- ケガで練習に入れず、コートの外で座っているだけになっている
- 休んでいる間にどんどん置いていかれる気がして焦る
- 何をすれば復帰したときに困らないのか分からない
こんな悩みを解決します。
ケガで休む間にやることは、落ちるものを減らすことと、見る目を伸ばすことの2つです。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで中学生や高校生を指導していますが、離脱した選手の戻り方には毎回はっきりした差が出ます。
差がついているのは、休んでいた期間の長さではなく、その間に何を続けていたかでした。ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 休んでいる間に落ちるものと落ちないものが分かる
- 体育館と家でやることが具体的に決まる
- 焦りで再発させないための考え方が分かる
それでは、くわしく見ていきましょう。
結論:休む期間は「落とさない」と「見る目を伸ばす」に使う
先に結論をお伝えします。ケガで休む間にやることは、落ちるものを減らしながら、コートを見る目を伸ばすこと、この2つに絞られます。
痛めた場所は、指示された期間だけ休ませるしかありません。ここは自分の努力でどうにかできる部分ではないので、医師や専門家の判断にそのまま従います。
一方で、休んでいる間に落ちていくものは痛めた場所だけではありません。
心肺機能、痛めていない側の筋力、生活リズム、そしてチームの中での立ち位置まで、放っておくと同時に落ちていきます。
ここが復帰の速さを分けます。痛めた場所が治っても、他が全部落ちていたら、戻ってからもう一度体を作り直すことになるからです。
サルくん治るまで、何もしないで待つしかないと思ってました…。



待つのは痛めた場所だけですよ。他は動かせます。
もう1つが、見る目を伸ばすことです。
プレーしている間は、自分のボールを追うことで精一杯になります。コート全体を落ち着いて見られる時間は、実はほとんどありません。
見学している時間は、その全体を上から見る側に回れる貴重な期間です。相手のセッターの配球の癖や、味方が崩れる場面の共通点は、外から見ているほうがはっきり分かります。
私が見てきた中でも、離脱の期間に判断が良くなって戻ってきた選手は少なくありません。技術は落ちても、状況を読む力は落ちないからです。
休んでいる期間は、止まっている時間ではなく使い道を選べる時間です。この前提が決まれば、あとは中身を決めるだけになります。



止マルノハ 痛メタ場所ダケ
何もしないで休むと、同時に3つが落ちる
やることを決めないまま休むと、思っていたより多くのものが落ちていきます。実際に復帰の場面でつまずくのは、痛めた場所ではないことのほうが多いです。
- 心肺機能と、痛めていない側の筋力
- 生活のリズムと食事の量
- チームの中での自分の役割
1つ目は、心肺機能と痛めていない側の筋力です。
体を動かさない日が続くと、心肺機能はかなり早い段階から落ちはじめます。1週間ほどで息が上がりやすくなったと感じる選手は多く、2週間を超えると本人にもはっきり分かるようになります。
筋力も同じで、使っていない部分から順に落ちます。足首を痛めて歩く量が減れば、太ももやお尻の筋肉まで一緒に細くなっていきます。
ここが落ちた状態で全体練習に戻ると、動きについていけずに別の場所を痛めることがあります。復帰直後のケガが多いのは、これが理由です。



痛めてないところまで落ちるんですか!?



動かさない場所は、みんな同じように落ちますよ。
2つ目は、生活のリズムと食事の量です。
練習がない日が続くと、寝る時間が後ろにずれていきます。動いていないぶんお腹も減らないので、食べる量も自然に減ります。
ところが体は、痛めた場所を治すために材料を必要としている時期です。食べる量を減らすと、治りに使う分まで足りなくなってしまいます。



治ス材料モ 食事カラ
3つ目は、チームの中での自分の役割です。
見学が続くと、練習の輪の中に入るきっかけがつかみにくくなります。声もかけづらくなり、気づくと体育館の隅で1人になっていることがあります。
これは本人の性格の問題ではなく、単純に立ち位置がなくなっているだけです。役割を1つ持っておくだけで、この状態は防げます。
落ちるのは痛めた場所ではなく、その周りにあるものです。ここを分かっていると、休んでいる間にやることが自然に決まります。
ケガで休む間にやる5つ
ここからが具体的な中身です。休んでいる期間にやることを、体育館でやる3つと、家でやる2つに分けて整理します。
★注意点として、①の内容は必ず医師や理学療法士に確認してから決めてください。同じ足首のケガでも、どこまで動かしてよいかは状態によって変わります。
①〜③:体育館でやる3つ
1つ目は、動かせるところを動かすことです。
足首を痛めているなら上半身と体幹、指を痛めているなら下半身は動かせることが多くあります。何をどこまでやってよいかを、受診したときに具体的に聞いておきます。
このとき「運動していいですか」と聞くのではなく、「自転車こぎはいいですか」「腹筋はいいですか」と種目で聞くのがコツです。答えが具体的に返ってくるので、その日から動けます。



聞き方を具体的にすると、答えも具体的になりますよ。
心肺機能を保つ運動が許可されるなら、そこを優先します。ここが残っていると、復帰後の戻りがまったく違ってきます。
体幹のトレーニングも、痛めた場所に負担がかからない種目なら続けられる場合があります。
2つ目は、見る場所を決めてから見学することです。
ただ座って眺めているだけの見学は、ほとんど記憶に残りません。時間だけが過ぎて、終わってから何も残らないという状態になります。
そこで、その日に見るテーマを1つだけ決めます。「今日はセッターの動き出しだけを見る」と決めて、それ以外は追いません。
見るテーマは、自分のポジションと関係するものにします。レシーバーなら相手スパイカーの助走の入り方、セッターなら相手ブロックの寄り方といった具合です。



1つに決めると、いつもより見える気がします。



全部見ヨウトスルト 何モ残ラナイ
自分のチームの弱点も、外から見ると分かりやすくなります。同じ場面で崩れているなら、そこがチームの課題です。
3つ目は、チームでの役割を1つ持つことです。
球出し、記録、タイム計測、ボール拾いなど、動ける範囲でできる仕事があります。顧問の先生に「今できることはありますか」と聞いて、1つ引き受けてしまいます。
役割があると、練習の輪の中に自然に居場所ができます。声も出しやすくなり、復帰したときに戻りづらいという状態を避けられます。
記録の仕事は、見る目を伸ばす練習も兼ねられるのでおすすめです。数字を取っていると、感覚では気づけなかった傾向が見えてきます。
④〜⑤:家でやる2つ
4つ目は、睡眠と食事をいつも通りに保つことです。
寝る時間は、練習があった時期と同じにしておきます。ここがずれると復帰したときに体が起きず、最初の1週間がまるまる調整に消えてしまいます。
食事の量も減らさないでください。動いていないと食欲は落ちますが、体は痛めた場所を治すために材料を使っている最中です。
たんぱく質と、骨や腱の材料になる栄養は、いつもどおり取っておきたい時期です。体重が増えるのを気にして減らすと、治りが遅くなることがあります。



動いてないのに食べていいのか、迷ってました。



治すのにも体力を使っていますよ。減らさなくて大丈夫です。
どうしても量が入らない日は、1回の食事を軽くして回数を分ける方法もあります。
5つ目は、動画とノートで課題を1つに絞ることです。
ケガをする前に撮った自分のプレー動画を見返します。プレーしている最中には気づけなかった動きが、外から見ると見つかります。
見つけた課題は、ノートに1行だけ書いておきます。復帰したときに直す場所を先に決めておくと、戻ってからの練習に迷いがなくなります。
書くのは1つだけ。多く書くほど、戻ってから何もできなくなる。



戻ル前ニ 直ス場所ヲ決メル
ノートは誰かに見せるためのものではなく、自分のために書くものです。うまくまとめようとしなくて大丈夫です。
やってはいけない3つ
反対に、休んでいる間にやってしまうと復帰が遠のくこともあります。よく見かけるものを3つ挙げます。
- 痛みを隠して練習に出る
- 部活から完全に離れる
- 戻る日を自分だけで決める
1つ目は、痛みを隠して練習に出ることです。
試合が近いときほど、これをやってしまう選手がいます。周りに悪いと感じたり、外されたくないと思ったりする気持ちは、私もよく分かります。
ただ、痛みをかばった動きは、必ず別の場所に負担をかけます。足首をかばって膝を痛める、というのはとてもよくある流れです。
結果として、休む期間が最初より長くなります。隠して出た1日で、2週間を失うことがあります。



隠して出るのが、いちばん遠回りになりますよ。
2つ目は、部活から完全に離れることです。
行っても何もできないから、と休んでしまう気持ちは自然なものです。ただ、離れている期間が長くなるほど、戻るきっかけがつかみにくくなります。
体育館に顔を出すだけでも、チームの状態が分かります。行ける日は行っておくほうが、復帰したときの気持ちが楽になります。
もちろん、松葉杖などで移動そのものが負担になる時期は無理をしなくてかまいません。



顔を出せる日は、行くだけでも意味がありますよ。
3つ目は、戻る日を自分だけで決めることです。
大会の日程から逆算して、この日までに治すと決めてしまう選手がいます。気持ちは分かるのですが、これは再発の入口になります。
治り方は日程に合わせてくれません。戻る判断は、痛みが消えたかどうかではなく、同じ動きができるかどうかで決めます。



痛くなくなったら、もう大丈夫かと思ってました。



痛ミガ消エテモ 元ノ強サデハナイ
戻す手順は段階を踏むほど、結果として早く戻れます。
休む期間の長さ別に、やることを決めておく
休む期間によって、優先することは変わります。目安として、期間別に整理しておきます。
| 休む期間 | 優先してやること |
|---|---|
| 1週間まで | 生活リズムを崩さない・見学のテーマを決める |
| 2〜4週間 | 許可された範囲で心肺機能を保つ・チームの役割を持つ |
| 1〜3か月 | 痛めていない部分の筋力づくり・課題の絞り込み |
| 3か月以上 | 復帰計画を専門家と作る・戻る段階を先に決めておく |
1週間ほどの離脱なら、体力はそれほど落ちません。この期間は生活リズムを守ることと、見学の質を上げることに集中すれば十分です。
2週間を超えてくると、心肺機能の低下が本人にも分かるようになります。許可が出る範囲で、息が上がる運動を週に何回か入れておきたい時期です。
1か月を超える離脱では、痛めていない部分の筋力づくりが効いてきます。ここを続けた選手と、まったく動かなかった選手では、復帰後の1か月に大きな差が出ます。
3か月以上になる場合は、復帰までの計画を医師や理学療法士と一緒に作ってください。1人で判断する範囲を超えている期間です。



期間で優先が変わります。長引くほど、専門家と一緒に決めましょう。
期間の目安は、あくまで一般的な考え方です。実際の判断は必ず診てもらっている先生に相談してください。
気持ちが落ちたときの整え方
体のこと以上に難しいのが、気持ちの部分です。見学が続くと、自分だけ止まっているように感じます。
私のところにも、ケガの期間に「もう戻れない気がする」と相談に来る選手がいます。そう感じるのは自然なことで、弱いからではありません。
比べる相手を、周りから先週の自分に変える
いちばんつらくなるのは、練習しているチームメイトと自分を比べたときです。
相手は毎日ボールを触っているので、比べれば必ず差が開きます。この比べ方をしている限り、休んでいる期間はずっと苦しいままになります。
そこで、比べる相手を先週の自分に変えます。先週より歩ける距離が伸びた、先週より痛みが出る場面が減った、という比べ方です。
比べる相手は周りではなく、先週の自分。ここを変えるだけで、見え方はかなり変わります。



先週より良くなってることなら、ありそうです。
復帰したときの目標を、1つだけ決めておく
もう1つは、戻ったときの目標を先に決めておくことです。
目標といっても大きなものでなくてかまいません。「戻ったらレシーブの一歩目を早く出す」といった、動作で言える1つで十分です。
決まっていると、見学の時間がその準備の時間になります。同じ景色を見ていても、意味がまったく違ってきます。



目標ガアレバ 見学モ練習
チームから離れている感覚が強い日は、控えのときの過ごし方も参考になります。出番がない時間の使い方は、考え方が近いからです。
気持ちが重い日が長く続くときは、1人で抱えずに保護者や顧問の先生に話してみてください。話すだけで軽くなることもあります。
よくある質問
まとめ
ケガで休む期間は、止まっている時間ではありません。落ちるものを減らしながら、見る目を伸ばす時間として使えます。
痛めた場所は休ませ、それ以外は動かし続ける。この切り分けができている選手ほど、戻ってからの立ち上がりが早くなります。
| 場面 | やること |
|---|---|
| 受診したとき | 種目を挙げて、やってよい範囲を具体的に聞く |
| 体育館にいる時間 | 見るテーマを1つ決めて見学する |
| 練習中の立ち位置 | 球出し・記録など役割を1つ引き受ける |
| 家で過ごす時間 | 寝る時間と食べる量をいつも通りに保つ |
| 復帰の準備 | 動画を見て、直す場所を1行だけ書いておく |
| 焦りが出たとき | 比べる相手を先週の自分に変える |
| 戻る日を決めるとき | 日程からではなく、動きができるかで判断する |
私は指導する立場として、ケガの期間をどう使ったかは復帰後にはっきり出ると感じています。
同じ1か月でも、何もせずに待った選手と、動かせるところを動かし続けた選手では、戻ったときの体がまるで違います。
痛めた場所の治り方だけは変えられませんが、それ以外の部分は今日から選べます。



まずは、見るテーマを1つ決めてみます!



それで十分ですよ。焦らずいきましょう。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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