助走が速いほど高く跳べる?|スパイクの助走速度と跳躍の関係

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助走の速さとジャンプの高さの関係を解説するアイキャッチ
  • 助走を速くすれば、そのぶん高く跳べるのか知りたい
  • 助走を速くしたら、かえってジャンプが低くなった気がする
  • 自分にちょうどいい助走の速さが分からない

こんな悩みを解決します。

助走をつけたジャンプは、その場で跳ぶジャンプより高く跳べます。ただし、助走は速ければ速いほどよいわけではありません。

私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。

10年以上スクールで指導してきましたが、助走の速さと高さの関係は、選手が思いこみで間違えやすいポイントの1つです。

ぜひこの記事を参考にしてみてください。

この記事を読むことで得られる3つのこと
  • 助走をつけると何cm高く跳べるのかが、研究の数字で分かる
  • 助走の勢いがジャンプの高さに変わる仕組みが分かる
  • 速すぎる助走で高く跳べなくなる理由と、自分に合う速さの見つけ方が分かる
目次

結論:助走は「上に変えられる速さ」まで速くする

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結論からお伝えします。助走の速さが高さになるのは、その勢いを踏み切りで上向きに変えられたときだけです。

研究では、助走をつけたスパイクジャンプの方が、その場の垂直跳びより高く跳べていました。

一方で、助走の速さとジャンプの高さの関係は、研究によって結果が分かれています。

速さそのものより、「速さを上に変える力」の方が高さを左右している、と考えると分かりやすいです。

助走の速さで押さえたい3つのこと
  • 助走をつけると、その場で跳ぶより高く跳べる
  • 高さを決めるのは、前向きの勢いを上向きに変える踏み切り
  • 変えきれないほど速い助走は、前に流れて高さにならない

この記事では、研究の数字、高さに変わる仕組み、自分に合う速さの見つけ方の順に見ていきます。

助走をつけると何cm高く跳べるのか

まずは、助走ありとなしで、どれくらい高さが変わるのかを確かめてみましょう。

その場のジャンプより平均で約5cm高かった

Hsieh と Christiansen の研究(2010年・International Journal of Sports Science and Coaching)があります。

この研究は、アメリカの大学1部リーグの女子バレーボール選手10人を調べたものです。

4歩助走のスパイクジャンプと、その場で反動をつけて跳ぶ垂直跳びを比べました。

その結果、ジャンプの高さはスパイクジャンプが平均約38cm、その場の垂直跳びが平均約33cmで、助走をつけた方が約5cm高くなっていました。

サルくん

助走をつけるだけで、5cmも変わるんですね!

あげば

そう。ただ、差の大きさは研究や選手によってちがうんだ。

ここでの「ジャンプの高さ」は、床を離れてから体がどれだけ上がったかを測ったものです。

腕をのばして届く高さ(到達点)とは測り方がちがうので、数字を比べるときは気をつけましょう。

垂直跳びが高い選手ほどスパイクジャンプも高い

もう1つ大事なのは、助走のジャンプとその場のジャンプが、まったく別物ではないことです。

Wagner らの研究(2009年・International Journal of Sports Medicine)では、経験のあるバレーボール選手16人を調べています。

スパイクジャンプの高さは、反動ありの垂直跳びや、反動なしの垂直跳びの高さとも、はっきり関係していました。

もとになる「跳ぶ力」が高い選手ほど、助走をつけたときも高く跳べるということです。

バボット

ジョソウ ノ タカサ ハ トブチカラ ガ ドダイ

助走は跳ぶ力の代わりではなく、跳ぶ力に上乗せするものだと考えておきましょう。

跳ぶ力そのものを高める考え方は、こちらの記事で解説しています。

助走の速さとジャンプの高さの関係

では、助走を速くすればするほど高く跳べるのでしょうか。ここは研究によって結果が分かれています。

速い選手ほど高く跳べたという研究

先ほどの Wagner らの研究では、助走中の体の重心(体全体の重さの中心)の前向きの速さが速い選手ほど、スパイクジャンプが高い傾向がありました。

Ikeda らの研究(2018年・Journal of Strength and Conditioning Research)は、日本の大学の女子バレーボール選手17人を調べたものです。

この研究でも、助走の3歩目が床についたときの前向きの速さが速い選手ほど、スパイクジャンプが高い傾向がありました。

サルくん

やっぱり、速い方が高く跳べるんですね!

あげば

ちょっと待って。この研究にはもう1つ大事な結果があるんだ。

速さとの関係が見られなかった研究もある

一方で、Hsieh と Christiansen の研究では、助走の前向きの速さとジャンプの高さの間に、はっきりした関係は見られませんでした。

研究チームは、助走で高く跳べる理由は速さそのものではなく、踏み切りで力を出す速さや大きさにある可能性が高いと考えています。

結果が分かれる理由は、調べた選手のレベルや人数、男女のちがいなどが考えられます。

Fuchs らの研究(2019年・Journal of Sports Sciences)では、男子と女子の選手30人を比べています。

その結果、助走の速さや歩幅、踏み切りでの力の使い方に男女差があったと報告されました。

バボット

ハヤサ ダケデハ タカサ ハ キマラナイ

どの研究にも共通しているのは、「速いだけ」では高さにならないという点です。ここからは、助走の勢いが高さに変わる仕組みを見ていきます。

助走の勢いが高さに変わる3つの仕組み

助走の勢いは、踏み切りでいくつかの動きがそろってはじめて、上に跳ぶ力に変わります。研究で分かっている3つの仕組みを見ていきましょう。

仕組み1:前向きの速さを上向きの速さに変える

1つ目は、助走で生まれた前向きの速さを、踏み切りで上向きの速さに変えることです。

先ほどの Ikeda らの研究では、助走の3歩目が床についてから踏み切るまでに、前向きの速さが大きく減っている選手ほど、高く跳べていました。

減った前向きの速さは、上向きの速さに変わっていると考えられます。

勢いは「止める」のではなく「上へ変える」ものです。ブレーキをかけて止めてしまうと、せっかくの勢いはただのロスになります。

サルくん

止めるのと変えるのは、ちがうんですね。

あげば

そう。スピードを殺さずに、真上へ向きを変えるんだ。

右利きなら右足→左足の順で、ほぼ同時に両足で踏み切ります。

左足のつま先をやや右に向けて軸を作り、太ももの外側とお尻の大きな筋肉で、前の勢いを上へ変えていきます。

仕組み2:重心をすばやく下げて上へ切りかえる

2つ目は、踏み切りの直前に重心をすばやく下げ、すぐに上向きへ切りかえることです。

Wagner らの研究では、助走中に重心がいちばん低くなった位置が低い選手ほど、スパイクジャンプが高い傾向がありました。

ヨーロッパの国際大会で選手のスパイクを調べた Kuhlmann らの報告(2011年・国際スポーツバイオメカニクス学会)もあります。

この報告では、重心を速く下げ、その動きを速く上向きに切りかえられるほど、高く跳べるとまとめられています。

バボット

ハヤク サゲテ ハヤク アガル

ただし、深く沈めばよいわけではありません。沈んだところで止まってしまうと、反動の効果が消えてしまいます。

反動の仕組みは、こちらの記事でくわしく解説しています。

仕組み3:腕振りと脚を伸ばす速さを合わせる

3つ目は、腕振りと、脚を伸ばして床を押す速さです。

Fuchs らの研究(2019年・Journal of Science and Medicine in Sport)は、トップレベルの女子選手15人のスパイクジャンプを調べたものです。

高く跳ぶためのポイントとして、助走の勢いを効率よく変えること、大きく力強い腕振り、足首とひざを速く伸ばすことの3つが挙げられていました。

サルくん

助走と腕振りと脚、全部つながっているんですね!

あげば

そのとおり。どれか1つだけでは高さにならないんだよ。

腕振りが高さを生む仕組みは、こちらの記事で解説しています。

速すぎる助走で高く跳べなくなる理由

ここまでの仕組みが分かると、速すぎる助走がなぜ高さにつながらないのかも見えてきます。

上へ変えられる速さには上限がある

速い勢いを上に変えるには、踏み切りの短い時間で、それに見合う大きな力を出さなければなりません。

脚の力が追いつかないほど速く走りこむと、勢いを受け止めきれず、残った勢いは前へ進む動きになってしまいます。

陸上の跳躍を理論的に調べた Alexander の研究(1990年・英国王立協会の学術誌)があります。

この研究では、高さを競う走り高跳びの選手は、遠くへ跳ぶ走り幅跳びの選手より、かなりおさえた速さで助走していると説明されています。

高さを出すための助走は、全力で走る速さとはちがうということです。

サルくん

全力で走れば高く跳べると思っていました…

あげば

大事なのは、自分が上に変えられるいちばん速い速さなんだ。

速すぎると「前に流れる」「かぶる」

速すぎる助走は、バレーボールならではのミスにもつながります。

勢いを上へ変えきれないと、空中で体が前へ流れてしまいます。

空中で両足が前に出て体が「く」の字になるのは、踏み切りで前に流れているサインです。

また、最初から全力で走ると、ボールを追い越して頭の真上で打つ「かぶった」状態になりやすくなります。

速すぎる助走で起きやすいこと
  • 勢いを上へ変えきれず、体が前へ流れる
  • ボールを追い越して、かぶってしまう
  • ネットに近づきすぎて、タッチネットになりやすい

こうしたミスが増えたときは、助走を速くする前に、踏み切りで上へ変えられているかを見直しましょう。

自分に合う助走の速さの見つけ方

最後に、自分にちょうどいい助走の速さを見つける考え方を紹介します。

最初の1歩はゆっくり、最後の1歩を速く

まず押さえたいのは、助走は同じ速さで走るものではないということです。

最初の1歩はゆっくり、最後の1歩をいちばん速くが基本です。最初から全力で走ると、最後に加速する余白がなくなり、ボールとの距離も合わせにくくなります。

あげば

速さは、最後の1歩で一番上がるようにしよう。

3歩助走と4歩助走のリズムや足の運びは、こちらの記事でくわしく解説しています。

速さを変えて到達点を比べる

自分に合う速さは、実際に跳び比べると分かりやすくなります。

跳び比べの手順
  • いつもの助走で、壁やネットのそばで到達点を2回測る
  • 少しおさえた速さの助走で、同じように2回測る
  • 少し速めの助走で、同じように2回測る
  • いちばん高く届いた速さと、そのとき前に流れていないかを確かめる

速くしても到達点が変わらない、または低くなるときは、今の踏み切りで上に変えられる速さを超えていると考えられます。

サルくん

速さを3つ試して、比べてみます!

到達点の測り方は、こちらの記事を参考にしてください。

速さを上げるのは踏み切りが追いついてから

助走をもっと速くしたいときは、先に踏み切りで勢いを受け止める力を育てるのが順番です。

Ikeda らの研究では、スパイクジャンプの高さは、その場の垂直跳びより立ち幅跳びとの関係の方が強かったと報告されています。

研究チームは、上へ跳ぶ力だけでなく、前へ跳ぶ力も別々に鍛えることが大切だと考えています。

速い助走は、踏み切る脚に大きな負担がかかります。

ジャンプは上がるときより降りるときの方がひざへの負担が大きいので、着地はひざを軽く曲げて両足でやわらかく降りましょう。

ひざやかかとに痛みがあるときは無理に跳ばないでください。痛みが続くときは整形外科を受診しましょう。

よくある質問

助走をつけると何cmくらい高く跳べますか?

研究や選手によって差があります。大学の女子選手を調べた研究では、4歩助走のスパイクジャンプがその場の垂直跳びより平均で約5cm高くなっていました。

助走は速ければ速いほどいいですか?

いいえ。助走の勢いが高さになるのは、踏み切りで上向きに変えられたときだけです。変えきれないほど速いと、体が前に流れて高さにつながりません。

3歩助走と4歩助走では、どちらが高く跳べますか?

4歩助走の方が加速の余裕はありますが、そのぶんタイミングを合わせるのが難しくなります。中学生や初心者は、まず3歩助走でリズムと踏み切りを安定させましょう。

助走を速くすると前に流れてしまいます。どうすればいいですか?

助走の速さを少しおさえて、踏み切りで上へ変えられる速さにもどしましょう。踏み切りが安定してから、少しずつ速さを上げていくのがおすすめです。

まとめ:助走の速さは踏み切りとセットで考える

この記事では、助走の速さとジャンプの高さの関係を、研究の数字と仕組みから解説しました。

助走をつけると高く跳べますが、高さになるのは、踏み切りで上向きに変えられた分の勢いだけです。

私は元日本代表として、ジャンプの高さは脚の力だけでなく、助走から踏み切りまでのつながりでも伸ばせると考えています。

まずは速さを変えて跳び比べ、自分が上に変えられる速さを確かめてみてください。

サルくん

次の練習で、助走の速さを変えて到達点を測ってみます!

あげば

自分に合う速さが分かれば、踏み切りの練習もはっきりするよ。

参考にした研究・資料

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

パフォーマンスアップについては他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪

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この記事を書いた人

バレーボール・ビーチバレーボール元日本代表。
バレーボールスクールを10年間運営。

【保有資格】
日本スポーツ協会公認バレーボールコーチ4

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