- 揚げ物や油っぽいものは、全部避けたほうがいいのか迷っている
- 「脂質はとらないほうが体にいい」と思って、肉の脂を残している
- 練習の前に何を食べるとお腹が重くなるのか、よく分からない
こんな悩みを解決します。
脂質(あぶら)は避けるものではなく、選んでとる栄養です。国の基準は1日のエネルギーの20〜30%で、「種類」と「食べる時間」を考えることが大切です。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
この記事では、厚生労働省の基準とスポーツ栄養の声明、食品成分表の数字をもとに、バレー選手の脂質のとり方を紹介します。
読み終わるころには、油物との付き合い方がはっきりするはずです。
- 脂質が体の中でしている仕事と、避けすぎると困る理由がわかる
- 自分に合った1日の脂質の量の目安がわかる
- 肉・魚・お菓子の選び方と、練習前に気をつけることがわかる
結論:脂質はゼロにせず「種類」と「タイミング」で選ぶ
結論からお伝えします。脂質は1日のエネルギーの20〜30%を目安に、魚の脂を取り入れ、練習の直前だけ控えめにするのが基本です。
15〜17歳男子で活動量が「ふつう」の場合、1日の脂質はおよそ63〜95gになります。
サルくん脂質って、そんなにとっていいんですか!?



肉や魚、牛乳にも入っているから、1日の合計で考えるんだ。
- 脂質の目標は、1日のエネルギーのうち20〜30%
- 脂質が少なすぎると、エネルギー不足やビタミンの吸収低下につながる
- 肉の脂身やバターに多い「飽和脂肪酸」はとりすぎに注意
- 魚に多い「n-3系脂肪酸」は、意識して取り入れたい脂
- 練習の直前は、消化に時間がかかる油物を控えめにする
大切なのは、「油物は悪いもの」と決めつけないことです。何から、いつとるかを工夫すれば、脂質は練習を支える味方になります。



アブラ ハ ゼロ ニ シナイ
脂質が体の中でしている3つの仕事
脂質は、肉や魚、卵、牛乳、植物油、ナッツなどに多く含まれる栄養素です。では、体の中でどんな役割を果たしているのでしょうか。
仕事①:少ない量で大きなエネルギーになる
1つ目は、エネルギー源としての働きです。農林水産省は、脂質は炭水化物やたんぱく質よりも大きなエネルギーをもつと説明しています。
消費者庁の資料では、エネルギーを計算するときに脂質は1gで約9kcalとして扱います。炭水化物やたんぱく質(1gで約4kcal)の2倍以上です。
食べる量が少ない選手にとっては、少ない量でエネルギーを補える栄養でもあります。



たくさん食べられない日は、脂質も助けになるんですね!
仕事②:体をつくる材料になる
2つ目は、体の材料としての働きです。脂質は、体をつくっている細胞の膜の主な成分になっています。
農林水産省も、脂質は細胞膜の主要な成分であり、主要なエネルギー源でもあるとしています。
成長期の体をつくっていくうえでも、脂質はなくてはならない栄養なんです。
仕事③:ビタミンの吸収を助ける
3つ目は、ビタミンの吸収を助ける働きです。ビタミンA・D・E・Kは油に溶けやすいビタミンで、油と一緒にとると吸収されやすくなります。
農林水産省は、脂質が極端に少ないと、脂溶性ビタミンの吸収が悪くなったり、エネルギー不足になったりする可能性があるとしています。



避けすぎると、エネルギーもビタミンも足りなくなりやすいんだ。



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1日にどれくらい?国の基準とスポーツの目安
脂質の量には、国が決めている基準と、スポーツ栄養の声明で示されている目安があります。順番に見ていきましょう。
国の基準はエネルギーの20〜30%
厚生労働省の「日本人の食事摂取基準(2025年版)」では、脂質の目標量を1日のエネルギーのうち20〜30%としています。この割合は、中学生も高校生も大人も同じです。
活動量が「ふつう」の人の必要エネルギーをもとに、脂質のグラム数に直すと次のようになります。
| 年齢・性別(活動量ふつう) | 必要エネルギー | 脂質の目安 |
|---|---|---|
| 12〜14歳 男子 | 2,600kcal | 約58〜87g |
| 12〜14歳 女子 | 2,400kcal | 約53〜80g |
| 15〜17歳 男子 | 2,850kcal | 約63〜95g |
| 15〜17歳 女子 | 2,300kcal | 約51〜77g |
計算は「必要エネルギー×20〜30%÷9」で出しています。毎日長い時間練習する選手は、必要なエネルギーそのものが多くなるため、脂質のグラム数も増えることがあります。



自分が何g食べているかなんて、数えられません…。



数えなくて大丈夫だよ。偏りに気づければ十分なんだ。
スポーツの目安も20〜35%
アメリカスポーツ医学会(ACSM)などが出したスポーツ栄養の共同声明(2009年)では、選手の脂質はエネルギー全体の20〜35%が目安とされています。
同じ声明は、脂質を20%未満にしても競技の成績にプラスにはならないこと、そして脂質の多すぎる食事も選手にはすすめないことを書いています。
つまり、国の基準とスポーツの目安は、ほぼ同じ範囲です。
脂質を極端に減らすことも、増やしすぎることも、どちらも練習のためになりません。
なお、この声明は主に大人の選手を対象にしたものなので、中高生は国の基準を基本にするとよいでしょう。



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脂質は「種類」で選ぶ
脂質は、含まれている「脂肪酸」の種類によって、体への働きが変わります。ここでは、選手が知っておきたい3つの種類を紹介します。
飽和脂肪酸はとりすぎに気をつける
1つ目は、飽和脂肪酸です。農林水産省によると、乳製品や肉などの動物性の脂肪、パーム油などに多く含まれています。
厚生労働省の基準では、飽和脂肪酸の目標量を12〜14歳はエネルギーの10%以下、15〜17歳は9%以下としています。
悪玉コレステロールが増える原因の1つになり、将来の病気のリスクにも関わるためです。
15〜17歳男子の「ふつう」の活動量(2,850kcal)で計算すると、9%は約29gになります。
| 食べ物(100gあたり) | 飽和脂肪酸 |
|---|---|
| バター(食塩不使用) | 約52g |
| 豚ばら肉(脂身つき・生) | 約15g |
| 鶏もも肉(皮つき・生) | 約4g |
| まさば(生) | 約5g |
バターはそのまま100g食べるものではありませんが、脂身の多い肉や、バターを多く使ったお菓子・パンには飽和脂肪酸が多いと覚えておくと選びやすくなります。
n-3系脂肪酸は魚からとる
2つ目は、n-3系脂肪酸です。体の中で作れないため、食べ物からとる必要があります。
n-3系脂肪酸のうち、EPAやDHAは魚に多く、α-リノレン酸は植物油に含まれています。
厚生労働省の基準では、n-3系脂肪酸の目安量を12〜17歳の男子は1日2.2g、女子は1.7gとしています。
| 食べ物(100gあたり) | n-3系脂肪酸 |
|---|---|
| さば缶(水煮) | 約2.7g |
| まさば(生) | 約2.1g |
| しろさけ(生) | 約0.9g |
| 鶏もも肉(皮つき・生) | 約0.1g |
さば缶(水煮)なら、100gで男子の1日の目安量(2.2g)をこえるほどです。
肉が中心の食事が続いている人は、主菜を魚にする日をつくるだけで、とれる脂の種類が変わってきます。
さば缶はそのまま食べられるので、ご飯のおかずにしやすい食べ物です。



晩ごはんが魚の日は、残さず食べるようにします!
トランス脂肪酸はできるだけ少なく
3つ目は、トランス脂肪酸です。
厚生労働省の基準では、体にとってなくてはならない栄養ではないため、エネルギーの1%未満に、できるだけ低く留めることが望ましいとされています。
同じ資料によると、日本人の多くはこの目標を下回っていて、飽和脂肪酸に比べると健康への影響は小さいと考えられています。
ただし、脂質に偏った食事をしている人は気をつける必要がある、とも書かれています。ふだんからお菓子や揚げ物が多い人は、この機会に食べる量を見直してみましょう。
毎日の食事で脂質を選ぶコツ
ここからは、家の食事やコンビニで実際に選ぶときのコツを紹介します。
肉は部位で脂質が大きく変わる
肉に含まれる脂質は、同じ肉でも部位によって大きく変わります。文部科学省の「日本食品標準成分表(八訂)」の値は、次のとおりです。
| 食べ物(100gあたり・生) | 脂質 |
|---|---|
| 豚ばら肉(脂身つき) | 約35g |
| 鶏もも肉(皮つき) | 約14g |
| 鶏むね肉(皮つき) | 約6g |
| 豚ヒレ肉 | 約4g |
| 鶏むね肉(皮なし) | 約2g |
豚ばら肉と鶏むね肉(皮なし)では、同じ100gでも脂質が10倍以上ちがいます。
どちらかが正解というわけではなく、その日の食事全体を見て選ぶことがポイントです。揚げ物の日はほかのおかずをあっさりした物にする、といった組み合わせで調整しましょう。



揚げ物を食べた日は、ほかのおかずで調整すればいいんだ。
お菓子やバターの脂質にも気をつける
脂質は、肉や魚だけでなく、お菓子や調味料にも含まれています。見落としやすいのは、スナック菓子や、バター・マーガリンを多く使ったパンやお菓子です。
| 食べ物(100gあたり) | 脂質 |
|---|---|
| バター(食塩不使用) | 約83g |
| マーガリン(家庭用) | 約83g |
| アーモンド(いり・無塩) | 約54g |
| ポテトチップス | 約35g |
ポテトチップスは60g分で約21gの脂質になり、15〜17歳男子の1日の目安の下限(約63g)の3分の1にあたります。
ナッツも脂質は多いですが、少しの量でエネルギーをとれる食べ物です。食べるなら量を決めて、ひとつかみ程度にすると、とりすぎを防げます。
パッケージの「栄養成分表示」には脂質のグラム数が書かれているので、買う前に見てみてください。
練習前は脂質を控えめにする
最後に、脂質をとるタイミングについてです。いつ食べるかによって、同じ食べ物でも練習への影響が変わります。
練習の前は消化のよい物を選ぶ
先ほどのACSMの共同声明では、運動前の食事は脂質と食物繊維が比較的少なく、炭水化物の多いものがよいとしています。
脂質や食物繊維が多いと、胃から腸へ食べ物が進むのに時間がかかります。そのため、お腹の不快感につながりやすいからです。
練習の直前に揚げ物や脂の多い肉を食べると、お腹が重く感じることがあります。練習前の補食は、おにぎりやバナナなど、脂質の少ない物を選びましょう。



練習前のコンビニのから揚げ、やめたほうがいいですか…?



練習の前なら、おにぎりのほうが体は動きやすいよ。
練習前後に何を食べるかは、補食の記事でくわしく紹介しています。
脂質は3食の食事でとる
では、脂質はいつとればよいのでしょうか。答えは、朝・昼・夜の3食の中で、主食・主菜・副菜と一緒にとることです。
肉や魚のおかず、卵、牛乳などを3食でふつうに食べていれば、脂質は自然にとれます。わざわざ油を足す必要はありません。
反対に、「脂質を減らしたい」と思って肉や魚のおかずまで残すと、たんぱく質やエネルギーも一緒に足りなくなります。
体重や体型のことで悩んでいる人、食べる量に不安がある人、持病やアレルギーがある人は、自分の判断で食事を減らさず、医師や管理栄養士に相談してください。
脂質の摂り方についてよくある質問
試合当日の食べ方は、こちらの記事でくわしく解説しています。
まとめ:脂質は避けずに選んでとろう
この記事では、バレー選手の脂質のとり方を、国の基準とスポーツ栄養の声明をもとに解説しました。
脂質はエネルギーの20〜30%を目安に、肉の脂はとりすぎず、魚の脂を取り入れ、練習の直前は控えめにする。
| 気をつけること | 具体的な行動 |
|---|---|
| 量 | エネルギーの20〜30%・避けすぎない |
| 種類 | 脂身・バターはとりすぎない/魚を取り入れる |
| タイミング | 練習の直前は油物を控える・3食でとる |
脂質は、エネルギー・体の材料・ビタミンの吸収と、選手の体を支える大事な栄養です。
まずは今週の晩ごはんで、主菜が魚の日が何回あったか数えてみてください。



練習の前は、から揚げよりおにぎりにしてみます!



脂質を上手に選べると、食事全体のバランスもよくなるよ。
参考にした資料
- 厚生労働省「日本人の食事摂取基準(2025年版)」の策定ポイント(2025年2月)
- 堺市「あなたに必要な1日のエネルギー量の目安は?」(日本人の食事摂取基準2025年版より抜粋)
- 農林水産省「脂質による健康影響」
- 農林水産省「脂質と脂肪酸の種類」
- American College of Sports Medicine, American Dietetic Association, Dietitians of Canada. Nutrition and Athletic Performance (Joint Position Statement). Medicine & Science in Sports & Exercise, 2009
- 消費者庁「栄養成分表示を活用しよう」(2019年)
- 文部科学省「食品成分データベース」(日本食品標準成分表(八訂)増補2023年)
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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