- 自分の指導がハラスメントにあたらないか、ふと不安になる
- 熱心な指導と行きすぎの境界線が、あいまいなまま毎日が過ぎている
- チームとして防止のルールを作りたいが、何から始めればいいかわからない
こんな悩みを解決します。
ハラスメント防止の第一歩は、指導と暴力・暴言の境界線をチームの言葉にして、全員で共有することです。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールを運営してきた経験から言えるのは、境界線を言葉にしている指導者ほど、のびのびと熱心な指導ができているという事実です。
境界線があいまいなままだと、選手を萎縮させるだけでなく、指導者自身も「これは大丈夫かな」と迷いながら指導することになります。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 指導とハラスメントの境界線が、種類別に具体的にわかる
- グレーゾーンで迷ったときに使える3つの判断基準がわかる
- 明日から作れる防止の仕組みと、指摘を受けたときの動き方がわかる
それでは、くわしく見ていきましょう。
結論:境界線は感覚ではなく言葉で共有する
先に結論からお伝えします。ハラスメントを防ぐカギは、指導者1人の感覚に頼らず、やらないことを言葉にしてチーム全員で共有することです。
- 境界線の明文化(やらないことを紙に書いて配る)
- 密室を作らない運営(指導は見える場所で行う)
- 相談できる窓口(指導者以外に話せる相手を用意する)
れおコーチ正直、どこからがハラスメントなのか自信がないんです…



だからこそ、感覚ではなく言葉で線を引くんだよ。
多くの問題は、悪意のある指導者が起こすとは限りません。むしろ、熱心な指導者が「選手のため」と思い込んだまま、線を越えてしまうケースが目立ちます。
熱意は境界線の代わりにならない。だから先にルールを決めておく。
境界線を明文化すると、指導者は「ここまでは思い切り要求していい」という安心感をもって指導できます。防止のルールは、指導を縛るものではなく、指導を守るものなんです。
この記事では、種類別の境界線、迷ったときの判断基準、仕組みの作り方、指摘を受けたときの対応の順で解説していきます。
なぜ防止に本気で取り組む必要があるのか
境界線づくりを後回しにしないほうがいい理由は、大きく2つあります。選手のためと、指導者自身のためです。
選手を守るため:恐怖は上達を止める
怒鳴られる恐怖の中では、選手は挑戦をやめてミスを隠すようになります。伸びるために欠かせない試行錯誤が、チームから消えてしまうんです。



キョウフハ チョウセンヲ トメル
私の指導現場でも、強い叱責を受け続けてきた選手ほど、新しい技術への挑戦をこわがる傾向を感じます。失敗を責められた記憶が、体の動きを固くしてしまうからです。
練習がきつくて、あるいは怖くてバレーボールが嫌いになってしまうのが、一番良くないことです。競技を長く好きでいられることが、結果的に一番の上達につながります。



最初はできないところばかりで当然。できたところを見つけて褒めるのが指導の入り口だよ。
指導者とチームを守るため:信頼は一度で崩れる
もう1つの理由は、指導者とチーム自身を守るためです。ハラスメントが公になったとき、影響は指導者個人の問題では終わらないからです。
チームは活動停止や出場辞退に追い込まれ、何も悪くない選手たちの大会が失われることもあります。積み上げてきた保護者との信頼関係も、一度の問題で崩れてしまいます。
防止の仕組みは、選手・指導者・チームの3者を同時に守る保険になる。
だからこそ、問題が起きてから考えるのではなく、起きる前に仕組みを作っておきましょう。



選手のためでもあり、自分のためでもあるんですね。
指導とハラスメントの境界線を種類別に知る
ここからは、部活動で問題になりやすい行為を種類別に見ていきます。境界線は、行為の種類ごとに具体的に知っておくと迷いにくくなります。
暴力・体罰の境界線
体をたたく・物を投げる・罰として長時間の正座や過度な走り込みをさせる。これらは指導ではなく、体罰として扱われる行為です。
ここは最もはっきりした境界線です。どんな目的があっても、痛みや恐怖で選手を動かす方法はとらないと決めてしまいましょう。



罰の走り込みも、行きすぎると体罰になるんですか!?



苦痛を与えることが目的になっていたら、それはもう指導ではないんだ。
まぎらわしいのは、罰としてのトレーニングです。ミスへの罰で延々と走らせるのは、体力向上という目的から離れて、苦痛そのものが目的になっています。
トレーニングは計画に基づいて行い、ミスの直後の見せしめとしては使わない。この区別だけで、あいまいな場面はかなり減ります。
暴言・威圧の境界線
難しいのは言葉の境界線です。同じ大きな声でも、内容によって指導にも暴言にもなります。
行動を指摘するのは指導。人格を否定するのは暴言。
判断の物差しは、言葉が向いている先です。プレーや行動に向いていれば指導、人格や存在に向いていればハラスメントに近づきます。
| 場面 | 境界線を越える言葉 | 言い換えの例 |
|---|---|---|
| ミスが続いた | 「やる気がないなら帰れ」 | 「今のは何が難しかった?」 |
| 声が出ていない | 「おまえは性格が暗い」 | 「次のプレーで1回声を出そう」 |
| 同じ失敗をした | 「何回言ったらわかるんだ」 | 「言い方を変えるね。ここを見て」 |
体格や容姿をからかう言葉、皮肉なあだ名も、本人が笑っていても境界線を越えていることがあります。周りの選手が「自分も言われるかも」と感じた時点で、チーム全体が萎縮するからです。



コトバハ プレーニ ムケル
セクハラ・プライバシーの境界線
体への接触と私生活への立ち入りは、特に慎重さが求められる領域です。技術指導で体に触れる場合は、目的を先に説明し、本人の了承を得てから、人目のある場所で行いましょう。
連絡の取り方も同じです。特定の選手との1対1のやりとりを重ねず、チーム全体か、保護者を含めた形が基本になります。



説明して、了承を得て、人前で。この3つがそろえば指導、欠ければグレーだよ。
恋愛・体型・家庭の事情など、競技と関係のない私生活への質問も、選手が断りにくい関係性の中では負担になります。話題にする理由が競技上ないなら、踏み込まないのが境界線です。
グレーゾーンで迷ったときの3つの物差し
種類別の境界線を知っても、現場では判断に迷う場面が出てきます。そんなときのために、シンプルな物差しを3つもっておきましょう。
- 目的:その言動は選手の成長に向いているか
- 公開:同じことを保護者の前でも言えるか・できるか
- 関係:選手側に断る自由が実際にあるか
1つ目は目的です。いまの言葉や要求が、選手の成長のためか、それとも自分の怒りやいらだちの発散になっていないかを自問してみてください。
2つ目は公開の物差しです。保護者が見ている前で同じことを言えるかと考えると、判断は一気にはっきりします。



言えないかもしれない言葉、思い当たります…



気づけたなら大丈夫。物差しがあれば、次の場面で止まれるよ。
3つ目は関係性です。指導者と選手の間には、成績や出場機会を握られているという力の差があります。
だから、表面上は選手が了承していても、実際には断れなかっただけという場合があるんです。断りにくい関係を前提に、こちらから配慮するのが指導者側の責任です。
迷ったら、目的・公開・関係の3つでチェックする。2つ以上あやしければやめる。
この物差しは、自分の言動だけでなく、先輩・後輩の間のいじりを見極めるときにも使えます。選手同士のハラスメントを見逃さないことも、指導者の大切な役割です。
明日からできる防止の仕組みづくり
境界線と物差しがわかったら、次は個人の心がけをチームの仕組みに変えていきます。仕組みにしておけば、指導者が代わっても防止の文化が残ります。
ルールを明文化して全員に配る
最初にやることは、チームとしてやらないことを紙に書き出すことです。A4用紙1枚で十分です。
明文化の効果は、抑止だけではありません。選手や保護者が「これはおかしい」と声を上げるための、共通の基準になります。



紙1枚なら、今週末にも作れそうです!
2人きり・密室の場面を作らない
ハラスメントの多くは、閉じた場面で起こります。だから、構造的に密室を作らない運営が効きます。
- 個別指導や面談は、体育館の隅など人目のある場所で行う
- 車での送迎や個室での2人きりを避ける
- 連絡は個別ではなく全体連絡を基本にする



やましさの有無ではなく、疑われようがない形にしておくのがお互いのためだよ。
これは指導者自身を守る仕組みでもあります。事実と違う疑いをかけられたときに、開かれた運営そのものが何よりの説明になるからです。
相談窓口と第三者の目を用意する
3つ目の仕組みは、指導者以外に話せる相手を作ることです。選手が悩みを打ち明ける先が指導者しかないと、指導者への不満や不安は行き場を失ってしまうからです。
保護者会の中に相談係を置く、外部のコーチや顧問以外の教員を相談先として明示する、といった形が現実的です。
公的な相談窓口の存在も、選手と保護者に伝えておきましょう。日本スポーツ協会などが、スポーツにおける暴力行為等の相談窓口を設けています。
出典:日本スポーツ協会(スポーツにおける暴力行為等相談窓口)・スポーツ庁(運動部活動の指導に関する指針)



ソウダンサキハ フクスウ ヨウイ
仕組みと合わせて、日々の声かけそのものを見直すと防止の効果はさらに高まります。怒鳴らずに選手を伸ばす具体的なやり方は、こちらの記事でくわしく解説しています。
指摘や通報を受けたときの動き方
仕組みを作っても、指摘や相談が届く場面はありえます。そのときの動き方を先に決めておくと、二次被害を防げます。
一番やってはいけないのは、訴えた側を疑ったり、チーム内で孤立させたりすることです。声を上げた人が損をする空気ができると、以後の問題はすべて水面下に沈みます。



もし自分の指導が指摘されたら、と思うと怖いです…



怖いのは自然なこと。でも、素直に聞いて直せる指導者こそ信頼されるんだ。
自分自身への指摘だった場合は、弁明よりも先に、まず聞くことに徹しましょう。指摘を受け止めて行動を変える姿は、長い目で見れば信頼を深めます。
指摘への対応は、止める→聞く→記録→報告→再発防止の順で動く。
なお、暴力や重大なセクハラが疑われる場合は、チーム内だけで抱え込まず、最初から学校や連盟、公的窓口と連携して対応してください。
ここからは、指導者の方からよくいただく質問にお答えします。
部活のハラスメント防止でよくある質問
まとめ:境界線を言葉にすれば指導はもっと自由になる
最後に、この記事の要点を振り返ります。ハラスメント防止は、指導者の感覚に頼らず、境界線を言葉にしてチームで共有することから始まります。
| 柱 | やること | ポイント |
|---|---|---|
| 明文化 | やらないこと5項目を紙で配る | 毎年読み合わせて更新 |
| 運営 | 密室・2人きりを作らない | 指導は人目のある場所で |
| 窓口 | 指導者以外の相談先を用意 | 公的窓口も伝えておく |
境界線の明文化は指導を縛る鎖ではなく、思い切った指導を支える土台になる。
私は元日本代表として多くの指導者を見てきましたが、選手に信頼される指導者ほど、自分の言動に線を引くのが上手です。



まずは紙1枚のルール作りから始めてみます!



その一歩がチームを守るよ。熱意はそのままに、線だけはっきりさせよう。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
バレーボールの指導・チーム運営については他にも記事を書いています。
気になるテーマがあればぜひ読んで参考にしてもらえたら嬉しいです♪
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