- 対人パスが、ただのダラダラしたアップになっている
- 選手が何を意識してパスしているのか、見ていてわからない
- バリエーションが思いつかず、毎日同じ流れのくり返しになっている
こんな悩みを解決します。
対人パスがアップで終わってしまう原因は、1本ごとの目的と成功基準を決めていないことにしぼられます。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで指導してきましたが、対人パスの質はチームの土台そのものだと感じています。
同じ10分間でも、目的を1つ決めて回すだけで、対人パスは立派な技術練習に変わります。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 対人パスがダラダラする原因と、立て直しの考え方がわかる
- 明日から使える2人組ドリル10選と回数の目安がわかる
- パスの質を上げるフォームの見方と声かけ例がわかる
それでは、詳しく見ていきましょう。
結論:対人パスは「目的を1つ決めて回す」だけで変わる
先に結論からお伝えします。対人パスを技術練習に変えるために、新しい道具も長い時間もいりません。
1本ごとの目的・回数と成功基準・声を出す場面、この3つを決めるだけで質が一気に上がる。
たとえば「今日は面を残すことだけ意識して50回」と決めます。すると選手は1本ごとに自分のパスを振り返るようになり、同じ10分がまったく別の練習になるんです。
- 目的を1つにしぼる(面・足・落下点など)
- 回数と成功基準を決める(2人でノーミス50回など)
- 声を出す場面を決める(名前を呼ぶ・準備の声)
れおコーチうちの対人パス、正直おしゃべりタイムになっています…。



目的がないと、どんな練習もそうなるよ。決めごとを1つ足すだけで変わるんだ。
逆に言えば、目的のない対人パスを毎日10分続けると、1年で30時間以上をなんとなく使ってしまう計算になります。
この記事では、目的別に選べる2人組ドリル10選と、質を守るための指導ポイントを順番に紹介していきます。
なぜ対人パスがただのアップで終わってしまうのか
そもそも、なぜ対人パスはゆるい時間になりがちなのでしょうか。スクールで長く指導している立場から見ると、理由は3つあります。
1つ目は、先ほど触れた目的のあいまいさです。「とりあえず続ける」だけだと、選手はミスしない安全なパスだけを選ぶようになります。
2つ目は、成功基準がないことです。何回続いたら合格なのかが決まっていないと、集中の糸が張らず、だらけた雰囲気が生まれます。



キジュン ナイト シュウチュウ キレル
3つ目は、指導者側がフォームのどこを見るかを決めていないことです。見るポイントがないと声もかけられず、選手は放置されたと感じてしまいます。



たしかに、なんとなく全体を眺めているだけでした…。



全部を見ようとしなくていいよ。今日は構えだけ、と決めて見るのがコツなんだ。
対人パスはすべてのプレーの出発点です。ここで身についた構えや面の作り方が、サーブレシーブにもディグにもそのままつながっていきます。
だからこそ、アップとして流すのはもったいない時間なんです。次の章から、見るべきフォームのポイントを整理していきます。
最初に整えたい基本フォームのチェックポイント
ドリルを増やす前に、指導者として見るポイントを3つにしぼっておきましょう。ここが整っていないと、どのバリエーションも効果が半減します。
私がコーチとして対人パスを見るときも、最初の数分はこの3点だけに目を向けています。
構えは肩幅より広く・重心は母指球に
まず構えです。足幅は肩幅より広くとり、つま先はやや外向きに15度くらい開かせます。左右の足はほぼ横並びにして、前後に大きくずらしすぎないのが基本です。
股関節を曲げて腰を落とし、重心は母指球(親指の付け根のふくらみ)に乗せます。かかと体重になっている選手は、1歩目が遅れてパスが乱れます。
手は肘が後ろに下がらない位置に置き、膝と肘が上下でそろう構えが理想。
肘が後ろにあると、ボールに対して面を先に作って待つことができません。面が完成する前にボールが当たると、思ったよりボールが飛んでしまうんです。



構えの時点で、もうパスの半分が決まっているんですね!



その通り。構えを見るだけでも、指導の目はぐっと鋭くなるよ。
アンダーは親指をそろえて「足で運ぶ」
アンダーハンドパスで最初に見るのは、両手の親指がそろっているかどうかです。親指がそろうと面がそろい、ボールが真っ直ぐ返るようになります。
チェックのタイミングは、組んだ瞬間ではなくボールを触った後です。触った後も親指が残っている選手は、面がぶれていません。
当てる位置は前腕の中央です。手首近くの硬い部分は痛みにつながるので、場所も見てあげましょう。
そして時間に余裕があるボールは、腕を振らずに面を作って足で運ぶのが基本です。出したい方向へ体を向けて、重心移動しながら送り出させましょう。



ウデハ フラナイ アシデ ハコブ
オーバーはおでこの上方で待って押し出す
オーバーハンドパスは、両手でボールを包み込むような三角形を作らせます。ボールを迎える位置は、おでこの上方(頭の上の方)です。
中学生は待ちきれずに高い位置へとりに行きがちなので、ボールが落ちてくるまで待つことを徹底させてください。
押すのは親指・人差し指・中指の3本と、その付け根です。落ちてきたボールを、足から力を伝えながら前へ押し出すイメージを共有しましょう。



どのパスも、目の高さをなるべく動かさないのが上手さの土台だよ。
体の上下動が激しいままボールを触ると、コントロールは安定しません。低い姿勢のまま静かに動けているかも、あわせて見てあげてください。
明日から使える対人パスバリエーション10選
フォームの見方が決まったら、いよいよバリエーションです。目的別に3グループ・10種類を紹介します。
すべて2人組・ボール1個でできるので、体育館でも外でもすぐにとり入れられます。1種目2〜3分を目安に組み合わせてください。
基本を磨く4種(正確さがテーマ)
まずは、フォームの定着をねらう4種類です。距離は5〜6mを基本にします。
- アンダー限定パス:アンダーだけで50回。面を残すことだけを目的にする
- オーバー限定パス:オーバーだけで50回。おでこの上方で待てているかを見る
- 直上パス挟み:自分の真上に1回上げてから相手に返す。落下点に入り直す練習になる
- 距離チェンジ:3m→6m→9mと距離を変えて10回ずつ。力加減の調整力を育てる
回数はあくまで目安です。初心者ペアなら20回から始めて、成功体験を積ませてあげてください。



直上パスを挟むだけで、動きの量が全然違いますね!



そうなんだ。1回真上に上げるだけで、毎回落下点へ入り直す練習になるんだよ。
動きを加える3種(フットワークがテーマ)
次は、止まったままの対人パスから抜け出す3種類です。バレーは動いて止まって触るスポーツなので、この要素は欠かせません。
- 左右移動パス:返したら2〜3m横へサイドステップし、また戻って受ける
- 前後ゆさぶりパス:出し手が短いボールと長いボールを交互に出し、受け手は前後に動いて返す
- 座り立ちパス:返した直後にその場でしゃがんで立つ。低い姿勢からの立ち上がりを鍛える
動きが入っても、触る瞬間には止まって面を作るのが理想です。走りながら流れて触っていないかを見てください。
動く→止まる→運ぶ、の順番が守れているかがフットワーク系ドリルの見どころ。



動きを入れると、急にフォームが崩れる選手がいます…。



それが見つかれば大成功。止まって取れる距離から少しずつ広げていこう。
実戦につなげる3種(判断がテーマ)
最後は、試合の場面を意識した3種類です。慣れてきたチームほど効果があります。
- 呼名パス:相手の名前を呼んでから返す。声とプレーをセットにする習慣づけ
- ランダム球出しパス:出し手が左右前後へ自由に振り、受け手は10本連続で返す
- 目標パス:セッターの位置にカゴやマーカーを置き、そこへ落とすつもりで返す
呼名パスは地味に見えますが、声かけの習慣づくりに効果的です。声はかけ声ではなく、味方に情報を伝える技術だからです。
ランダム球出しでは、出し手側の練習にもなっている点を伝えてあげると、待ち時間の意識が変わります。



コエトパスハ ワンセット
3人での連携練習に進む準備としても、この3種は入り口になります。連携の基本はこちらの記事で解説しています。
回数設定と声かけで質を守るコーチング
ドリルがそろっても、運用がゆるいと元のダラダラに戻ります。質を守るための指導のコツを3つ紹介します。
- 回数ではなく成功基準で区切る(ノーミス50回など)
- 声かけは短い合言葉にする(「面を残そう」など)
- できたところをほめる言葉から入る
1つ目は、回数より成功基準で区切ることです。「50回やる」ではなく「2人でノーミス50回まで続ける」と決めると、1本の重みが変わります。
2つ目は、声かけを短くすることです。長い説明より、「面を残そう」「足で運ぼう」のような短い合言葉のほうが、プレー中の選手には届きます。



面を残そう!いいよ、今の1本!



その声かけ、最高だね。できた瞬間に短くほめるのがいちばん効くんだ。
3つ目は、できたところをほめることから入ることです。最初はできないところばかりなのが当然なので、直す指摘とほめる言葉のバランスを意識してください。
私はスクールの指導でも、対人パスの10分だけは指示を最小限にして、短い合言葉とほめる声だけで回すようにしています。指導者が黙ってしまうと、選手はすぐに集中を切らしてしまうからです。
きつさや叱責ばかりの練習で、バレーボール自体を嫌いにさせてしまうのがいちばんよくありません。対人パスはその日の練習の入り口だからこそ、前向きな空気で始めたいですね。
対人パスの10分は、技術だけでなくその日の練習の空気そのものを作る時間。
部活動の指導について国が示している指針でも、生徒が主体的に取り組み、適切な休養をとることが基本とされています。回数を増やすより、短く集中させる設計が結果的に近道です。
出典:運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン(スポーツ庁)
練習全体の時間配分に悩んでいる方は、こちらの記事も参考になります。
よくある失敗と直し方
最後に、対人パスの指導でつまずきやすい3つの失敗と、その直し方を整理しておきます。
失敗①:何でも腕を振って返してしまう
いちばん多いのがこれです。時間に余裕があるボールまで腕を振ると、面がぶれてコントロールが安定しません。
直し方は、面を作ったまま3歩動いて運ぶ縛りのドリルです。腕を振らずに返せた本数だけを数えると、意識が変わります。
なお、低いボールや難しい体勢では腕を振ってよい場面もあります。全部を振るなではなく、使い分けとして教えてあげてください。
失敗②:その場から1歩も動かずに手だけで合わせる
足が止まったまま、腕を伸ばして届かせるクセも要注意です。試合では正面にボールが来ることのほうが少ないからです。
直し方は、前後ゆさぶりパスやランダム球出しで、動いてから触る回数を意図的に増やすことです。



つい、続いていればOKと見過ごしていました…。



続いた回数より、動いて触れた回数。そこを見ると指導が変わるよ。
失敗③:回数だけ数えて内容を振り返らない
50回続いても、全部が乱れたパスなら練習効果は薄くなります。数と質はセットで見る必要があります。
直し方は、セットの合間に10秒だけ振り返りタイムを入れることです。「今の50回で一番よかった1本はどれ?」と聞くだけで、選手は自分のパスを言葉にし始めます。
質問で選手に考えさせる技術は、パス以外の練習でも武器になります。
対人パスの練習でよくある質問
まとめ:目的のある対人パスがチームの土台を作る
対人パスは、どのチームも毎日やるからこそ、差がつく練習です。最後に要点を整理します。
| 立て直しの柱 | やること | 目安 |
|---|---|---|
| 目的 | 1本ごとのテーマを1つ決める | 面・足・落下点など |
| 基準 | 回数と成功条件をセットで決める | ノーミス50回など |
| 声 | 短い合言葉とほめる声を決める | 「面を残そう」など |
対人パスは、目的・基準・声の3つを決めた瞬間に技術練習へ変わる。
私は元日本代表として、強いチームほど対人パスが丁寧なことを何度も見てきました。明日の練習から、まず1つの目的を決めて回してみてください。



明日はまず、面を残すことだけにしぼって回してみます!



いいね。10分の使い方が変われば、チームは静かに強くなっていくよ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
バレーの指導・チーム運営については他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪
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