- 大会前は「カーボローディング」をしたほうがいいのか知りたい
- やり方を調べたけど、マラソン選手向けの話ばかりで迷っている
- 大会の前に、ご飯をどれくらい増やせばいいのか分からない
こんな悩みを解決します。
バレーボールの大会前に、マラソン選手のような本格的なカーボローディングをする必要は、基本的にありません。
大事なのは、大会前の1〜2日に練習を軽くしながら、ふだんどおり主食をしっかり食べて、エネルギーを満タンにして当日をむかえることです。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
この記事では、アメリカスポーツ医学会(ACSM)などの共同声明や研究をもとに、カーボローディングがどんな競技に向いているのかと、バレーの大会前にできる食べ方を紹介します。
読み終わるころには、次の大会に向けて「何をどれだけ食べればいいか」を自分で決められるようになるはずです。
- カーボローディングがどんな運動に向いているのかがわかる
- バレーの大会前に、本格的なやり方が必要ない理由がわかる
- 大会2日前から当日までの、現実的な食べ方がわかる
結論:バレーは「満タンにして当日をむかえる」で十分
結論からお伝えします。バレーの大会前は、特別なカーボローディングより「練習を軽くして、ふだんどおり主食をしっかり食べる」ことを優先しましょう。
カーボローディングの効果がはっきりしているのは、90分以上ずっと動き続けるような競技です。
バレーのように、ラリーの合間に休みが入る競技で効果を確かめた研究は、今回調べた範囲では見つけられませんでした。
サルくん大会前は、ご飯をいっぱい食べるものだと思ってました!



増やしすぎより、いつもの量をしっかり食べきるほうが大事だよ。
- カーボローディングは、90分以上動き続ける競技のための食べ方
- 体の中のエネルギーは、練習を軽くして1日しっかり食べればほぼ満タンに戻る
- 炭水化物が足りないと、試合で動ける量が落ちるという研究がある
- 大会前に食べる量を急に大きく変えると、お腹の調子をくずすことがある
- 食べ方を変えるなら、練習試合の前に一度ためしておく



フヤスヨリ タリナイヲ ナクス
カーボローディングとは?どんな競技に向いているか
カーボローディングとは、大会の数日前から炭水化物(ご飯・パン・麺など)を多めに食べて、体の中にエネルギーをいつもより多くためておく食べ方です。
ここでは、そのしくみと、どんな競技に向いているのかを見ていきます。
体の中にためる「グリコーゲン」を増やす食べ方
運動のエネルギーとして使われるのは、主に筋肉や肝臓にためてある「グリコーゲン」です。グリコーゲンは、食べた炭水化物からつくられます。
ACSMなどの共同声明(2016年)によると、カーボローディングは、筋肉にためるグリコーゲンを調べた昔の研究から生まれた方法です。
今では、トレーニングを積んだ選手なら、練習量を落としながら、炭水化物の多い食事を48時間ほど続けることで、グリコーゲンをいつもより多くためられるとされています。



エネルギーのタンクを、いつもより大きくするイメージですね!
効果が大きいのは90分以上動き続ける競技
では、どんな競技でも効果があるのでしょうか。
カーボローディングの研究をまとめた報告(Hawleyら、1997年)では、次のように整理されています。
| 運動のタイプ | カーボローディングの効果 |
|---|---|
| 5分以内の全力の運動 | ほぼ効果なし |
| 60〜90分のランニングや自転車 | 効果なし(終わってもグリコーゲンが残っている) |
| 90分をこえる持久系の運動 | 疲れるまでの時間が約20%のびる |
ACSMなどの声明でも、カーボローディングをすすめているのは90分以上続く運動の前です。マラソンや自転車のロードレース、トライアスロンのような競技が代表例ですね。
一方で、90分より短い運動の前は、ふだんの量の炭水化物をとっておけばよい、とされています。



バレーの試合は、どっちに入るんだろう…?



キュウジップン イジョウ ノ キョウギ ムケ
バレーで本格的なカーボローディングがいらない理由
ここからは、バレーにあてはめて考えてみましょう。本格的なやり方をおすすめしない理由は、大きく3つあります。
理由①:ラリーの合間に休みがある競技だから
バレーは、ジャンプやダッシュなどの短く強い動きと、ラリーの合間の休みをくり返す競技です。マラソンのように、同じペースで何時間も動き続けるわけではありません。
カーボローディングの効果がはっきり確かめられているのは、主に長い時間動き続ける持久系の運動です。
そのため、マラソン選手向けのやり方を、バレーにそのまま持ちこむ必要はないと考えられます。
ただし、1日に何試合もある大会では、動く時間の合計が長くなるので、エネルギー切れには気をつけたいところです。
理由②:1日しっかり食べれば、ほぼ満タンに戻るから
ACSMなどの声明では、筋肉に大きなダメージがなければ、練習を軽くした日に必要な量を食べると、24時間でグリコーゲンはふつうのレベルまで戻るとされています。
つまり、大会の前日に練習を軽くして、主食をしっかり食べておけば、当日はエネルギーがほぼ満タンの状態でむかえられるのです。



前の日にしっかり食べれば、大丈夫なんですね!
理由③:必要な量が中高生には多すぎるから
ACSMなどの声明では、カーボローディングの目安を体重1kgあたり1日10〜12gの炭水化物を、36〜48時間としています。
体重50kgの選手なら、1日に500〜600gの炭水化物です。
文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)」の値で考えると、ご飯100gにふくまれる炭水化物は約37g。
500gをご飯だけでとるなら、おにぎり(ご飯100g)で13個以上の量になります。



1日におにぎり13個は、さすがに食べられないです…。
この数字は大人のアスリート向けのもので、中高生にそのまま当てはめるものではありません。成長期の体で、無理に量だけを大きく増やすことはおすすめしません。
ふだんの練習でどれくらい主食を食べればいいかは、こちらの記事で紹介しています。
それでも炭水化物が足りないと動けなくなる
本格的なカーボローディングはいらない、とお伝えしました。でも、「大会前は炭水化物を気にしなくていい」という意味ではありません。
炭水化物の少ない食事では、試合で動ける量が減った
サッカー選手を対象にした研究(Balsomら、1999年)では、男子選手6人に、炭水化物の多い食事(全体の約65%)と、少ない食事(約30%)をとってもらい、90分のミニゲームをしました。
炭水化物の少ない食事のほうは、試合前に筋肉のグリコーゲンが少なくなるように、運動と食事を調整した条件です。
その結果、炭水化物の多い食事のあとのほうが、ダッシュなどの強い動きを約33%多くこなせたと報告されています。
研究者は、サッカーだけでなく、同じくらいの時間でダッシュをくり返す競技でも、大事な練習や試合の前には炭水化物の多い食事がよいだろうとまとめています。



タリナイト ウゴケル リョウ ガ ヘル
球技でも、ためておいた炭水化物は役に立つ
球技と炭水化物の研究をまとめた報告(Williamsら、2015年)でも、ダッシュをくり返す運動では、筋肉のグリコーゲンがだんだん減り、パワーや動く量が落ちていくとされています。
そして、試合の前に肝臓と筋肉の炭水化物をためておくと、疲れが出るのをおくらせるのに役立つとまとめられています。



「大量に食べる」じゃなくて「足りない状態で試合に出ない」が大事なんだ。
紹介した研究は大人やサッカーなどを対象にしたもので、バレーボールの試合そのものを調べたものではありません。考え方の参考として受けとってください。
大会前の食べ方:2日前から当日まで
では、実際に大会に向けて、どう食べればいいのでしょうか。2日前から当日までの流れで紹介します。
大会2日前:いつもの食事をきちんと食べる
2日前は、特別なことをする必要はありません。3食を抜かずに、主食・主菜・副菜をそろえて食べることを意識しましょう。
練習量が多い時期は、朝・昼・夜のどこかで主食が少なくなっていないか、ふり返ってみてください。
大会前日:練習を軽くして主食をしっかり
前日は、チームの方針にしたがって練習を軽くし、そのぶん体にエネルギーをためていきます。
- ご飯・パン・麺などの主食を、いつもどおり〜少し多めに食べる
- 揚げ物や脂の多いおかずはひかえめにする
- 食べ慣れないもの・生ものはさける
- 夕ごはんは、いつもより少し早めに食べ終える
ACSMなどの声明でも、大会前にエネルギーをためるときは、食物せんいが少なく、食べやすい炭水化物を選ぶと、お腹の調子を守りやすいとされています。
前日の過ごし方全体は、こちらの記事でくわしく紹介しています。
大会当日:試合の数時間前に食べ終える
当日は、試合の数時間前までに、ご飯やパン、うどんなどの炭水化物を中心に食べ終えておきます。
ACSMなどの声明では、1時間をこえる運動の前は、運動の1〜4時間前に、体重1kgあたり1〜4gの炭水化物をとることがすすめられています。



当日の量は、体重や試合の時間に合わせて調整しよう。
量やタイミングは人によって合う・合わないがあるので、自分の体に合ったやり方を見つけていきましょう。当日の食べ方は、こちらの記事でまとめています。



前日と当日の流れが、イメージできました!
大会前の食事でありがちな失敗
最後に、大会前の食事でよくある失敗と、その対策をまとめておきます。
失敗①:前日に急に量を増やしてお腹をこわす
「大会前だから」と、前日だけご飯を何杯もおかわりするのは考えものです。食べすぎて胃に残ったまま寝ると、寝つきが悪くなることもあります。
量を増やすとしても、いつもより少し多めくらいにとどめましょう。食べ方を変えるときは、本番の前に、練習試合の前日でためしておくのが安心です。
失敗②:昔のやり方でわざと炭水化物を減らす
ネットや本では、大会の数日前にいったん炭水化物を減らしてから、一気に増やすやり方が紹介されていることもあります。
しかし、ACSMなどの声明では、トレーニングを積んだ選手なら、練習を軽くしながら炭水化物の多い食事を続けるだけでよいとされています。
わざと炭水化物を減らすと、大会直前の練習で体が動かなくなるおそれがあります。中高生が自分の判断で試すのはやめておきましょう。



ワザト ヘラサナイ
失敗③:ご飯ばかりで、おかずや水分を忘れる
炭水化物を意識するあまり、ご飯や麺だけの食事になってしまう人もいるでしょう。
でも、体の調子を整えるには、たんぱく質やビタミン・ミネラルも欠かせません。大会前も、主食・主菜・副菜をそろえることを基本にしてください。
前日から当日にかけては、水分をとることも忘れずに。食事と一緒にお茶や水を飲む習慣をつけておくと安心です。



主食をしっかり、おかずもいつもどおり。それが大会前の基本だよ。
カーボローディングについてよくある質問
1日に何試合もある日の過ごし方は、こちらの記事でくわしく紹介しています。
まとめ:大会前は「増やす」より「足りなくしない」
この記事では、カーボローディングがどんな競技に向いているのかと、バレーの大会前にできる食べ方を紹介しました。
バレーの大会前は、練習を軽くして主食をしっかり食べ、エネルギー満タンで当日をむかえる。それで十分です。
| 時期 | 食べ方のポイント |
|---|---|
| 大会2日前 | 3食を抜かず、いつもの食事をきちんと食べる |
| 大会前日 | 主食はいつもどおり〜少し多め、脂っこいものはひかえる |
| 大会当日 | 試合の数時間前に、炭水化物中心の食事を食べ終える |
まずは次の大会の前日に、「主食をいつもどおり食べられているか」をチェックしてみてください。
ふだんの練習後の食べ方も整えておくと、大会前に体がエネルギー不足になりにくくなります。



次の大会は、前日にご飯をしっかり食べて臨みます!



足りない状態をなくせば、最後まで動ける体で戦えるよ。
参考にした資料
- Thomas DT, Erdman KA, Burke LM. Nutrition and Athletic Performance (Position of the Academy of Nutrition and Dietetics, Dietitians of Canada, and the American College of Sports Medicine), 2016
- Hawley JA, et al. Carbohydrate-loading and exercise performance. An update. Sports Medicine, 1997
- Balsom PD, et al. Carbohydrate intake and multiple sprint sports: with special reference to football (soccer). International Journal of Sports Medicine, 1999
- Williams C, Rollo I. Carbohydrate Nutrition and Team Sport Performance. Sports Medicine, 2015
- 文部科学省「食品成分データベース」(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
食事・栄養については他にも記事を書いています。
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