- しっかり打てているのに、いつも拾われてしまう
- ブロックが見えないまま、なんとなく打ってしまう
- 相手が変わっても、毎回同じコースにしか打てない
こんな悩みを解決します。
スパイクの駆け引きでいちばん大事なのは、その1本を「ブロッカーと勝負するのか、レシーバーと勝負するのか」を決めてから跳ぶことです。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで指導してきた中で、決定率の高い選手ほど、打つ前に相手の誰と勝負するかを決めていました。
打ち方を変えなくても、勝負する相手を選び直すだけで決まり方は変わります。同じ強さのスパイクでも、相手の嫌な場所へ届けば1点になるからです。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 打つ前に見るべき情報が3つに整理できる
- ブロッカーと勝負する時・レシーバーと勝負する時の打ち方が分かる
- セット序盤で相手を試し、後半に決定率を上げる手順が身につく
それでは、くわしく見ていきましょう。
結論:打つ前に「勝負する相手」を1人決める
先に結論をお伝えします。スパイクの駆け引きは、次の順番で組み立てます。
- 打つ前に、ブロッカーと勝負するかレシーバーと勝負するかを決める
- 決めた相手に合わせて、コース・高さ・強さのどれを変えるかを選ぶ
- 結果を覚えておき、次の1本の材料にする
大切なのは、新しい技を増やすことではありません。すでに打てる球の中から、相手にとっていちばん嫌なものを選び直す作業です。
サルくんいつも「とにかく強く打つ」しか考えていませんでした…。



強さは武器の1つです。誰に向けて使うかを決めると、同じ強さでも決まりますよ。
スパイカーは、ボールを打つ前に相手を選んでいます。
相手ブロッカーの手が高くて勝負しにくいなら、後ろのレシーバーと勝負すればいい。レシーバーが上手で拾われるなら、ブロッカーを利用して外へ出せばいい、という考え方になります。
ここからは、決定率が変わる理由・打つ前に見る3つの情報・相手別の打ち方・試し方・失敗例・練習法の順に見ていきましょう。
同じ打ち方でも決まる人と拾われる人がいる理由
まずは、なぜ駆け引きが決定率を左右するのかを整理します。理由が分かると、練習で見る場所も変わってきます。
相手の情報を持たずに跳んでいる
1つ目の理由は、情報量の差です。ボールだけを見て助走に入る選手は、空中に上がってからブロックの位置を知ることになります。
空中で気づいても、そこから打つ場所を変えるのは間に合いません。だから毎回同じコースになり、相手からすると読みやすい選手になってしまいます。



空中デ 気ヅクノハ 遅イ。地上デ 決メル。
打つ前に相手の並びを見ておけば、跳んだ時には「予定どおりに実行するだけ」の状態を作れます。準備の量が、そのまま選択肢の数になるんですよね。
得意なコースだけで勝負している
2つ目の理由は、選び方のクセです。自分の得意なコースがあるのは強みですが、そこだけで勝負すると1セットの途中で対策されます。
大事なのは、自分の得意を出すことではなく、相手にとって一番嫌なことをすることです。相手が嫌がる場所が自分の得意と重なった時に、いちばん決まりやすくなります。
自分の得意より、相手の苦手を優先して選びます。
スクールでも、決定率が高い選手ほど自分の好きなコースより相手の弱い部分を先に探していました。
打つ前に見る3つの情報


ここが駆け引きの土台になります。見るものを3つに決めておくと、短い時間でも判断できるようになります。
ブロックの枚数と間
1つ目は、ブロックが何枚そろっているかです。1枚なのか、2枚そろって間が閉じているのかで、狙える場所が変わります。
2枚がぴったり閉じているなら、その間を抜くのは現実的ではありません。逆に、間が空いている状態なら、そこは強打で抜ける道になります。
- 1枚:ブロッカーと勝負しやすい。手の外側や上を使える
- 1.5枚:2枚目が遅れている側が狙い目になる
- 2枚で間が閉じている:無理せずレシーバーと勝負に切り替える
ブロッカーの手が出る高さ
2つ目は、相手の手がどこまで出てくるかです。ネットの上に手が長く残る相手なのか、跳ぶのが遅れて手が出てくるのが遅い相手なのかを見ます。
手が高い相手には、上を越そうとするほど苦しくなります。この場合は外へ出す形か、後ろのレシーバーと勝負する形が有効です。



相手の手ばかり見ると、ボールを見る時間が減りませんか?



見るのは助走に入る前の一瞬でいいですよ。跳んでからはボールに集中します。
見る順番は、助走前に相手、跳んでからボール、と決めておくのがおすすめです。両方を同時に見ようとするとミートが甘くなります。
レシーバーの立ち位置
3つ目は、ブロックの後ろにいる選手の位置です。前に詰めているのか、後ろに下がって強打に備えているのかで、空くスペースが変わります。
学生年代では、2枚ブロックを作ってブロックの裏にフェイント専門のレシーバーを置くチームがとても多くあります。その場合、ブロックの真裏に落としても拾われてしまいます。
空いている場所は、ブロックの裏ではなく「跳ばなかった前衛の前」にできます。
相手の前衛のうちブロックに跳ばなかった選手は、下がる動きをサボりがちです。そのため、その選手の前のスペースが空きやすくなります。



ブロックの裏ばかり狙っていました…。



拾われる場所より、誰も動いていない場所を探しましょう。
ブロッカーと勝負する時の3つの選択
相手の手より自分の打点が高い時や、ブロックが1枚の時は、ブロッカーとの勝負が現実的になります。
手の外側を通してコースで抜く
1つ目は、コースで抜く形です。相手の手が締めていない側へ、体の向きを作ってから打ちます。
無理にコースを変えようとして手先だけで方向を変えると、球威が落ちて拾われます。狙う側へ体の向きを作り、いつもどおりのスイングで打つのが基本です。
手を利用して外へ出す
2つ目は、相手の手を使って外に出す形です。締められていて抜く道がない時ほど、当てて出すほうが確率は高くなります。
止められるのが怖くて手を引いてしまうと、逆にワンタッチを取られて簡単に拾われます。当てると決めたら、外側の手をしっかり狙って振り抜きます。



相手ノ 手ハ 壁デハナク 使エル 道具
高さで勝負して打ち下ろす
3つ目は、高さでの勝負です。相手の手より明らかに高い打点で入れた時は、コースを変えずにそのまま打ち下ろすのがいちばん強い選択になります。
この時に大事なのは、ミートを崩さないことです。手のひらでボールを包み込んで押し出し、最後は手首を返して手の甲が打球方向を向くまで振り抜きます。
レシーバーと勝負する時の3つの選択


ブロックが2枚そろって間が閉じている時は、無理をせず後ろの選手との勝負に切り替えます。ここでの目的は、決め切ることだけではありません。
拾いにくい場所へ強打を落とす
1つ目は、レシーバーの立っていない場所へ強く打つ形です。前に詰めている相手なら深く、後ろに下がっている相手なら短い場所が空きます。
コースを大きく変える必要はありません。同じクロスでも、落ちる場所が1〜2m違うだけで、相手は体勢を崩して返球が乱れます。



相手が下がっているなら、短い球でもいいんですね!
軟攻でタイミングを外す
2つ目は、フェイントなどの軟攻です。ここで最も大事なのは、強打とまったく同じフォームで入ることになります。
同じフォームで来ると、ブロッカーは強打を止める構えで跳び、レシーバーも強打に備えて構えます。その結果、軟攻への反応が遅れて決まりやすくなります。
- ブロックの横を通す時:ある程度上からボールに触れてよい
- ブロックの上を越す時:肘を少し曲げて下から触り、伸ばして持ち上げる
- 落とす場所:ブロックに跳ばなかった前衛の前が空きやすい
力を抜くタイミングは、最初から軟攻と決めていた時も、強打から切り替える時も同じにします。タイミングがそろっていれば、相手には見分けがつきません。
相手の攻撃を遅らせる1本にする
3つ目は、決め切れなくても損をしない打ち方です。相手の守備を動かして拾わせれば、その選手はすぐに攻撃へ参加できません。
たとえば前衛の選手に拾わせた場合、その選手は次の攻撃に入るのが遅れます。つまり、相手の攻撃の枚数を減らせるという意味で、拾われても得をしています。
決まらなくても、相手を崩せていれば成功です。
セット序盤で試して後半に決定率を上げる
駆け引きは、1本目からいきなり正解を当てるものではありません。序盤で試し、後半に向けて精度を上げていく作業です。
セットの序盤で試しておくと、勝負どころで迷いがなくなります。決定率は1本ごとの結果ではなく、セットを通した積み上げで上がっていくものです。



序盤の1本は、点を取るだけでなく情報を取る1本でもあります。
駆け引きでやりがちな3つの失敗
考えて打つようになると、今度は別の失敗が出てきます。よくある3つを先に知っておきましょう。
考えすぎてスイングが緩む
1つ目は、判断に気を取られてスイングが弱くなることです。狙う場所を考えるあまり、腕の振りが途中で止まってしまう形になります。
駆け引きは、あくまで強打という脅威があるから効きます。強く打てる状態を保ったまま、狙いだけを変えるのが正解です。



考えると、なぜか当たりが弱くなります…。



考えるのは助走の前までです。跳んだあとは、決めたことをやり切るだけにしましょう。
軟攻を使いすぎて読まれる
2つ目は、決まった軟攻をくり返してしまうことです。同じ場面で2回続けると、相手はその1本のために人を置いてきます。
軟攻は強打の裏側にあるから効く技です。ここぞという場面に絞るほど、成功率は上がります。
相手を見ずに自分の型だけで判断する
3つ目は、相手が変わっても同じ判断をしてしまうことです。ブロックの高さも守備位置もチームごとに違うので、前の試合の正解が今日も正解とは限りません。
判断の材料は、必ず目の前の相手から取ります。試合前のアップの時間から、相手の身長や手の出方を見ておくと準備が早くなります。



今日ノ 相手ハ 今日 調ベル
練習で駆け引きを身につける2つの方法
最後に、普段の練習でできることをまとめます。特別なメニューは必要ありません。
打つ前に狙いを声に出す
1つ目は、打つ前に狙いを言葉にすることです。「ストレート」「奥」「軟攻」と短く言ってから打つだけで、結果の見方が変わります。
入ったか外れたかではなく、狙いどおりだったかどうかで振り返れるようになります。この積み重ねが、試合で迷わない土台になります。
ブロッカー役を立てて打つ
2つ目は、必ず相手を立てて打つ練習です。台上でも構わないので、手を出す人がいる状態で打つ回数を増やします。
相手がいない練習ばかりだと、コースは打てても駆け引きは身につきません。人を見ながら打つ経験の数が、そのまま試合での判断の速さになります。



次の練習から、狙いを声に出してみます!



それだけで、1本の質はぐっと上がりますよ。
よくある質問
まとめ
スパイクの駆け引きは、特別な技術ではありません。打つ前に勝負する相手を1人決めて、決めたとおりに振り切るだけです。
自分の得意ではなく、相手の苦手から選ぶと決定率は上がります。
| 相手の状況 | 勝負する相手 | 打ち方 |
|---|---|---|
| ブロック1枚 | ブロッカー | 手の外側を通す・高さで打ち下ろす |
| 2枚で間が閉じている | レシーバー | 空いている場所へ強打・軟攻を混ぜる |
| 相手の手が高い | レシーバー | 外へ出すか、深い場所へ落とす |
| 守備が前に詰めている | レシーバー | 奥へ落として体勢を崩す |
| 決め切れない場面 | 相手の攻撃 | 拾わせて相手の攻撃枚数を減らす |
私は元日本代表として国際大会にも出場しました。2009年の東アジア競技大会・決勝の中国戦では、自分をマークするストレートブロッカーの弱点を試合中に見つけています。
コースを締めるのが上手くないと察知してからは、ストレートを増やして得点につなげました。
強い相手でも、勝負する場所を選べば点は取れます。まずは、打つ前にブロックの枚数を見るところから始めてみてください。



次の試合は、誰と勝負するかを決めて打ちます!



その1本から、決定率は変わっていきますよ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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