- 急にサーブが入らなくなった選手に、どう声をかけるか迷う
- 励ましているつもりなのに、本人の表情は暗くなるばかり
- 練習を増やすべきか、休ませるべきか判断がつかない
こんな悩みを解決します。
スランプの選手への接し方は、原因を細かく切り分けて道筋を示し、あとは口を出しすぎずに見守るが基本です。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで指導してきた経験から言えるのは、スランプで選手を追い込むのは、たいてい不調そのものではなく周囲の反応だということです。
指導者が焦りを見せず、原因と道筋を一緒に整理してあげられれば、スランプは選手が一回り大きくなる通過点になります。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- スランプの原因を3つに切り分ける方法がわかる
- かけるべき言葉と避けたい言葉が具体的にわかる
- 手を出しすぎない「見守る勇気」の実践法がわかる
それでは、くわしく見ていきましょう。
結論:切り分けて、道筋を示して、見守る
先に結論からお伝えします。スランプの選手への対応は、次の3段階で考えます。
- 切り分ける:不調の原因がどこにあるかを一緒に探す
- 道筋を示す:何をどの順番で直すかを1つに決める
- 見守る:決めたら口を出しすぎず、待つ
いちばんやってはいけないのは、原因を探さないまま「気持ちの問題だ」と片づけて、練習量だけを増やすことです。
スランプ対応の失敗の多くは、切り分けを飛ばして励ましと根性論に走ること。
れおコーチ「気合いだ」って、私もつい言ってしまっていました…。選手は余計に苦しくなるんですね。



そうだよね。必要なのは気合いじゃなくて、どこがズレたかを一緒に探してくれる人なんだ。
原因がわかれば、選手の不安は半分以上軽くなります。直す場所が見えた瞬間、スランプは正体不明のお化けから、ただの課題に変わるからです。
そもそもスランプは、真剣に取り組んできた選手にしか訪れません。適当にやっている選手は、好調も不調も自覚しないからです。
悩んでいること自体が、その選手の本気の証拠です。指導者がそう捉え直すだけで、かける言葉の温度は自然と変わります。
次の章で、原因の切り分け方から見ていきましょう。
スランプの正体を3つに切り分ける
スランプとひとくくりにせず、まず原因のタイプを見極めます。私の指導現場では、大きく3つに分けて考えています。
タイプ①:体の変化でフォームがズレた
成長期の選手にいちばん多いのがこのタイプです。身長が伸びたり筋力がついたりすると、今までのフォームと体が合わなくなります。
とくに中学生は数か月で体が変わるので、去年の感覚のままプレーがズレるのは自然なことです。



体が変わってフォームがズレるのは、成長の証拠。むしろ喜んでいいサインなんだ。
このタイプは、症状が出ている場所ではなくその1つ前の動作を見るのがコツです。スパイクのミスなら打つ瞬間より、助走や踏み切りにズレが見つかることが多いんです。
タイプ②:考えすぎて体が固まっている
フォームは大きく変わっていないのに、ミスを恐れて動きが硬くなるタイプです。
一度ミスが続くと、「また失敗したらどうしよう」と頭で考えながらプレーするようになります。考えるほど、今まで無意識にできていた動きがぎこちなくなります。



アドバイスを重ねるほど、サーブの前に腕や手首のことを考えすぎてしまうんですね…。



上達の途中でみんな通る道だよ。考える場所を1つにしぼってあげると、体は動き出すんだ。
このタイプに細かい技術指導を重ねるのは逆効果です。意識するポイントを1つに減らし、成功体験を積み直す方向で対応します。
タイプ③:疲れがたまっている
体と心の疲労が、プレーの精度を下げているタイプです。練習のしすぎ、睡眠不足、学校生活の忙しさなどが重なると、動きのキレは目に見えて落ちます。
このタイプに練習の追加は完全に逆効果です。休ませる判断こそが、指導者にしかできない仕事になります。
不調の原因は技術・心・疲労の3つに切り分ける。処方はそれぞれ別物。
どのタイプかを見極めるには、本人との会話に加えて、睡眠や食事の様子、練習外の表情も見ておきましょう。コートの中だけでは、原因は見えてきません。
指導者がかけるべき言葉
原因の切り分けと並行して大切なのが、日々の言葉選びです。かけるべき言葉には3つの型があります。
- 事実を認める言葉
- 道筋を示す言葉
- 評価と存在を切り離す言葉
型①:事実を認める言葉
まず、「今きついよね」と不調の事実を認めてあげます。励ましよりも先に、現状を否定せず受けとめる言葉です。
「大丈夫、気にするな」と言いたくなりますが、本人は気になって仕方がないから苦しんでいます。気にするなは、気持ちのフタにしかなりません。



「きついって言っていいんだ」と思えるだけで、選手は少し楽になるんですね。



そうなんだ。安心して落ち込める場所があると、人は立ち直りが早いんだよ。
型②:道筋を示す言葉
次に、「原因はここだと思う。まずこれだけ直そう」と道筋を示します。
努力の方向性を示すのは指導者の仕事です。方向性を間違えた努力は、どれだけ積んでも成果につながらず、選手をさらに追い込みます。
頑張れではなく、これを頑張ろう。方向を示すのが指導者の言葉。
「トスまでは良い。打点の位置だけ戻そう」のように、できている部分と直す1点をセットで伝えると、選手は迷わず動けます。
型③:評価と存在を切り離す言葉
最後は、「調子が悪くても、君の価値は変わらない」と伝わる言葉です。
スランプ中の選手は、プレーの不調を自分自身の否定と結びつけがちです。ここを切り離してあげるのは、身近な大人にしかできません。
直接言うのが照れくさければ、プレー以外の貢献を拾って言葉にするだけでも伝わります。「今日の声かけ、チームを助けてたよ」で十分です。



プレー以外のところを見てもらえるのは、選手もうれしいでしょうね。



調子が悪い時期こそ、プレー以外の姿を見てあげるチャンスなんだよ。
この3つの型は、順番も大切です。事実を認める前に道筋の話を始めると、正論でも押しつけに聞こえてしまいます。まず受けとめて、それから前を向かせましょう。
なお、答えを渡すより本人に考えさせたい場面では、問いかけの形に変えると届き方が変わります。
避けたい言葉と対応
良かれと思った言葉が、スランプを深くすることもあります。代表的なNGを整理します。
| 避けたい言葉・対応 | 選手に伝わってしまうこと |
|---|---|
| 「なんでできないんだ」 | 原因は自分でもわからないから苦しい |
| 「気持ちが弱いからだ」 | 人格の否定として残る |
| 「前はできてたのに」 | 過去との比較で焦りが増す |
| みんなの前で原因追及 | 恥の記憶だけが残る |
| とにかく練習量を増やす | 疲労と嫌気が積み上がる |
とくに気をつけたいのが、練習量を増やすだけの対応です。原因が疲労タイプだった場合、逆効果になるだけでなく、けがのリスクまで上がります。



きつい練習でバレーそのものを嫌いにさせてしまうのが、いちばん避けたいことなんだ。



「下手だから練習が増えた」と受け取られると、コートが怖い場所になってしまうんですね…。
また、才能や身長のせいにする言葉も禁物です。継続的な取り組みで選手は伸びていくもので、あきらめの言葉を大人が先に口にしてはいけません。
言葉は届け方も大切です。同じ内容でも、みんなの前ではなく2人のときに短く伝える方が、ずっと素直に届きます。
叱る場面そのものの組み立て方は、別の記事で実例つきに整理しています。
見守る勇気:手を出しすぎない距離感
道筋を決めたら、あとは見守る番です。じつは指導者にとって、ここがいちばん難しい段階かもしれません。
毎日結果を聞かない
直すと決めた1点について、毎日「どうだ、直ったか」と聞くのは避けましょう。確認の声かけが続くと、選手は結果を急かされていると感じます。
フォームの修正には時間がかかります。変化を見つけたときだけ声をかけるくらいの距離感がちょうど良いです。



良かれと思って毎日声をかけると、逆に焦らせてしまうんですね…。



だから、良い変化があった日だけ「今の良くなってたよ」って伝えるんだ。
起用で信頼を伝える
スランプを理由にすぐ外すかどうかは、チーム事情にもよるので一概には言えません。ただ、外す場合も「調子が戻ったら戻す」という基準をはっきり伝えてください。
黙って外された選手は、干された不安の中で立ち直る力を失います。
逆に使い続けるなら、「結果はいいから、決めた1点だけやろう」と役割をしぼってあげます。起用そのものが、言葉より雄弁な信頼のメッセージになります。
見守るとは放置ではない。基準を伝えたうえで、口ではなく目をかけ続けること。
なお、食欲や睡眠に影響が出るほどの落ち込みが長く続く場合は、部活動の範囲だけで抱え込まないでください。
保護者と情報を共有し、スクールカウンセラーや医療機関など専門家に相談することも、指導者の大切な役割です。技術のスランプと心の不調は、見た目が似ていても対応の窓口が違います。
スランプ対応の手順まとめ
ここまでの内容を、実際の対応手順に落とし込みます。
基礎練習に戻すのは、後退ではありません。成功体験を積み直すためのいちばんの近道です。



キソ ニ モドル ハ マエ ニ ススム
うまくいった小さな1本を「今のだよ」と言葉で確認してあげると、選手の中に感覚が戻り始めます。
焦らないこと。スランプの出口は、たいてい本人が思っているよりずっと近くにあります。
この手順は、選手が自分で不調を乗り越える練習にもなっています。切り分けて、1つ直して、確かめる。この考え方を身につけた選手は、次の不調を自力で抜けられるようになるんです。
指導者の最終目標は、不調を直してあげることではなく、不調と付き合える選手を育てることだと私は考えています。
ここからは、指導者や保護者の方からよくいただく質問にお答えします。
スランプの選手対応でよくある質問
まとめ:スランプは選手が大きくなる通過点
スランプの選手への接し方を、最後に表で整理します。
| 段階 | 指導者がやること | 避けること |
|---|---|---|
| 切り分け | 技術・心・疲労のどれか一緒に探す | 気持ちの問題と決めつける |
| 言葉かけ | 事実を認め、道筋を1つ示す | 原因追及・比較・根性論 |
| 見守り | 基準を伝えて良い変化だけ拾う | 毎日の結果確認・黙った起用変更 |
| 長引くとき | 保護者・専門家と連携する | 部活の中だけで抱え込む |
切り分けて、道筋を示して、見守る。スランプ対応はこの順番がすべて。
私は元日本代表として、たくさんの選手の浮き沈みを見てきました。スランプを一緒に乗り越えた選手と指導者の間には、技術以上の信頼が残ります。
不調の時期にどう接してもらえたかを、選手は何年たっても覚えているものです。焦らず、切り分けて、待ちましょう。



チーム全体で、調子の悪い選手を焦らせない空気を作っていきます!



うん。仲間のそういう空気が、チームのいちばんの薬になるんだよ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
バレーの指導・チーム運営については他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪
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