- 強打になると腰が引けて、顔を背けてしまう選手がいる
- 「怖がるな」と声をかけても直らず、指導に行き詰まっている
- どの順番で球の強さを上げればいいのか、基準がない
こんな悩みを解決します。
強打への恐怖心は、選手の性格ではなく、練習の強度設計で解決できる課題です。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで指導してきましたが、腰が引ける選手の多くは、反応できない速さの球をいきなり受けた経験がきっかけになっています。
痛くない当て方と段階的な球出しを整えれば、恐怖心は成功体験で少しずつ上書きできます。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 選手が強打を怖がる本当の原因がわかる
- 恐怖心を上書きする4段階のディグ練習メニューがわかる
- 怖がる選手への声かけと、段階を戻す判断基準がわかる
それでは、詳しく見ていきましょう。
結論:恐怖心は「段階設計」で消えていく
先に結論からお伝えします。恐怖心の克服に、特別な精神論はいりません。やることは、成功体験を積める強度から始めて、少しずつ上げていくだけ。
- 第1段階:緩い球を正面でキャッチする(安心を作る)
- 第2段階:緩い球を面で返す(痛くない当て方を覚える)
- 第3段階:距離と角度で強度を上げる(台上からの打ち下ろし)
- 第4段階:実戦の場面を再現する(ブロック裏・ランダム)
いきなり強い球を受けさせない。軽い負荷から段階的に慣らすのが、怪我と恐怖の両方を防ぐ鉄則。
大切なのは、各段階に合格の目安を作り、できてから次へ進むことです。強度の階段さえ整えば、選手は自分のペースで怖さを乗り越えていきます。
れおコーチ「怖がるな!」と言い続けてきましたが、全然変わらなくて…。



怖さは言葉では消えないんだ。消してくれるのは、痛くなかった経験の積み重ねだよ。
この記事では、原因の整理から4段階のドリル、声かけの技術までを順番に解説していきます。
なぜ選手は強打が怖くなるのか
対策の前に、恐怖心の正体を整理しておきましょう。私が指導現場で見てきた原因は、大きく3つに分けられます。
1つ目は、痛かった経験です。腕の当ててはいけない場所で受けたり、顔の近くで弾いたりした記憶は、体に強く残るからです。
2つ目は、反応できない速さの球をいきなり受けたことです。目が慣れていない段階での強打は、選手にとってただ飛んでくる危険物でしかありません。



コワサノ ショウタイハ ケイケンブソク
3つ目は、失敗したときに叱られた記憶です。弾いて叱られると、選手はボールではなく失敗を恐れて、体がさらに固まってしまいます。
恐怖心の多くは、選手の弱さではなく、練習の強度と順番の設計ミスから生まれる。
つまり、直すべきは選手の心ではなく練習の設計。ここを勘違いすると、根性論に頼って選手を追い込んでしまいます。
もう1つ知っておきたいのは、恐怖はチーム内で広がるという点です。誰かが痛がる姿を見た仲間も、次の1本で腰が引けやすくなるからです。
だからこそ、怖がる選手への対応はチーム全体の守備力の問題でもあります。1人の克服が、周りの選手の安心にもつながっていくんです。



原因のうち2つは、指導者側が作っているんですね…。



そう受け止められたら、もう解決に向かっているよ。設計は今日から変えられるからね。
きつさや怖さだけが残る練習は、上達より先に心を折ってしまいます。だからこそ、次の章から紹介する土台作りと段階設計が大切になります。
恐怖心を減らす構えとフォームの土台
ドリルに入る前に、怖さを物理的に減らす2つの土台を教えておきましょう。体の準備が整うほど、心の余裕も生まれます。
目の高さを固定した低い構えを作る
速い打球への備えは、低い構えから始まります。まずは、選手に確認させたいポイントを整理しておきましょう。
- 足幅は肩幅より広くとり、つま先はやや外向きに開く
- 股関節を曲げて腰を落とし、重心は母指球に乗せる
- 肘は体の前に置き、膝と肘が垂直方向でそろう位置を目安にする
- 自分の目の高さを一定に保つ
なかでも強調したいのが、自分の目の高さを一定に保つことです。目線が上下に揺れると、速い球はさらに速く感じられます。
肘を前に置く意味も、あわせて説明してあげてください。肘が前にあると面が素早く完成し、ボールとの間に壁を作れるからです。
逆に肘が後ろに下がっていると、面を作るまでに肘が大きく前へ移動します。その途中でボールが当たると、余計な力が加わって、思ったより飛んでしまいます。



面が早くできる選手ほど怖がらない。備えの速さは、安心の速さでもあるんだ。
低く構えて目線を保つ習慣は、恐怖対策と守備力アップの両方に効きます。ドリルの前に、構えだけの確認時間をとる価値は十分あります。
痛くない当て方を教える
痛みへの不安は、当て方の知識で減らせます。押さえるポイントは2つだけ。
1つ目は、ボールを当てる場所です。当てるのは前腕の中央で、手首から3cmほどの硬い部分は避けさせてください。この硬い部分で受けると、痛みや内出血につながりやすいからです。
2つ目は、手の組み方です。強く握りすぎると腕が固まって痛みが出やすいので、組むのは軽く、指は触れるだけにさせます。



アテルノハ ゼンワンノ マンナカ
両手の親指をそろえて面を作れば、ボールは思ったより痛くありません。この体感を第2段階で丁寧に積ませることが、克服の近道になります。
なお、突き指や強い痛みが出たときは、無理をさせないでください。痛みが続く場合は、医療機関で診てもらうのが安心です。
段階的ディグ練習メニュー:4段階で強度を上げる
土台ができたら、いよいよ段階的なドリルです。各段階に合格の目安を置き、クリアしてから次へ進みます。
第1段階:緩い球を正面でキャッチする
最初は、コーチが下から投げる山なりのボールを、正面でキャッチさせるだけ。距離は5〜6mから始めます。
ねらいは、ボールの正面に体を運ぶ動きと、怖くなかったという体感です。1人10本、余裕を持ってキャッチできたら合格にしましょう。
キャッチなら、ボールを最後まで見る習慣も自然に育ちます。顔を背けるクセのある選手ほど、この段階を丁寧にやってください。
第2段階:緩い球を面で返す
次に、同じ緩さのボールをアンダーの面で返させます。当てる場所は前腕の中央、狙いはコーチの位置への山なりです。
ここでの声かけは「痛くなかった?」の一言。痛くない当て方ができている選手には、その成功をはっきり言葉にして返してあげましょう。
10本中8本を面の中央で受けられたら合格です。焦らず、体感の上書きを最優先にしてください。



痛くない経験を先に積ませるんですね!



そう。痛くない・怖くないが当たり前になってから、強度を上げるんだ。
第3段階:距離と角度で強度を上げる
いよいよ打球です。ただし、いきなり強打ではなく、強度を細かく刻みます。
返球の目標は、コート中央へ高く上げること。目安はアタックライン上、ネットから4.5mあたりです。
強い球をセッターへぴったり返す必要はありません。高く上がれば、そこへ味方が入って次につなげられるからです。
距離が近いと感じたら、遠くから始めてかまいません。距離は、球の速さを調整できるいちばん簡単なつまみ。
この段階では、打つコースを先に予告してあげるのも有効です。「次は右ね」とわかっていれば、選手は準備の成功体験を積めるからです。
予告ありで安定したら、予告なしへ進みます。同じ強さの球でも、わかって受けるのと読んで受けるのでは、難易度が1段違うからです。
第4段階:実戦の場面を再現する
仕上げは、試合で強打を受ける状況の再現です。ブロック役を1人立たせ、その後ろや隣で受けさせます。
ブロックの裏を守る想定なら、手のひらを顔の横から肩の前あたりに置いて、ハンズアップで待たせましょう。手が上がっていれば、ブロックの上を抜ける速い球にも面が間に合います。
あわせて、守備の役割分担も教えてあげてください。味方のブロックが塞いでいるコースには、強打はそのまま飛び込んできません。
ブロックが塞いでいるコースの後ろは、強打より「ブロックの上から来るボール」への対応が本当の役割。
自分の場所にどんな球が来るのかを理解すると、漠然とした怖さは具体的な備えに変わります。役割の理解は、それ自体が恐怖心の薬になるんです。
ランダムなコースへの打ち分けまで受けられたら、恐怖心の克服はほぼ完成です。3人での連携練習に進み、実戦力へつなげていきましょう。
声かけとメンタル面のケア
段階設計と同じくらい大切なのが、指導者の言葉です。ドリルの効果を左右する原則を3つ、順に見ていきましょう。
1つ目は、できたところから褒めることです。最初はできないところばかりなのが当然なので、キャッチできた・顔を背けなかったなど、小さな前進を言葉にしてあげましょう。
2つ目は、「怖い」と言えたことを認めることです。怖さを口に出せるチームは、段階を戻す判断が早くなり、結果的に上達も速くなります。



今の1本、最後までボールを見られていたよ!ナイスチャレンジ!



その声かけが最高の練習環境だね。挑戦した事実を先に認めるのがコツだよ。
3つ目は、弾かれても叱らないことです。強打ドリルでの失敗は、強度が合っているかを知らせてくれる情報であって、叱る対象ではありません。
失敗は叱る材料ではなく、強度設計を見直すための情報。この視点が怖がらないチームを作る。
練習がきつくて、バレーボールが嫌いになってしまうのがいちばんよくありません。乗り越えさせたい日ほど、言葉は前向きに保ちましょう。
褒め方と叱り方のバランスは、こちらの記事で詳しく解説しています。
よくある失敗と直し方
恐怖心の指導でつまずきやすい失敗を3つ、直し方とセットで整理しましょう。
失敗①:いきなり強打を受けさせる
いちばん多く、いちばん罪の深い失敗です。目が慣れる前の強打は、恐怖心を植えつける球出しになってしまいます。
直し方は、第1段階からやり直すこと。遠回りに見えますが、上書きに必要なのは痛くなかった経験の数だからです。
失敗②:根性論で乗り越えさせようとする
「気持ちで負けるな」だけの指導は、体の固まりを強めます。恐怖で筋肉がこわばると、面は余計に乱れて悪循環になるからです。
直し方は、怖さを技術の言葉に翻訳することです。目線・当てる場所・構えの3点に絞って伝えてみてください。伝えるべき対処が具体的になるほど、選手の体はほぐれていきます。
失敗③:段階を戻す判断ができない
進級だけを考えて、崩れてきたのに強度を維持してしまう失敗です。フォームの崩れや顔を背ける動きは、強度が高すぎるサインです。
直し方は、戻る基準もあらかじめ決めておくこと。「10本中4本以上弾いたら1段階戻る」のように数字で決めておけば、その場で迷いません。



戻るのは負けだと思い込んでいました…。



戻るのは負けじゃなくて調整だよ。階段は上り直せば、ちゃんと頂上に着くんだ。
恐怖心の指導でよくある質問
まとめ:強度の階段が恐怖心を消していく
強打への恐怖心は、設計された練習でこそ解消に向かいます。要点を整理します。
| 段階 | 内容 | 合格の目安 |
|---|---|---|
| 第1段階 | 緩い球を正面でキャッチ | 10本を余裕を持ってキャッチ |
| 第2段階 | 緩い球を面で返す | 10本中8本を前腕の中央で |
| 第3段階 | 台上打ちなどで強度アップ | 中央へ高く上げられる |
| 第4段階 | ブロック裏・ランダム再現 | ハンズアップで面が間に合う |
恐怖心は、痛くない当て方×段階的な強度×前向きな声かけの3点セットで上書きできる。
私は元日本代表として、怖がっていた選手が強打を止めた瞬間に見せる表情を、何度も見てきました。あの顔つきの変化こそ、段階設計の成果です。



まずは球出しの強度を見直して、キャッチの段階から始めてみます!



いいね。階段を1段ずつ。それが恐怖心へのいちばんの近道だよ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
バレーの指導・チーム運営については他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪
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