- トスが手先だけになって、アタッカーまで届かない
- 力いっぱい上げているのに、ボールが失速して落ちる
- 筋力が足りないせいだと思って、半ばあきらめている
こんな悩みを解決します。
トスが飛ばない原因は、手先だけで押し出していて、下半身の力が指先まで伝わっていないことにあります。筋力ではなく、力の伝え方の問題です。
私は元日本代表として活動し、SVリーグで監督を務めることができるバレーボールコーチ4の資格を保有しています。
10年以上スクールで指導してきましたが、トスが飛ばない選手の多くは筋力ではなく力の伝え方でつまずいています。
足から順に関節を伸ばして、最後に指先へ力を届ける。この流れができると、力の弱い選手でもトスはぐっと飛ぶようになります。
ぜひこの記事を参考にしてみてください。
- 筋力に頼らず、下半身の力でトスを飛ばす仕組みが分かる
- 下半身→体幹→上半身の運動連鎖の作り方が手順で身につく
- 指で弾く力を鍛える、家でもできる練習が分かる
トスの基本フォーム全体を最初から知りたい方は、こちらの記事も参考にしてください。
それでは、まず結論から見ていきましょう。
結論:トスは手打ちではなく全身で送り出す
先に結論からお伝えします。トスを飛ばす力は、腕の力ではありません。
下半身で生んだ力を体幹で受け渡し、上半身を通して指先まで運ぶことで飛びます。下から上へ、力をリレーするイメージです。
手先だけで押し出そうとすると、使える力は腕の小さな筋肉だけになります。
これでは、いくら力いっぱい上げてもボールは失速してしまうんです。逆に、足で床を踏んだ力を膝・腰・腕・指の順に伝えられれば、全身の大きな力がボールに乗ります。
つまり、トスが飛ぶかどうかは力の大きさではなく、力を伝える順番で決まります。
あげば飛ばす力は全身で作るものなんです。足から指先まで、一本のリレーをイメージしてみてください。
このあと、なぜ手先だけだと飛ばないのか、そして全身で送り出す運動連鎖の作り方を順番に見ていきます。
なぜ手先だけだとトスは飛ばないのか
トスが飛ばない選手を見ると、多くが同じ姿勢になっています。足も膝もほとんど動かさず、腕と手だけでボールを上に押している状態です。



え、トスって腕で上げるものじゃないの…?
腕だけで上げると、確かにその場では形になります。でも、腕の筋肉は全身の中ではとても小さい部分です。そこだけでボールを飛ばそうとするから、力が足りずに届かないんですね。



腕は大事な仕上げ役です。でも、エンジンは下半身。役割を分けて考えてみましょう。
手先だけのトスになる2つの理由
手先だけのトスになってしまうのには、大きく2つの理由があります。
- 高い位置で取りに行く:ボールを待てず手を伸ばしてつかみに行き、下半身を使う余裕がなくなる
- 腕だけ力む:飛ばそうとするあまり腕にギュッと力が入り、体全体の連動が止まる
1つ目は、中学年代にとても多いパターンです。ボールが落ちてくるのを待てずに、手を伸ばして高い位置でつかみに行ってしまいます。すると膝を曲げて沈み込む時間がなくなり、下半身の力をためられません。
2つ目は、届かない経験を重ねた選手によく起こります。「もっと力を入れなきゃ」と思って腕に力みが集中し、かえって体全体の連動が止まってしまうんです。



力めば力むほど飛ばなくなる。これがトスの不思議なところなんですよ。
飛ばす力は腕の何倍も足にある
ジャンプを思い浮かべてみてください。腕の力だけでは、その場で数cmも跳べません。
でも膝と股関節を使えば、誰でも体ごと高く跳び上がれます。これは、足やお尻まわりの筋肉が腕よりはるかに大きく、強い力を出せるからです。
トスもまったく同じで、飛ばす力の源は腕ではなく下半身にあります。
実はこれは、私自身が身をもって経験したことです。私は中学時代、まわりと比べてかなり細い体型で、ボールを遠くへ飛ばすことに本当に苦労していました。
どれだけ腕に力を込めても届かず、「筋力がないせいだ」と半ばあきらめかけていたんです。変わったきっかけは、力の入れ方ではなく力の伝え方に意識を向けたことでした。
これからお話しする運動連鎖を実践するうちに、細い体のままでもボールをしっかり遠くへ飛ばせるようになったんです。



だから、同じように悩んでいる人の気持ちはよく分かります。筋力に自信がなくても大丈夫。力の伝え方を変えれば、必ず飛ばせるようになりますよ。
この大きな力を、どうやって指先まで届けるのか。次の章で、その運動連鎖の作り方を順番に見ていきます。
トスを飛ばす運動連鎖の作り方|下半身→体幹→上半身
ここが、この記事でいちばん大事なところです。トスを飛ばす力は、下半身で生んだ力を体幹で受け渡し、上半身を通して指先へ伝えることで生まれます。これを運動連鎖と呼びます。
力の通り道を下から順に並べると、9か所あります。バラバラに動かすのではなく、下から上へ1か所ずつ、順番につないでいきます。
ムチを思い浮かべると分かりやすいです。手元の動きが先端まで波のように伝わって、先っぽが一番速く動きますよね。
体も同じで、①から⑨へ力を順に伝えていくと、最後の指先で一番大きな力になります。



足首から指まで、9か所をバトンでつなぐイメージなんだ!



その通りです。9本のバトンを途中で落とさず、下から1本ずつ確実につないでいきましょう。
体幹が不安定だと、下半身の力は上半身に伝わらない
運動連鎖で見落とされがちなのが、下半身と上半身をつなぐ④体幹の役割です。
体幹がぐらつくと、せっかく下半身(①〜③)で生んだ大きな力が、上半身へ渡る途中で逃げてしまいます。
だからこそ、トスを上げる間は体幹をしっかり締めて、最後まで力を抜かないことが大切です。お腹と背中に力を入れて体の中心を安定させておくと、下半身で生んだ力がロスなく上半身へ伝わります。



腕や足ばかり意識しがちですが、その間をつなぐ体幹こそが力の通り道です。トスの最後まで、ふっと力を抜かないようにしましょう。
だからトスが飛ばないとき、原因が腕でも足でもなく、間の体幹のぐらつきにあることも少なくありません。
9か所を同時にではなく、下から順に伸ばす
大切なのは、これらを同時にではなく①から⑨へ順番に伝えることです。
全部いっぺんに動かすと、力が分散してボールに乗りません。足元から指先へ、波が伝わるように1か所ずつつないでいくのがコツです。
最初は、下半身(①〜③)を伸ばし切ってから上半身を動かすくらい、ゆっくり大げさにやってみてください。動きが大きいほど、力が下から上へ伝わる順番を体で覚えやすくなります。
スピードを上げるのは順番が通ってからで十分で、順番さえ正しく通れば、力の弱い選手でも自然とボールは伸びていきます。



焦らず、1日10球でも正しい順番で。遠回りのようでいちばんの近道ですよ。
タイミングは「ボールが手に入った瞬間」に膝を伸ばす
運動連鎖でいちばん難しいのが、伸ばし始めるタイミングです。目安はボールが手に入った瞬間に、膝を伸ばし始めることです。
早すぎると、体が伸び切ってからボールが来てしまい力を乗せられません。遅すぎると、手先だけで押すいつもの形に戻ってしまいます。



ボールを迎えに行かず、しっかり落ちてくるまで待つ。待てた人から、膝を使えるようになりますよ。
ボールが落ちてくるまで待てると、膝を曲げてためる時間が生まれます。この「待つ」と「膝を伸ばす」がセットになって、初めて全身の力がボールに伝わるんです。
手の形とボールを迎える位置
運動連鎖を活かすには、受け止める手の形も大切です。手は、両手の親指と人差し指で、おでこの上に三角形の窓を作るイメージで、ボールを包み込むように構えます。
そして、ボールを迎える位置はおでこの上方です。頭の上の方で迎えられるよう、落下点へ手を動かしてセットします。



テノカタチ=サンカクケイ / ムカエルイチ=オデコノウエ
体の正面、おでこの上方で受けられると、伸び上がる力をまっすぐ上へ伝えられます。ここが横や前にズレると、せっかくの全身の力が逃げてしまうので注意してください。
指で弾く力と、家でもできる鍛え方
運動連鎖で大きな力を作るのが基本です。でも、試合では大きく踏み込めない場面もたくさんあります。崩れた体勢や、速い展開で時間がない時です。
そんな場面で効いてくるのが、指でボールを弾く力です。



大きく動けない時は、指の力で飛ばすってこと!?
そうなんです。足や腕の力が使えない場面では、指でボールを弾く瞬間の力がトスの飛びを左右します。これは指や手首の腱(けん)を使った、しなやかな弾き出しの力です。
筋肉のように太くする力ではなく、繰り返しの練習で養っていく感覚的な力なんですね。
鍛え方① 壁パスを強く速く
1つ目は、壁を使ったトス練習です。意識するのは、ふんわりではなく強く速く弾き返すことです。
強く速く返そうとすると、自然と指先で弾く感覚が身についていきます。最初は距離が近くてかまいません。慣れてきたら少しずつ壁から離れ、距離を伸ばしていきましょう。
鍛え方② ボールを思いっきり高く上げる
2つ目は、その場でボールを真上に高く上げる練習です。自分の真上に、届く限りいちばん高くトスを上げ続けます。
高く上げるには、足から指先まで全部の力を使い切るしかありません。だから、運動連鎖と指の弾きを同時に鍛えられる、とても良い練習なんです。



天井に届くつもりで、思いっきり高く! これを続けると、力の伝え方が体に染み込みますよ。
落ちてくるボールを同じ場所で受け続けることで、落下点に入る感覚も一緒に磨かれます。
座って上げる・立って上げるで違いを知る
もう1つ、力の伝わり方を体で理解できる練習があります。床に座った状態でトスを上げてみて、次に立って同じように上げてみてください。
座ったトスは下半身が使えないので、思ったより飛びません。立って膝まで使うと、同じ力感でもずっと遠くまで飛びます。



ザイトス=ウデノミ / リツイトス=ゼンシンレンドウ
この差こそが、下半身の力がトスを飛ばしている証拠です。頭で理解するより、自分の体で飛距離の違いを感じる方が、ずっと早く身につきます。



座って上げると全然飛ばない…! 立つとこんなに違うんだ!
座って飛ばなかった分が、そのまま下半身の力なんだと気づけます。この気づきがあると、立った時に自然と足を使おうとする意識が生まれます。
トスが飛ばない人によくある失敗
ここでは、トスが飛ばない選手によくある失敗を整理します。自分に当てはまるものがないか、チェックしてみてください。
- ボールを高い位置で迎えに行く:膝を曲げる時間がなくなり、下半身を使えない
- 腕だけにギュッと力を入れる:足や腰の動きが止まって連鎖が切れる
- 全部の関節を同時に伸ばす:力が分散してボールに乗らない
- 両手がバラバラに開く:押し出す力が横に逃げる
いちばん多いのが、ボールを待てずに高い位置でつかみに行く失敗です。迎えに行くと膝を曲げる時間がなくなり、下半身を使えません。直し方は、おでこの上方で迎えると決めて、ボールが落ちてくるまで待つことです。
「飛ばそう」と思うと、つい腕に力が集中します。でも腕が力むほど、足や腰の動きが止まって連鎖が切れてしまいます。力を入れる先は腕ではなく、床を踏む足だと考えてください。



腕じゃなくて、足から! 意識する場所を変えるだけなんだね。
下半身・体幹・上半身をいっぺんに動かすと、力が分散してボールに乗りません。あくまで足元から指先へ、①から⑨へ1か所ずつ順番に伝え、タメてから順に押し出すイメージを持つと、力がまとまって伝わります。
また、押し出すときに左右の手が外側へ開くと力が横に逃げるので、両手の甲が中央で向き合うように、最後まで同じ向きにそろえて運ぶのがコツです。



基本を習得する段階で、両手の甲が中央で向き合うように練習して、力を逃がさずに押すことができるようになった後は、厳密にこのようにならなくても問題ないですよ!
よくある質問(FAQ)
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まとめ
トスが飛ばない原因は、筋力不足ではなく力の伝え方にあります。
下半身で生んだ力を体幹で受け渡し、肩甲骨・肩・腕・手首・指の順に指先まで運ぶ。
これがトスを飛ばす運動連鎖です。間の体幹がぐらつくと力が逃げるので、お腹と背中を締めて安定させることも忘れないでください。
大きく動けない場面では、指で弾く力が支えてくれます。壁パスを強く速く、ボールを思いっきり高く上げる練習で養っていきましょう。



腕の力じゃなくて、足から指先までのリレーなんだね! さっそく壁パスからやってみる!



その意気です。力の伝え方が身につけば、トスは必ず飛ぶようになりますよ。
最後まで読んでくださり、ありがとうございました。
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