反動ジャンプは約43.0cmでした。ストレッチなしは約41.4cm、静的ストレッチは約41.9cmです。
この研究では、静的ストレッチでも、ストレッチなしより低くなってはいませんでした。そのうえで、動的ストレッチがいちばん高く跳べています。
体の柔らかさは、静的でも動的でも同じくらい増えていました。跳ぶ前は、動きながら伸ばすほうが高さと柔らかさの両方を取りやすいということです。
練習前の動的ストレッチのやり方は、こちらの記事で紹介しています。
試合前のアップで静的ストレッチを入れる場所
最後に、試合前のアップで静的ストレッチをどこに入れればいいかを整理しておきましょう。
基本の順番は「温める→短く伸ばす→動く→跳ぶ」
研究の結果をふまえると、試合前のアップは次の順番がおすすめです。
ポイントは、静的ストレッチをアップの最後に置かず、そのあとに必ず動く時間をつくることです。



最後は跳ぶ動きで終わる。これだけで、伸ばしたぶんのマイナスは気にしなくていいよ。
公式練習の前にアップを終えておく
試合では、ネットを使える公式練習の時間が数分しかないことも多いです。
公式練習の中で体を一から温めることはできないので、アップは会場の練習場所などで先に終わらせておきましょう。
公式練習の時間と流れは、こちらの記事でまとめています。
じっくり伸ばすのは試合や練習のあと
柔らかさを高めるために、時間をかけてじっくり伸ばしたいときは、練習や試合のあと、またはお風呂上がりがおすすめです。
Behm らのまとめでは、ストレッチで広がった関節の動く範囲は、多くが30分もたたないうちに元に戻るとされています。
体を柔らかくするのは、毎日の積み重ねと考えておきましょう。



じっくり伸ばすのは、練習のあとにします!
硬い体を柔らかくしていく手順は、こちらの記事を参考にしてください。
痛みがあるときは伸ばしてごまかさない
伸ばすと痛い、跳ぶとひざやかかとが痛むというときは、ストレッチで無理にほぐそうとしないでください。
とくに成長期の選手は、ひざやかかとに痛みが出やすい時期です。痛みが続くときは、整形外科を受診しましょう。



痛みは体からのサインだから、無理をしないことが大切だよ。
よくある質問
まとめ:静的ストレッチは「短く伸ばして、動いてから跳ぶ」
この記事では、試合前の静的ストレッチがジャンプに与える影響を、研究の数字と仕組みから解説しました。
1か所を60秒以上じっと伸ばしてそのまま跳ぶと、ジャンプは落ちやすくなります。短く伸ばして、そのあと動的ストレッチと軽いジャンプを入れれば、ほとんど気にしなくて大丈夫です。
私は元日本代表として、アップは「何をやるか」より「どの順番で、どこまでやるか」で、試合の最初のジャンプが変わると考えています。
次の試合では、静的ストレッチの長さと順番を見直して、最初の1本から高く跳べる準備をしてみてください。



次の試合から、伸ばすのは短く、最後は跳んで終わります!



その順番が身につけば、最初の1本から思いきり跳べるよ。
参考にした研究・資料
- Behm DG, Blazevich AJ, Kay AD, McHugh M. Acute effects of muscle stretching on physical performance, range of motion, and injury incidence in healthy active individuals: a systematic review. Applied Physiology, Nutrition, and Metabolism, 2016
- Kay AD, Blazevich AJ. Effect of acute static stretch on maximal muscle performance: a systematic review. Medicine and Science in Sports and Exercise, 2012
- Simic L, Sarabon N, Markovic G. Does pre-exercise static stretching inhibit maximal muscular performance? A meta-analytical review. Scandinavian Journal of Medicine & Science in Sports, 2013
- Dalrymple KJ, et al. Effect of static and dynamic stretching on vertical jump performance in collegiate women volleyball players. Journal of Strength and Conditioning Research, 2010
- Stevanovic VB, et al. Sport-Specific Warm-Up Attenuates Static Stretching-Induced Negative Effects on Vertical Jump But Not Neuromuscular Excitability in Basketball Players. Journal of Sports Science and Medicine, 2019
- Perrier ET, Pavol MJ, Hoffman MA. The acute effects of a warm-up including static or dynamic stretching on countermovement jump height, reaction time, and flexibility. Journal of Strength and Conditioning Research, 2011
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
パフォーマンスアップについては他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪










