- 屋内競技だから熱中症は関係ないと思っている
- 水をどれくらい飲ませればいいのか、目安がわからない
- 練習を止める判断をいつすればいいのか迷ってしまう
こんな悩みを解決します。
バレーの熱中症対策は、暑さを数字で測る・のどが渇く前に飲む・サインが出たらすぐ止めるの3つで組み立てます。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで指導してきましたが、夏の体育館は想像以上に過酷です。屋外より暑くなる日すらあります。
しかも学校で起きる熱中症は、その多くが運動部の活動中に集中しています。屋内競技だから安心、とは言えません。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 体育館の暑さを数字で判断する基準がわかる
- バレー向けの水分補給の量とタイミングがわかる
- 危険なサインを見つけたときの動き方がわかる
それでは、くわしく見ていきましょう。
結論:熱中症対策は「測る・先に飲む・すぐ止める」の3つ
先に結論からお伝えします。やることは3つだけです。
- 測る:体育館の暑さを温度計で数字にして、練習内容を決める
- 先に飲む:のどが渇く前に、決めた間隔で全員に飲ませる
- すぐ止める:ふらつきや動きの鈍さが出たら、その場で練習から外す
この3つは順番にも意味があります。測るのは練習前、飲むのは練習中、止めるのは異変が出たときです。
サルくん体育館の中だから、そんなに暑くないと思ってた…。



それが落とし穴なんです。風がない体育館は、外より暑くなることがありますよ。
日本バレーボール協会の資料では、冷房のない体育館は対流が生じず熱がこもるため、屋外より悪い暑熱環境になりえると説明されています。
猛暑日には乾球温37℃以上、暑さ指数(WBGT)33℃以上になることが予想される、とも書かれています。これは屋外の炎天下と同じ水準です。
屋内競技だから熱中症は起きない、という考え方はまず捨ててください。
私はスクールでも、夏場は必ず練習前に体育館の温度を確認してから、その日のメニューを決めるようにしています。
この記事では、危険な理由・数字の基準・水分・準備・異変への対応の順に見ていきます。
体育館が屋外より暑くなる理由
まずは、なぜ体育館が危ないのかを整理します。
風がないと、汗をかいても体温が下がらない
人の体は、汗が蒸発するときに熱を奪うことで体温を下げています。汗をかくこと自体が目的ではありません。
ところが体育館は風が通りません。汗が乾かないため、いくらかいても体温が下がらないという状態になります。
環境省の資料でも、屋内スポーツでは気流が少なく湿度が高くなりやすいことが指摘されています。バレーとバスケットボールは、そのなかでも脱水になりやすい競技として名前が挙がっています。



汗をたくさんかいているから、ちゃんと冷えていると思っていました。



蒸発しないと冷えません。びっしょり濡れたままの汗は、あまり働いていない汗なんです。
さらにバレーには、試合中に自由に水を飲めないという事情もあります。ラリーが続けば、その間ずっと給水できません。
バレーは「汗が乾かない」「試合中に飲めない」の2つが重なる競技です。
学校の熱中症は、部活動中に集中している
もう1つ知っておきたいのが、いつ起きているかという事実です。
環境省がまとめた資料では、中学校・高校で起きた熱中症のうち、およそ7割が運動部の活動中に発生しています。体育の授業や体育祭よりも、圧倒的に部活動が多いという結果です。
くわしい数字は環境省の熱中症予防情報サイトで確認できます。指導者の方は一度目を通しておくと安心です。



部活の時間帯こそ、いちばん気を張っておくべきということですね。
つまり、対策すべき場所は特別なイベントではありません。毎日の練習そのものです。
暑さ指数(WBGT)で練習の内容を決める
次に、判断の基準を数字にします。感覚で決めないことが大切です。
5つの区分で、その日の練習を決める
日本スポーツ協会は、暑さ指数(WBGT)にもとづく熱中症予防運動指針を公表しています。区分は5つです。
| 暑さ指数(WBGT) | 区分と指針 |
|---|---|
| 31℃以上 | 運動は原則中止 |
| 28〜31℃ | 厳重警戒(激しい運動は中止) |
| 25〜28℃ | 警戒(積極的に休息) |
| 21〜25℃ | 注意(積極的に水分補給) |
| 21℃未満 | ほぼ安全(適宜水分補給) |
区分ごとの詳しい内容は日本スポーツ協会の熱中症予防運動指針で公開されています。
暑さ指数は気温だけの数値ではありません。湿度と輻射熱も加えて計算されるため、同じ気温でも湿度が高い日は数値が跳ね上がります。



気温が30℃なくても、危ない日があるってこと?



あります。湿度が高い日は、気温が低くても数字は上がりますよ。
31℃以上は原則中止。ここは指導者の気持ちではなく、数字で決めてください。
体育館のどこで測るかで数字が変わる
測る場所も重要です。入口付近と、風の通らないコートの奥では、数字がまったく違うことがあります。
測定は、選手が実際にプレーしている場所の近くで行ってください。窓際の涼しい位置で測った数字は、選手が受けている暑さを表していません。
- 選手がプレーする場所の近くで測る
- 練習前だけでなく、途中でも測り直す
- 数値を紙に書いて全員が見える場所に貼る
数字を全員で共有すると、選手も自分から水を飲みに行くようになります。これは指導の手間を減らすうえでも効きます。



スウジ ヲ ミンナ デ ミル
バレー用の水分補給は「量・中身・タイミング」で決まる
ここがこの記事のいちばん大事なところです。飲み方には具体的な目安があります。
練習前と練習中に飲む量の目安
日本バレーボール協会の資料では、激しいプレーでは1時間あたり2Lの発汗を想定するよう書かれています。かなりの量です。
飲む目標は、汗で減る体重を体重の2%以内に抑えることとされています。50kgの選手なら1kgまでが目安になります。
同じ資料には、水分補給は後追いになってはならず先手必勝が原則、とも書かれています。のどの渇きは、すでに脱水が始まったサインです。



練習に集中していると、飲むのを忘れちゃうんだよね。



だから時間で区切るんです。渇いたら飲む、では間に合いません。
のどが渇く前に、時間で区切って飲む。これがバレーの給水の基本です。
何を飲むか:塩分・糖分・温度の目安
中身にも目安があります。汗で失われるのは水だけではないためです。
同資料では、塩分補給は0.1〜0.2%の食塩水が基準、糖分は4〜8%程度が標準とされています。市販のスポーツドリンクは、おおむねこの範囲に入ります。
温度は5〜15℃に冷やしたものがすすめられています。体を冷やす働きと、吸収のよさの両方が期待できるためです。
- 1時間を超える練習:スポーツドリンクを軸にする
- 短時間の練習:水でも足りることが多い
- 汗が多い日:水だけで飲み続けない(塩分も一緒に)
- 温度:キンキンに凍らせるより、冷たい程度に
水だけを飲み続けると、体の中の塩分が薄まってかえって飲めなくなることがあります。足がつりやすくなるのも同じ理由です。



水筒の中身も、季節で変えたほうがいいんですね。



そうですね。夏と冬で同じ中身のままの子は多いですよ。
飲む量が増える夏は、容器の大きさも見直してください。途中で空になると、そこから飲めない時間が生まれてしまいます。
暑くなる前にやる準備は「体を慣らす」と「場を涼しくする」
対策は当日だけではありません。前もってできることがあります。
暑さに慣れるには3〜4日かかる
体は急な暑さについていけません。日本バレーボール協会の資料では、暑さ慣れには3〜4日かかると説明されています。
危ないのは、休み明けや急に気温が上がった日です。同じ練習量でも、体がまだ暑さに慣れていません。
- 長期休みや連休が明けた最初の練習日
- 前日より気温が大きく上がった日
- 梅雨明け直後で、急に湿度が下がった日
こういう日は、いつもより練習量を落とすところから始めてください。慣らす期間を作れば、その後の練習の質はむしろ上がります。



夏休み明けの初日は、いつもより慎重にということですね。



そこが事故の起きやすい日です。1日目から全力に戻さないでください。
体育館を涼しくする4つの手
環境そのものにも手を入れられます。環境省の資料では、屋内スポーツの対策として換気・気流・水分補給の3つが挙げられています。
とくに効くのが2つ目です。風がないことが体育館の弱点なので、風を作るだけで汗が乾くようになります。
私はスクールでも、休憩は必ず風の通る場所へ全員を移動させてからとるように指導しています。同じ5分でも、その後の動きがはっきり違ってきます。
窓を開けるだけでは足りません。風を「起こす」ところまでやってください。
休憩中に体を冷やすなら、首や脇の下など太い血管が通る場所を冷やすと効率的です。氷嚢や保冷剤を用意しておくと動きやすくなります。
危険なサインを見つけたらすぐ動く
どれだけ準備しても、絶対に起きないとは言い切れません。だからこそ、気づき方と動き方を決めておきます。
訴えと見た目、2つの入口で気づく
異変には、本人が訴えるものと、まわりが見て気づくものがあります。両方を知っておいてください。
- 本人の訴え:だるさ・脱力感・めまい・吐き気・しびれ
- まわりが気づく変化:顔色が悪い・動きが鈍い・ふらつく
- とくに危険:応答が鈍い・言動がおかしい・意識がない
日本バレーボール協会の資料でも、こうした訴えがあれば要注意として休ませること、見た目の異変を観察したら中止させることが示されています。



途中でやめるのは、なんだか申し訳なくて言いづらい…。



言いづらい空気こそが危ないんです。申告しやすい雰囲気を作るのは大人の仕事ですよ。
「まだいける」と言う選手ほど注意してください。判断は本人ではなく、まわりが行います。
意識があるかどうかで動き方が変わる
対応は、意識の状態で分かれます。ここは全員で共有しておきたい部分です。
体を冷やす場所は、首・脇の下・脚のつけ根が基本です。氷嚢や濡らしたタオルを当て、あおいで風を送ります。



迷ったときは、救急車を呼んでいいんですね。



呼んでください。判断に迷う時間のほうが危険です。
熱中症の重い状態は、命に関わることがあります。少しでもおかしいと感じたら、遠慮せず医療機関や救急に相談してください。
よくある質問
まとめ
バレーの熱中症対策は、根性や我慢の問題ではありません。測る・先に飲む・すぐ止めるという手順の問題です。
体育館は屋外より暑くなることがある。この前提から対策を組み立ててください。
| 場面 | やること |
|---|---|
| 練習前 | 選手がプレーする位置で暑さ指数を測る |
| 練習前 | 31℃以上なら原則中止・28℃以上は激しい運動を外す |
| 練習前 | 開始前に250〜500ml飲んでおく |
| 練習中 | 15分おきを目安に200〜250mlずつ飲む |
| 練習中 | 窓と扉を開け、扇風機で風を起こす |
| 休憩中 | 涼しい場所へ移動し、汗を拭いて着替える |
| 異変時 | 涼しい場所へ移す・意識が怪しければ救急要請 |
| 休み明け | 暑さ慣れに3〜4日かかる前提で量を落とす |
私は元日本代表として、また指導者として夏の体育館を数え切れないほど見てきましたが、事故を防げているチームほど、判断の基準を紙に書いて貼っていました。



明日から、練習前に温度を見るところから始めてみる!



それがいちばん確実です。数字は迷いを消してくれますよ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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