- 寝不足の日は、ジャンプが低くなる気がする
- 睡眠がジャンプ力にどれくらい関係するのか知りたい
- 夜遅くまで起きている日が多く、練習の成果が出るか不安
こんな悩みを解決します。
睡眠不足はジャンプの高さそのものより、夕方の練習・くり返しのジャンプ・着地の安定に響きやすいことが、研究から見えてきています。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
研究では、ひと晩眠らなかっただけで垂直跳びが落ちたという報告もあれば、ほとんど変わらなかったという報告もあります。
結果に差がある一方で、眠りが足りない状態が続くと、体の動きがぶれやすくなる点はくり返し示されています。
この記事では、睡眠とジャンプの関係を研究をもとに整理し、伸ばすための眠り方を紹介します。ぜひ参考にしてみてください。
- 睡眠不足がジャンプにどう影響するのか、研究でわかる
- 寝不足で影響が出やすい場面がわかる
- ジャンプ力を伸ばすための眠り方と、寝不足の日の練習の考え方がわかる
結論:寝不足は「くり返し・夕方・着地」に響きやすい
結論からお伝えします。寝不足の日でも1回だけ全力で跳ぶ高さは保てることがありますが、跳ぶ回数が増える場面・夕方以降・着地の安定には影響が出やすくなります。
バレーは、1回だけ跳んで終わる競技ではありません。ブロックとスパイクを何十回もくり返し、そのたびに着地します。
だからこそ、睡眠はジャンプ力を伸ばすトレーニングと同じくらい大切な土台になるんです。
サルくん寝不足でも、1回なら普通に跳べる気がしていました…。
- ひと晩の寝不足で高さが落ちるかは、研究によって差がある
- 寝不足が続くと、着地や動きの安定がくずれやすい
- 中高生は8〜10時間を目安に、毎日の眠りを整える



跳べるかどうかより、跳び続けられるかを考えてみよう。
研究でわかった睡眠不足とジャンプの関係
では、眠りが足りないと、ジャンプは実際にどれくらい変わるのでしょうか。研究を順番に見ていきます。
ひと晩の徹夜で跳躍が落ちた研究と落ちなかった研究
Cullen らの研究(2019年・スポーツ科学の専門誌)では、10人の男性が、ふだんどおり眠った日・4時間だけ眠った日・ひと晩眠らなかった日のそれぞれでテストを受けました。
その結果、反動をつけて跳ぶ垂直跳びは、ひと晩眠らなかった後で約11%、4時間睡眠の後で約5%低くなったと報告されています。



徹夜すると、1割も低くなることがあるんですか!?
一方で、Skurvydas らの研究(2020年・スポーツ生物学の専門誌)では、30人の男性を眠る組と眠らない組に分けて調べました。
こちらでは、ひと晩眠らなくても垂直跳びの高さははっきり変わりませんでした。
ただしこの研究では、まちがった反応をがまんする力や、すばやく判断する力が落ちていました。つまり、跳ぶ高さは保てても、頭の働きには影響が出ていたことになります。



ネブソク ノ エイキョウ ハ ケンキュウ ニヨッテ サ ガアル
短い睡眠が続くと着地の動きがぶれる
もう1つ、気になる研究があります。Mah らの研究(2019年・スポーツ科学の専門誌)では、トップレベルの自転車選手11人が、3晩続けて4時間睡眠で過ごしました。
その結果、垂直跳びは平均44cmから42cmへと少しだけ下がりました。
それ以上に目立ったのは、跳んだときの股関節と膝の動きのそろい方が、毎回ばらつくようになったことです。
しかも、このばらつきが大きい選手ほど、反応の速さを測るテストでも遅くなっていました。高さの差はわずかでも、体のコントロールがくずれていたわけです。



高さより、膝の動きのほうが変わってしまうんですね!
69の論文をまとめると平均7%ほど低下
Craven らのまとめ(2022年・スポーツ医学の専門誌)は、69の論文を集めて、睡眠不足と運動の成績の関係を分析しました。
その結果、睡眠が6時間以下になると、運動の成績は平均で約7.6%下がっていました。
ジャンプのような瞬発力、筋力、持久力など、調べたすべての種類で低下が見られています。
ただし、研究ごとのばらつきはとても大きく、数字はあくまで平均です。また、低下がはっきりしていたのは、ひと晩眠らなかった場合と、朝いつもより早く起きて睡眠を削った場合でした。



平均で見ると、寝不足はやっぱり成績を下げているんだ。
寝不足で影響が出やすい3つの場面
研究をまとめると、寝不足の影響はどの場面でも同じではありません。バレーの練習や試合にあてはめると、次の3つの場面で出やすいと考えられます。
夕方以降の練習と試合
Craven らのまとめでは、午前中のテストではあまり差が出ず、午後から夜にかけてのテストで低下がはっきりしていたと報告されています。
さらに、起きている時間が長くなるほど、成績の下がり方も大きくなっていました。部活の練習は、放課後の夕方に行うことがほとんどでしょう。



部活の時間は、ちょうど夕方です…。
前の晩に眠りが足りないと、ちょうど影響が出やすい時間帯に跳ぶことになります。朝の時点で元気でも、夕方には差が出てくる可能性があるんです。
くり返しのジャンプと判断
バレーの試合では、ブロックで跳んで、着地してすぐ次の攻撃に入る、という動きが何度も続きます。
Skurvydas らの研究で示されたように、寝不足では判断する力が落ちやすくなります。相手のトスを見て跳ぶタイミングを決めるブロックでは、この遅れがそのまま失点につながりかねません。
試合の後半になるほどジャンプが落ちる理由は、こちらの記事でくわしく解説しています。
着地とけがのリスク
3つ目が着地です。Mah らの研究のように膝の動きがぶれると、着地で膝が内側に入るような危ない形になりやすくなるおそれがあります。
また、Milewski らの研究(2014年・小児整形外科の専門誌)では、中高生のアスリート112人に睡眠時間をたずね、学校で記録されたけがの記録と照らし合わせました。



8ジカン ガ ヒトツノ メヤス
その結果、1晩の睡眠が8時間未満の選手は、8時間以上の選手にくらべて、けがをしていた割合が約1.7倍だったと報告されています。
ただし、これは睡眠時間を本人に答えてもらった調査で、睡眠不足がけがの原因だと確かめたものではありません。それでも、眠りを削らないほうが安心なのはたしかでしょう。



寝不足の日は、着地をいつもより意識してみます。
睡眠を増やすとパフォーマンスはどう変わる?
ここまでは、睡眠が足りないときの話でした。反対に、睡眠を増やすと何が変わるのでしょうか。
睡眠を延ばしたバスケ選手の研究
よく知られているのが、Mah らの研究(2011年・睡眠医学の専門誌)です。大学のバスケットボール選手11人が、5〜7週間、毎晩10時間ベッドに入るように生活を変えました。
その結果、1晩の睡眠は平均で約110分長くなり、ダッシュのタイムが速くなりました。フリースローと3ポイントシュートの成功率も、どちらも約9%上がっています。



睡眠を増やしただけで、シュートまで入るようになったんですか!?
さらに、反応の速さや昼間の眠気、練習中の体の調子の感じ方もよくなっていました。研究を始める前の選手たちは、自分では気づかないうちに睡眠不足をためていたと考えられています。
ただし、この研究は人数が少なく、くらべる組もない調べ方です。睡眠だけが理由で成績が上がったとは言い切れない点は、覚えておきましょう。



自分では足りているつもりでも、睡眠不足がたまっているかもしれないんですね!
寝れば寝るほど跳べるわけではない
一方で、Cabarkapa らの研究(2024年・スポーツ科学の専門誌)では、セルビアのバスケットボール選手28人の睡眠時間とジャンプの関係を調べました。
ふだんの睡眠時間は平均約8時間で、睡眠時間と垂直跳びの高さに、はっきりした関係は見られませんでした。



あれ、こっちは関係がなかったんですか…?
つまり、ある程度眠れている選手が、さらに長く寝たからといってジャンプが高くなるわけではないということです。
国際的な専門家のまとめ(Walsh ら・2020年・スポーツ医学の専門誌)でも、必要な睡眠時間には個人差があり、全員に同じ時間をあてはめるのは理想的ではないとされています。



睡眠は、足りない分を埋めるのがいちばん大事なんだ。
ジャンプ力を伸ばすための眠り方
では、毎日どんなふうに眠ればいいのでしょうか。ここでは、サイトの睡眠の記事と同じ考え方で、ジャンプ力を伸ばすための眠り方を整理します。
中高生は8〜10時間を目安にする
厚生労働省の睡眠ガイド(2023年)では、中学生・高校生は8〜10時間を参考に睡眠時間を確保することがすすめられています。
ジャンプ力を上げるトレーニングは、練習しただけでは終わりません。休んでいる間に体が回復し、次の練習に向けて準備が整っていきます。
トレーニングと睡眠はセットで考えるのが、ジャンプ力を伸ばす近道。毎日の睡眠時間を一度、記録してみてください。
起きる時刻をそろえる
睡眠を整えるときは、寝る時刻より先に起きる時刻をそろえるのがコツです。休みの日も、起きる時刻のずれは1時間までにしましょう。
起きる時刻が決まれば、そこから8〜10時間さかのぼって寝る時刻も決まります。くわしい手順は、こちらの記事で紹介しています。
足りない日は短い昼寝でおぎなう
どうしても夜の睡眠が足りない日は、昼寝で少しおぎなう方法もあります。長さは20分前後、時間は午後3時までが目安です。
長く眠りすぎたり夕方に眠ったりすると、夜に寝つけなくなります。あくまで夜の睡眠をおぎなう手段と考えましょう。



帰ってすぐ1時間寝るくせ、今日から直します!
寝不足の日のジャンプ練習の考え方
テスト期間や試合の前の日など、どうしても眠りが足りない日もあるでしょう。そんな日のジャンプ練習は、次の3つを意識してみてください。
練習前に体の状態をたしかめる
まず、アップのときに体の重さや眠気をたしかめます。いつもより体が重い、頭がぼんやりする、と感じたら、その日は無理をしない日と決めておきましょう。
ジャンプの高さを定期的に測っている選手なら、ふだんの記録とくらべるのも1つの方法です。
全力ジャンプは少ない本数で切り上げる
プライオメトリクス(跳ぶ力を伸ばすジャンプトレーニング)は、もともと週1〜2回・1回ごとに全力・少ない回数で行うものです。
寝不足の日は、本数を増やさず、着地がくずれた時点でその日の全力ジャンプは終えるようにしてください。
着地で膝が内側に入る、ふらつく、といった様子が出たら、それ以上続けても練習の効果は上がりにくくなります。



チャクチ ガ クズレタラ ソコデ オシマイ
次の日に取り返そうとしない
できなかった分を、次の日にまとめて取り返そうとするのは避けましょう。ジャンプの練習量を急に増やすと、膝やかかとへの負担が大きくなります。
大切なのは、その日の夜にしっかり眠って、ふだんのペースに戻すことです。
ジャンプ力トレーニングの回数や頻度の目安は、こちらの記事でまとめています。
また、昼間の眠気が何日も続く、しっかり寝ても疲れがとれないときは、睡眠時間以外の理由が隠れていることもあります。1週間以上続くようなら、医師に相談してください。



寝不足の日は、量より質で練習を終えよう。
よくある質問
試合前の夜に眠れないときの過ごし方は、こちらの記事で紹介しています。
まとめ:跳ぶ力を伸ばすなら、まず眠りを整える
この記事では、睡眠不足とジャンプの関係を、研究をもとに解説しました。
寝不足は、くり返しのジャンプ・夕方の練習・着地の安定に響きやすい。トレーニングと睡眠はセットで考える。
| テーマ | 研究で分かっていること |
|---|---|
| 1回のジャンプの高さ | 落ちた研究と変わらない研究がある |
| 時間帯 | 夕方以降の成績が下がりやすい |
| 着地・動き | 寝不足が続くと膝の動きがぶれやすい |
| けが | 8時間未満の中高生はけがの割合が高かった |
| 睡眠を増やす | 足りない選手では成績がよくなった |
私は元日本代表として、ジャンプ力を伸ばす選手ほど、練習と同じくらい休み方を大切にしていると考えています。
まずは今夜から、起きる時刻を決めて、そこから寝る時刻を逆算してみてください。



今日から、寝る時刻もトレーニングの一部だと思って守ります!



しっかり眠れば、練習の成果もきちんと体に残るよ。
参考にした研究・資料
- Cullen T, Thomas G, Wadley AJ, Myers T. The effects of a single night of complete and partial sleep deprivation on physical and cognitive performance: A Bayesian analysis. Journal of Sports Sciences, 2019
- Skurvydas A, et al. One night of sleep deprivation impairs executive function but does not affect psychomotor or motor performance. Biology of Sport, 2020
- Mah CD, Sparks AJ, Samaan MA, Souza RB, Luke A. Sleep restriction impairs maximal jump performance and joint coordination in elite athletes. Journal of Sports Sciences, 2019
- Craven J, et al. Effects of Acute Sleep Loss on Physical Performance: A Systematic and Meta-Analytical Review. Sports Medicine, 2022
- Milewski MD, et al. Chronic lack of sleep is associated with increased sports injuries in adolescent athletes. Journal of Pediatric Orthopaedics, 2014
- Mah CD, Mah KE, Kezirian EJ, Dement WC. The effects of sleep extension on the athletic performance of collegiate basketball players. SLEEP, 2011
- Cabarkapa DV, Cabarkapa D, Fry AC. Relationship between sleep quality and quantity and lower-body neuromuscular performance characteristics in semi-professional male basketball players. Frontiers in Sports and Active Living, 2024
- Walsh NP, et al. Sleep and the athlete: narrative review and 2021 expert consensus recommendations. British Journal of Sports Medicine, 2020
- 厚生労働省 健康づくりのための睡眠ガイド2023
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
パフォーマンスアップについては他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪










