- 1歩目の動き出しがいつもワンテンポ遅れてしまう…
- ぐっと踏ん張ってから動くので、相手にコースを読まれる…
- 速く動こうとすると力んで、かえって体が重い…
こんな悩みを解決します。
バレーボールで楽に速く動き出すカギは、力を入れることではなく進行方向の脚の力を「抜く」ことにあります。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しているんです。
10年以上スクールで指導してきましたが、動き出しが速い選手ほど、最初の1歩で強く床を蹴っていません。むしろ、立っている脚の力をスッと抜いて、倒れる勢いをそのまま動きに変えています。
この「抜く」感覚を覚えると、予備動作が消え、相手にスタートをバレにくくする、という仕組み。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 抜重で体が勝手に動き出す仕組みが、中学生でも分かるように理解できる
- 予備動作を消して相手に動き出しを読まれにくくする方法が分かる
- その場でできる「膝カクン」ドリルでレシーブの1歩目が速くなる
基本動作の全体像から知りたい方は、こちらの記事もあわせて読んでみてください。
それでは、まず「抜重とはなにか」というところから見ていきましょう。
抜重とは?力を抜くだけで体が動き出す仕組み

抜重(ばつじゅう)とは、文字どおり体重を抜くことです。
動きたい方向の脚にかかっている力を、フッと抜く動作を指します。
サルくん力を抜いたら、その場でしゃがんじゃうだけじゃないの?



それが、片方の脚だけ抜くと、体が抜いた方へスッと倒れていくんだよ。
人の体は、まっすぐ立っているときは両脚で体重を支えてバランスを取っています。ここで動きたい方向の脚の力を抜くと、その方向へ支えがなくなり、体が勝手に傾きはじめます。
この「倒れる勢い」こそが、最初の推進力になります。
「蹴って動く」と「抜いて動く」のちがい
多くの選手は、動くときに地面を強く蹴って進もうとします。ですが、強く蹴るには、いったん膝を曲げて沈み込む準備動作が必要です。その「沈み込み」のぶんだけ、動き出しが遅れてしまうんですね。
一方、抜重は準備の沈み込みがいりません。立っている状態から脚の力を抜くだけなので、ゼロコンマ数秒、早く動き出せるわけです。



蹴ル=沈ム準備ガイル 抜ク=準備ガイラナイ
重力を味方につける動き方
抜重のすごいところは、自分の筋力ではなく重力を使って動き出す点です。体が傾けば、あとは重力が下へ引っぱってくれます。少ない力でスッと動けるのは、その力を横方向の動きに変えられるからです。
だから、力の弱い選手や小学生でも身につけやすい技術です。



力で動くんじゃなくて、倒れる力を借りる。これが抜重の考え方だよ。
なぜバレーボールで抜重が大事なのか
バレーボールは、自分のところへ飛んでくるボールに反応して動き続けるスポーツです。私はよく、バレーを反応 → ストップ → ボールコントロールのくり返しだと説明しています。
このうち、最初の「反応して瞬時に動き出す」場面で力を発揮するのが抜重。



動き出しが速くなれば、今まで届かなかったボールにも触れるってこと?



そのとおり。1歩目が速いだけで、守れる範囲がぐっと広がるよ。
反応のスピードは、ボールに追いつけるかどうかを直接左右します。その反応スピードの土台になるのが、抜重なんですね。
予備動作がなく相手に読まれにくい
抜重のいちばんのメリットは、動き出しの予備動作が小さいことです。強く蹴って動く選手は、その前にどうしても膝を沈める動きが出ます。
相手から見ると、この沈み込みがどっちに動くかのサイン。
ところが抜重は、立ったまま力を抜くだけなので、外から見て動きの前ぶれがほとんど分かりません。



予備動作ゼロ=相手ハ反応デキナイ
レシーブで相手スパイカーと駆け引きするときも、サーブの構えから素早く守備位置へ動くときも、この「読まれにくさ」が効いてきます。
体への負担が少なく、長く戦える
もう1つの大きなメリットが、体への負担の少なさです。1歩ごとに強く床を蹴り続けると、膝や足首に大きな衝撃がたまっていきます。
とくに成長期の中学生は、膝への負担が痛みやケガにつながりやすいので要注意。
抜重は重力を使って動くため、1歩あたりの蹴る力が小さくてすみます。



試合の後半までバテずに動き続けるためにも、楽に動ける技術は大切なんだ。
そのぶん、試合の後半まで足が動き続けます。体力に自信がない選手ほど、抜重を覚える価値が大きいといえます。
抜重の正しいやり方|力を抜く感覚をつかむ


ここからは、抜重を実際にどうやるのかを見ていきます。
大事なのは、がんばって力を入れることではなく、いかに上手に力を抜けるかという点です。



「力を抜く練習」なんて、今までやったことないかも!



そうだよね。でも抜く感覚をつかめると、動きが一気に変わるよ。
まずはパワーポジションで構える
抜重の前提になるのが、良い構え(パワーポジション)です。これがくずれていると、力を抜いても思った方向へ倒れていきません。
構えのポイントを、ここで整理しておきましょう。
- 足幅は肩幅より少し広めにとる
- つま先はやや外向き(15度くらい)に開く
- 股関節を曲げて、重心は母指球(足の親指の付け根)に乗せる
- 背骨はまっすぐ、上半身はやや前傾を保つ
この構えだと、少し力を抜くだけで体がスッと前や横へ傾けるようになります。



母指球ニ乗ル=スグ動ケル準備カンリョウ
動きたい方向の脚の力を抜く
構えができたら、動きたい方向にある脚の力を抜きます。右へ動きたいなら右脚、左なら左脚の力をフッと抜くイメージです。
すると、体は抜いた方向へ傾き、自然に倒れはじめる感覚。



抜くのは「動きたい方向の脚」。ここを間違えると逆に動けないよ。
倒れはじめたら、その勢いを止めずに次の1歩を踏み出します。このとき、無理に大きく踏ん張ろうとしないことが大切です。
倒れる勢いをそのまま走りにつなげる
抜重で生まれた傾きは、最初のきっかけにすぎません。そこからは、倒れた勢いを使って自然に足を運んでいきます。
この流れがスムーズにつながると、「よし動くぞ」と思う前に体が動き出している感覚になります。



考えるより先に体が動くって、こういうことか!
やってはいけない抜重のNG例


抜重はシンプルな技術ですが、うまくいかない選手にはいくつかの共通点があります。
ここでは、よくある失敗を3つ紹介します。
NG①:いったん沈み込んでから動く
いちばん多いのが、動く前に膝を深く曲げて沈み込んでしまうパターンです。これは「強く蹴って動こう」とする、蹴り出しのクセが残っている状態です。
抜重ならではの速さが消えてしまうのは、この沈み込む時間があるからです。



沈んでから動くと、抜重の意味がなくなっちゃうんだ。
立った構えのまま、力を抜くだけで動き出すのが正解です。
NG②:両脚の力を同時に抜いてしまう
次に多いのが、両脚の力を一度に抜いてしまうケースです。両脚を同時に抜くと、体は横にも前にも倒れず、その場でカクンと沈むだけになります。
抜くのは、あくまで動きたい方向の片脚だけ。



両脚抜ク=ソノ場デ沈ムダケ・前ニ進マナイ
NG③:上半身が起き上がって棒立ちになる
3つ目は、動き出すときに上半身が起き上がってしまうパターンです。上半身が立ってしまうと、せっかくの前傾がなくなり、倒れる方向が定まりません。
動き出しても体が重く、スピードが乗らない原因になるんです。
前傾した構えを保ったまま脚の力を抜くと、傾きがそのまま推進力になります。



上半身の前傾をキープできているか、動画で見直すと分かりやすいよ。
スマホで自分の動き出しを撮って、沈み込みや棒立ちが出ていないかチェックしてみてください。
その場でできる「膝カクン」抜重ドリル


抜重の感覚は、広い場所がなくても、その場で練習できます。ここでは段階を追って身につけられるドリルを紹介します。



家でもできるなら、毎日やってみたい!



いいね。短い時間でも、毎日くり返すと感覚が体にしみこむよ。
ドリル①:その場で膝をカクンと抜く
まずは動かずに、力を抜く感覚だけをつかみます。
パワーポジションで構えて、片脚の膝の力をフッと抜いてみてください。
このとき、自分の意思で倒れるのではなく、力を抜いた結果として勝手に傾く感覚を探すのがコツです。



「倒すぞ」じゃなくて「抜いたら倒れた」。この受け身の感覚が大事だよ。
ドリル②:抜重から1歩目につなげる
膝カクンの感覚がつかめたら、そのまま1歩目につなげます。
力を抜いて傾いた勢いを止めず、スッと前や横へ踏み出してみましょう。
最初はゆっくりで構いません。沈み込まずに、立ったまま動き出せているかを確認しながらくり返します。
慣れてきたら、左右どちらに動くかを直前に決めて、ランダムに動く練習に進みましょう。



だんだん、動き出しが軽くなってきた気がする!
ドリル③:相手の合図で動き出す
最後は、反応の要素を足していきます。ペアになって、相手が指さした方向へ抜重で動き出す練習です。
合図を見てから考えて動くのではなく、見た瞬間に力が抜けるようになれば本物です。



試合の「反応」に近い形で練習できるから、実戦で効いてくるよ。
抜重をレシーブの1歩目に活かす


ここまで身につけた抜重は、実際のプレーのいろいろな場面で役立ちます。なかでも効果が大きいのが、レシーブの1歩目です。
レシーブでは、ボールに素早く反応して落下点に入ることが何より大切。
このとき、できるだけ目の高さを変えず、少ない動きで落下点へ入るのが理想です。



目線ノ上下動ガ少ナイ=ボールヲ正確ニ見ラレル
抜重なら、強く蹴って弾むように動くのではなく、スッと低い姿勢のまま動き出せます。そのため、目線の高さが安定し、ボールを正確にコントロールしやすくなるんです。
サーブレシーブでの活かし方
サーブレシーブでは、相手がサーブを打った瞬間に素早く反応する必要があります。ここで沈み込んでから動くと、速いサーブには間に合いません。
構えのまま抜重で動き出すことで手に入るのは、コンマ数秒という貴重な差。



あの「あと一歩」で届かなかったボール、抜重なら届くかも!
少し距離があるボールには、抜重に加えてスプリットステップ(小さく弾んで反応を早める動き)を組み合わせると、さらに対応の幅が広がります。
ディグ(スパイクレシーブ)での活かし方
相手の強打を拾うディグでも、抜重は力を発揮します。速い打球に対しては、低い姿勢を保ったまま、コースへ素早く面を出すことが求められます。
強打には反応しきれないのは、予備動作の大きい動き出しをしてしまうからです。



強打への反応は一瞬の勝負。だからこそ抜重の速さが効いてくるんだ。
抜重で低い姿勢のまま動き出せば、目線を保ったまま、最短でボールの下に入れます。
レシーブをもっと深く知りたい方は、レシーブの構えや守備の考え方を別の記事でも解説しているので、あわせて読んでみてください。
よくある質問(抜重Q&A)
まとめ|抜重で楽に速く動き出そう
この記事では、力を抜いて楽に速く動き出す「抜重」について解説しました。最後に大切なポイントをふり返ります。
抜重とは、動きたい方向の脚の力を抜いて、倒れる勢いで動き出す技術。
強く蹴る動きとちがって沈み込みがいらないので、動き出しが速く、相手にも読まれにくくなります。
その場の「膝カクン」ドリルから始めれば、力の弱い選手でも無理なく身につけられます。



力を抜くだけで速くなるなんて、なんだか得した気分だよ!



その「力を抜く」がいちばん難しいんだけどね。毎日コツコツ続けていこう。
最後まで読んでいただき、ありがとうございました。
基本動作については他にも記事を書いています。気になるテーマがあればぜひ読んで、参考にしてもらえたら嬉しいです♪
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