- 相手のエースが前衛に来るたびに、背の低いブロッカーが止めに行っている
- マッチアップという言葉は聞くけれど、何をどう合わせるのかわからない
- オーダーを1つずらすと何が変わるのか、自信をもって説明できない
こんな悩みを解決します。
マッチアップとは、ネットをはさんで自分たちの誰が相手の誰と向き合うかという組み合わせのことで、スタートの並び順を決めた時点でほぼ決まります。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
スパイカーとして大切にしてきたのは、相手のどのブロッカーと勝負するかという視点です。その勝負をチーム全体で有利にするのが、並び順で作るマッチアップになります。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- マッチアップが何を指すのか、ブロックとサーブの2つの面からわかる
- スタートのローテーションをずらすと、組み合わせがどう変わるかわかる
- 相手の並びを読み、自分たちのオーダーに生かす手順がわかる
それでは、くわしく見ていきましょう。
結論:マッチアップは「相手エースの前に誰を立たせるか」を並び順で決めること

バレーは6人が順番に回るので、相手と向き合う組み合わせもローテーションごとに変わります。この組み合わせを、試合の前から自分たちに有利な形へ寄せておくのがマッチアップの考え方です。
合わせる相手の中心は、相手チームで一番点をとる選手、つまりエースになります。
- 相手エースが前衛にいる時間に、自分たちの高いブロッカーを前衛に置く
- 自分たちのセッターが前衛の時間を、相手エースが後衛の時間に重ねる
- 自分たちの強いサーバーを、相手が崩れやすいローテーションにぶつける
とはいえ、6通りすべてを完璧に合わせることはできません。全部を合わせるのではなく、一番失点しやすい組み合わせを減らす。これがマッチアップの現実的なゴールです。
サルくん相手に合わせて、並び方を変えるってこと?



そう。自分たちの並びを相手の並びと重ねて考えるんだよ。
並び順そのものの決め方は、先に別の記事で押さえておくと理解が早くなります。
マッチアップには「ブロック」と「サーブ」の2つがある
マッチアップと聞くと、スパイカーとブロッカーの向き合いを思い浮かべる人が多いはずです。ただ実際の試合では、もう1つサーブの組み合わせも同じくらい点差に響きます。
ブロックのマッチアップ:ネットをはさんで向き合う3人
前衛の3人は、ネットをはさんで相手の前衛3人と向き合います。自分たちから見て、次のような組み合わせになります。
- 自分たちの前衛ライト(2番)⇔ 相手の前衛レフト(4番)
- 自分たちの前衛センター(3番)⇔ 相手の前衛センター(3番)
- 自分たちの前衛レフト(4番)⇔ 相手の前衛ライト(2番)
相手のエースは、多くのチームでレフトから打ってきます。つまり、相手エースを正面で止めに行くのは、自分たちのライト側に立つブロッカーです。
ここで問題になるのがセッターです。セッターが前衛にいる3ローテーションの間は、ライト側のブロックにセッターが入ることになります。
セッターの背が低いチームだと、相手エースに高さで勝てない時間が生まれてしまいます。



セッター前衛ノ時 ライトノ壁ガ低クナル
サーブのマッチアップ:誰のサーブが相手のどの並びに当たるか
もう1つは、自分たちのサーバーと相手のサーブレシーブの組み合わせです。サーブ順はスタートの並びで決まるので、誰のサーブが相手のどのローテーションに当たるかも、並び順しだいで変わります。
相手にも、崩れやすいローテーションがあります。
- サーブレシーブが苦手な選手が受ける位置に出てくる並び
- セッターが前衛にいて、攻撃が2枚になる並び
そこへ自分たちの一番強いサーバーの順番が回ってくれば、連続得点のチャンスが増えます。反対に、強いサーバーが相手の一番強い並びに毎回当たると、せっかくのサーブ力が生かしにくくなるんですよね。



サーブ順も、相手との組み合わせだったんだ!
どこを狙ってサーブを打つかの考え方は、こちらの記事でくわしく解説しています。
マッチアップを有利にする3つの方法
ここからは、実際に組み合わせを変える方法です。使える手は大きく分けて3つあります。
スタートのローテーションをずらす
いちばん基本になるのが、スタートの位置をずらす方法です。対角のペアはそのままに、セッターを何番から始めるかだけを変えます。
1つずらすと、6人全員の組み合わせが1つずつ変わります。たとえば相手と同じ形で始めると、自分たちのセッターと相手のエースが同じ時間帯に前衛へ上がりやすくなります。
そこで、スタートを半分(3つ)ずらすと、セッターが前衛にいる時間と相手エースが前衛にいる時間の重なりを大きく減らせます。
サーブ権のやりとりで1つずつズレが生まれるため、ぴったり消せるわけではありません。それでも、失点しやすい組み合わせの時間を短くするには十分な効果があります。



ずらすと、うちの得意な並びまで変わりませんか?



変わります。だから得意な並びとの両立を考えるんです。
最初にサーブかレシーブかを選ぶ
組み合わせは、どちらのチームが先にサーブを打つかでも1つ分変わります。
サーブ権をとったチームだけが回るので、同じ並びでもサーブから始めるか、レシーブから始めるかでズレ方が違ってくるためです。
ただし、先にサーブかレシーブかを選べるのは、試合前のトスに勝った時と、最終セットの前のトスに勝った時だけです。途中のセットでは、前のセットで先にサーブを打たなかったチームがサーブから始めます。
セットの始め方の正式な決まりは、日本バレーボール協会の競技規則で公開されています。
選べる場面は限られますが、トスに勝ったら、コートより先に組み合わせで考えるという意識をもっておくと、判断がぶれにくくなります。



トスニ勝ッタラ 組ミ合ワセヲ先ニ考エル
選手交代で組み合わせを変える
並び順を変えられるのはセットの始まりだけですが、試合の途中でも選手交代で組み合わせを変えることはできます。
- 相手エースが前衛に来る時だけ、背の高い選手を前衛に入れる
- セッターとオポジットを同時に入れ替えて、前衛の攻撃を3枚に保つ
- 相手の崩れやすい並びに合わせて、サーブの得意な選手を入れる
交代には回数の上限があるので、どこで使うかは試合前に決めておくのが安全です。前衛の攻撃を3枚に保つ交代は、2枚替えという形でよく使われます。



交代でも、相手との組み合わせを変えられるんだね。
2枚替えの狙いと手順は、別の記事で順番に説明しています。
相手の並び順を読んでオーダーに生かす手順


マッチアップを考えるうえで、一番の壁は相手の並びがわからないことです。
オーダー用紙はセットごとに出しますが、相手が何番から始めるかは、セットが始まるまで見えないのが基本です。
だからこそ、読む材料を集めて予想する必要があります。次の順番で進めると、迷わずに組み立てられます。
途中のセットでは、相手が前のセットと同じ並びで来ることもあれば、こちらの動きを読んでずらしてくることもあります。
予想が外れた時の手当てまで決めておくと、読み合いで慌てずにすみます。



外れた時の交代まで決めておけば、落ち着いて見られますね。
相手のどこを見てメモするかは、試合前と1セット目のチェック項目としてまとめてあります。
マッチアップでよくある3つの失敗
組み合わせを考え始めると、つい相手ばかり見てしまいます。ここでは、並び順を相手に合わせる時に起こりやすい失敗を3つ挙げます。
失敗1:相手に合わせすぎて自分たちの強い並びを崩す
一番多いのがこの失敗です。
相手エースを避けることだけを考えてスタートをずらした結果、サーブレシーブの得意な選手が同時に後衛へ下がる並びができてしまうことがあります。
マッチアップはあくまで上乗せの工夫です。自分たちが点をとれる並びを先に守り、そのうえで合わせられる分だけ合わせる順番にしましょう。



相手を見る前に、まず自分たちの強さを守ろう。
失敗2:相手もずらしてくることを考えていない
こちらが組み合わせを考えるように、相手も同じことを考えています。
前のセットと同じ並びで来ると決めつけて、1通りの案しか持っていないと、相手がずらしてきた時に打つ手がなくなります。
相手が同じ並びで来た場合と、ずらしてきた場合の2案を用意しておくと安心です。どちらになっても、交代やタイムアウトで立て直せます。



同じ並びで来ると思い込んで、痛い目を見たことがあります…
失敗3:選手が並びを覚えきれずに反則が起きる
セットごとに並びを変えると、選手が自分の位置やサーブ順を覚えきれないことがあります。特に経験の浅いチームでは、並びを変えたセットでローテーションの反則が出やすくなります。
新チームや中学生のチームなら、まずは1つの形を固定して練習するのが先です。組み合わせを変えるのは、6通りの動きを全員が迷わずこなせるようになってからでも遅くありません。



並びを覚えるのが先、合わせるのはその後です。



毎セット変わったら、ぼくも迷っちゃいそう…
私自身、国際大会の決勝で、自分をマークするブロッカーの特徴を見てコースを変え、得点を重ねたことがあります。
個人でもチームでも、相手を知ってから勝負する場所を選ぶという考え方は同じです。
スパイカー1人ひとりが誰と勝負するかを選ぶ考え方は、こちらの記事で紹介しています。
よくある質問
まとめ:自分たちの強い並びを守りながら、相手エースに合わせる
マッチアップは、ネットをはさんで誰と誰が向き合うかという組み合わせです。スタートの並び順で大きく決まり、途中は交代で調整します。
一番失点しやすい組み合わせを見つけて、その時間を短くする。
| 方法 | できるタイミング | 変わること |
|---|---|---|
| スタートのローテーションをずらす | 各セットの始まり | 6人全員の向き合う相手 |
| 先にサーブかレシーブかを選ぶ | トスに勝った時だけ | 組み合わせのズレ方(1つ分) |
| 選手を交代する | 試合の途中 | その時間だけの組み合わせ |
私は元日本代表として多くの試合を戦ってきました。
同じメンバーでも、相手との組み合わせを意識するだけで戦い方の幅は広がります。まずは相手エースとセッターが当たる時間を数えるところから始めてみてください。



次の試合では、相手エースのスタート位置をメモしてみます!



いいですね。1つメモできれば、組み合わせは考えられますよ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
バレーボールの戦術については他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪
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