- スパイクのフォームを教えたいが、ネットを使える時間が限られている
- 壁打ちや床打ちをさせているものの、正しいやり方か自信がない
- 跳びながら打たせると腕の振りがバラバラで、何から直せば良いか分からない
こんな悩みを解決します。
壁打ち・床打ちの正しい位置づけは、跳ばずに立ったまま「体のひねり+腕振り+ミート」を固める、スパイク練習の最初の段階です。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで指導してきた経験から、スパイクが伸びる選手は例外なく、立って打つフォーム固めを丁寧にやっています。
なお、スパイク技術の全体像は選手向けの記事で解説しています。この記事は指導者向けに、壁打ち・床打ちのドリルとしての正しいやり方をまとめたものです。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 壁打ち・床打ちがスパイク練習のどの段階に当たるかがわかる
- 床打ち・壁打ちそれぞれの正しい手順とチェックポイントがわかる
- 壁打ちから助走・実打へ進める段階の作り方がわかる
それでは、詳しく見ていきましょう。
結論:壁打ち・床打ちは「立位フォーム固め」の練習
先に結論からお伝えします。スパイクの練習は、次の順番で進めるのが最も効率的です。
- 立位でフォームを固める(体のひねり+腕振り+ミートを同時に)
- 2歩助走+踏み切りを足す
- 着地までを仕上げる
壁打ちと床打ちは、この1番目「立位でフォームを固める」ための代表的なドリルです。
壁打ち・床打ちの目的は、跳ばない状態でスイングとミートを固めること。
動かない状態でフォームを固めてから下半身を足すのが最短ルートです。跳びながら腕も振らせると、どちらも中途半端になってしまいます。
れおコーチネットが使えない日の暇つぶしくらいに考えていました…。



むしろ逆で、フォームづくりの本丸だよ。1人で毎日できるのも強みなんだ。
正しいフォームからはミスが起きにくくなります。努力の方向性を間違えさせないためにも、指導者がこのドリルの正しい手順を押さえておきましょう。
またスイングは、ジャンプと切り離せば1人でも自宅前でも反復できます。部員が多くネットの順番が回らないチームほど、壁打ち・床打ちを練習メニューの柱に据える価値があります。



カベ ハ イチバン ミジカナ レンシュウ アイテ
床打ちのやり方:ミートの感覚を作る
床打ちは、ボールを床にたたきつけて、ミートの感覚を確かめるドリルです。壁打ちより単純なので、初心者はここから始めます。
床打ちの手順
打ちつける場所は、自分の1〜2m前の床が目安です。強くバウンドしてまっすぐ跳ね返ってくれば、芯を捉えられています。
回数は10本×2〜3セットが目安です。1本ごとに跳ね返りの方向を確認させ、ずれたら何が原因かを考えさせながら打たせると、ただの反復が観察力の練習に変わります。
2人1組にして、1人が打ち、もう1人が正面から跳ね返りの向きを判定する形にすると、部員が多くても同時に回せます。



まっすぐ跳ね返ってくるかで、ミートの答え合わせができるんですね!



そのとおり。ボールの跳ね方が、そのまま採点表になるんだ。
床打ちのチェックポイント
指導者が見るポイントは3つです。
- 手のひらの真ん中でボールの芯を捉えているか
- 手首を返して、手の甲が打球方向を向くまで振り抜いているか
- 肘が下がらず、高い位置から打てているか
ミートは「打つ」というより、手のひらでボールを包み込んで押し出すイメージです。当たりが甘いとボールが横へ逃げたり、勢いなく跳ねたりします。
ミートは手のひらで包み込んで押し出し、手の甲が打球方向を向くまで振り抜く。
回転をかけようとして、ボールの表面を薄く触るような打ち方を教えるのは誤りです。しっかり芯を押し出せていれば、振り抜きの中で自然と前向きの回転がかかります。
症状からの逆算もできます。打ったボールが浮く選手は、ボールの中心より下を叩いているか、手首を返せていないかのどちらかです。上から覆いかぶせて、手の甲を打球方向へ向けさせましょう。



跳ね返り方を見れば、直す場所まで逆算できるのですね!



そう。床打ちは、ミートの状態を目で確認できる数少ないドリルなんだ。
壁打ちのやり方:スイングを連続で磨く
床打ちでミートの感覚ができたら、壁打ちに進みます。壁打ちは、壁に向かって打ち、跳ね返りを続けて打つ連続ドリルです。
壁打ちの手順
ポイントは、床にワンバウンドさせて壁に当てる軌道です。床と壁を経由することで、ちょうど良い高さと速さで戻ってきます。
壁に直接当てると、跳ね返りが速すぎて構え直す時間がありません。初心者ほど床経由の軌道を最初に徹底させると、連続で続く成功体験を早く作れます。



回数を続けること自体が目的ではないのですね。



うん。1回ごとに正しいフォームで打てているかが本体だよ。
連続で打つには、跳ね返りに合わせて細かく足を動かし、毎回同じ打点を作る必要があります。ここで「ボールに合わせて足で調整する」感覚が磨かれ、後の助走のリズムにつながります。
回数の目安は、10回連続×3セットほどで十分です。疲れてフォームが崩れたまま続けるより、短く区切って質を保ちましょう。



カベウチ ハ カイスウ ヨリ フォーム
壁打ちで見るスイングの質
壁打ちで指導者が観察したいのは、腕の使い方です。
肘を一度たたんでから、当たる直前で伸ばす。このムチのようなしなりが出ているかを見ます。腕を伸ばしたまま大きく回すスイングは、速さも出ず肩への負担も大きくなります。
スイングは肘を一度たたみ、当たる直前で伸ばす。伸ばしたまま振らない。
テイクバックでは、打つ側の肘を高く上げ、手のひらを耳の後ろまで引けているかを確認してください。初心者は腰の反りを使わず、背骨を軸にしたひねりだけで十分です。
腰を反らせすぎると、成長期の腰や肩を痛めるリスクがあるうえ、目線が動いてミートも下がります。反りは慣れてから少しずつ足せば良い要素だと覚えておきましょう。



思いっきり反らせた方が強く打てると、選手に教えるところでした…。



それはケガのもと。まずは背骨のひねりだけで、十分に強い球は打てるよ。
床打ち・壁打ちのよくある誤り3つ
やり方をひとつ間違えると、悪い癖を反復するドリルになってしまいます。ありがちな誤りを確認しましょう。
誤り1:回転をかけようと表面を薄く当てさせる
ドライブ回転をかけたくて、ボールの表面を薄くなでるように打たせるケースです。これではミートが薄くなり、実戦で通用する強い打球になりません。
芯を捉えて押し出し、手の甲が打球方向を向くまで振り抜けば、回転は結果としてついてきます。
誤り2:正面を向いたまま腕だけで打たせる
体をネット方向へ向けたまま、腕の力だけで打つ形です。スパイクの威力は背骨を軸にした体のひねり戻しから生まれるので、立ち方から直します。
右利きなら左足を前に、体は半身で構えさせてください。ひねりが入るだけで、同じ選手でも打球音が変わります。
誤り3:跳びながらの練習へ急がせる
立位で安定する前に助走やジャンプを足すと、フォームがばらけて戻れなくなります。
床打ちでまっすぐ跳ね返せる、壁打ちで10回続けられる、という目安を越えてから次へ進ませましょう。最初はできなくて当然なので、続いた回数の伸びを褒めながら積み上げてください。
なお、パスの壁練習(壁パス)とスパイクの壁打ちは別のドリルです。同じ壁を使っても、目的も見るポイントも違うので、メニュー表では言葉を分けておくと選手が混乱しません。



早く試合形式をやらせたくて、フォーム固めを飛ばしていました…。



遠回りに見えて一番の近道だからね。焦らず段階を踏ませてあげよう!
スマホでフォームを撮影し、本人のイメージや理想の選手のフォームと見比べさせるのも効果的です。自分の動きとのずれが見えると、修正は一気に速くなります。
壁打ちから助走・実打へ進める段階
立位フォームが固まったら、下半身を足していきます。ここでも一気に完成形を求めず、段階を分けます。
段階1:2歩助走+踏み切りを足す
まずは2歩の助走から踏み切りにつなげます。スピードを止めるのではなく、真上への力に変える踏み切りを覚える段階です。
右利きは右足→左足の順でほぼ同時に両足で踏み切り、左足のつま先をやや右へ向けて軸を作らせます。
このとき、壁打ちで固めたスイングがそのまま出ているかを確認してください。跳んだ途端に腕の振りが小さくなる選手は、助走を止めて立位に戻し、交互に往復させると崩れません。
段階2:吊り下げボールや置きトスを打つ
動かないボールを打つ段階を挟むと、助走とスイングの合体がスムーズです。ゴムチューブなどで吊り下げたボールを助走から確実にヒットできれば、初心者の到達目安として十分です。
吊り下げボールは、タイミングを気にせず打点とスイングだけに集中できるのが利点です。壁打ちで作ったフォームのまま、最高打点で捉える感覚をここで確かめさせます。



吊り下げボールなら、選手に思いっきりスイングさせられますね!
着地は両足同時に、膝を軽く曲げて衝撃を吸収させます。ジャンプ練習は上りより下りで膝を痛めやすいので、成長期は本数を管理してあげてください。発育期の負荷の考え方は、公的資料も参考になります。
出典:発育期のスポーツ活動のあり方に関する研究(日本スポーツ協会)
段階3:トスを打ってコンビへつなげる
最後にセッターのトスを打たせ、実戦の形へつなげます。タイミングの合わせ方はトス合わせのコンビ練習で詳しく解説しています。
調子を崩したときに床打ち・壁打ちへ戻れるのが、このドリルの本当の価値です。「困ったら壁に戻る」をチームの習慣にしておくと、スランプからの立て直しが速くなります。
立位→2歩助走→吊り下げボール→トス打ち。段階を戻れるチームは崩れない。
壁打ち・床打ちについてよくある質問
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まとめ:壁と床がスパイクの土台を作る
壁打ち・床打ちは、スパイク練習の最初に置くべきフォーム固めのドリルです。
| ドリル | 目的 | 合格の目安 |
|---|---|---|
| 床打ち | ミートの感覚づくり | まっすぐ強く跳ね返せる |
| 壁打ち | スイングの連続再現 | 同じフォームで10回続く |
| 2歩助走+踏み切り | 下半身との合体 | 真上に跳べている |
| 吊り下げボール・トス打ち | 実戦への接続 | 助走から確実にヒットできる |
壁打ち・床打ちの合言葉は「跳ぶ前に、立って固める」。
私は元日本代表として、立位のフォーム固めを大切にする選手ほど、その後のスパイクが大きく伸びることを見続けてきました。



明日から壁打ちを「本丸の練習」として組み込みます!



その意気だよ。壁は文句も言わず、何本でも付き合ってくれる名コーチだからね。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
バレーの指導・練習メニューについては他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪
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