- 順番待ちや見学の時間が、ただの休憩になっている
- お手本の動画を見せても「すごい」で終わってしまう
- 言葉で説明しても、動きのイメージが選手に伝わらない
こんな悩みを解決します。
見取り稽古の効果を決めるのは、見る前に「どこを見るか」を1つ指定することです。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで指導してきた経験から、上手い選手をよく見ている子は、フォームの飲み込みが速いと感じています。
同じ10分の見学でも、目的をもって見た選手とぼんやり見た選手では、得るものがまったく違います。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 見取り稽古が上達につながる理由がわかる
- 観察ポイントの指定の仕方と声かけがわかる
- 見る→まねる→比べるの練習手順がそのまま使える
それでは、くわしく見ていきましょう。
結論:見るポイントを1つ指定すれば観察は練習になる
先に結論からお伝えします。見取り稽古とは、上手い選手の動きを見て学ぶ練習法のことです。
そして効果を分けるのは、見せる時間の長さではありません。見る前に観察ポイントを1つ指定するかどうかです。
「上手い人をよく見ておけ」では、選手は何も見られない。
「スパイクを見ておいて」ではなく、「助走の最後の2歩だけ見ていて」と伝えます。見る場所がしぼられた瞬間、選手の目は初めて情報をつかみ始めます。
れおコーチ「見ておけ」と言うだけだと、選手はボールばかり目で追ってしまうんですよね。



そうなんだ。だから指導者が、見る場所を先に決めてあげる必要があるんだよ。
観察が上手になると、教わっていない技術まで自分で盗めるようになります。指導者の言葉が届きにくい細かい感覚こそ、見て学ぶのが近道です。
見取り稽古というと武道の言葉に聞こえますが、中身はどのスポーツにも共通する学び方です。バレーは順番待ちや交代の時間が多い競技なので、むしろ相性は抜群です。
しかも道具も場所も準備もいりません。今日の練習から、声かけひとつで始められます。
次の章では、なぜ見ることが上達につながるのかを掘り下げます。
なぜ見取り稽古が上達につながるのか
見るだけで上手くなるの?と疑問に思う方も多いはずです。理由は大きく2つあります。
理由①:動きの正解イメージが頭にできる
体は、頭の中にあるイメージ以上の動きをなかなか再現できません。上手い選手の動きを見ることは、目指す動きの完成図を頭に入れる作業です。
完成図があると、自分の動きとのズレに気づけるようになります。ズレに気づけることが、フォーム修正の出発点です。



言葉で10回説明するより、良いお手本を1回見る方が伝わる場面は多いんだ。
とくにバレーは、助走やスイングのリズムなど、言葉にしにくい要素が多い競技です。見て学ぶ回路を早く作ってあげるほど、指導の言葉も届きやすくなります。
正しいフォームの完成図を早く頭に入れた選手ほど、修正が速い。
正しいフォームからはミスが起きにくくなります。だからこそ、良いお手本にふれる機会を意図的に増やすことが、遠回りに見えて近道なんです。
理由②:やり方の引き出しが増える
見取り稽古のもう1つの効果は、プレーの選択肢が増えることです。
教わった1つのやり方だけを何年も続けるより、いろいろな選手の形を見て試した選手の方が伸びていきます。自分に合う形は、比べた中からしか見つからないからです。



同じスパイクでも、選手によって助走のリズムがけっこう違うんですね!



その違いに気づけたら、もう観察上手だよ。試して自分に合う形を選べばいいんだ。
複数のお手本を見せることは、1つの型を押しつけない指導にもつながります。選手が自分で選ぶ余地を残すと、練習への向き合い方も主体的になっていきます。
またポジションによっても、見るべきお手本は変わります。セッターなら配球前の目線、リベロなら1歩目の反応と、その選手の役割に合ったお手本を選んであげましょう。
自分と体格の近い選手を見せるのも効果的です。同じ動きでも、体格が近いお手本の方がまねる時の再現度は上がります。
見取り稽古が活きる3つの場面
見取り稽古は、特別な時間を用意しなくても始められます。私の指導現場でよく使う3つの場面を紹介します。
- 順番待ち・休憩中の数分
- 試合や上のカテゴリの見学
- 動画でのフォーム比較
場面①:順番待ち・休憩中の数分
スパイク練習の列に並んでいる時間は、じつは絶好の見取り稽古の時間です。「自分の3人前の選手の踏み切りを見ておこう」と伝えるだけで、待ち時間が観察の時間に変わります。



マチジカン ハ カンサツ ノ ジカン
見た直後に自分の順番が来るのもポイントです。頭に残った動きのイメージが新しいうちに、すぐ体で試せます。
場面②:試合や上のカテゴリの見学
練習試合の応援や、高校生・社会人など上のカテゴリの試合見学も、目的をもたせると学びが濃くなります。
試合前に「相手のセッターがトスを上げる前の動きを見よう」のように、1人と1場面を指定しておきます。
見終わったら、気づいたことを1つ発表してもらいましょう。言葉にする前提で見ると、観察の集中力は大きく上がります。
発表は長い感想でなくてかまいません。トスの前に一度ネットを見ていた、のような事実の報告で十分です。
仲間の気づきを聞くことも、そのまま学びになります。自分が見落としていた視点を、選手同士で補い合えるからです。



発表があると思うと、選手もちゃんと見ようという気になりますね!



見る→言葉にする、までがワンセット。ここまでやると記憶に残るんだ。
場面③:動画でのフォーム比較
スマホで選手自身のフォームを撮影し、理想とする選手の動きと見比べる方法もおすすめです。
自分の動きと理想の動きを並べて見比べ、少しずつ近づけていく。
肉眼と違って、動画は止めたりくり返したりできます。踏み切りの瞬間だけを何度も見比べる、といった使い方ができるのが強みです。
比べるポイントは1回に1つにしぼります。助走の歩幅なら歩幅だけ、と決めて見比べる方が、修正が具体的になります。
観察ポイントの指定3つのコツ
見取り稽古の質は、指導者の「どこを見るか」の指定で決まります。指定のコツは3つです。
- ボール以外を見させる
- 全体→部分の順で見させる
- 見た後に言葉にさせる
コツ①:ボール以外を見させる
何も言わずに見せると、選手の目はボールの行方だけを追います。しかし上達のヒントは、ボールにふれる前の準備動作に隠れています。
トスが上がる前の足の運び、打つ前の体の向き。ボールが来る前に何をしているかを見させるのが、指定のいちばんの基本です。



上手い選手って、ボールが来る前からもう動いているんですね…!



そこに気づけるかどうかが、見取り稽古の分かれ道なんだよ。
コツ②:全体→部分の順で見させる
初めて見るお手本は、まずリズムや流れをざっくり感じさせます。細部はその後です。1回目は全体の流れ、2回目は足、3回目は腕、と見る場所を段階的にしぼっていきます。
一度に全部を見ようとすると、結局どこも見られません。段階を踏むほど、選手の目は細かい部分をとらえられるようになります。



見る回数を分けるのは、伝える内容を1回1つにしぼるのと同じ理屈だね。
コツ③:見た後に言葉にさせる
見たままにせず、「何に気づいた?」と聞いて言葉にしてもらいます。
言葉にできた気づきは、その選手の中に定着します。逆に言葉にできなければ、まだ見えていないということなので、もう一度ポイントを変えて見せれば大丈夫です。
気づきの正解・不正解をジャッジしすぎないことも大切です。自分で見つけた、という体験が次の観察への意欲になります。
見る→まねる→比べるの練習手順
観察を上達につなげるには、見た後の流れまで設計しておくことが大切です。基本の手順は4つです。
ポイントは、見てからまねるまでの時間を空けないことです。動きの記憶は思っているより早く消えていきます。



見てすぐやらせると、体が自然に動く感じがあるんですね!



その「なんとなく」が大事な入り口。あとは見比べて、少しずつ形を合わせていけばいいよ。
見比べのときは、できていないところ探しにならないよう気をつけましょう。まず、お手本と同じにできているところを1つ見つけて伝えます。
そのうえで、直すズレを1つだけ選びます。できている確認と修正を1つずつ、が続けさせるコツです。
見る→まねる→撮って比べる→1つ直す。この小さいサイクルを回し続ける。
このサイクルは、スパイクでもレシーブでもサーブでも同じように使えます。1回10分でも、続けた選手の観察眼は着実に育っていきます。
よくある失敗と直し方
見取り稽古でつまずきやすいポイントを、直し方とセットで整理します。
- ただ見せるだけで終わる
- 見せる時間が長すぎる
- 仲間との比較で劣等感を生む
1つ目は、目的の指定なしで見せるだけのパターンです。これでは選手の記憶に何も残りません。見る前のひと言指定を習慣にしましょう。
2つ目は、長時間の見学です。集中して観察できる時間は思いのほか短く、だらだら見せるほど質が落ちます。数分の観察を何回かに分ける方が効果的です。



長い見学だと、後半はどうしてもぼーっとしてしまうんですよね…。



観察は集中力を使うからね。短く区切って、見る場所を変える方が続くんだ。
3つ目は、「あの子はできているのに」と比較の道具にしてしまうことです。見取り稽古の目的はお手本から学ぶことで、優劣をつけることではありません。
上手い仲間を見せるときは、「盗めるところを1つ探そう」という言葉に変えます。同じ観察でも、目的の伝え方ひとつで受けとる気持ちが変わります。
また、罰として見学させるのは避けたい使い方です。見ることが罰になると、観察そのものが嫌いになってしまいます。
けがで練習を休んでいる選手には、逆に見取り稽古が大きな味方になります。体を動かせない期間も、目からの練習は続けられるからです。
復帰したときに動きのイメージが残っている選手は、感覚を取り戻すまでの時間が短くなります。
最後にもう1つ。指導者自身が選手と同じお手本を一緒に見ると、その後の指導の言葉がそろいます。あの選手のあの動き、という共通のイメージは、何よりの共通言語になります。
指導者の方からよくいただく質問にお答えします。
バレーの見取り稽古でよくある質問
まとめ:観察は指定ひとつで練習に変わる
見取り稽古は、道具も場所もいらないのに効果の大きい練習法です。最後に全体を表で整理します。
| 場面 | 見るポイントの例 | 声かけの例 |
|---|---|---|
| 順番待ち | 前の選手の踏み切り | 「3人前の最後の2歩だけ見よう」 |
| 試合見学 | 1人の選手の準備動作 | 「ボールが来る前の動きを見よう」 |
| 動画比較 | 理想フォームとのズレ1つ | 「同じところを1つ見つけよう」 |
見る前にポイントを1つ指定する。それだけで、ただの見学が見取り稽古に変わる。
私は元日本代表として多くの選手を見てきましたが、伸びる選手は例外なく、人のプレーをよく見ています。観察の習慣は、指導者の声かけで育てられます。
まずは次の練習の順番待ちで、ひと言だけ見るポイントを指定してみてください。



順番待ちの時間を「目の練習」にする、さっそく取り入れます!



その意気だよ。見る力がついた選手は、教えたこと以上に伸びていくからね。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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