- 指示がないと動けない選手が多くて、試合で困る
- 教えれば教えるほど、選手が受け身になっていく気がする
- 「考えろ」と言っても、何をどう考えさせればいいかわからない
こんな悩みを解決します。
考えさせる指導のコツは、指示の前に「今のはどう見えた?」という問いを1つはさむことにあります。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで指導してきた経験から、伸び続ける選手は例外なく、自分の言葉でプレーを説明できる選手だと感じています。
「考えろ」という指示では、選手は考えられません。考える道筋を作るのは、指導者の問いかけの設計です。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 「教える」と「問いかける」の使い分けがわかる
- すぐ使える発問の基本形3つが身につく
- 練習・試合・振り返りの場面別の問いかけ例が手に入る
それでは、詳しく見ていきましょう。
結論:「教える」と「問いかける」を使い分ける

先に結論からお伝えします。考えさせる指導とは、すべてを選手に丸投げすることではありません。
- フォームの正解や安全に関わることは、はっきり教える
- 試合の判断・コース選択・気づきは、問いかけて考えさせる
- 問いかけた後は、答えを待って、まず受け取る
正しいフォームを早い段階で示し、努力の方向性を整えるのは指導者の仕事です。ここを問いかけで済ませてはいけません。
正解のあるものは教える。選択と気づきは問いかける。この線引きがすべての土台。
れおコーチ全部考えさせようとして、練習が止まってしまったことがあります…



技術の正解は教えていいんだよ。問いかけるのは、判断と気づきの部分なんだ。
たとえばスパイクの踏み切り方は教える。でも「今の場面でクロスとストレートのどちらを打つか」は問いかける。この使い分けです。
割合の目安としては、初心者には教える8割・問いかける2割、経験を積んだ選手には半々くらいまで問いを増やしていくイメージです。
チームの成長に合わせて、指示の量を減らし、問いの量を増やしていく。これが考えさせる指導の全体像です。



シジ ヲ ヘラシ トイ ヲ フヤス
なぜ問いかけると選手が伸びるのか


問いかけの効果は、気分の問題ではなく、バレーボールという競技の性質から説明できます。
バレーは1秒ごとの自己判断の連続だから
コートの中では、ボールが動くたびに全員が判断を迫られます。取るか任せるか、どこに動くか、誰と勝負するか。
試合中、指導者がすべての判断に指示を出すことはできません。最後にプレーを選ぶのは、いつでも選手自身です。
試合で使える判断力は、練習中に自分で判断した回数でしか育たない。
指示待ちの選手が並んだチームは、想定外の場面で止まります。日頃から判断を選手に返しておくことが、試合終盤の強さになります。
自分で気づいた修正は忘れにくいから
人から言われた注意はすぐ忘れますが、自分で気づいた修正は体に残ります。



同じことを何度注意しても直らないのは、そういうことだったんですね…



言われた答えは借り物なんだ。自分で見つけた答えだけが、その子の技術になるんだよ。
だからこそ、答えを言う前に「どこが違ったと思う?」と一度ボールを選手に渡します。遠回りに見えて、これがいちばんの近道です。



キヅキ ハ ワスレナイ チシキ
部活動の指導について国が示している指針でも、生徒が自分で考えて取り組む力を育てることが求められています。問いかけの指導は、こうした流れとも重なります。
出典:運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(スポーツ庁)
発問の基本形3つ


問いかけには、覚えやすい基本形が3つあります。この順番で使うと、選手は自然と考え始めます。
基本形①事実を聞く:「今、何が見えていた?」
最初の問いは、意見ではなく事実を聞きます。「相手のブロックは何枚だった?」「セッターはどこにいた?」という具合です。
事実の質問には正解・不正解の怖さが少ないので、口の重い選手でも答えやすく、観察の癖がつきます。
見えていなかったなら、それ自体が大きな気づきです。「次は打つ前にブロックを見てみよう」と、次の課題が自然に決まります。
レシーブなら「サーバーの体はどっちを向いてた?」、ブロックなら「セッターの体勢はどう見えた?」と、見る対象を具体的に指定するのがコツです。
事実を聞く問いを重ねるうちに、選手は問われる前から相手を見るようになります。観察力は、問いで育つ技術です。
基本形②比較させる:「今のと前のは、何が違った?」
うまくいったプレーとミスしたプレーを比べさせる問いです。
スマホでフォームを撮影して、本人のイメージや理想のフォームと見比べさせると、この問いはさらに強力になります。



映像があれば、選手が自分で違いを見つけられますね!



指導者が言うより、自分の目で見つけた違いの方がずっと残るんだよ。
基本形③選ばせる:「次はどっちを試す?」
修正の方向を2択にして、選手自身に選ばせる問いです。
たとえばサーブがネットにかかる選手には「次はアウトを狙って思い切り打つか、トスの位置を変えるか、どっちを試す?」と聞きます。
学生年代は、少しずつ加減させるより極端に変えさせる方が直りが早く、自分で選んだ試みなら「今これを変えている」という自覚も生まれます。



選ばせるだけで、選手の顔つきが変わりそうです!?
どちらを選んでも正解になるように2択を作るのが、指導者の腕の見せどころです。選ぶ経験そのものが、試合での決断力の練習になります。
うまくいかなくても「試したからわかったこと」が残ります。試して確かめる姿勢そのものを認めてあげましょう。
選ばせる問いは、修正のスピードと選手の主体性を同時に手に入れる一石二鳥の技術。
場面別・問いかけ実例集


ここからは、私の指導現場でも使っている問いかけを、場面別にそのまま紹介します。
技術練習で使う問いかけ
ミスの原因を、症状の1つ前の段階から探させる問いが軸になります。
- 今のミスは、どの段階からずれてたと思う?
- 体のどこが最初に動いた?
- うまくいった時と、何が違った?
- 次の1本は、どこを1つだけ変えてみる?
バレーの動作はひとつながりで、ミスの原因は症状の前の段階に隠れていることが多いものです。問いで段階をさかのぼらせましょう。
たとえばスパイクがネットにかかった選手に「どの段階からずれてた?」と聞くと、最初は「当て方」と答えがちです。
そこで「その前は?」と一段さかのぼらせると、肘が下がっていた・ジャンプが前に流れていた、という本当の原因に自分でたどり着きます。
原因を自分で言い当てた選手は、次の1本から動きが変わります。この瞬間こそ、問いかけ指導のいちばんの醍醐味です。



選手が自分で原因を言えたら、指導者としても嬉しいですね!



その積み重ねで、コートの中に小さなコーチが6人育つんだよ。
ゲーム形式・試合で使う問いかけ
試合で効くのは、相手を観察させる問いです。
- 今のラリー、相手の誰と勝負した?
- ブロッカーと勝負する?それとも後ろのレシーバーと勝負する?
- 相手がいちばん嫌がっているのは、どのコース?
- 序盤に試しておきたいことは何?
スパイカーには「ブロッカーと勝負するのか、レシーバーと勝負するのか」という視点を持たせると、ただ打つだけの選手から抜け出せます。
私自身、現役時代の国際大会の決勝で、自分をマークするブロッカーがストレートを締めるのが得意でないことに気づき、ストレートを増やして得点を重ねた経験があります。
「誰と勝負するか」を自分で選べる選手は、ただ打つだけの選手より一段上にいる。
相手を観察して勝負どころを選ぶ習慣は、レベルが上がるほど大きな武器になります。
セッターには「今、調子がいいのは誰?」「相手のブロックが低いのはどこ?」と、配球の材料を問いかけます。
アタッカーの調子や決定率を大まかにでも把握しながらトスを配る癖は、この問いの積み重ねで育っていきます。



選手に「誰と勝負する?」なんて聞いたこと、なかったです!?



その問いを続けると、選手が自分で相手を観察するようになるんだ。
振り返り・ミーティングで使う問いかけ
練習後の振り返りは、問いかけの効果がいちばん出る時間です。
- 今日いちばんうまくいったプレーは何?それはなぜ?
- 明日の練習で最初に確認したいことは?
- 次の試合までに、何がどこまでできれば合格?
答えをノートに書かせると、考えが言葉として定着します。書いた内容に指導者が一言返すと、対話の習慣も育ちます。
全員の前で1人ずつ話させる必要はありません。2人1組で30秒ずつ話させるだけでも、全員が自分の言葉で振り返る時間を作れます。
振り返りの問いは、うまくいった理由から聞くのが鉄則です。反省会ではなく発見の時間にすることで、選手は振り返りを嫌がらなくなります。
問いかけ指導の注意点:質問攻めにしない
問いかけは強力な道具ですが、使い方を誤ると尋問になります。心得を3つに絞ってお伝えします。
詰問にしない
「なんでできないんだ?」は問いかけではなく、形を変えた叱責です。選手は理由ではなく言い訳を探し始めます。
問いの目的は、選手を追い込むことではなく、視点を渡すことです。責める気持ちが混ざりそうな時は、問いかけ自体をやめましょう。
見分け方は簡単で、自分の中に「言わせたい正解」が固まっているかどうかです。正解の答え合わせをしたいだけなら、それは問いではなく指示として伝えた方が誠実です。
答えを待つ時間を作る
問いかけて3秒で答えを言ってしまう。これがいちばん多い失敗です。
問いかけたら、沈黙を怖がらず待つ。沈黙の時間こそ、選手が考えている時間。
的外れな答えが返ってきても、まず「そう見えたんだね」と受け取ってから、事実の質問に戻ります。答えを受け取らない問いは、次から返ってこなくなります。



待ちきれなくて、いつも自分で答えを言っていました…



待つのはコーチの修行だね。沈黙の3秒を数える癖をつけるといいよ。
最後は本人の言葉でまとめさせる
対話の締めは「じゃあ、次は何を意識する?」と、本人の口から言わせます。
自分の言葉で宣言した課題は、指導者に言われた課題の何倍も守られます。ここまでやって、問いかけは完結します。
まとめた言葉が的を外していても、その場では受け取って、次の練習で問い直せば大丈夫です。修正の機会はいくらでもあります。



ジブン ノ コトバ ガ ヤクソク ニ ナル
考えさせる指導のよくある質問
なお、振り返りを習慣にするには、選手ごとの練習ノートを用意するのが近道です。
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まとめ:問いが選手を、コートの主役にする
考えさせる指導は、教えることの放棄ではありません。正解は教え、判断は問いかけ、答えを待って受け取る。この設計が選手の判断力を育てます。
| 基本形 | 問いかけの例 |
|---|---|
| 事実を聞く | 今、何が見えていた? |
| 比較させる | 今のと前のは、何が違った? |
| 選ばせる | 次はどっちを試す? |
指示は今日のプレーを変え、問いかけは選手の一生のプレーを変える。
私は元日本代表として、自分の頭で相手を観察し、勝負どころを選べる選手が大舞台で活躍する姿を何度も見てきました。



明日はまず「今のはどう見えた?」から始めてみます!



その一言が、選手の頭の中を動かし始めるよ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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